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世界フィギュア2023、接戦の女子シングル(後)

(続きです。)
表彰台を狙える実力を蓄えて6年ぶりに世界フィギュアに戻ってきた三原舞依は、ファンの期待に応えてSPを3位で終え、いよいよ勝負のFSです。
暫定1位のヘンドリクス(210.42)を超えるために必要なスコアは約137点ですが、今季の課題である後半のジャンプさえある程度整えることができれば、そう高いハードルではありません。
そのためにもまずは前半をしっかり揃えて行こう!
という感じでスタートした三原さんは、2A+3T、3Lzと連続で成功させ、ターンからの3Sもクリーン、3Fはちょっとバランスが悪かったものの大きなミスでなかったのでまあよし。
緊張感のある前半を乗り切って、私も手に汗をかいていました。
しかし大事なのは後半です。ここで炎のような『恋は魔術師』を見せて欲しい。強い気持ちで行くしかない!
そういう状況だったはずですが、2A+3Tを丁寧に降りた三原さんは続く3Lzでタイミングが狂ったような転倒。慎重になりすぎていたかもしれません。
さらに続く3Loからの3連続予定も頭が2Loになる痛恨のミス。本人もさぞがっかりしたしたことでしょう。私は茫然…。
ただ、終盤のステップとコレオは気持ちを奮い立たせてよく滑っていましたし、最後のスピンもまったく乱れがなかったのも、三原舞依の意地を見た思いです。
FSは132.24(PCS68.49)、トータル205.70で暫定3位。メダルはかなり厳しい。
残念ながら、久しぶりの世界フィギュアに色んな思いや欲が交錯したのか、全体的に攻められませんでしたね。
私もファンのひとりとして本当にじれったかったですし、三原さん本人も本当に悔しかったと思います。
でも、前を向くしかありません。それがフィギュアスケートです。

この世界フィギュアでは初めて女子3枠態勢で臨んだ韓国女子ですが、近年はジュニアでの活躍も目覚ましく、この躍進は本物といっていいでしょう。
飛び抜けた選手はいないものの、このFSでもキム・チェヨン(SP12位)がノーミスの演技で長らく前提1位の座を保っていたように、
安定感のある好選手が揃っていて、育成の秘密を知りたいくらいです。
そんなことを考えていたら、SP2位のイ・ヘインがほぼミスなしのFSで大満足のガッツポーズ。
地味なんですけど、こつこつと積み上げて行く演技には妙なドラマティックさがありましたし、世界フィギュアという大舞台で実力を出し尽くした姿はとても印象的でした。
ジャッジもそれで心を動かされたのか、FSは147.32(PCS71.79)、トータル220.94という思わぬハイスコア(四大陸のときのノーミスFSは141.71)。
この時点で暫定1位だったのでイ・ヘインは銀メダル以上が確定!
韓国女子は久々の世界のメダルなので、来季からはイ・ヘインがエース扱いされそうですね。

そしてついに最終滑走。
伏兵イ・ヘインが目の前でハイスコアを叩き出したことで、さしもの坂本花織も平常心ではいられなかったかもしれませんが、そのタイミングで中野園子コーチに「行ってこい!」と背中をパンパンと叩いてくれるのですから本当にありがたい。
恩師の思いを背中に受けた坂本さんは、ふーっと息を吐いてリンクインすると、緊張をパワーに転換したのか、2A、3Lz、3Sと出だしから彼女らしいビッグジャンプ。
安定のスピンと余裕の3F+2Tのあとのステップでは感情豊かに肉体を弾ませる『Elastic Heart』。
この曲は坂本さんによく似あう。強さとは堅いものではなく、しなやかなものなのです。
だからこそ砕けない、へこんでもまた立ち上がることができる!
そんな気持ちで跳んだはずの後半冒頭のコンビネーションでしたが、頭の3F予定がまさかの1Fに。
しかしそこに+3Tを鮮やかにつけたのはまさに『Elastic Heart』。結果的にもこれが大きかった。
スピンを挟んでの2A+3T+2Tはミスを引きずらずに豪快に決め、叫ぶようなコレオでさいたまスーパーアリーナを沸かせると、終盤とは思えぬ力強い3Lo!これぞ坂本花織!
最後のスピンはすべてを絞りつくすようで、観ているこっちも息が苦しくなりそうでしたけど、よく戦い抜いた4分間でした。

ただ、坂本さん本人はもの凄く悔しそう。顔を覆って泣いているようでもありました。
ノーミスじゃなかったのと、どうやら4年前の世界フィギュア、場所も同じさいたまアリーナで、後半の3Fが1Fになったのをどうしてもリベンジしたかったみたいです。
こういう負けん気が彼女を女王にしたんでしょうね。

そして運命のスコアは、FS145.37(PCS73.91)、トータル224.61!
SPのリードもあってなんとか逃げ切ってくれました!
世界フィギュア連覇達成!これは日本女子初ですから快挙といっていいでしょう!
今季は序盤から心身のコンディションがなかなか整わなかったようですが、よくここまで持ち直しました。
氷上での戦いだけではなく、自分の内面での戦いも制した坂本花織に最大限の賞賛を送りたいと思います。
本当によくやってくれました、ありがとう、おめでとう!
坂本花織はレジェンドだ!
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世界フィギュア2023、接戦の女子シングル(前)

ウクライナ戦争を理由にロシア女子が排除されているこの2022-23のフィギュアスケート女子シングルは、トップオブトップのなかに3Aや4回転を入れている選手はおらず、ジャンプ構成の基礎点がほぼ変わらないことから、”完成度と出来栄え”の勝負になっています。
そのため、昨季の世界選手権女王であり、世界ランキング1位の坂本花織であっても、ジャンプでひとつミスをすれば優勝が危うくなり、2つミスをすれば表彰台からも滑り落ちるかもしれないわけです。実際今季はそんな感じでした。
これは競技会としてはとてもエキサイティングですが、選手自身やそれを応援するファンからしたら、本当に胃が痛くなるような戦いです。

そしてついにシーズン締めくくりの世界フィギュア2023です。会場はさいたまスーパーアリーナ。
女子シングルは坂本さんが優勝候補筆頭であることは確かですが、そのすぐ下には昨季の世界選手権2位のルナ・ヘンドリクス、昨季の世界ジュニア女王のイザボー・レヴィト、今季の四大陸女王であるイ・ヘイン、そして坂本さんの姉弟子であり今季のGPF女王である三原舞依がいるのですから、結果の予想は本当に難しいものがありました。
5人ともこの大会に向けて調子を上げていましたし、本番での集中力とちょっとした運が勝敗を分けるといったところでしょう。

そうなると我々ファンは日本女子を信じて応援するのみだったわけですが、大事なSPでは坂本さんが79.24(PCS36.43)で1位、イ・ヘインが73.62(34.11)、三原さんが73.46(34.38)で3位、レヴィトが73.03(33.93)、ヘンドリクスが71.94(35.06)で5位という予想通りの面々が上位を占めました。
ヘンドリクス以外はノーミスだったのでレベルの高いSPだったといっていいでしょう。
もっとも、ディフェンディング女王の坂本さんが素晴らしい演技で2位以下に大きな差をつけたため、優勝争いの方は割と見えてきました。対抗馬一番手のヘンドリクスに転倒があったのが大きかったです。
この2人のギリギリの戦いが観たかったというフィギュアファンにとってはちょっと残念なSPでした。

しかし表彰台争いの方はまったくわかりません。
ミスをした選手から脱落して行くという椅子取りゲームです。
そして今日3月24日の女子FS、有力選手のなかでまず最初に登場したルナ・ヘンドリクスは、SPでミスをした3Lz+3Tを豪快に決めてスタートすると、前半はすべてのジャンプを揃え、鮮やかなコレオでさいたまアリーナの観客を魅了します。
ここでハイスコアを叩きだせば後続にプレッシャーを与えられますし、実力者のヘンドリクスにすればこの順番は悪くありません。
ところが、勝負の後半、コンビネーションにしたかった3Lzでまさかの転倒(リピート減点も)。
次の3F+2T+2Loは落ち着いて仕上げ、3Sにリカバリーの+2Tをつけ、終盤も勢いが落ちなかったのはさすがですけど、3Lzのところは本当に痛かった…。
FSは138.48(PCS70.28)、トータル210.42。この時点で暫定1位。
210点はキープしたので表彰台争いにはなんとか踏みとどまりましたね。

続くイザボー・レヴィットにすれば210というターゲットスコアはさして遠いものではありませんでしたが、冒頭の3Lzで転倒してしまっていきなり視界不良に。やりたかった+3Loはやはり高難度です。
それでもそこからのジャンプは安定していて、後半も2A、絶対に決めたい3Lzオイラー3Sも見事に成功、最後の3F+2Tもしっかり降りて、存分に巻き返したといっていいでしょう。
終盤のステップの技術も高く、スピンも美しくまとめ、その確かな実力を世界のフィギュアファンにアピールしました。
ただ、スコアメイキングでいえば、コンビネーションジャンプをどこかでリカバリーすべきでした。
具体的には後半冒頭の単独2Aのところ。
あそこで+3Tをつける度胸と余裕が欲しかったです。
それができなかったため、FSは134.62(PCS68.84)に留まり、トータル207.65。
暫定2位という表示に本人もキスクラでがっかりしていましたけど、まだ16歳(3月3日生まれ)ですし、初の世界フィギュアでの悔しさをバネに飛躍して欲しいものです。
才能があって、挑戦的で、本当にいい選手ですしね。
しかも可愛らしい!
(長くなったので後編に続きます。)
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りくりゅうペアが世界一!

この2022-23シーズンの”りくりゅう”三浦璃来&木原龍一は、ここまでGPS2連勝でファイナルを初制覇、全日本はロストバゲージによる不運な欠場だったものの、四大陸も初制覇という全勝街道まっしぐらでした。
しかし璃来さんが夏に負った肩の怪我など、2人ともフィジカルコンディションは決して万全ではなく、演技もどこかアクセルを全開で踏み込めないようなところがあったといっていいでしょう。

それがこの3月22日の世界フィギュア2023のSPではついに全開でしたね。テレビで観ていても馬力とオーラを感じました。
思いきりのいい滑りに2人の美しいスケートと奇跡のユニゾンがさらに際立ち、ぐいぐい引き込まれるような『You’ll Never Walk Alone』は演技内容も技術もパーフェクトに近いものがあったんじゃないでしょうか。
さいたまアリーナのお客さんも総立ちでしたね。
スコアもPBを更新する80.72(PCS36.06)!よっしゃああ!

ライバルで昨季のチャンピオンでもあるクニエリム&フレイジャー(アメリカ)はジャンプの転倒があって74.64(PCS34.58)に留まりましたから、私はここでりくりゅうの戴冠を確信しました。
捕らぬ狸といわれようが、気持ちはもう前のめりでした。
そういう日本のファンも多かったと思いますし、期待をするなという方が難しかったと思います。

ところが、今日23日のFSはそういう状況がりくりゅうの重圧になったのか、最終滑走でリンクインした2人の表情は明らかに硬いものがありました。
直前に演技したアレクサ&フレイジャーが根性の演技でトータル217.48まで伸ばしていたのも不気味だったかもしれません。
逃げ切るために必要なFSのスコアは約137点で、りくりゅうの今季のベストが138.63ですから、痺れる展開です。
観客もそれがわかっていたでしょうし、会場全体が息を呑んでいるような雰囲気だったんじゃないでしょうか
それがりくりゅうをさらに硬くしそう…。

ただ、2人の状態のよさは本物で、曲が始まるとサイドバイサイドの3Tと3T+2T+2Aを綺麗に決める好スタート。
これで2人の表情も少しほころんだように見えました。
ところが中盤の3S予定のところで璃来さんが2Sになってしまう悔しいミス。
次のスピンのコンビネーションもちょっとおかしくなってしまい、重い雰囲気。

それでもしっとりコレオでリズムを整え、その流れからのスロー3Lzはバッチリ成功!
これで会場も沸きましたし、その声援も力になる!とばかりに、りくりゅうの滑同調性も高まってきて、リフトもスムースに仕上げ、龍一くんもよっしゃあという表情。
これでビクトリーロードに乗った!
次の抱え込みからのスロー3Loが決まれば、そのまま行ける!

そして着氷した…かに見えたそのとき璃来さんのエッジが引っかかったようになってまさかの転倒。
テレビの音声では会場の悲鳴も聞こえました。
ここのジャンプはちょっと慎重になりすぎたかもしれませんが、おそらくまだ大丈夫。
デススパイラルとリフトをある程度まとめれば大丈夫、なはず。

会場も視聴者もそんなふうに祈っていたであろうなか、デススパイラルは若干短めになり、最後のリフトも力を振り絞った感じになりましたけど2人はよくやりました。優勝候補筆頭で地元開催という重圧のなか、2日間よく戦い抜いたと思います。
演技後の璃来さんは「自分のせいで負けた…」というがっかりした顔をしていましたけど、龍一くんとがブルーノ・マルコットコーチがそれをしっかり慰めていたように、私たちファンも璃来さんには拍手しかありません。

そして運命のキス&クライ。
りくりゅうの2人が不安いっぱいで見守るモニターで表示されたスコアはFS141.44(PCS72.19)、トータル222.16!
龍一くんは大喜び、璃来さんはよくわかっていない様子でしたけど、優勝です!
なんとか逃げ切りました!やったああ!
おめでとう初優勝!りくりゅうが世界一だ!しかも年間グランドスラムのおまけつき!

2人は本当に凄いことをしました。
ペアスケートの美しさと楽しさを体現するだけではなく、最高の結果をももぎ取ったのです!
私もそこそこ長くフィギュアスケートを応援してきましたけど、日本のペアが世界選手権を制するなんて夢のようです。
りくりゅうには心からの敬意を、この2人を回り逢わせてくれたフィギュアの神様には心からの感謝を捧げたいと思います。

りくりゅう最高!
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2023四大陸フィギュアは初物尽くし

アメリカのコロラドスプリングスといえば、世界フィギュアスケート殿堂や素晴らしいトレーニング施設、大きなスケートクラブがあって、フィギュアの聖地といっても過言ではない都市ですが、ここで大会が開かれることはめったにありません。
理由は”1800m”もある標高です。
日本でいうと蔵王山や八海山、磐梯山などの山頂がだいたいその高さですから、そこで激しい運動をするのは身体に負担が大きく、高地トレーニングという意味なら有用でしょうけど、試技が評価される大会において選手たちが常の力を発揮できないのであれば、それはやはり問題です。
ちなみにコロラドスプリングスで行われた2012年の四大陸フィギュアでは、選手たちがみな這う這うの体となり、キスクラでは酸素ボンベを使っていました。
そんなわけですから、もう二度とコロラドスプリングスでの大会はないと思っていたら、今年2023年、シドニーが返上したこともあって、久々に四大陸の会場として国際大会に復帰したんです。

そうしていざ大会が始まると、ペアSPとリズムダンスで転倒を含めた大きなミスが続出して暗雲が垂れ込めました。
ペアはミスが出やすい種目ですが、アイスダンスは振れ幅の少ない種目ですから異常事態であることは確かです。
〈りくりゅう〉も〈かなだい〉も転倒があったので、日本のファンからしても不安的中といったところだったでしょう。

しかしそんななかだからこそ、リズムダンスのあとの女子FSでは千葉百音さんがほぼノーミスの演技でSP7位(67.28)からの逆転3位表彰台(20498)に食い込んだのは本当に立派でした。
終盤もまったく勢いが衰えませんでしたし、フィニッシュしてからも会場のお客さんにお辞儀をして回る余力が残っていたのもびっくりです。千葉さんはフィギュアファンからは”ちょっと地味”というイメージを持たれているようですが、”スタミナお化け”という個性が付きましたね。
来季シニアデビュー予定の千葉さんはすでに技術も表現もある程度のレベルでまとまっていますし、そこに四大陸3位の実績が加わったのですから未来は明るいです!
兄弟子の羽生結弦と同じ初出場での表彰台、おめでとう!
(渡辺倫果さんは5位。吉田陽菜さんは8位。)

この千葉さんの表彰台が日本チームに勇気と流れをもたらしたのか、次の日のペアFSでは三浦璃来・木原龍一がミスを最小限に抑える演技でSP1位(71.19)に続いてFSでも1位(137.05)をもぎとっての完全優勝。
2人のユニゾンにはいつもながら惚れ惚れさせられましたし、演技後にリンクにへたりこんでいる姿勢までユニゾンしていたのも素敵でした。
しかもこの優勝は”日本ペアとして初めてのチャンピオンシップ制覇”という快挙なのですから、またしてもりくりゅうは歴史を進めました。本当に偉大な2人です。「ブラヴォ!」としかいいようがありません。

今季のりくりゅうは自信に満ち溢れていて、それが演技への確信に繋がっているのか、スピード感やユニゾンの大胆さが際立ち、王者の風格すら漂い始めています。
今季はシーズン前のアイスショーで璃来さんが肩を脱臼したり、木原くんの方も慢性的な怪我を抱えているのでフィジカルコンディションが心配されましたが、シーズンが深まるにつれてそれも上がってきているようですし、世界選手権が大いに楽しみです。
ワクワクです!

初優勝といえば、同じ日の男子FSでも三浦佳生くんがSP1位(91.90)の座を、攻めるように守ってのFS1位(189.63)で完全優勝。
佐藤駿くんとキーガン・メッシングが凄い演技でハイスコアを叩き出したあとの最終滑走だったのに、そのプレッシャーを跳ね除けてのほぼノーミスのFSというところもカッコよかったです。
特にジャンプのキレ味はナイフのようで、技術審判が4T+3Tを3回転と見間違えるほどだったのも彼の伝説として長らく語り継がれることでしょう。
今季は4Tと4Sが安定したことと、演技の流れをコントロールできるようになってきたのが躍進の理由だと思いますし、今大会で”280点の壁”を突破したことによって(281.53)、トップオブトップの仲間入りです。
次は世界ジュニアで去年の忘れ物を持って帰ってきてください!おめでとう!
(佐藤駿くんは3位、島田高志郎くんは11位。)

こんな具合に日本チームとしてはいい流れができあがり、最終日のフリーダンスにも期待が集まったものの、村元哉中&髙橋大輔は終盤のステップで高橋が尻もちをつくと、最後のリフトでも堪えきれずに崩れてしまって2ディダクション。
序盤から中盤にかけては演技が煌めいていてPBが出そうな勢いだったのに、やはり低酸素の影響が大きかったのでしょう。演技後に髙橋が茫然としているのを見て私もショックでした。
FSは95.65、トータルスコアも160.24に留まり、総合順位は9位。
髙橋は12年の四大陸にも出場している唯一の選手であり、フィギュア界のレジェンドのひとりですから、コロラドスプリングスでの大会の是非について言及して欲しいものです。
現在のフィギュアスケートは膨大な運動量が求められるので標高1800mは選手にとって危険すぎます。

直前のかなだいの無念を見て気が引き締まったであろう”チームココ”小松原美里&尊は細かいミスがありながらも2人らしい粘り強い演技を貫き、スタミナが心配される終盤も滑りの勢いが落ちず、充実の内容。
尊(ティム・コレト)は実家がコロラドスプリングスにあって、声援も大きかったようなのでそれも力になったのかもしれません。
FSはSBの98.99、トータル165.71での7位はこれまでの四大陸で最高成績でした。
それにしてもコロラドスプリングスでのSBって野茂英雄のクアーズフィールドでのNHNRのような驚きですね。

こうして標高との戦いとなった2023四大陸フィギュアですが、日本チーム全体としては好結果を残しましたし、演技が振るわなかった選手も前向きなコメントを発しているので、まずまずいい大会だったと思います。
なにより誰も体調不良になっていませんしね(イザボー・レヴィットなどはFSを棄権)。
ただ、やはりコロラドスプリングスはトレーニングをするところであって、試合をするところではありません。
やるなら全米選手権だけにしてください。
と思っていたら、コロラドスプリングスで最後に全米選手権をやったのは1976年…。
アメリカ人!
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待ちに待った『BEYOND』長野公演

今日2023年1月23日土曜、浅田真央一座が『BEYOND』という新公演を引っ提げて久しぶりに長野市にやってきてくれました。
今年は全中フィギュアも通常開催のようですし、ようやく我々の下に氷の喜びが戻ってきたわけです。
そしてその『BEYOND』は『サンクスツアー』となにがどう違うのか、私も相方と一緒にワクワクしながら足を運んだわけですけど、いい意味での想定外のエンターテイメント空間がそこにありました。
まずリンクの背景、能でいうところの鏡板、歌舞伎でいうところの松羽目のところに巨大なLEDヴィジョンを据えられ、そこに映し出される動画が演目によって千変万化し、またそれが照明にもなっていて、メリハリの利いた暗転を生じさせ、まるで万華鏡のなかにいるような感覚なのです。
もちろん音響の方も巧みにコントロールされていて、臨場感とゴージャス感は過去のアイスショーにはないものであり、座り慣れているはずのビッグハットが完全なる異空間になっていました。

もちろん、ショー自体もその最新機器に負けないパワーに溢れていたことはいうまでもありません。
私は浅田さんの現役時代を振り返るような『サンクスツアー』も大好きだったんですけど、『BEYOND』はそれと比べるとショー全体がより”プロっぽくなった”という印象です。
それは舞台装置や演出面もそうですし、スケーターたちの練磨の度合いや仕事への意識といったもののせいかもしれません。
浅田さん以外のスケーターのパートも多く、責任感が増したというのもあるでしょう。

浅田さんのいないパートでは今井遥さんがサブリーダーとして引っ張っていましたし、小山渚紗さん・松田悠良さん・今原実丘さん・小林レオニー百音さんの女性陣もひとりひとりが輝いていて、堂々たる演技でした。
そして、ショーだと女性陣をサポートする形になることの多い男性陣は、田村岳斗さん・柴田嶺さん・山本恭廉さん・マルティネス・エルネストさんの4人が過労死レベルで奮闘していて、私も心の底から賞賛を送りたい思いでした。
群舞もペアプログラムも3回転ジャンプも男性陣の見せ場でしたし、特にペア選手の柴田くんの存在はとっても大きかった!
(午前中の公演では浅田さんも3Loを決めてくれました。)

そんななか私が意外だったのは、浅田さんの完全単独パートが『バラード』と『カプリース』のみで、あとはペアと群舞だったことです。
しかも浅田さんがまったく出ていない演目が3分の1ほどもあり、”浅田真央”を金看板としながらも、ショー自体の内容とクオリティで観客を楽しませたいという意思が強く感じられました。
浅田さんももう32歳(「年齢は数字」)ですから出ずっぱりというわけにも行かないでしょうし、こういう形になるのも必然というわけです。
ただ、この『BEYOND』では振り付けのほとんどを浅田さんが担当していて、使われている曲も浅田さんが現役で滑ったものですから、そこには浅田真央の幻影が常に寄り添っていて、我々も彼女の不在を感じることはありません。
(加えて衣装や構成も浅田さんが手掛けているというのですからこのひとの隠れた才能には驚かされます。)

もちろんショースケーターとしての浅田真央も極上です。
競技的な技術よりも完成度やエスプリで観客を楽しませるプロフェッショナルな滑りのなかに、ときおり現役時代を彷彿とさせる気迫を織り交ぜ、我々ファンの胸の奥の熾火に息を吹きかけるのですからたまったものではありません。
また、柴田くんとのペアプログラム『シェヘラザード』では艶っぽい前半と、サスペンス感満載の後半を舞台劇のように演じ、新たなる浅田真央を観ることもできたのですから、本当に満足です。
この『シェヘラザード』は浅田さんこだわりのプログラムらしく、よく作り込まれていて、絶品というより他ありません。
観客のみならず出演者たちからの評判もいいとのことですが、納得です。

ちなみに、この『シェヘラザード』がそうであるように、他のプログラムも現役時代のそれとはまったくニュアンスが違うものでした。
エキシビションではなく、ショープログラムとして浅田さんが新たに解釈して、自分なりに作り上げた作品群といっていいでしょう。
実は私は「珍しきが花」という世阿弥の言葉に従って、アイスショーに行く際は事前情報を出来るだけ遮断して臨んでいるのですが、この方向性は本当に意外でした。
『シェヘラザード』や『白鳥の湖』をやるというのは小耳に挟んでいたので、現役の頃の匂いがするプログラムが観られるかと楽しみにしていた部分はあったものの、想定外のペア『シェヘラザード』も氷上バレエ風『白鳥の湖』も、いい意味で期待を裏切られたというか、予期せぬ面白さでした。

つまりはこれが『BEYOND』なのでしょう。
いままでの自分を超えた浅田真央の世界です。
そしてこれはおそらく浅田さんが見据える日本のアイスショーの未来なのだと思います。
日本のアイスショーはエキシビションの集合体という形式がほとんどですが、欧米ではショープログラムで彩った公演も珍しくありませんし、浅田さんは日本でもそれを定着させようと目論んでいるのではないかと私は見ています。
これは日本に新たな文化を根付かせる壮大な計画といっていいでしょうし、それを天真爛漫な笑顔で実現させようとしている浅田さんに私は圧倒されています。
それは巨大LEDヴィジョンの何倍もの迫力です。

私は浅田さんが現役の頃、どこまでもついて行く、と密かに心に誓いましたし、引退後の彼女に対してもそれはまったく変わりませんが、この『BEYOND』を観て、その気持ちがいっそう強くなりました。
やっぱりフィギュアスケートと浅田真央は最高です。
なにもかも乗り越えて行く彼女において行かれないように、私自身もわけのわからないやる気が沸いてきています。
『BEYOND』はそういうパワーをくれる公演です。
まだまだ続くので、全国のみなさん、チケットはお早めに!
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事前情報を仕入れない私は出演者もうろ覚えで、いい演技をしている男子を観ながら、隣の相方に「あの”田村岳斗似”の若い子いいね」と囁いたら、相方から「田村くん本人だよ」といわれて危うく変な声を出しそうになりました。ネット記事で田村くんが加わったというのを見ていたのを失念していました。43歳すごすぎます。演技もチャレンジ精神も日本一カッコいい43歳です。
「ヤマト―!」って叫ぶお客さんいましたけど、その気持ち、わかります。
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かつしき

Author:かつしき
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