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2018GPF・女子FS(後)、紀平梨花の基軸

(続きです。)
この18-19シーズンの女子フィギュアを盛り上げる存在といえばもちろん紀平梨花ですが、もうひとり挙げるならば間違いなくエリザベータ・トゥクタミシェワだと思います。
14-15の世界女王を獲った後はひどく低迷し、世界選手権にすら出られなくなった彼女が不死鳥のように復活し、トップレベルで活躍しているというのは嬉しい驚きです。
その理由について、テレビなどでは「3Aの復調」と説明されていますけど、本当の理由は”3Lzの復調”です。
トゥクタミといえば少女の頃から高さと美しさを兼ね備えたルッツジャンプこそが代名詞であり、それを基軸にプログラムを構成していましたし、3Aはプラスαなんです。
低迷時期はその3Lzが不調で、FSで2本ではなく1本に減らすこともありましたから、3Aにチャレンジする余裕がなかったというのが本音でしょう。
それが今季は好調で、NHK杯のFSでは久しぶりに3Lz+3Tを綺麗に成功させていました。
このGPFではジャンプの基礎点を若干上げてくるなど、自信を深めてきたトゥクタは、冒頭の3Aが乱れてターンが入るも、その後のジャンプはすべてクリーン。
もちろん3Lz+3Tも単独3Lzも鮮やかに決めていました。
それに加えて怪しげな踊りと妖艶な笑みで会場を沸かせ、『You Don't Love』とは真逆の人気も証明しているのですから、完全復活ですね。
FSは144.67(TES78.06・PCS66.61)、合計215.32。
この大会はSP・FS両方ともに3Aの着氷を乱していたにもかかわらず、ここまで得点を伸ばすのですから、それが成功したときは、ザギトワだってうかうかしていられないくらいのハイスコアになるはずです。
ロシア女王返り咲きもあるかも!?

3Aは女子にとっては超高難度ジャンプですから、それを跳ぶ選手が2人いるこの大会はまさに奇跡。
バンクーバーのお客さんは本当にラッキー。
しかも我らが紀平梨花は3A+3Tという唯一無二を跳ぶ!
…はずですでしたけど、冒頭の3Aは途中で開いてダウングレード気味の着氷。
いきなりのハードラック!
しかしこのときの紀平梨花の表情はどうだ。気落ちするでも同様するでもなく、ただただ強い眼差しで前を向く。
そして次のジャンプ、2A+3Tという安全な選択もあるなか、決断したのは3A+2T!これを確実に決めた!
気持ちが強いのはもちろんのこと、無理に+3Tにいかないところは冷静。
このバランス感覚が紀平梨花の凄味。
ただ、ザギトワが残した”226.53”を超えるためには、ここからはミスが許されない剣ヶ峰の綱渡り。
その重圧か、3Loの軸がやや狂うも空中で修正。
この運動能力は紀平梨花の強味。
高い足上げの鋭いスピン、指先まで丁寧に踊りながらのステップではエッジも正確で股関節が柔らかく、そこに長い腕の演技が重なって、完成度の高い演技。
抑揚や緩急などといった音楽表現は今後の伸びしろ。
中盤の3Lzには+3Tを付けなければならないところしたけど(前半に+2Tを使っているため)、余裕を感じるほどの着氷!
リカバリーをしっかり出来る頭の冴えと技術の冴えにシビれる!
タノ3Fもフォルムが明確で強さと美しさを兼ね備えている!
”基軸のジャンプ”でいえば、紀平さんは3Lzと3Fの二刀流であり、そこに絶対の自信を持っているからこそ3Aに落ち着いて挑めるのでしょうね。
その勢いのままのビールマンスピンも微塵の乱れもなく回り、まるでゾーンに入ったかのよう、タノ3Lz+2T+2Loも成功が約束されたように仕上げ、終盤でも脚力十分のシットスピンとコレオ、ちょんと跳ねてからの最後の3Sも完璧!
日本からやってきた『A Beautiful Storm』がバンクーバーを呑込んだ!これが紀平梨花だ!

緊張からか序盤は自分の身体を上手く制御できていないようなところも見えましたけど、それをすぐに修正し、途中からは完全に気持ちと身体を一致させ、正確な演技を完遂させたのは本当に鳥肌ものでした。
紀平梨花という選手の一番の武器はメンタルとフィジカルの分析とコントロールかもしれません。
日本女子にはこれまでなかったタイプであり、他競技も含めた世界的アスリートに近いタイプといっていいでしょうね。
紀平さんの活躍は日本フィギュアに新たなる可能性を示し、さらなる発展をもたらすと思います。

そして気になるFSのスコア、私はザギトワ(148.60)にちょっと届かないくらいかと思いましたけど、SPで”4.58”の差をつけていたので優勝は確信していました。
SP・FSを通して見れば文句なしの勝利です。
ザギトワ陣営も紀平さんの演技が終わった瞬間にシャッポを脱いでいたことでしょう。
そしてジャッジが出したのは150.61(78.21・72.40)、合計233.12!
よっしゃあ!初出場初優勝の快挙!
PCSが思ったよりも高く評価されていて戸惑いましたけど、今後の”期待点”というやつですかね。
これはロシア勢だってメドベージェワやザギトワがもらってきたものですし、大きな声で文句もいってこないでしょう。そもそも”基礎点と技術点”が違います。
まあ個人的にはPCSが70.00くらいだった方がしっくりきますけどね。今大会での勝利でもって次からザギトワに肉薄するという方が好みです。
(※ザギトワの今大会のFSのPCSは72.70。紀平さんのNHK杯FSは67.55)。

それにしても本当に見事な優勝でした。
3Aを跳ぶというだけではなく、その他のジャンプとスピン・ステップの基礎技術の高さ、そして表現面での体の使い方とスケーティングの練度という面でも隙がないのですから、絶対的な強さを感じます。
そして公の場でのメイクや表情、試合後のインタビューなどでの受け答えを見ると、”女王とはこうあるべき”という理想像を本人がしっかり持っているのもよくわかります。
また、それは家族や周囲の教育の賜物であり、共通意識なのでしょうけど、その一体感もまたこの16歳を支えている強さなのかもしれません。

2年前に彗星の如く現れた日本フィギュアの至宝は、ジュニアでの苦境があったものの順調に成長し、ついには世界女王に手が届くレベルまでやってきました。
GPF初出場初優勝は素晴らしい快挙ですけど、シーズンはここからが本番です。
日本選手権、四大陸選手権、そして世界選手権。
紀平梨花が真の女王として称えられるのはここからなんです。
もちろん、優勝インタビューに応じる紀平さん本人には微塵の油断もありません。
彼女が目指すのは世界の頂点、それも歴史に残るような女王なのでしょう。
紀平梨花の演技の本当の基軸は、その志の高さなのだと思います。

未来の偉大な女王に乾杯!
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2018GPF・女子FS(前)、五輪女王の意地

2018グランプリファイナル女子シングルは、興奮のSPが終わり、我らが紀平梨花が82.51というハイスコアでの首位。
2位のザギトワに対しては4.58のアドバンテージを得ることができました。
FSでの2人の期待値は同じく154~156点ほどなので(ザギトワはB級大会で158.50を出していますけど主要大会では難しい)、紀平さんはFSノーミスならば”自力優勝”が可能になります。
ただ、紀平さんの最大の武器である3Aは、成功すれば大きな得点が望めると同時に、ミスをすれば期待値が大きく下がる諸刃の剣。
我々はドキドキハラハラしながら見守るしかありません。
もちろんNHK杯のときのノーミスを思い出せばワクワクもしますけどね!

そんなFSではまず最初に登場したソフィアサモドゥロワがSP(5位)に続いてノーミスの内容。シニアデビューとは思えぬ落ち着きを見せました。
FSは136.09(72.82・63.27)、合計204.33。
ジャンプを含む技術要素の質がまだまだ低いので、そこを改善してゆけば、もう少しスコアも伸びるようになるでしょうね。
演技を観ていると”表現するのが好き”なタイプだということが伝わってきますし、きつめの美人というルックスも『バーレスク』のようなプログラムを際立たせるので、存在感のある選手になってゆきそう。

SPではいつもの明確な動きが見られずに6位に沈んだ日本女王・宮原知子ですが、1日空いたFSでも調子は上がらず、全体的に元気がありませんでした。
ジャンプでも踏み切りに力がなく、前のめり気味になってしまっていたために、着氷時にトウから早目に降りてきて回転不足になるという悪い癖が出てしまっていたため、ぱっと見はノーミスだったものの、スコアは133.79(64.23・69.56)、合計201.31。
バンクーバーの会場がかなり不満そうだったのはテレビでもわかりましたけど、スローVTRで確認すると、仕方ないという印象ですね…。
まあ今季は前の大会まではジャンプの質も高かったですし、たまたま調子を落としていたのでしょう。
全日本に合わせてくるのが宮原知子ですから、私はなんの心配もしていません!

人間というのは贅沢なもので、紀平さんの出現によって久々の優勝が視界に入ってくると、日本女子による複数表彰台も期待しちゃうんです。
そのためには坂本花織さんに頑張ってもらわねばならないわけですが、FSでは冒頭から代名詞のどでかい3F+3T、カウンターの2Aも凄い幅、そして課題の3Lzも今回は上手くはまった!上々の序盤戦!
これならばSP4位(3位とは0.42差)からの逆転も十分あり得る!
ステップでも繊細な滑りで『ピアノ・レッスン』の張り詰めた空気を醸し出し、その流れのままの3Sもいいジャンプ。
このまま流れに乗って表彰台だ!
…と思った刹那、後半の2A+3Tが乱れたのに無理に+2Tを付けにいっての転倒、やらなくてよかったような…。
ただ、そのあとすぐの3F+2Tは動揺を見せることなくしっかり決め、足上げのスピンからそのまま音楽の高鳴りに合わせてコレオへと繋ぎ、入りはややスピードに欠けるも、びしっとしたスパイラルポジションですぐに勢いを掴むと、そこから繋いだ3Loもお見事!
結びのスピンも一切乱れがありませんでしたし、体力と集中力は本当に凄い。
フィニッシュ後は顔を覆って悔しがった坂本さんですが、3連続のミスから崩れなかったのは本当に立派でした。
この大会で、彼女は自分が世界のトップレベルにいることをはっきり証明したと思います。
日本フィギュアの自慢です!
FSは141.45(74.45・68.00・減点1)、合計211.68。
表彰台にはなんとも微妙なスコア。あとは運を天にまかせるのみ。

SPノーミスで首位を獲れなかったのはシニアで初めてというアリーナ・ザギトワ。
基礎点で大きく上を行く紀平梨花という存在は、彼女にとっての初めての壁でしょう。
そういう相手に勝つためには、常にノーミスかつ出来のいい演技が求めらる。
そんな重圧のせいか、FSでスタート位置に立ったザギトワの表情はいつになく緊張しているように見えました。
それを振り払うかのように、自由な恋に生きる『カルメン』そのものの闊達な滑り出しから2Aで鮮やかに決めてスタートするも、続く3Lzでややバランスを乱し、迷ったような+1T。
このミスでなんともいえない雰囲気、まるで踊り子がスカートの裾を踏まれたかのよう。
しかし、五輪女王はその裾を自ら引き裂くようにして加速すると、タノ3S、スパイラルからの2Aを立て続けに決め、気持ちの強さを見せつけます。
踊ってからのキャメルスピン、捕縛されるマイムからそれを振りほどくような力強いコレオシークエンス、そして勝負がかかる後半の3Lz+3Loという高難度ジャンプも成功!
そこからすぐに繋いでの3F+2T+2Loはかなり必死、勢いをつけてからの3Fはカルメンの恋の炎のように燃えたぎったジャンプ。
そして身長が伸びて辛そうなビールマンも深いポジションで仕上げ、体力も笑顔も崩れないステップシークエンスはまさに五輪女王の意地。
最後のスピンも劇的に回り切り、勝利への執念を感じる演技でした。敵ながら天晴れ。
技術的にも表現的にも凝縮感のあるプログラムですが、集中力を切らさずに滑り切ったのは本当にお見事でした。
動きにまだまだ雑なところが残っているものの、気迫と勢いでそれを魅力に変えるのもザギトワならではですね。
FSは148.60(75.90・72.70)、合計226.53。
やはりコンビネーションジャンプのミスが手痛く、期待値をかなり下げてしまいました。
PCSも敵地バンクーバーのせいかSPに続いてあまり伸びません。
キスクラのザギトワはすでに敗者の表情。
彼女の想定する紀平梨花はこのスコアを軽く超えてゆくということです。
(長くなりましたので、優勝が決まる大興奮の後編に続きます。)
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2018GPF男子シングル、宇野昌磨のじれったさ

宇野昌磨といえば、かつては”天才少年”をして名を馳せ、シニアデビュー以降もその才能を伸ばし続け、いまでは世界トップレベルで活躍するスケーターですが、意外なことに国際タイトルにはとんと縁がありません。
羽生結弦という絶対王者が同時代に存在するとはいえ、その羽生結弦が怪我や体調不良で欠場した大会でも、金博洋やネイサン・チェンという実力では引けを取らない選手たちにことごとく負けてしまうのですから、宇野くん本人にも忸怩たる思いがあるはずです。
そんな状況のなか迎えた2018グランプリファイナル。
羽生結弦が怪我で不在ということもあって、宇野くんの敵はネイサン・チェンのみ。
実力伯仲(ジャンプの基礎点もだいたい同じ)の2人ですから、ミスが勝敗を分ける戦いになるのはいうまでもなく、勝利への執念が上回った方が表彰台の頂点に立つことでしょう。
クールでシャイな宇野くんが我武者羅に勝ちに行く姿が見たい!

…という優勝争いの前に、まずはそれと同じくらい予想がつきにくかった3位争いの結果から。
この大会は羽生結弦が欠場しただけではなく、金博洋やコリヤダといった実力者が不調からファイナル進出を逃したため、ボロノフ、ブレジナ、メッシング、チャという実力が拮抗した4人による大混戦。
SPでは誰もノーミスがおらず、ブレジナ89.21、チャ89.07、ボロノフ82.96、メッシング79.56という並びになって、本当に予想がつきにくい。
ひとつのミスが順位を分けかねないFSでは、まず一番滑走のボロノフが珍しく不安定な内容で合計226.44で早くも脱落。
チャは冒頭の4Tで転倒するも、その後は初出場とは思えぬ落ち着きでまとめて合計263.49というなかなかのスコア。
開催地バンクーバー市民の声援を受けて逆転表彰台を狙いたかったメッシングは、冒頭4Lzをこらえねがらも初成功させたものの、ジャンプのミスが相次いで合計236.05。敢闘精神だけは光りました。
チャを上回るためにはベストスコアの大幅更新が求められるブレジナでしたが、最大のポイントである冒頭の4Sで転倒してしまって夢は儚く散ってしまいます。しかし28歳のベテランは、それにめげずにその後の要素をしっかり揃え、ロックンロールのプログラムで大いに会場を沸かしたのですから、スケーターとしての意地は見せたといっていいでしょう。合計は255.26。
この結果、チャ・ジュンファンが見事に3位表彰台。おめでとう!
チャGPS2戦ともにミスが少ない演技で3位でしたし素晴らしい安定感。今季からの新ルールに適応していますね。

そしていよいよ両雄の激突。
宇野くんもネイサンもミスが多い選手ですから、この2人の戦いはいつも”ミスが少ない方”が勝ってきました。
SPでの出遅れなどは言語道断といっていいでしょう。
それは痛いほどわかっていたであろうネイサンですが、4Tで転倒してコンボにならないというクリティカルダメージ。
今季のSPは4Fが鬼門でしたけど、そこを乗り越えたと思ったら4Tに足元をすくわれました。
SPは92.99(TES48.78・PCS44.21・減点1)。
ミス以外の部分は良かったので本当にもったいない。

あとから滑る宇野昌磨にとって、このネイサンの結果はSPで点差を広げる絶好のチャンス。
ところが、4Fが回転不足気味(UR)のステップアウトという不穏なスタートをすると、4Tも制御しきれずに+2Tに。
ミスのお付き合いをしちゃいましたね…。
3Aはしっかり決め、ステップでも鋼がたわむような力強い動きを見せるもSPは91.67(46.88・44.79)。
本人は「体調不良」と語っていましたけど、気合が空回りしたような印象です。

しかし点差はほとんどなく、すべてはFSの出来次第。
順番はまたしてのネイサンが先で宇野くんがあと。
曲がなかなか鳴らない運営のミスに苦笑いでスタートしたネイサンでしたが、冒頭に鮮やかすぎる4F!
これで一気に流れに乗るかと思いましたが、不安そうな助走からの4Lzは回転不足気味の転倒、4Tでもステップアウト。
これは崩れるパターンか。
しかし昨季の五輪で悲劇のSPから歓喜のFSを演じた経験がネイサンを強くさせたのか、苦手の3Aを丁寧に降りると、ステップでは下半身の柔らかさをベースに音楽を上半身で上手く捉え、自分の流れを作り出します。
そして後半ボーナスパートでは4T+3T、3Lz+3T、3F+1Eu+3Sをきっちり揃える怪物ぶり。度肝を抜かれました。
終盤のコレオはあっさりしていたものの、自由と希望を目指す『Land of All』を強い気持ちで滑り切りましたね。
FSは189.45(101.79・88.64・減点1)、合計282.42。
今季のネイサンは課題のジャンプの質も向上し、表現面にもより磨きがかかってきて、プログラムにも見応えがあります。
日本勢にとっては怖い存在ですが、こういうライバルがいるから大会が面白い!

ネイサンのスコアはかなりのものですが、宇野昌磨ならばそれを超えるのはそう難しくはありません。
単純にいえば、2ミスのネイサンに対し、1ミスに抑えればいいだけです。
シルバーコレクターを返上してブレイクスルーだ!
ところがまたしても冒頭からトラブル。
4Sがダウングレード気味の着氷になるという目を疑うようなミス。
これで早くもミスが許されない状況のなか4Fを慎重に降りるも(回転ぎりぎりか)、4Tはややヒヤッとするも無事着氷。
それでもスピンは相変わらずの安定感、コレオではどっしりとした滑りで『月光』の荘厳さを醸し出し、中盤の鬼門4T+2Tも乗り越え、初優勝への道が見えてきた!
…そう思ったのも束の間、3Aはややバランスを崩しながらしっかり決めるも、3A+1Eu+3Fでお手つき、3S+3Tも着氷が乱れて嫌な感じ。
終盤のステップやスピンはこの悔しさをぶつけるようにパワフルで、演技全体も大胆でセクシーでしたが、クリーンなジャンプが少なかっただけに、出来栄え重視の新ルールでは厳しいか…。
予想通りFSは183.43(93.29・90.14)、合計275.10でネイサンに及ばず2位。
残念ながらまたしても銀メダルをコレクションに加えることになってしました。

それにしても本当にじれったい。
宇野くんには複数の負けパターンがあって、自分がダメで相手が良い、自分が良くても相手がそれ以上に良いというのならまだ納得できますけど、相手がミスってくれているのにそれにお付き合いする負けというのはじれったい。
私ももはや言葉がありせんけど、厄落としのために髪型でも変えたらどうでしょう?
思い切って短くしたら視界も開けるんじゃないでしょうか!
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2018GPF・女子SP、どんどん膨らむ紀平梨花への期待

グランプリファイナルの女子シングルといえば、かつては浅田真央が最多優勝タイ記録を作るなど、日本女子が大活躍していましたが、ここ最近はロシア女子が暴れまくり、日本女子は片隅で小さくなっている印象でした。
ロシア女子の技術の高さと華やかな演技に圧倒されてきたといっていいでしょう。
今季のGPFもロシア女子は五輪女王のザギトワを筆頭に、元世界女王トゥクタミシェワと新鋭サモドゥロワを擁する強烈な布陣。
昨季までなら名前を見ただけで我々日本の戦意は削がれたことでしょう。
しかしこの2018年は違う。
我々には紀平梨花がいる!
3Aを武器にGPS2連勝、しかもGPSでの今季最高点を叩きだしている紀平梨花ならばロシア女子の時代を終わらせることができる!

この期待は我々のものというだけではなく、世界のフィギュアシーンが持つ共通の認識であり、大会前から”ザギトワVS紀平”に注目が集まっていたのはいうまでもありません。
それが選手たちの心理に影響を与えたのか、SPの6分間練習もいつもよりピリピリしていたようにも見えました。
そんななか一番滑走となったソフィア・サモドゥロワですが、初のGPFとは思えぬ落ち着きぶりで、片手タノ3F+3T、3Lo、2Aをしっかり揃えるノーミスの内容。
『M:I-2』の悪女っぽい踊りも堂に入っていて大したものでした。
しかしスコアは68.24(TES37.12・PCS31.12)とあまり伸びず。”序列”6位ということでPCSが低い。
技術的にはスピンがやや不得手そうなのと、スケーティングの強化が必要でしょうね。

復活した3Aで今季台風の目となっているエリザベータトゥクタミシェワは、冒頭の3Aが慎重になって着氷が乱れ(回転不足UR)、3T+3Tもやや軸が狂って危なかったものの上手く着氷。
それでも2つのあっさりしたスピンで落ち着きを取り戻すと、後半は余裕綽々の3Lz!エクセレント!
ステップでは独特の手の動きと大見得を切った動きで『Assassin's Tango』を盛り上げ、ベテランらしく演技をまとめました。
久々のGPFで緊張していたんでしょうけど、ミスを最小限に抑えたのは成長の証ですね。
SPは70.65(38.25・32.40)。

そしていよいよ紀平梨花の登場。
まずは最大の関門であり最大の見せ場である3A。
この大会の趨勢を決めるといっていいジャンプに、観客とテレビ視聴者が固唾をのんで見守るなか、やや硬さはあったもののしっかり決めた!よっしゃああ!
続いては高品質の3F+3T、シットスピンを挟んでの後半、冒頭のタノ3Lzも軸が細くて切れ味が鋭い!
運動神経の良さとフィジカルの強さをまざまざと見せつけます。
コンビネーションスピンも的確に仕上げ、ステップでは長い腕を巧みに操って『月の光』の美しさを膨らませ、結びのビールマンもピンとした素晴らしいポジションを守り、純然たる世界を完成させました。
このノーミスの演技に紀平さんはかわいらしいガッツポーズ、笑顔もこぼれました。
紀平さんのプログラムはジャンプに目が行きがちですが、振り付けも本当に高難度で、それを演じ切っている彼女の才能と努力も忘れてはなりません。
彼女は正真正銘の”女王の器”です。
そうして今季初のSPノーミスで期待された得点は82.51(47.36・35.15)!
”ジャッジからの期待値込み”という感じもしますけど、我々もすぐに80点超えがしっくりくるようになると思います。
紀平梨花は進化を続ける選手です。

同門の後輩である紀平さんの好演を受けてリンクインした宮原知子。
いい流れに乗りたいところでしたけど、冒頭3Lzがつんのめって(UR)コンボにならないという思いがけないミス。
動揺したのかいつもよりキャメルが緩く、振り付けもやや不安定。
しかし2Aをさくっと決め、後半の3Loにも落ち着いて+2Tを付け、ステップでは正確な動きとエッジワークを取り戻し、最後も完成度の高いビールマンで〆たのはさすが。
ただ、冒頭のミスやそのリカバリーに気を取られたのか、全体的に集中力が欠けた演技になってしまったかもしれません。持ち味である演技の明確さがやや陰ってしまいました。
SPは67.52(32.58・34.94)。
紀平さんのハイスコアが影響したという見方も出来るかもしれませんが、宮原さんの背中の筋肉を見たら、そんなことで揺らぐはずがないと思います。

強烈な面々のなか存在感を発揮したい坂本花織は、どっしり伸びるスケートから3F+3丁寧に決め、2Aもよし。
深いエッジのステップでは『From my first moment』の叙情性をどこまでも広げて行きます。
後半もスパイラルで加速し、ターンを挟んでの3Loはお見事!
結びのスピンもよく集中していて美しいポジションでしたし、フィニッシュまで清らかないい滑りでした。
SPは70.23(37.23・33.00) 
スコアはもう少し出るかと思いましたけど、スピン・ステップのレベルの取りこぼしでしょうか。
FSに向けて確認したいですね。
内容はとても良かったので、自信を持って!

ノーミスでも紀平さんに届くのは難しいアリーナ・ザギトワですが、得意のFSに繋げるためにも取りこぼしのない演技をしたいところ。
ターンの連続でドラマティックに幕を開けた『オペラ座の怪人』、まずは女王の威厳の象徴であり、他者との差を見せつける3Lz+3Lo!セカンドを付けるのが上手い!
長い脚を巧みに折りたたむキャメル、窓を叩き割るマイムからのステップではフットワークの力強さをベースにした芸術的な演技。身長が伸びたことでより華やかになった印象です(屈みこむ癖も減りました)。
中盤の2Aがちょっとつんのめるも上手く凌ぎ、やや窮屈そうなビールマン、音楽の盛り上がりに合わせて加速してからのタノ3Fは鮮やかそのもの。
イナバウアーで繋いでからのコンビネーションスピンも足上げが滑らかで、最後は気持ちを天に捧げるようにして濃縮間のある物語のフィニッシュ。
演技全体の難度といい質といい、”さすが”という内容でした。
スコアは80点前後になるかと思われましたけど、77.93(42.10・35.83)と控え目。
大会の開催地が反ロシアのカナダ・バンクーバーということもあってか、PCSが辛かったですね。
まあロシア開催のときはその逆になるのですから仕方ないか。
それにしてもプレゼントのぬいぐるみデカすぎ。

こうして終わった女子SP、首位は堂々の紀平梨花。
2位のザギトワとは”4.58”という差がついたのも大きなアドバンテージです。
FSでは久しぶりに一番高いところの日の丸が見られるかも。
ドキドキワクワクしながら待つこととしましょう!

それにしても、SP後に記者から紀平のことばかりを聞かれるという精神攻撃を受けていたザギトワがちょっとかわいそう。
女王の宿命、追われるものの宿命とはいえ、まだシニア2年目の16歳なのに…。
五輪女王が翌シーズンも競技会に出てくれていることに、まずは感謝をしたいですよね。
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貴ノ岩を辞めさせてはならない

九州場所で優勝した貴景勝の横で満面の笑みを浮かべていた千賀ノ浦親方(隆三杉)が、それから10日ほどしか経っていない今日12月6日、憔悴しきった顔で記者の前で話をするなど誰が想像したでしょう。
千賀の浦親方は、貴乃花部屋の解散により、その弟子たちを全て引き取ったわけですが、資産を一括で引き受けるというのは、そのなかには”お宝”もあれば”わけあり”もあるということを思い知ったはずです。

この前日、その”わけあり”の貴ノ岩が付け人・貴大将に暴力を振るっていたことが発覚し(行為は4日夜)、相撲協会では危機管理委員会が立ちあがるなど大童。
協会では〈日馬富士事件〉をきっかけに、暴力追放へと舵を切り、力士への指導を徹底すると同時に第三者委員会で角界の暴力の実情を調査し、10月にも八角理事長が「暴力の根絶に全力で取り組みます」と発表したばかりでした。
貴ノ岩の行為は協会の方針を真向から否定するものといっていいでしょう。

しかも貴ノ岩は全ての発端となった日馬富士事件の”被害者”でもあるわけですから、「なぜお前が…」という声が角界のみならず世間一般からも聞こえてくるのは当前のことです。
貴ノ岩は日馬富士側の示談の要請に応じず、日馬富士を司直の手によって裁かせることを選びました。
ようするに”どのような理由があるにせよ暴力は許さない”という強い意志を示したわけです。
(※日馬富士が暴力を振るったのは、白鵬に素行を注意されていた貴ノ岩がスマホをいじっているのを見て、キレたためです。これは被害者・加害者共に認めた事実です。)

そんな貴ノ岩が”加害者”となってしまった今回、はたして相撲協会はどのような処分を下すのか。
そして貴ノ岩はどのような出処進退を選ぶのか。
「素手で顔面を数発殴られた」という貴大将の怪我の程度は明らかにされてはいませんが、顔に腫れがあるものの、入院はしていないとのことなので、そう重くはないのでしょう。
しかし、格闘家の素手というのは凶器と見なされますから、貴大将が警察に訴えれば事件になってもおかしくはありません。
貴ノ岩の論理ならば、千賀ノ浦親方が警察に届けるか(貴乃花親方はそうしました)、貴ノ岩本人が自ら出頭するということになるはずです。
しかし、いまのところそういう気配は一切ありません。
貴ノ岩の”暴力は許さない”という姿勢はいったいなんだったのでしょう?

今回の貴ノ岩の暴力は、付け人・貴大将が財布を忘れたことに腹を立てたからという、なんともありがちなミスが原因です。
それで顔が腫れるほど殴るというのは、その暴力が日常茶飯事だったことを想像させます。
なぜなら、貴乃花部屋時代の貴ノ岩には、後輩たちに暴力を振るったり、エアガンの的にしたりしたという疑惑があるからです。
これは貴乃花部屋の元所属力士が「貴乃花親方から角界を追い出された」として地位確認と報酬の支払いなどを相撲協会に求めた民事訴訟で、原告側が明らかにした内容です。
裁判は”和解”で終わったので証言の真偽のほどはわかりませんが、今回の貴ノ岩の行為により印象は”真”の方に傾いたといっていいでしょう。

むろんこれは貴ノ岩個人だけの問題にしていいものではありません。
他の部屋でも暴力事件が度々起こっているのですから、角界全体において暴力が常態化していると考えるのが自然です。
それなのに日馬富士事件のときの協会は、これを特異な案件として扱い、しかもトカゲの尻尾を切るようにして日馬富士を引退させるだけで問題を終わらせてしまいました。
その後の第三者委員会の聞き取り調査などは単なるポーズにすぎません。
その証拠に、現場からは一切暴力の証言が上がってこなかったではありませんか。

角界の暴力問題は、まずはそれが全体の問題だと認めなくては改革が進むはずもありません。
そのためにはまず貴ノ岩を辞めさせないことです。
貴ノ岩がいることで、世間は暴力問題を忘れないのです。
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