浅田真央サンクスツアーin軽井沢(後)

(続きです。)
中編で無良くんを”脇役”と書きましたが、このサンクスツアーの男性陣はみんなそんな感じで、『素敵なあなた』では蠱惑的な浅田真央に振り回される哀れな求愛者たちを演じ、『ポル・ウナ・カベサ』では女ボスと化した舞さんをリフトするなど、黒子に徹していた部分が多かったですね。
ただ、4人の男性陣はその仕事を完璧にこなし、ショーの完成度を高めるのに大いに貢献していたのは間違いありません。
ブーケのなかのカスミソウだったかもしれませんが、このショーに対する意気込みはその花言葉通りの”純粋さ”でしたね。

ショーもいよいよ終盤に入るなか、女性陣による『ジュピター』はとても大切な時間でした。
このエキシビションは3・11に対する浅田真央の祈りの舞。
当時は彼女自身の家族に辛いことがありましたから、その祈りがまた痛切で、ファンにとっても胸を打つプログラムです。
それを女性陣が厳かに舞う。
会場は少ししんみりした雰囲気になりました。

ただ、礼拝というのはしめやかなばかりではない!とばかりに始まったのが『リチュアルダンス』。
黒の衣装を身にまとった浅田真央と男性陣がおどろおどろしく登場すると、怪しくもクールな群舞に会場は騒然。
途中で赤の衣装の女性陣が乱入すると、男女対抗紅黒合戦の様相を呈し、やがてはそれが入り混じるようになってひとつの炎になったかのようになると場内は暗転。
そしてぱっと証明が戻ると、男性陣はおらず、女性陣の中央には黒から赤の衣装に変わった浅田真央の姿が!
そこからは華やかで情熱的な赤のダンス!
これには会場も大盛り上がり!
競技プログラムだった『リチュアルダンス』ですが、ほんとショー向きですねえ。

そしてこの曲がかかったとき、会場はショーの終わりを確信しました。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。浅田真央が伝説となったあの曲です。
このプログラムといえば、宇宙を思わせるような濃紺とブルーの衣装が印象的でしたけど、まず登場したのはそれを模した衣装を着た男性陣。
彼らが浅田さんの演技をアレンジしながら小彗星のようにリンクを回り、期待感がどんどん膨らんで行きます。
なかでもエルネスト・マルティネスくんなどは浅田さんの動きの癖までよく似せていました。かなりのファンですね。
そして曲が終盤のステップに近づいてくると、大彗星たる浅田真央の入場!
ぐんぐん加速し、まずは3Lo!…といきたいところでしたけど、これがパンク!
頭を抱える浅田真央、会場からは優しい笑い声と応援の声!
そこから気を取り直してのステップの激しさに観客はあの集大成のソチ五輪の興奮を思い出し、もちろんフィニッシュは浅田さんと男性陣が一緒になって拳を胸に当てながら頭を後ろに反らせるあのポーズ!
これには演者も会場も笑顔に包まれていました。
泣きそうになっているひともいましたね。

気がつくと1時間20分ほどが過ぎていて、楽しかったショーもフィナーレへ。
笑顔の演者たちが手を振りながらリンクを回り、それに向かって会場中のお客さんが手のひらを伸ばします。
それが紙吹雪のように閃いて、熱狂がさらに膨らんで行くようでした。
私の頭のなかで『I love you baby』が流れていたのは内緒です。

それにしても本当にあっという間でした。
一炊の夢とでもいいましょうか、演者たちが幕のなかに帰って行っても終わったことが信じられず、まだ続くんじゃないかと会場の手拍子は鳴りやみません。
私などはアンコールを求めるリズムになっていましたね。
すると、それに応えるように勢いよくリンクインしてきたのは浅田真央!
なにをするかと思ったら、3Loの跳び直し。よほど悔しかったのでしょう。
しかし、またしてもパンク!
本人もそうですけど、見守っていた出演陣もこれには苦笑い。
それでも浅田さんは諦めず、泣きのもう一回を所望すると、今度は決めた!やったああ!会場も大笑いで大盛り上がり!
頑固で諦めが悪い、これぞ浅田真央だ!

いやあ、終わった、本当に終わりです(私と相方の夏は早くも終わりました)。
今年から始まったサンクスツアーでしたから、どんな感じになるかと思いましたけど、とても満足度の高いショーでしたね。
普通のアイスショーに比べ、照明や演出はちょっと手作り感がありましたし、DJなんかもいないので進行も淡々としていましたから、華やかさには欠けていたかもしれません。
しかし、稀代のスケーターでありエンターテイナーである浅田真央がそこにいて、姉の舞さんと盟友の無良くんがしっかりそれを支え、浅田さんの考えに共鳴したスケーターたちが全力かつ真摯に役割をこなしてゆくことで、望外に完成度の高いショーになっていたと思います。
おそらく、通常のショーに比べて練習期間がかなり長いのではないでしょうか。
”チーム真央”の連携はワールドクラスでした。

そしてなんといっても浅田真央の演技です。
昨季に見えた”今後への迷い”はもうありません。
自ら振り付けを手掛けているせいもあるのか、その滑りはどこまでも自由闊達で、前を向くエネルギーに溢れていました。
浅田さんがいま心の底からスケートを楽しんでいることが、観ているこっちにも真っ直ぐ伝わってきます。
私も浅田さんの笑顔が本当に嬉しいです。幸せな気分です。

このサンクスツアーのHPには「浅田真央が全国に感謝を届けます」とありますが、来場するひとのほとんどは”ファンが浅田真央に感謝を伝える”ためのツアーだと勘違いしているかもしれません。
…でも、正しいんじゃないでしょうか。
絶対にそうだと思います。
観終ったいま、私の心は「ありがとう!」を叫んでいます。
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浅田真央サンクスツアーin軽井沢(中)

(続きです。)
「真央パートが多い」という噂通り、早着替えを終えた浅田さんが扮するはスティックとシルクハットの『踊るリッツの夜』。
身体だけではなく、表情もコロコロとよく動いて、それ観ているお客さんもつられて笑顔に。
これももまた浅田真央の世界。
佐藤信夫コーチは浅田真央を「感性くすぐる」と評していましたけど、彼女ほど自分の気持ちや思いを観客と共有できるスケーターを私は知りません。

『月の光』は舞さんを扇の要とする女性群舞。
互いにシンクロする部分だけではなく、交差するような場面もあって、息もよく合っていました。
合間のVTRでは浅田さんがこのサンクスツアーを立ち上げた動機を語ったり、メンバーのオーディションを行う様子が流されていましたけど、野辺山で事前合宿を行ったり、通常のアイスショーに比べて練習期間は随分長めのようでした。
浅田さんによるという群舞の振り付けもかなり凝っていたので、演者の方々も大変だったでしょうねえ。

そしてこの日、度肝を抜かれたのが浅田真央の『チェロスイート』。
ツイズルを始めとしたターンとスピンのみで構成されたこの斬新なエキシビションは、そのシンプルでパワフルな滑りがチェロの重低音と相まって凄まじい迫力でした。
乱暴な表現をすればヘビー級ボクサーの無呼吸ラッシュといっていいでしょう。
そのラッシュを浴びる観客が苦悶の表情ではなく、恍惚とした表情を浮かべているところがスイート。
それにしてもボディバランスに一糸の乱れもなく、最後までパワーが落ちないどころか加速してゆくようなのですから、浅田真央というスケーターはいったどれほどの排気量があるのでしょう。
他の出演者もよく滑り込んでいるのがわかりましたけど、やっぱり最も滑り込んでいたのは浅田さんでしたね。

このツアーは浅田真央が過去に使ったプログラムをアレンジしているので、浅田さんの現役時代をファンとともに振り返るという意味合いもあるわけですけど、そのなかでも私は『仮面舞踏会』を聞くと本当に胸が苦しくなるんです。
この日は男女の群舞の舞踏会だったのでどうにかなりましたけど、あそこに浅田さんがひとりで割って入ってきてステップを踏んだら、抑えが利かなかったかもしれません。
『仮面舞踏会』は華やかな舞踏会と、その裏側で繰り広げられる陰謀を対比させて描いた戯曲ですけど、あの頃の浅田真央は陰謀の泥沼に咲く一輪の蓮の花のようでした。

そんなことを思い出していると、目の前には大人になった浅田真央が。
白い着物は羽のように袖が長く、裾が”お引きずり”のようになっていて、帯は前結びの一夜妻スタイル。
”蝶”の模様があしらわれていることでもわかるようにもちろんこれは『蝶々夫人』。
海軍士官役はエルネスト・マルティネスくん。西洋人(スペイン人)の彼を雇用した意味はここにあった!
それにしても浅田さんの蝶々夫人の美しいこと。
指先やつま先まで感情がのった演技、か細い運命の糸の上をなぞるがごとく繊細な滑り。
それでいて抑え切れない気持ちが溢れだしたときの勢いは狭いリンクを押し広げるかのよう。
ひらひらと舞うような衣装も素敵でしたね。
あの波乱万丈の現役生活を経て、浅田真央は美しく強い大人の女性になったのです。

そしてひとりリンクに入ってきた無良崇人の衣装は赤と黒。
曲はもちろん『鐘』。
これもまた我々の心を大きく揺さぶる曲です。
無良くんは彼らしいどっしりとした滑りで”大きな胎動”を表現し、代名詞のでっかい3A、3A+2Tも決めて喝采を浴びていました。
この『鐘』を浅田真央以外が滑るならば無良くんしかいませんね。素晴らしいキャスティングでした。

このサンクスツアーは、これまでにないコンセプトのアイスショーだけに、日本のスケート界のなかには快く思っていないひともいるかもしれません。
浅田さんもキャストや練習場所の確保で苦労したんじゃないでしょうか。
そんななか、トップスケーターだった無良くんが参加してくれたことで、お客さんに向けた”ショーの格”は確実に担保されたのですから、無良くんの存在は本当に大きかったと思います。
ただ、今後コーチ修行をしながらプロスケーターとしても活動するという無良くんにしたら、”快く思っていないひとたちの目”はかなり気になったに違いありません。
それでもなお浅田真央に協力した無良くんの男気に私は深い感銘を受けました。
ツアーでは脇役に徹して目立つ場面も少ない無良くんですけど、それがまた最高にカッコよかったです。
無良崇人は漢だぜ!
(予想通り長くなってしまったので後編に続きます。)
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浅田真央サンクスツアーin軽井沢(前)

昨2017年4月、その波乱万丈の現役生活を終えた浅田真央。
そこから夏の『THE ICE』を終え、「一度スケートから離れてみよう」とも考えていたという彼女ですが、第2の人生として選んだのはやはり「恋人でもあり、家族でもあり、運命」というスケートでした。
そして発表された具体的な活動が、「今まで応援してくださった方々への感謝を込めて」全国を回る〈浅田真央サンクスツアー〉。
基本コンセプトとしては、やや小さなアイスリンクを会場に、観客との距離が近く、初めてスケートを観るひとも安心できる価格設定のアイスショーとのことです。
感謝を込めたふれ合いの場ということなのでしょう。ショーの(数日)前にはスケート教室も開催されるそうです。

このサンクスショーの企画が春に発表されたとき、私と相方は大変興味を引かれましたが、それと同時に今年の『THE ICE』は開催されない、されても浅田さんは参加しないという確信を持ちましたから、”どこで真央ちゃんに会えばいいんだ!?”という大問題に直面したわけです。
(※THE ICE2018は浅田さん抜きで開催されます。)
そこからすぐに今年の10ヶ所のひとつに地元の長野県が入っていることがわかり、”県民枠”なるチケットの優先獲得権があることもあって、なんとかチケットを入手できましたが、本当に運がよかったとしかいいようがありません。

そして昨日6月2日(土曜)の昼、爽やかな高原の風を感じながら、〈軽井沢風越公園アイスアリーナ〉に行ってきました。
98年の長野五輪でカーリング競技が行われたリンクです。
初めて足を踏み入れた我々は五輪マークにちょっと興奮しましたが、場内をあらためて見渡すと、座席数はリンク内の臨時席も含め目算で1500ほどしかなく、よくチケットが取れたなと、ちょっとゾッとしました…。
駐車場の車のナンバーを見ると長野県のそれが多かったので、県民枠の多さに助けられたかもしれませんね。

1000円(これも安心価格)で購入したパンフレットに載っている出演スケーターは”浅田真央”を筆頭に、姉の舞さん、同級生で盟友の無良崇人くん、ここまでは誰もが知っていますけど、そこからの林渚さん、橋本誠也くん、川原星くん、ガンスフ・マラル・エレデンさん、エルネスト・マルティネスくん、山本まりさん、河内理紗さんは、私などはほとんど存じ上げない方ばかりでした。
出演者たちのSNSなどによれば、浅田さんに共感し、オーディションを経て集った”チーム真央”とのことです。
失礼を承知で書けば、無名スケーターの面々ということになるかもしれませんが、3月からチーム練習を始めていたとのことで、かなり長い期間になりますから、ずいぶん気合の入ったチームですし、期待が高まります。
(※現役はエレデンさん、山本さん、河内さんの3人だけみたいです。)

開演の12時が近づくと、始まりを告げる舞さんのアナウンス(たぶん録音)が流れ、場内が暗転すると、会場は息を呑んだように静まり返ります。
その暗がりのなか、リンクの上にひとりの影がぼんやりと浮かび、音楽とともに証明が照らされると、そこにはイスラムの女性が着るブルカのような衣装のスケーターが。
顔はもちろん体つきもよくわかりませんが、滑り始めるとすぐにみんなが気づく。
その身体の動かし方の癖、スケートの質、間違いなく浅田真央だ!
待ってましたと会場が沸く!
そして踊りが加速するとともにブルカがはがされると、なかから出てきたのはゴールドのスパンコールが眩しい衣装と、それ以上に眩しい笑顔の浅田真央!
地鳴りのような大歓声!

”ふれ合い”のための狭いリンクでは、観客の目の前を『スマイル』の浅田真央が通り過ぎてゆくだけではなく、最前列のロマンスグレーの男性などは握手をしてもらう幸運にも巡り合え、会場は早くも興奮の坩堝。
私と相方はリンク席ではなかったので本気で嫉妬。
そこから同じような衣装を着た出演者たちが次々とリンクインし、華やかなショーの始まりです!
(※記憶を頼りに書いていますので、プログラムの順番など、間違いがあってもご容赦を。)

このサンクスツアーは浅田さんが過去に使った競技プログラムやエキシビションを本人がアレンジするだけではなく、舞さんが『シェヘラザード』を演じたり、『月の光』を舞さんが中心となった女性陣の群舞にしたりと、まさに”浅田真央を堪能するショー”。
しかし、出演陣の個性が埋没しているわけではなく、ひとりひとりがなくてはならないピースとなっていましたし、なにより出演陣がみな浅田真央に惚れ込み、このツアーに参加できている喜びに溢れているのが印象的でした。

なかでも舞さんの気合の入り方は半端ではなく、コンディションは例年の『THE ICE』以上に仕上がっていて、『シェヘラザード』はうっとりするほど綺麗でしたし、群舞でのリーダーシップも素晴らしかったです。
スパイラルの軸も安定、2Aもしっかり跳んでいたのも本気度の証左でしたね。
現役時代の舞さんはリンクの上でどこかおどおどしていましたけど、そこから色んな経験を積んできたのか、いまは演技も堂々としていて、彼女が本当に才能のあるスケーターだということがよくわかります
このショーは浅田さんのプログラムの合間を群舞とVTRで繋ぐ形式なので、舞さんは頼りになる縁の下の力持ちでしたし、偉大な妹を助ける偉大な姉御でした。
(めちゃくちゃ長くなりそうなので後編に続きます。中編になるかも…。)
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2018世界フィギュア男子FS 3枠は嬉しいが興行として心配になる

宇野昌磨の右足甲痛による調整不足が明らかとなり、”3枠取り”に暗雲がたれこめた2018世界フィギュア男子シングル。
SPが終わって宇野くん5位、友野くん11位、田中くん14位というという並びになっていますけど、FSではそこから3人がひとつでも順位を伸ばす執念が必要となっています。
日本開催の来季に向けて自分自信の未来を切り開け!

そういう気迫は田中刑事くんにもあったと思うんですけど、4Sのステップアウトで入ったFSは後半冒頭の4T予定が3Tになり、コンビネーション予定の3Fでステップアウト(ザヤックが気になったのでしょう)するというじれったい内容。本人も悔しさをかみ殺したような顔をしていました。
FSは156.49(TES78.71・PCS77.78)、合計236.66。3枠取りにはまったく貢献できないスコア…。
大きな大会になればなるほど結果が出せない刑事くんですが、このままでは第3の男の座も安泰ではないと思いますから、来季は根性入れて頑張って欲しいものです。

こうして刑事くんのスコアで3枠取りが風前の灯になった日本男子ですが、それを救ったのは世界フィギュア初出場の友野一希くん(第3グループ)。
冒頭の4Sにターンが入って+2Tになったものの、次の4Sと3A+3Tをしっかり決めると、19歳の若さ溢れる『ウエストサイドストーリー』のステップ、後半も集中した3A+2T+2Loで始まると、そこからのジャンプは全て成功!
これで会場のボルテージが一気に上がると、それを追い風にするように終盤の演技もより生き生きとし、最後のスピンは疲れでやや緩んだものの、本人も興奮が覚めやらないようなフィニッシュ!
情熱が汗とともに煌めくような素晴らしい演技でした、ブラヴォ!
”友野一希”の名前がフィギュアの世界に轟いた瞬間です。日本にとってもニューヒーローの誕生ですね。
FSは173.50(94.40・79.10)でPB、合計256.11もPB!
残り10選手で暫定首位なので11位以上が確定。”3枠”の可能性が見えてきました。

その後、D・ヴァシリエフスやM・ジーといった有力選手がスコアを伸ばせず、A・ビシェンコはいくつかミスがあったものの合計258.28となり、第3グループ(全4G)が終わって友野くんは暫定2位で8位以上が確定。友野くんが宇野昌磨にいいバトンを繋いでくれました。

最終グループでは第一滑走のキーガン・メッシングにジャンプにミスが相次いで合計252.30。
友野くんの7位以上が確定し、3枠取りのために宇野は6位以内でいいという楽な状況。
そうして始まった宇野昌磨の『トゥーランドット』。
SPでは右足甲痛からジャンプ難度を下げたことで気持ちが上がらなかったという宇野くんは、FSでは五輪と同じ構成を選択。
しかし、それが”凶”と出たのか、4Loも4Fも回転不足気味の転倒、3Aはオーバーターンという阿鼻叫喚のスタート。
目を覆いたくなるとはこのことです。これで優勝はおろか表彰台もかなり難しくなりました…。
それでも宇野くんの集中力は一切揺らがず、安定したスピン ステップではゾーンに入ったかのように音楽と溶け込んで、フィギュアスケーターとしての矜持を見せつけます。
ただ、気持ちだけでジャンプがどうにかなるわけもなく、後半も3Aで着氷を乱し、4Tでは転倒。
私も気絶しそうになりました。ボクシングならタオルを投げられてもおかしくありません。
しかし、そこから奇跡が起こるんです。
誰もが再度の転倒を予想するなか、4T+2Tを決めると、続く3A+1Lo+3Fは力強い飛翔、SPでミスをした3S+3Tもばっちり決めた!奇跡としかいいようがない!
ダウンから朦朧と立ち上がったボクサーが本能のままに動いて相手をKOするかのようでした。
そこから執念のコレオと気迫のコンビネーションスピンでフィニッシュした宇野くんですが、終盤の盛り返しで演技全体の印象も悪くないものになりましたね。
本当にドラマチックな4分30秒でした。観ているこっちもどっと疲れました…。
FSは179.51(94.65・88.86)、合計273.77。ジャッジの心も打ったのか思ったよりスコアも出ましたね。
この時点で暫定首位、5位以上が確定なので友野くんと合わせて”12位以上”が確定!
これで日本男子は3枠を死守しました!
不調のなか、宇野くんはエースとしての使命を果たしましたね、本当に立派でした。これで激闘のシーズンも実質終わりましたし、ゆっくり休んで欲しいものです。
ウーノ!ショーマ!

宇野くんがスコアを伸ばせなかったことで表彰台争いは残りの4選手に絞られたといっていい状況だったわけですが、ここからは想像を絶する展開でした。
まずは金博洋が4Lzの転倒、抜けた2Sでスタートするとその後もミスが相次いで、まさかの合計5転倒。
悪夢の海で溺れるかのようでした。
FSは127.56(63.34・73.22・減点9)、合計223.41という信じられないスコア。どこか怪我でもあったんでしょうか…。

ミハイル・コリヤダも出だしから4Lz転倒、4Tお手つき、後半も4Tで転倒してコンビネーションにならない痛恨ミス。
芸術的なスケートや身のこなしで持ち味を発揮していたものの、母国ロシアで批判されたという五輪と似たような内容でした…。
FSは172.24(86.12・88.12・減点1)、合計273.32。
いまは4回転ジャンプの成功率が低すぎます。それ以外は素晴らしい魅力があるのですから本当にもったいない。

そして、なんとこの時点で宇野くんのメダルが確定。わからないものです。
しかもSPで輝きを見せたヴィンセント・ゾウがFSでは3転倒に加え、こらえたジャンプや回転不足などのミスも積み重なって138.46(66。24・76.22・減点4)、合計235.24。
着氷で突っ立つようなジャンプが多く、回転不足になりがちですし、これだと怪我も多くなってしまいます(レイノルズと似ています)。まだ17歳なのですから、いまのうちにジャンプの改造をした方がいいかもしれませんね。
我々ファンとしても、この素晴らしい才能が大きく花開くのを見たいものです。

ゾウには申し訳ないのですが、これで宇野くんの銀メダル以上が確定。友野くんもFSのスモールメダルをゲット。ほんとラッキーです(コリヤダもメダル確定。五輪のときよりスコアが低いのに今回は褒められるんでしょうかね)。
それにしても女子同様に男子シングルも大失敗をする選手が多く、稀に見る酷い大会になってしまいましたけど、五輪シーズンの世界フィギュアの在り方について考えさせられますよね。
女子で銀メダルを獲った樋口さんも、男子で煌めいた友野くんも五輪に出ていませんしね…

そして最終滑走はSP首位のネイサン・チェン。
優勝するために必要なFSのスコアは172点強。余程のことがない限りこれを下回ることはないといっていいでしょう。
観客やテレビ視聴者もネイサンの優勝を疑わないひとはいなかったはずです。
そこでみんなが求めるのは、ある程度まとまった演技で、総崩れの男子シングルを綺麗に締めくくってくれること。
ネイサンはそれに応えるかのように出だしから恐ろしく丁寧な4Lz、4F+2T、4F。
いいジャンプとか、繋ぎからとかを度外視し、”とにかく降りる”という気持ちが溢れていました。
それはステップやスピンにも表れていて、”とにかくレベルだけは取る”という慎重さ。
後半は4Tを成功するも、4T+3Tふらり、4Sステップアウトで嫌な流れになるも、苦手の3Aを降りると、低空ながら3F+1Lo+3Sも決めて流れを引き戻したのは立派。
こうして圧倒的技術点で優勝を確定させたあと、疲れも見えるなか、終盤のコレオとスピンも丁寧にこなして、大歓声のなか新王者の誕生。
優勝を狙いに行きすぎて演技としてはつまらないものでしたけど、ネイサンがスコアメイクを意識しながらひとつひとつのジャンプを乗り越えて行く様子は、手に汗握るものがありました。
これはこれで見事でしたし、4種6クワドは人間の限界に迫るものでした。賞賛するしかありませんね。
FSは219.46(127.62・91.84)、合計321.40はPBで見事な世界初制覇!おめでとう!
(王者へのご褒美かもしれませんが、PCS高すぎ。)
これでネイサン時代の到来、…といいたいところですけど、”他選手と比べ、よりよい演技をしなければならない”という接戦のなかでこういうまとまった内容になるかどうかという部分ではまだまだ未知数です。今回も”ミスをしない”というだけの演技でしたしね。

まあ、いずれにしろ、来季はこのネイサンと日本男子の対決が軸になることは間違いありません。
我々はネイサンの成長をワクワク恐れながら、羽生結弦と宇野昌磨がそれにどう打ち勝つのか楽しみにしようではありませんか!
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2018世界フィギュア女子FS 言葉にならない大波乱

2018世界フィギュア女子シングルはSPが終わり、日本女子は宮原さんが3位、樋口さんが8位につけ、3枠取り(合計13位以内)に向けて視界は良好。
五輪後ということで有力選手が幾人か欠場しているので、2人が普段通りFSを演じればまず大丈夫でしょう。
しかもFSが始まると第3グループ(全4G)のトゥルシンバエワ(186.85)やテネル(199.89)、長洲未来さん(187.52)といったライバル勢がスコアを伸ばし切れず、かなり有利な状況に。

そうして第3G最終滑走で登場した樋口新葉さんは、ここで暫定トップなら3枠がほぼ決まるという展開のなか、綺麗な3Sでスタート。
ここはこれまで2Aでしたけど、前半終わりの3Sで失敗が相次いだので順番を入れ替えたのでしょう。
これが功を奏したのか続く3Lz+3Tと2Aも確実に成功させると、『007』のドラマチックな雰囲気を作って後半へと繋ぎ、勝負を賭ける3Lz+3Tも鮮やかに決めた!
その後の3Lo、2A+2T+2Lo、3Fもしっかり着氷した樋口さんはやや疲れが見えたものの、必死でキャメルスピンを回り、そのテンションを持続したまま入ったステップでもスピードの上がらない下半身を上半身で引っ張る気迫のワカボンド!
これで会場も沸き上がり、大きな手拍子に押されてのコレオ、レイバックスピンでフィニッシュした樋口さんは会心の演技に両手を天高く突き上げるガッツポーズ!
昨年の枠を逃した不甲斐ない演技や五輪を逃した全日本を思い出したのか、樋口さんは感情が溢れ出して女泣き。
よくやりました、もう大舞台に弱いとはいわせません!
FSは145.01(74.72・70.29)、 合計210.90。
ジャッジも樋口さんの涙に心打たれたのか思ったより高得点。これで日本開催の女子3枠はいただいた!
今季の樋口さんは持ち味だったスケーティングスピードやジャンプの大きさは体型変化のせいか目立つことはなくなっているもの、もうひとつの武器である明確な演技には磨きがかかった印象です。これは日々の練習の賜物でしょう。
来季もそれを持続させ、4年後のリベンジに繋げることを楽しみにしています。
ブラヴォ、新葉!

そうしていよいよメダルを争う最終G、まず登場した五輪銅メダリストのケイトリン・オズモンドはゴムまりのような3F+3Tでスタートするも、2A+3Tで着氷を乱し、慎重な助走からの3Lz(エッジ疑問)というまずまずの序盤戦。
後半はかつては苦手だったもののこのところは安定していて、大きな3Loで入ったジャンプパートは全て成功、ステップやコレオでも持ち前の華やかさを全面に押し出し、ほぼまとまった演技で本人もほっとしたような表情を浮かべていました。
五輪後で調子は落ちていたと思いますけど、演技全体の流れを作れる選手なので観客をしっかり満足させたのではないでしょうか。さすがですね。
FSは150.50(75.35・75.15)、合計223.23。
このスコアだとメダルは確定的。宮原さんはPBでも届きません…。

ケイトリンの内容が良かったので最終Gはそこそこまとまった演技が観られるかと思われたものの、ここからが想像を絶する波乱の展開。
マリア・ソツコワは全体的にスピードがなく、回転不足のジャンプが多く、後半の3Lzで転倒すると終盤はヘロヘロになってしまっての124.81(58.03・67.78・減点1)、合計196.61。
ジャッジの判定が厳しかったものの、それ以上に調子が悪かったですね。
キスクラもどんよりしていて来季が不安です。フィジカルを鍛え抜いて欲しいものです。

昨季の世界フィギュア銅メダル、ガブリエル・デールマンはでっかい3T+3Tで驚かせた矢先の2Lz、続く3Fでも着氷が乱れると、後半もジャンプを制御できずに125.11(57.12・67.99)、合計196.72。
五輪15位の屈辱を晴らすはずが、悔しさを重ねる結果となってしまいました…。

こうして会場ががっかりな空気に包まれるなか、宮原知子さんは『蝶々夫人』の軽やかなピアノに乗っての3Loでスタートするも3Lz+3Tではバランスが崩れ、3Fも高さが出ません。
それでも安定したスピンと機巧人形のようなステップで流れを作ったのはさすがだったんですけど、後半冒頭の3Lzが大きく詰まって、無理やり3連続に繋げたもののかなりヒヤっとしました。
そこから鉄板の2A+3Tはばっちり決めるも、次が2Sになってしまっての転倒というまさかの失敗。3Lzで踏ん張ったのが影響したか…。
コレオのあとの2Aは意地で決めてくれましたけどジャンプの調子が酷く落ちていましたね。五輪の疲れでしょうか、大会後もメディア対応とかで忙しかったでしょうしね。
キスクラで宮原さんが厳しい表情を見せるなか出てきたスコアは135.72(64.20・72.52)、合計210.08。
樋口さんにも負けて、あと2選手を残して暫定3位。
メダルは絶望的で宮原さんも悔しかったでしょうけど、それでも日本女子の3枠は決定!ミッションコンプリートです!
宮原さんもエースとしてよくやってくれました。状態が悪くてもある程度の結果を残したのはさすがです。
今季は怪我明けながらここまで頑張ってきましたから、オフはゆっくり休んで欲しいですね。

さて、いよいよ残す選手はSP2位のザギトワと1位のコストナー。
優勝争いはSPで大きなリードを作ったこの2人に絞られるなか、開催国イタリアでは地元のコストナーがいかにして五輪女王ザギトワに勝つかが議論の中心だったようですが、その解は「ザギトワは調整不足みたいだからチャンスがあるかも」という他力本願。
しかし、連勝が続くアリーナ・ザギトワはそれをあざ笑うかのような華やかなステップシークエンスで『ドンキ・ホーテ』を舞い始め、会場は一気に女王を賞賛する雰囲気に。
GPF・五輪・世界フィギュアの三冠を達成すれば女子では初めてのことになりますから、その歴史的快挙を観たいというお客さんも多かったことでしょう。
そんな期待が高まった後半冒頭はプログラムの最初の関門である3Lzからのコンビネーションでしたけど、頭のジャンプで転んでしまうと、次の2A+3Tも回転がまったく足りない転倒(DG)、3F+2T+2Loは根性で決めるも、リカバリーに挑んだ3Lz+3Loで回転不足(UR)という悪夢のような展開。会場が一気に冷え込むのがテレビでもよくわかりました。
それでも美しく可憐な新女王が鎮痛な面持ちで立ち上がると会場からは背中を押すような暖かい拍手。
ザギトワはそれに応えるかのように気持ちの3S、3Fはお見事、2Aも確実に降りて意地を見せました。
最後のコンビネーションスピンから悔し涙が溢れるような表情をしていましたけど私も胸が痛かったです。
FSは128.21(62.34・69.87・減点4)、合計207.72でまさかの表彰台落ち。
五輪で金メダルを獲ったあとは世界中のメディア取材にあっていましたし、母国ロシアでも一躍スターになりましたから大忙しだったはずです。とても練習する暇などなかったことでしょう。とりわけ大統領選挙でプーチン氏の応援に参加させられていたのは同情を禁じ得ません。
1ヶ月前の歓喜の女王が悲劇のヒロインになるなんて想像もしたくありませんでした。
しかし、これはザギトワという選手にドラマチックな物語を作ったともいえます。
来季、彼女がこの悲嘆から力強く立ち上がる姿を多くのひとが待っています。
ここからが”ザギトワ時代”のスタートです。

こうしてザギトワの涙が会場を覆ってしまったかのような雰囲気のなか、最終滑走でカロリーナ・コストナーが登場したわけですが、かなりやりにくかったはずです。
しかもザギトワの失敗で”優勝”もかなり見えてきましたから、その緊張もあったのか、出だしから珍しく硬い滑りで、冒頭もいきなりの2Lz。
それでも巧みな身のこなしから繋いだ3F+2T、3F、3Loを確実に揃えて流れを引き寄せると、流れるようなスピン、たゆたうようなスケートで『牧神の午後』の世界を作っての後半冒頭の3Tも決めた!
これで優勝への流れが出来たかに思われたものの、続く2Aからの3連続予定が1Aになる痛すぎるミス、それを引きずったのか3Sで転倒してしまうと(コンボならず)、気落ちとともにスケーティングスピードもがっつり減速し、萎むようなコレオ、スタミナ切れが明らかなステップシークエンス。
最後のスピンも止まりそうなほどで、目も当てられない演技となってしまいました。
難しい空気のなか、コストナーも自分をコントロールすることができなくなってしまったようですね。31歳のベテランでもこういうことがあるのですからフィギュアスケートは難しいものです。
FSは128.61(54.71・74.90)、合計208.88。
ザギトワに続いてコストナーもまさかの台落ち。
会場のなんともいえない空気、コストナーの涙…。
こんなの見たくなかった…。

こうしてオズモンドが初優勝、日本女子は3枠取りどころか樋口さんが2位、宮原さんが3位に輝くという華々しい結果。
もちろん日本の我々としては嬉しい限りなのですが、上位勢が総崩れ、優勝候補は同情したくなるような大失敗なのですから、なかなか大声では喜べません。
ここまで波乱の世界フィギュアというのはいままでなかったのではないでしょうか。五輪シーズンの世界フィギュアの在り方が議論されても不思議ではないくらいです。五輪に出ていない樋口さんが銀メダルなのもその議論の材料になることでしょう。

まあ、しかし、日本の2人はたとえ上位陣がいつもの演技をしていても3枠をもぎとるだけの演技をしたのは確かです。
そこは大いに評価されるべきです。
ザギトワとコストナーの涙が印象に残る大会でしたけど、我々は大和撫子たちの粘り強さだけは忘れてはなりません。
2人ともありがとう、そして、おめでとう!
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