2018四大陸フィギュア男子シングル 天才を信じるしかない

女子シングルでもそうだったのですが、男子シングルもまたこの2018四大陸選手権(台湾)にはアメリカとカナダの五輪代表選手は出場しません。
つまり宇野昌磨とネイサン・チェンの対決はないのです。
これは観る側としてはかなりガッカリなのですが、ここで忘れてはならないのが宇野くんのジュニア時代からのライバル金博洋。
今季は怪我もあって内容が悪かった金博洋ですが、GPFを欠場してじっくりコンディションを整えたせいか「好調」という事前情報も。
というわけで、ライバル対決も楽しみな男子シングルをざっくりと振り返ってみたいと思います。

悲願の五輪シーズンだというのに絶不調でそれを逃した無良崇人くんは、この四大陸でもSPから4Tが2Tに抜けて76.66(TES37.01・PCS39.65)の10位。
FSでも冒頭が2Tになるも、次の4Tを根性で食らいつき着氷。
しかし後半に細かいミスがあり、演技全体にも精彩を欠いて148.75(71.05・77.70)、合計225.41の12位。
五輪を逃した後の大会ということで気持ちのもってゆき方が難しかったのでしょう…。来季はどうするんですかね…。

いまの男子シングルは”真・四回転時代”と呼ばれていますが(羽生結弦命名)、時代を無視して自分のペースで四回転に挑み続けてきたのがケヴィン・レイノルズ(カナダ)。
そんなレイノルズもカナダ選手権で敗れ、五輪出場を逃したことでついに引退を表明。この台湾で行われる四大陸が最後のリンクとなりました。
四大陸といえば、レイノルズは忘れもしない13年大阪大会の王者ですから、ここは有終の美を飾って欲しいところでしたけど、SPでは4Tが乱れてコンボを付けられない痛恨のミスで74.65(36.05・38.60)の13位。
巻き返しを図りたいFSでは4Sと4Tを着氷すると、4T+3T+3Loという大技で会場をどよめかせ、後半も3Aを跳んで、4T+2Tを成功!
そうして大きなミスなく滑り終えたケヴィンはなんともいえない清々しい表情をしていました。
四回転へのこだわりとフィギュア愛情に溢れる演技は、いつまでもフィギュアファンの記憶に留まることでしょう。
おつかれさまでした、また日本に来てくださいね!
外交官志望とのことですからカナダ大使館にぜひ!

全日本2位で見事五輪代表を勝ち取った田中刑事くんは、SPはノーミスで90.68(48.60・42.08)のPB!
SP3位での折り返しとなり、メダルへの期待も高まるFSでしたけど、3S(4S予定)、こらえる4S、2A(3A予定)という立ち上がりで、その期待も一瞬にして雲散霧消。
振り付けやステップの動きも硬かったので緊張していたのかもしれませんね…。
(田中くんはお母さんが台湾出身で、今大会は会場にいらしていたそうです。)
ただ、後半は4Tと3A+2T+2Loを決めるなどジャンプはノーミス。この開き直りが前半から欲しかった。
FSは169.63(87.33・82.30)、合計260.31はなんとPB。
順位の方はジェイソン・ブラウンに抜かれての4位でしたけど、五輪に向けて手ごたえは十分に掴めたことでしょう。
あとは「転んでもいい」という気合で4Sを跳ぶだけです。
世界の”KG”になれ!

今季ノーミスのSPが1度しかない宇野昌磨の鬼門は”4T+3T”。
五輪に向けて決めておきたいところでしたけど、今回も悔しい4T+2Tとなり、SPは100.49(54.92・45.57)。
今季いくどか見られるステップの取りこぼしも、今回はレベル2だったのももったいなかったです。
それでもSPはぎりぎり1位で、”四大陸初制覇”に向けて視界が開けたFSだったのですが、4Loの後の4Fが腹ばいになるショッキングな転倒。
しかし涼しい顔で立ち上がり3Loと決め、正確なスピン、振り付けに力強さが増したステップシークエンスで流れを完全に取り戻し、後半は3A、課題の4T+2T、4Tをしっかり決め、終盤の3A+1Lo+3Fと3S+3Tでプログラムを盛り上げ、その勢いのままのコレオと疲れ知らずのコンビネーションスピンでフィニッシュ!
前半の失敗を忘れさせる素晴らしいリカバリーに本人も納得の表情。
今季はここまで色々とジャンプ構成をいじってきた宇野くんですが、今回のものを”五輪仕様”と定め、1ミスでこなせたのは十分な自信となることでしょう。4回転を1本減らしたおかげで演技全体の完成度や力強さも増していたと思います。
今季は有力選手がみんなあまり調子が良くないので、リスクを冒さず、安定と完成度を求めるのは正しい選択でしょうね。
そうして200点越えが期待されたFSですが、197.45(106.67・91.78・減点1)、合計297.94。
PCSが思ったより渋かったのと、プロトコルで確認すると成功したかに見えた4Loに回転不足(UR)が付いていてこれが大きく足を引っ張っていました。
五輪だと命取りになるので突き詰めていって欲しいですね。

表情も明るく動きも軽快だった金博洋(中国)は見事な4Lz+3Tを決めるなどSPは100.17(57.59・42.58)で僅差の2位。GPFと中国選手権をお休みして休養十分って感じ。
FSでも大迫力の4Lzでスタートすると、4Sと3A+1Lo+3Sもしっかり決め、笑顔が眩しいコレオで前半を締めくくると、後半も4T+2T、4T、3Aと連続で成功!
この大会は悪いときの身体が折れるような着氷もなく、ジャンプの質も上がっていました。
3Lzにオーバーターンが入りましたけど、大きなミスなく滑り終えた金博洋は吠えるようなガッツポーズ。
完全復調ですね!
FSは200.78(115.34・85.44)、合計300.95で宇野くんを逆転し、歓喜の初優勝!
ここは我々もシャッポを脱ぐしかありません。お見事でした(宇野くんのシルバーコレクターぶりがなんとも…)。
それにしても本当に調子が良さそうですね。滑りに勢いがあって、それが振り付けやステップの拙さを覆い隠し、演技全体も煌めいていました。
スピンやステップの技術に弱点のある選手ですから、トータルスコアが310まで伸びることはないと思いますけど、五輪は勢いが左右することも多いですから、ちょっと面白い存在になってきましたね。周りが不調なだけに十分チャンスがあると思います。

こうして金博洋が優勝、宇野くんは2位、ジェイソンが3位、刑事くんは4位という結果に終わった2018四大陸選手権ですが、日本勢はSPが1位と3位だっただけにFSで順位を落としたのは本当に残念でした。
特にライバルに敗れた宇野くんはさぞかし悔しがっている…かと思いきや、試合後は「後半に立て直せたのが嬉しい」と語り、晴れやかな笑顔。
この”天才”ならではの感性が五輪で吉と出るのか、それとも…。
我々は、普通のひとができないことを平然とやってのける天才を信じるしかありません。
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2018四大陸フィギュア女子シングル 天晴れ日本女子!

この2018四大陸フィギュア(台湾)は五輪を目前に控えていることもあって、その前哨戦になる…といいたいところですが、国内選手権が終わったばかりのアメリカとカナダは五輪代表選手を派遣していないので、なんとも寂しい大会です。
昨日(1月27日)FSが行われた女子シングルでも本来ならば日本女子たちもオズモンドやデールマンと競い合って、五輪に向けた立ち位置を知りたいところでしたが、それが出来なくて本当に残念。
しかし、北米勢がいないことで”四大陸女王”が取りやすくなったこともまた事実ですから、ここはきっちり箔をつけて五輪に臨もうではありませんか。
そんなわけで、”表層台独占”というノルマを課された撫子たちの奮闘を振り返ってみたいと思います。

全日本2位で五輪出場を勝ち取った”シンデレラガール”坂本花織さんには、一夜にして大きな注目と期待が集まりましたから、本人も環境の変化に戸惑ったと思うんです。
私などはそれが演技にどう影響するかちょっと心配していたんですけど、SPでは伸びやかな滑りと大胆なジャンプを見せつけてノーミスの71.34(39.72・31.62)はPB!
プログラムの完成度も上がっていましたし、この1ヶ月いい練習がつめていたようですね!
そしてSP2位からのFSでも”初の四大陸”という舞台に動じることなく次々と大きなジャンプを決め、繋ぎやスピン・ステップも丁寧にこなして、いい集中力を見せていました。
坂本さんは終盤までジャンプにパワーがあるので(2A+3T+2Tは圧巻)、演技の高潮したまま終わりますから印象もいいですね。この『アメリ』での課題であるパントマイムも少しずつよくなってきているように思います。
パーフェクトといいたくなるような会心の演技に、テレビを観ていた私もスタンディングオベーション、ブラヴォ!
FSは142.87(74.78・68.09)でPB、合計21421ももちろんPB!
これでGPSアメリカ大会→全日本→四大陸と連続でノーミスの演技。
これはもう”確固たる実力”といっていいでしょう。しかも五輪代表として注目が集まるなかで好演だけにメンタルの強さも際立っています。
SBもオズモンドやソツコワという銅メダル候補とほぼ同じくらいになりましたし、五輪が楽しみになってきましたね!

今季はSP『リベルタンゴ』が噛み合わず、五輪選考にも敗れてしまった三原麻依さんですが、この四大陸ではそのSPをノーミスでまとめて69.84(37.92・31.92)の3位。
メイクと髪型を変えて気分を一新させたのもよかったかもしれませんね。
”四大陸連覇”を賭けて挑んだFSでも技術は本当に安定していて、ジャンプも大きなミスなく跳び(後半の3LzだけUR)、品があって美しい『ガブリエルのオーボエ』でした。
FSは140.73(72.60・68.13)、合計210.57。
三原さんにとっての今季最後の大会を、内容のいい演技で締めくくり、SBが出せたのも来季へのいい弾みになるでしょうね。
今季は”新エース”という期待を背負うなかで、SPで演技の幅を広げようとするなどしてきたものの、
なかなか結果に繋がらず苦しいシーズンでしたけど、結果が重要な五輪シーズンにも関わらず、同時に自分自身の成長を目指していた志の高さは立派なものでした。
これまでやってこなかった『リベルタンゴ』のようなプログラムに挑戦したことも、”ファンに新しいものを提供する”という表現者としての意地と責任のようなものを感じました。
来季の課題としては、演技全体の力強さを増すことと、身のこなしとフットワークのキレでしょうね。
いまの女子フィギュアはフィジカルがより重視されてきているので、オフシーズンのトレーニングが大事になりそうです。
来季も大いに期待しています!

全日本女王としてこの四大陸も制覇して五輪に挑みたい宮原知子ですが、SPでは3Lzに回転不足(UR)が付いて、本人も悔し気な71.74(37.34・34.40)。
SPは1位ですが、五輪を想定すればここはノーミスで乗り切りたかったのでしょうね。
しかし、FSでも3Lzが不調で、前半の3Lz+3TはトウループにUR、後半の3連続は頭の3LzにUR。
そして3Sでバランスを崩して転倒するという珍しいミスもあって、FSは135.28(66.52・69.76)、合計207。02。
ステップやスピンは相変わらず精緻でしたし、振り付けの完成度も高く、スタミナも問題ありませんでしたけど、ジャンプの調子がいまひとつでしたね。
この結果、宮原さんは坂本さんと三原さんに逆転されての3位に終わり、試合後の共同会見では「台湾にきてから(調子が上がらず)自信が持てなかった」と記者たちの前で大粒の涙をこぼしていました。
濱田美栄コーチによると、昨季痛めた左股関節が炎症を起こしていたのに加え、左足の甲にも痛みがあったようです。
今季は怪我明けのシーズンですから四大陸は辞退するという選択肢もあったでしょうけど、おそらく試合勘の方を優先したのだと思います。
結果は悔しいものでしたけど、”状態が悪いなかでの演技”というシミュレーションが出来たと割り切るしかありません。
五輪までの2週間は休養と練習のバランスを取って、いいコンディションで臨んで欲しいですね。

こうして終わった女子シングルですが、優勝は坂本さん、おめでとう!
このシンデレラガールの勢いは止まりませんね。エネルギッシュな演技と明るいキスクラは観ているこっちも元気になります。
そして2位は三原さん、3位に宮原さんとなり、日本女子は表彰台を独占して見事にノルマ達成!
これで坂本さんは新・四大陸女王ですし、宮原さんも2年前の女王ですから、2月の五輪には日本から2人の女王を送り込めることになりました。
カナダとアメリカの五輪代表(女子シングル)は誰もこのタイトルを持っていませんから、大きな顔をしてやりましょう!
天晴れ、日本女子!
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2017全日本フィギュア女子FS覚書(後)

(続きです。)
”18年冬季五輪出場を現実的な目標としてきた期間”が最も長いのは宮原知子さんでしょうけど、その次に長いのはおそらく樋口新葉さんだったと私は思います。
ジュニア時代から五輪を逆算したかのように一歩一歩成長を刻み、課題を少しずつ克服しながらやってきて、この17-18シーズンはよく作り込まれたプログラムを揃え、GPSでも2位と3位で初のGPF進出も果たし、準備は万端のはずでした。
ところが、そのGPFから調子が下降線を描き、勝負の全日本でもSPで要素抜け(シングルアクセル)という致命的なミス。
逆転を狙うFSでも鬼門の3Sでミス(2S)が出ると、後半も勢いが出ずに尻がすぼむような演技になってしまいました。後半は得意のジャンプも回転がギリギリでしたね。
FSは138.03(TES69.12・PCS68.91)、合計206.96で4位。
(回転不足が取られたのはひとつだけで、思ったよりスコアは出ました。)
本人が全力を出し尽くしているのは痛いくらいに伝わってきましたが、身体がついていかなかったという印象です。残念ながらフィジカルコンディションは上向かず、順位も4位に終わり、五輪の夢は叶いませんでした。
2Aと3Sのミスは樋口さんの失敗パターンでしたから、それがここ一番で出てしまったというのも本人は大いに悔やんでいるところでしょう。
しかし、”4年後”を目指すなら、この悔しさは本当に大切だと思いますし、これこそがモチベーションになると思うんです。
ツイッターの『復讐の4年』という看板も下ろす必要はありません。その心意気で頑張って欲しいものです。
もちろん、それは誰かに対する復讐ではなく、自分へのリベンジという意味で!

今季はメディア露出だけは金メダリスト級だった本田真凜さんですが、SP6位に続き、FSでも目立った演技ができないままジャンプミスもあって126.72(63.13・63.59)、合計193.37の7位。
本人は五輪出場を目標にしていたみたいですけど、今季の本田さんからはその情熱が見えませんでした。
いや、これはジュニアだった昨季からといってもいいでしょうね。
樋口さんと比較すると、五輪から逆算して自分をレベルアップさせているようには見えませんでした。
本田さんはノービス時代から音楽センスや滑らかなスケート、しなやかな体の使い方などが高く評価されてきた選手であり、ジュニア時代もそれが大きな武器でしたけど、ジャンプ・スピン・ステップといった技術要素の評価はそれほど高くはありませんでした。特にジャンプは不安定で、SP・FSがまとまるのは”年に1度”といった感じでした。
そしてその”年に1度”で世界ジュニアを獲ったのが15-16シーズンです。
このときはロシアの有力選手が欠場するという追い風も重なって、誰も予想しない優勝でした。
(※シーズンベストでいうと樋口さん195.35、ツルスカヤ195.28、本田さん192.98。)
昨季もその”1度”が世界ジュニアに当たって、2位に輝いたわけです。
しかし、今季はその”1度”はどこにもやってきませんでした。
それに加えて、ジュニアからの成長が見られず、技術的な課題はそのまま置き去りになり、持ち味だった表現面もレベルの高いシニアでは埋没し、体力面での不安も顕在化したというのが今季の本田さんです。
さらにいうと、演技全体のブラッシュアップという意味でも、五輪を目指す選手のなかではかなり見劣りしていました。
”より高く、より強く、より深く”という思いで己を磨いてきた選手と、そうではない選手の違いというのは、案外わかりやすいものです。

その”磨き上げてきた”といえば、それに妥協を許さないのが宮原知子さんでしょうね。
一時は五輪も絶望かという怪我から復活した宮原さんはこの全日本でもSP2位からスタートしたFSでも大きなミスなく演技を終え、本人もなにかから解放されたかのようなガッツポーズ。五輪出場を確信したのでしょうね。演技も気迫に満ちていました。
ただ、テレビの前で応援していた私は”回転不足”が気になって、スコアが出るまでやきもき。怪しいジャンプがいくつかあるように見えましたからね。
しかし、”演技の質”では他の選手を圧倒していましたから、この時点(紀平さん208.03)での暫定1位になるという確信は揺るぎません。
そして表示されたFSのスコアは147.16(72.75・74.41)、合計220.39。
これはさすがに高すぎるでしょう…、逆に宮原さんを貶めていると思いますぜ。
ジャンプに回転不足があったって、それ以外の部分で点数を稼いで成績を残してきたのが宮原さんなんです。
宮原さんは”ミス・パーフェクト”などではなく、不完全な自分と戦い続ける求道者ですよ。
それこそが彼女の誇りだと私は思います。

SPでは”これぞ全日本”という気持ちのこもった演技を見せてくれた本郷理華さんですが、FSでのチカラが他の選手に劣るのは厳然たる事実。
しかし、そこを乗り越えなければ夢の五輪はもぎ取れません。本人もそれがわかっているからこそ、FSでは本当に鬼気迫る表情をしていました。
ただ、それが硬さに繋がったのかSPのようにジャンプに勢いが出ず、前半の3Lzで転倒、後半も3Loで転倒してしまって万事休す。
それでも終盤のコレオまで『フリーダ』に自分の情熱と希望を憑依させ、一瞬たりとも気持ちを切らさず、芸術の喜びとスポーツの興奮をあますところなくリンクに描いてくれました。
FSは127.14(63.35・65.79・減点2)、合計197.62の6位に終わり、本郷さんは悔し涙を流すことになりましたけど、全日本の”格”を守り、五輪の”大きさ”を我々に知らしめたのは間違いなく本郷さんでした。
そして、数少なくなった”魅せる演技”という面でも、本郷さんは日本女子フィギュアにとっては欠かせない存在です。
昨季の怪我が癒えた今季は課題のジャンプもかなり良くなってきましたし、来季も期待しています!

全日本フィギュアは五輪や世界選手権の代表選考大会として長い歴史がありますけど、”大逆転”や”シンデレラガールの誕生”というのはまったくといっていいほどありません(女子では99年の椎名千里さんくらい)。スケート連盟がジャッジに手心を加えているのか、常に”下馬評通り”というわけです。特に五輪シーズンはその傾向が顕著で、有力選手がまるで仕組まれたように表彰台と代表の座を勝ち取ってきました。
ですから、坂本花織さん(SP1位)が優勝、もしくはそれに準じるような成績を収めて五輪を勝ち取れば、これはもう歴史的快挙という他ありません。
そうしてSP1位からの最終滑走というとんでもない重圧のなかスタートした坂本さんは、最初の3F+3Tを着氷するも緊張でガチガチ。
ジュニア時代から緊張するとジャンプのタイミングが狂って崩れてゆくことが多い選手ですから、私も不安しかなかったのですが、続く3Sをばっちり決め、太腿のパワーを感じるステップシークエンスをぐいぐい滑ってゆくと徐々に落ち着いていったのか、課題の3Lzを着氷して始まった後半のジャンプは全てノーミス。
しかも坂本さんらしい大きくて見栄えのするジャンプ。「凄い!」の一言。
終盤まで演技のスピードとパワーが一切衰えることなく、本当に煌めくような演技でしたし、希望の光でリンクが輝いているように見えました。集中しきった演技に観客も視聴者もぐいぐい引き込まれたのではないでしょうか。
五輪がかかった最終滑走という極限の緊張のなか、見事己に打ち勝った坂本さんは真の勝者です。
大会を美しく締めくくったシンデレラに最敬礼!
FSは139.82(72.63・67.29)、合計213.51で2位。
惜しくも優勝を逃し、本人もクスクラで悔しさを露わにしていましたけど、その素直な態度がまた好印象でしたね。
こうして夢の五輪出場を決めた坂本さんですが、それを支えた中野園子コーチの手腕にも注目せざるを得ません。
三原舞依さんもそうなのですが、中野門下は基本技術がしっかりしているのに加え、体力とメンタルに優れているのも特徴だと思います。
これは練習の密度にも関わるわけですけど、そのためには選手のモチベーションを維持する必要があり、中野コーチはそれをコントロールするのも巧みなのでしょう。
また、坂本さんの緊張しいを克服させるために今季9戦も出場させるという荒療治をしたのも、坂本さんの類稀なフィジカルを見抜いてのことでしょうし、その判断力と決断力にも驚かされます。
五輪でも中野マジックに期待していますぜ!
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2017全日本フィギュア女子FS覚書(前)

大会からちょっと間が空いてしまいましたけど、覚書程度に2017全日本フィギュア女子FSを振り返ってみたいと思います。

今季は五輪シーズンということで、全日本でも代表争いが注目を集めるなか、フィギュアファンに”4年後の夢”を見せてくれたのはジュニア女王の紀平梨花さん。
FSでは3A+3Tを決めてスタートすると、次の3Aも素晴らしい集中力でびしっと決めた!
3Aは女子では最高難度といっていいジャンプであり、過去に跳んでいた選手たちはみな失敗と成功が隣り合せという感じだったのに、紀平さんのジャンプには無理がなく、割とあっさり決めているように見えます。まるで男子選手のようです。
ジュニアの女子だと成長期前の”体の軽さ”を生かしてジャンプを跳ぶケースが多いのですが、紀平さんはすでにしっかりした体格をしているのに余裕を持って3Aをプログラムに入れられるのですから、今後も大きな不安はないでしょう。
そうして前半最後の3Fと後半冒頭の3Lz+2Tも着氷し、これはもしかしたら優勝もあるか、と思われたものの、3Loで大きくバランスを崩してステップアウト。
今回はシニアの大会ということで、ジュニアのそれよりFSの時間が30秒長く、後半は動きにやや疲れが見えますが、スケートの質がいいのでスピードはあまり落ちず、コレオを挟んでの3Lz+2T+2Loと3Sもばっちり決めた!ジャンプの質も落ちない!
終盤のステップシークエンスも体幹とブレードが狂いませんでしたし、基本技術とフィジカルの確かさ、演技への集中力は瞠目すべきものがあります。最後のビールマンも綺麗でしたね。
昨季と比べても動きが洗練されてきましたし、ジャンプの力み癖も見られなくなって、想像以上の成長を遂げています。
技術的な弱点はシットスピンとコンビネーションスピンだけといっていいでしょう。ブレード捌きもジュニア選手にしたらかなり上手い方だと思います。
また、ジャンプに関しては3Aばかりが注目されますけど、ルッツとフリップの跳び分けがきちんと出来るのも紀平さんの強みですね。3Aに依存しなくてすむといってもいいでしょう。
そうして期待ばかりが膨らむFSのスコアは141.29(79.53・61.76)、合計208.03で見事な3位表彰台。
紀平さんの演技を見ていれば”世界女王”を目指していることがよくわかります。その志の高さがあるからこその順調な成長であり、演技の最中も一切手を抜かず、集中力も切れないのでしょう。
そんな選手ですから、今季はぜひ世界ジュニア女王をもぎ取って欲しいところなのですが、ジュニアのルールではSPで3Aを入れられないので、今季の紀平さんは最大の武器を封じられているようなものなんです。
それに加えてロシアに天才少女が何人もいるのですから世界ジュニアは本当に大変です。
しかし、来季以降の伸びしろや期待感では紀平さんがナンバーワンだと私は確信を持っていうことができます。
紀平梨花は我々の希望です!

その紀平さんと同じジュニア選手で観客の度肝を抜いたのは横井ゆは菜さんでした。
横井さんは全日本ジュニアで4位だったので今大会はノーマークでしたけど、SPでジュニア勢の2番手につけると、FSではノリノリの『バーレスク』を披露し、質のいいジャンプを揃えてノーミス、いやパーフェクトといっていい内容。
シニアの4分だというのに勢いがまったく衰えず、最後の要素である2A+3T+2Tがびしっと決まったときは鳥肌ものでしたね。本人ももの凄いガッツポーズで喜んでいましたけど、本当に気持ちのいい演技でした。
FSは130.31(72.31・58.00)、合計192.99で8位。 
この結果、横井さんは見事世界ジュニア代表に選出。
このままの勢いで活躍して欲しいですね!

全日本前、私が密かに予想していた優勝者は”三原舞依”。
今季はSPで苦しんでいたものの、そこさえ乗り越えれば日本歴代最高点を持つ得意のFSで他選手を退けられると思ったわけです。
しかし、SPでは緊張からかまさかの転倒があって、首位と約9点差の7位(64.27)となり、FS最終グループに入れないというハードラック。
ただ、三原さんのFSのPBは146.17なので、これが出せればトータルで210点を超え、2位までならあるかもしれません。そして2位ならば五輪の可能性も十分あるんです。
そういう状況で始まった『ガブリエルのオーボエ』、最初の3Lz+3Tが決まると笑顔がこぼれ、心が洗われるようなコレオシークエンスでも硬さが見えず、SPでミスをした2Aも成功。
完成度の高いスピン2つで前半を終わらせ、後半も綺麗な3F、鮮やかな2A+3T、3Loもばっちり!
3Lz+2T+2Loはやや慎重になったものの、次の両手タノ3Sは芸術品のような飛翔!
ステップシークエンスでも研ぎ澄まされたフットワークと集中力を見せ、最後のビールマンスピンも光り輝くように仕上げ、天に昇ってゆくような演技でした。
清純で淀みのない世界、三原舞依らしい世界、本当に心地よかった。
五輪をかけたギリギリの舞台で、自分の力を出し切った三原さんには賞賛の言葉しかありません。
”これぞ全日本”という演技でした。ブラヴォ!
そして楽しみなのはスコア。パーフェクトに近いノーミスの内容でしたから最終グループにプレッシャーをかけるスコアが出るかも。
ところが、140.40(73.90・66.50)、合計204.67とあまり伸びません。
PCSが抑えめだったのと、後半のルッツに回転不足(UR)がついていたせいでしょうけど、辛いですねえ…。
(PCSが樋口さんや坂本さんより低いのは大いに疑問。)
結果的に三原さんは5位に終わり、五輪出場はなりませんでした。
ただ、今季の三原さんはSPで『リベルタンゴ』というあまり得意でない曲調にチャレンジし、自分の可能性を広げようとしていたのは好印象でした。
五輪シーズンではほとんどの選手が自分に合ったプログラムを選び、ストレスを減らし、ジャッジからの評価も得やすくするという選択をするものです。
しかし、三原さんはそれをしなかった。
おそらく、今季の五輪出場を目標としながらも、選手として、表現者として、そこで終わりたくないという思いがあったのでしょう。
今後、彼女がどんなフィギュアスケートを見せてくれるのか、私は楽しみでなりません。
(長くなってしまったので後編に続きます。)
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18年五輪フィギュア代表発表、不安からのカタルシス

4日間の激闘を終え、昨日12月24日に発表された2018冬季五輪フィギュア日本代表は、男子シングル=宇野昌磨・田中刑事・羽生結弦、女子シングル=宮原知子・坂本花織、ペア=須崎海羽&木原龍一、アイスダンス=村元哉中&クリス・リード。
羽生結弦以外はそれぞれ全日本優勝者と2位ということで、”全日本重視”という選考に見えますが、たまたまそうなったにすぎず、実際にはスケート連盟が6月に発表した”総合的判断”という指標に沿った選出といった方が正しいでしょう。
代表選手たちはみなシーズンの成績や世界ランクといった選出項目をしっかり満たしています(※シングルでは全日本優勝者が無条件選出)。
そして、全日本での”結果と調子”が最後のワンピースとなり、五輪での活躍が期待できる選手が選ばれたというわけでしょう。
私も今回は至極順当な選考だったと思いますし、代表発表式のときのスタンドの”いい雰囲気”がそれを証明していると思います。

ただ、やはり女子の2枠目の選考だけは簡単にいかなかったようで、、シーズンの成績が良かった樋口新葉さんと、全日本で優勝争いを演じての2位になった坂本さんのどちらを選ぶかは「大変だった」と小林芳子強化部がコメントを残していました。
今季の樋口さんはGPSの2試合で2位3位と安定した成績を残し、パフォーマンスの面でも昨季からの成長を見せていただけに、GPファイナルと全日本で調子を落として五輪を逃したのはスケート連盟としても残念な思いがあるのでしょう。
私も今季の樋口さんからは五輪に向けてなりふり構わず突き進んでゆく気迫を感じていたので、同情を禁じ得ません。
しかし、坂本さんを蹴落とすだけの”決め手”にかけていたこともまた事実ですから、ここは涙を呑んで未来へ向かっていって欲しいものです。
樋口さんは世界選手権の代表には選ばれましたから、ここで”3枠取り”に貢献し、自分自身の4年後に繋げてゆくしかありません。
昨季の世界選手権で11位と惨敗し、2枠に減らしてしまった責任は自分にある、そしてそれが自分の五輪の道を閉ざしたのだ、というくらいの気持ちになって、その悔しさと憤りを3月にぶつけるべきです。
演技中にときどき現れる”気弱な新葉”を叩きのめしてやりましょう!

それにしても今回の代表陣は、過去に出場経験があるのがクリスと羽生くんと木原くんだけというフレッシュな面々ですよね。女子はみな五輪初出場なわけです。
近年では誰かひとりは経験者がいただけに、宮原さんと坂本さんが浮足立たないか少し不安です。
スケート連盟は2人のメンタル面をしっかりサポートして欲しいですね。

その不安といえば”羽生結弦の状態”も本当に気になるところです。
羽生サイドとコンタクトを取った小林強化部長によると、ジャンプ抜きの氷上練習は再開しているとのことですが、五輪まではどの大会にも出場する予定がなく、五輪がぶっつけ本番になるようです。
羽生くんは代表発表式にも顔を出しませんでしたし、私もいちファンとして本当に心配です。
そもそも右足首の怪我はどの程度のものなのでしょう?
これについてはスケート連盟も具体的に把握していないようで、小林部長も「間に合うと信じた」というのですからなんとも浪花節です。なんの医学的根拠もありません。
スケート連盟が指定した医療機関でメディカルチェックをさせるとかしないんですかね…。

いまのところ今回の五輪は楽しみより不安が勝っているといっていいでしょう(開催場所も開催場所ですし)。
しかし、だからこそ日本勢が活躍したときのカタルシスが大きいんです。
特に羽生結弦が連覇を達成したら日本中が大騒ぎですよ。
私は羽生結弦の自作自演の伝説を楽しみに待っています!
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かつしき

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