THE ICE 2017(後その2)

(続きです。記憶を頼りに振り返ってゆきます。)
『THE ICE』ではあまり聞かない黄色い声援のなか、”D1SK”のタオルが揺れる。
大阪公演に参加することはあっても、名古屋公演では珍しい高橋大輔の登場です!
披露したのはジャズミュージカルの『Caravan』。
このエキシビションは14年にも滑っていると思うんですけど、当時に比べて全身の動きや表情の作り方が大胆になっていて、ダンス&語学留学が伊達じゃなところを見せつけました。たったひとりで踊っているというのにゴージャスでしたね。
そして、”フィギュアスケーター”としても3Fをしっかり決め、3Lzは途中で開いちゃったものの、代名詞のアップライトスピンでは美しい体のライン。
私も久しぶりに高橋くんのスケートを観ることが出来て、ちょっと興奮しちゃいました。
一瞬で自分の空間を作って、観客の視線を釘付けにする、それも「やってやる!」って感じじゃなくて、自然とそうなるのが高橋大輔の凄味ですよね。
そのように満足したわけですけど、ただひとつ、ストレッチ不足が気になりました。
舞台でもリンクでも、怪我防止のために柔軟だけはしっかり頼みます!

高橋大輔が終われば、もうこのひとしか残っていない。
白い衣装の上に黒のシースルーをまとい、割れんばかりの拍手と歓声に包まれてリンクインした浅田真央が、しなやかかつ軽やかに舞い始める。
曲はラフマニノフの『エレジー』。
ラフマニノフといえば、浅田真央が2度の五輪で用いた『鐘』とピアノ協奏曲第2番を忘れるわけにはゆきません。
両方とも人間の内面をどこまでも深く追及してゆくことでひとつの小宇宙に出くわし、それが大爆発を起こすという、”個にして全、全にして個”という仏教の世界感にも通じる荘厳な曲であり、それが浅田真央の個性とぴたりと合うことで無限の広がりを見せる歴史的な名プログラムでした。
その曲が浅田真央に与えてくれたパワーというのは本当に大きなものがあったはずです。
現役引退直後のエキシビションに『エレジー』を選んだのも、浅田さんからラフマニノフへの感謝の印なのかもしれませんね。
それにしても浅田真央の滑りの洗練されていること。
近年の浅田さんは股関節の動きを意識しているように思いますけど、そこが誰よりも柔らかく使えるので、どのような体勢でも身体の軸がぶれず、ブレードに体重がしっかり乗るのはもちろん、方向転換も驚くほどスムースで、動きにまったく無駄がないんです。まるで伝統芸能の名人のようです。
そんな浅田さんを見つめる観客の集中力は恐ろしいほどで、その一挙手一投足を見逃すまいという気迫が会場に充溢していました。
リンクに煌めく浅田さんの滑りの一瞬一瞬が観客にとっての宝なのです。
今年の『THE ICE』は浅田さんの引退興行ということでチケットの売れ行きが凄まじかったわけですけど、ファンの思いのなかに「『THE ICE』も終わってしまうかもしれない…」という恐れと不安があったことは想像に難くありません。
07年から続く夢の祭典、その夢がいつまでも覚めないで欲しい、それこそが観客の偽らざる本音でしょう。

しかし、この日の浅田さんの『エレジー』に、私は”迷い”のようなものを感じました(一緒に行った相方も同意見)。
動きや滑りの質は高いのに、どこか気持ちが乗り切れない、そんな印象です(ジャンプは2A成功、3Loミス)。
もしかするとフギュアスケートとの関係に迷っているのかもしれませんね…。

そんなことを考えているうちに『エレジー』が終わり、場内が暗転。
アンコールを求める手拍子が地鳴りのように会場を震わせると、髪を下した浅田さんが白いドレス姿でリンクイン。
彼女らしい浮遊感のある滑りで『愛は翼に乗って』を魅せ、観客を高揚させたかと思うと、途中で立ち止まり、モニターに手をかざします。
すると、そこに浅田さんの七五三のときの家族写真から、これまでのフィギュア人生で出会ったひとたちとの思い出の写真が映し出されたんです。
本当に多くのひとたちが浅田さんを支えてきたんですねえ…。
そしてその写真集の最後は愛犬のエアロ。
…え、エアロ?
最大の功労者はエアロ!?
浅田さんのなかでのエアロの序列高っ!

そうして写真を眺め終わった浅田さんは、曲の盛り上がりに合わせて、天駆けるような連続バレエジャンプ!竜巻のようなツイズル!
この圧倒的な滑りに会場は度肝を抜かれていました。
そこからは優しい振り付けと、柔らかいイーグル、美しいスパイラルで舞い納め。
うっとりしすぎて腰が抜けました。

これでいよいよ『THE ICE 2017』もフィナーレです。
再び登場した鈴木羊子さんが『I Got Rhythm』を奏でるなか、まずは黒竜江省雑技団が驚愕の空中回転で会場を盛り上げ(鈴木羊子さんもここまで)、続いては舞さんと無良くん、長洲さんと高橋くんによる『カルメン』。4人とも気合入っていました。
『踊るリッツの夜』はウィーヴァー&ポジェ、パン&トン、そして小塚くん(ここは宮原さんとのペアだったのかも)。この5人のダンスはかなりカッコよかったです。
ここまでくればもうおわかりのようにフィナーレも”浅田真央メドレー”!
ハンガリーの民族衣装に身を包んだ宇野くんとソトニコワ、織田くんと明子さんが演じるのはもちろん『チャルダッシュ』。宇野くんの衣装がめっちゃ可愛くて会場では大人気。
そして締めくくりは浅田さんとバトルによる『蝶々夫人』。
浅田さんの気持ちの籠った演技はもちろん、バトルの海軍士官衣装似合いすぎ!
10年もペアプログラムをやっているだけに2人の息はぴったりですし、見せ場の並列2Aでも、個人プロでこのジャンプを失敗したバトルがしっかり決めるのですから、これぞまさに相乗効果。
それにしても、この『蝶々夫人』の浅田さんはスケートだけではなく、”芝居”という意味でも本当に素晴らしかったです。
芝居っ気のあるプログラムはほとんどやっていない選手ですけど、こういう才能もあるのんだとあらためて瞠目しました。
浅田真央主演の日本版『オペラ・オン・アイス』が観たい!

ブラヴォ!ブラヴォ!
観客たちが痛いほどに手を叩き、歓声を上げ、大興奮に包まれる愛知県体育館。
グランドフィナーレでは恒例の『Can't Take My Eyes Off You』に合わせてみんなでダンス。
ソチFSのフィニッシュポーズには笑いがこぼれていました。
最後は『THE ICE』Tシャツに身を包んだ出演者たちが次々とリンクを回ってゆく、華やかで、ちょっと寂しい時間。
今年も本当に楽しかったあ、来年もよろしく!
観客たちはそんな思いで演者たちに手を振ります。
そして誰もいなくなるリンク。
けれども観客からの拍手は止みません。
すると、それに応えるように鳴り響いたのは『メリー・ポピンズ』!
あの特徴的なドレスを身にまとい、傘を手にした浅田さんがリンク狭しと滑り回り、チム・チム・チェリーでは舞さんとの可愛らしい姉妹ダンス、最後は出演者全員が加わっての大団円!
Supercalifragilisticexpialidocious!

『THE ICE』は浅田真央の笑顔に会いに行くショーであり、観客の大人たちが子供のような笑顔を見せるショーなんです。
まさに夢の舞台、夢の時間。
そしてその夢にもいつかは終わりがくる。
その終わりから目を背けるように、今年の私は記事をダラダラと書いてしまいました。
でも、私は子守りのミス・ポピンズにまだまだ家にいて欲しい。
我々を子供にする魔法とともに。
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THE ICE 2017(後その1)

(続きです。記憶違いがあるかもしれませんがご容赦を。)
こうして第1部があっという間に終わり、恒例のフィナーレダンスレッスンの先生役は小塚くんと舞さん。
今回は浅田真央現役引退記念に因んで振り付けにソチ五輪FS(ラフマニノフ)のフィニッシュポーズを取り入れる特別バージョン。
”浅田真央メドレー”をやっているときの楽屋裏では演者たちが浅田さんの真似をしながら盛り上がっていたそうですから、それを観客も一緒にというわけです。
それにしても崇ちゃん&舞ちゃんの先生ぶりが板についていること。まったく噛みません。

例年ならばこの後はトークコーナーになるわけですけど、リンクに緋毛氈が敷かれて、いつもと違った雰囲気。
この『THE ICE 2017』を前にした報道で、「浅田真央さんに愛知県民栄誉賞と名古屋市特別功労賞が送られ、夏のアイスショーでその授賞式が行われる」とあったので、名古屋公演の初日(8月4日)がそうに違いないと思っていましたけど、予想通りでした!
まずは大村秀章愛知県知事からの県民栄誉賞の授与。
「あなたの活躍は県民だけではなく世界のひとびとに勇気を与え、努力を続ける姿とその笑顔は愛知県民の誇りであります!」
パネルで紹介された副賞は名古屋の磁器メーカー〈ノリタケ〉のティーセット。
デザインは浅田さんからのリクエストで、ビールマンポジション、スケートシューズ、そして愛犬エアロの3種類。
エアロの序列高っ!
続く名古屋市民特別功労賞では市民に人気の河村たかし市長が登場し、得意の”みゃあみゃあ弁”で受賞の言葉を述べると浅田さんもちょっと苦笑い。
副賞には「真央ちゃんはスケートをやっていなかったらケーキ屋さんになりたあ、いうとったから」といって、市内の老舗洋菓子店〈フィレンツェ〉の特製ケーキ。こちらも実物ではなくパネルで紹介。
ホワイトチョコで作ったスケート靴の飾りがついた大きなケーキで、たぶんショーが終わったら出演者やスタッフで食べるんでしょうねえ。
浅田さん、ダブル受賞、おめでとう!
ちなみに、河村市長はしっかり「特別功労賞の第1号」といっていましたけど、大村県知事は「県民栄誉賞第1号」のことをいい忘れていました。
両方とも浅田さんの引退を受け、特別に条例を定めて作られた賞であり、愛知県も名古屋市も”浅田真央”に対する礼儀と敬意と感謝をしっかりとした形で示したわけです。
それにしても、浅田さんのような国民的・世界的なヒロインが地元にいるなんて、他府県民からしたら本当に羨ましい限りです。
河村市長は「パレードもやりてえ」といっていましたけど、実現したら盛り上がるでしょうねえ。
私も観に行きたい!
そして、浅田さんからは、「私が生まれたこの愛知県名古屋で、このような素晴らしい賞をいただけて、本当に嬉しいです。この『THE ICE』が終わったらあらたなスタートになります。やりたいことだったり、成長になることをこれからやっていきたいと思います」とのコメント。
スケートから距離を取るようにも聞こえてちょっと不安…。

休憩を挟んで始まった第2部の幕開けは黒竜江省雑技団による驚愕のパフォーマンス。
女性陣による中国ゴマを回しながらのスケートはもちろん、男性が下になった人間ピラミッドだけでもびっくりするのに、そのピラミッドの頂点から少女が抱え込み後方2回転して別の男性陣がキャッチするという労働安全衛生法(中国にはあるんでしょうか?)に抵触しそうな大技まで繰り出すのですから、これぞ中国雑技!
私も凄く楽しかったですし、会場もフィギュアスケートとはまた違った興奮に包まれていました。
こういうのもたまにはありですね。

関西大学スケート部監督という重責を担う織田信成くんは『To Build a Home』の情感溢れるヴォーカルを伸びやかかつしなやかに表現。
3Lzも現役時代と遜色ないくらいのバネを見せつけましたし、細かな表現技法も色々と取り入れ、選手としての進化を止めていないように感じました。惚れ惚れする美しい滑りでしたね。
小柄ながら手足が長くて見栄えのいいスタイル、素直なスケートとネコ科の動物のようなジャンプ。
フィギュアスケーターとして抜群の才能を持っていることを改めて認識させられました(競技会のプレッシャーが最大の難敵)。
関大スケート部男子で一番いいスケーターかもしれません。
関大での指導方法は、「俺を超えろ!」の一言ですね!

そのように織田くんも凄かったんですけど、次の鈴木明子さんも14年に引退したとは思えないキレキレの『リベルタンゴ』。
背筋も現役時代さながらに割れていましたし、コーチ業の傍らでかなり滑り込んでいるのでしょうね。
スケーティング技術をベースにした表現の華やかさと迫力はもちろん、トリプルジャンプもしっかり決めていて、公式戦でもいけるんじゃないかと思わせました。
引退して一時期は衰えを感じましたけど、そこから建て直してくるのですから、やっぱりスケートが好きなんでしょうね。
私も鈴木明子のスケートが大好きです。
そして、結婚おめでとう!

『THE ICE』の大黒柱ジェフリー・バトルは出演者のなかでは最年長のはずなんですけど、カナダ人シンガー、フランチェスコ・イエーツ(21歳)の高音が心地よい『Better to Be Loved』を少年ぽく滑るのですから”さすが”の一言でした。
見た目もこの10年でまったく変わっていないようにすら思います。
曲の乗りの良さを全身で表現しながら観客の心を弾ませ、一体感と熱狂を生むバトルらしいプログラムに私も大満足。
ただ、2Aをステップアウトしたのは残念。ルッツはダブルでしたし、ジャンプではさすがに年齢が出ちゃいましたね。
それにしてもフランチェスコ・イエーツいいですね。アルバムが欲しくなりました。
ジェフの”カナダステマ”にやられている!?

大きな拍手のなか登場したのは浅田さんの弟分であり、新しい名古屋の至宝でもある宇野昌磨。
披露するプログラムは今季のSP四季の『冬』だったんですけど、冒頭の弩迫力の3Aで会場に公式戦の緊張感をもたらすと、後半の4Fはステップアウトするも、3A+1Lo+3Fはしっかり決めて、仕上がりの良さを見せつけました。
SPでは3Aからの3連続は出来ませけど、ここはどんなジャンプを持ってくるのでしょう?
単独3Loと4F+3Tの組み合わせか、単独3Fと4T+3Tか、いずれにしろ後半に4回転を固めることで、絶対王者・羽生結弦の世界最高点に近いスコアが狙えるはずです。
振り付けはまだまだ完成していませんでしたけど、”金メダル”へ向けて、宇野昌磨はどえりゃあことになっています。凄まじいモチベーションを感じました。
狙え、県民栄誉賞&市民功労賞第2号!

五輪シーズンの現役選手というのはコンディション調整やプログラムの練り込みで、あまり海外のショーには参加しないものですけど、ケイトリン・ウィーヴァー&アンドリュー・ポジェが今年も『THE ICE』に来てくれたのは本当に嬉しかったです。
ケイトリンは今年の国別対抗のときも”We love you Mao”のボードを掲げてくれましたし、いまや欠かせない『THE ICE』ファミリーです。
そんな2人のプログラムは今季のSDで使うマイケル・ジャクソンメドレー(『Dangerous』他)。
長身で品のいい滑りが特徴のカップルですけど、こういうのも上手い。リフトでちょっと詰まってしまう場面があったものの、MJっぽい衣装と踊りで会場を大いに盛り上げていました。
アイスショーというのはオープニングやフィナーレはもちろん、グループナンバーも多いわけですけど、そこにはダンスやペアの選手が欠かせませんし、ウィーヴァー&ポジェのような実力派がいると、ショーの格とレベルが上がりますよね。
五輪でのメダル獲得、期待しています!
(当初の想定を超えて長くなってしまったので、後編その2に続きます。すみません!)
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THE ICE 2017(中)

(続きです。記憶を頼りに書いていますので間違いがあってもどうかご容赦を。)
個人の部の一番手は2年ぶりの登場となる小塚崇彦。
去年の3月に「氷上を去る」、つまり”フィギュアから離れる”という言葉とともに引退を発表したときには私も言葉にならない寂しさを感じたものですけど、今年の7月にショーに復帰しているのですから、あのときの気持ちを返して欲しい!
…とは思いますけど、やっぱり小塚崇彦は氷の上が似合います。
現役時代に比べる滑る力がだいぶ弱くなっていましたけど、本当に楽しそうに滑っていて、それがお客さんに素直に伝わってゆくのがわかりました。
そういう意味では現役時代にもまして素敵な『Save The Last dance for Me』でしたね。会場もノリノリでした。
”最後”とはいわずに来年のダンスにも期待しています!
(アイスショーは平日にも行われますし、練習もあるでしょうに、サラリーマン生活との両立がちょっと心配です。有給足りるのかな…。)

浅田さんとは同じタラソワ門下であり、”浅田真央ファン”を公言するアデリナ・ソトニコワは”現役”といいながらも国際大会にもほとんど出ないような状態が続いていますけど、今季はなんとあのプルシェンコがコーチについたそうですから、本気で五輪を目指すつもりなのでしょう。
ところが、アダルトなエキシビションでは表現が主体で、2Aは2本とも失敗しちゃいますし、得意のスピンも全盛期のような勢いがありません。
プロスケーターとしては本当に魅力的なんですけど、激戦のロシア女子で戦うにしてはちょっと無理があるような…。
でも、ソチ五輪女王として、安易に引退を選ばない姿は立派だと思います。がんばって!

妹の記念興行ということで身体もしっかり作ってきた浅田舞さんの黒い衣装での妖艶な『白鳥の湖』。
スケート技術が足りないところ(引退からだいぶ立っています)は音楽と照明にサポートしてもらって、終盤は2本の旗を巧みに使っての演出。テレビや舞台で活躍しながら学んだ部分をリンクに持ち込んだ形ですね。
もちろん、スタイルの良さを生かしたスパイラルではスケーターとしての意地も見せていました。
オープニングでもそうですけど、『THE ICE』を盛り上げようという気持ちは誰よりも強いものがあったと思います。
これぞ姉妹愛ですね!

そしてその”愛”といえばこの2人、チン・パン&ジャン・トンは久しぶりの『THE ICE』です。
14-15シーズンをもって引退した2人は、16年に目出度く結婚し、その年にお子さんも生まれ、いまは幸せいっぱいというところでしょうし、競技から離れてもう2年ですから体もふっくらしているかなあ、と思ったら、現役さながらの体型を維持していて、これには脱帽しました。
特にチン・パンが凄い。出産から1年って信じられません。
エキシの方はツイストもリフトもレベルを落としたものでしたけど確実に決めて、さらにスロージャンプまで挑むのですから(転倒)、そこまでしなくてもいいのにという感じではありましたけど、それも名選手の意地でしょうね。
会場は愛溢れる『Moon River』にうっとりしていました。

長洲未来さんが披露するプログラムは昨季のSPであり今季も使う『夜想曲第20番』だったわけですが、そこには大きな違いが!
なんと冒頭に3A!
惜しくも完全な回転不足でしたけど、今季に賭ける意気込みが伝わってくる大技でした。
まだ8月ということで滑りも仕上がっていませんでしたし(他のジャンプもミス)、調子が上がってくれば成功の可能性もあるかもしれません。
昨季は四大陸で3位に入るなど、復調の兆しは見えていますし、2大会ぶりの五輪で大輪の笑顔が見たいですよね。

無良崇人くんのエキシビションは今年日本でもヒットした『美女と野獣』の挿入歌『Evermore』。
荒々しさと繊細さ、強さと弱さが同居する無良くんにぴったりなプログラムで、本人も気持ちが籠っていて素晴らしい内容でした。ジャンプも3A、3Lz、3Fとばっちり決めていましたしね!
私はこれが本当に気に入りましたし、無良くんに本当に似合っていると思いますし、五輪出場に向けて力をくれるプログラムだと思います。
SPかFSにしてもよかったんじゃないでしょうか!

続いてはスペシャルプログラム。
竹馬のようにブレードを伸ばした特製シューズを履いた女性の一団が虹色の衣装でリンクインすると、会場からはどよめきが。
しかも、その一団が『Over The Rainbow』に乗って美しく滑り、途中でひとりの少女が”手”に竹馬シューズを履いての逆立ち滑りを披露するのですから、本当にびっくりしました。
黒竜江省雑技団のみなさんとのことでしたけど、珍しいものを見せてもらいましたね。会場も大いに盛り上がっていました。
今年の『THE ICE』は出演者の関係からグループナンバーが作れずにこういうゲストになったのでしょうけど、これはこれで新鮮な驚きと楽しさがありました。
日本にもこういうチームがあったら面白いですよね。

そしてその『Over The Rainbow』のまま舞さんがリンクインして始まったのは浅田真央現役引退を記念する超スペシャルプログラム。
なんと出演者たちが浅田さんがこれまでに使った曲をメドレーで演じてゆくという真央ファン垂涎の企画です。
しかも(基本的には)、各選手が現役中に使ったプログラムなので、それぞれのファンも堪らなかったことでしょうし、誰がどれを滑るか予想するのも楽しかったです。
そうして舞さんが氷を慣らし、まずはソトニコワの『シェヘラザード』。
このプログラムは浅田さんの唯一(競技プロ)のパンツスタイルの衣装で、千夜一夜の大活劇という感じでしたけど、ソトニコワのそれもちょっと少年ぽくて、似た雰囲気を感じました。さすが姉妹弟子ですね。
『スマイル』はもちろん織田信成。
このプログラムは男性なら織田くん、女性なら浅田さんというイメージですけど、ペアプロも観てみたいですよね。織田くんが緊張しすぎておかしくなっちゃうかもしれませんけど…。
浅田さんを代表する曲のひとつである『ラヴェンダー』は弟分の宇野昌磨が前半、後半は苦楽を共にしてきた鈴木明子。
浅田さんの存在はこの2人に大きな影響を与えていると思いますし(宇野くんは特に)、その感謝と敬意が溢れる真剣味のある滑りでした。
ヴァイオリンの音色と共に私も感傷的な気分になってしまったのは内緒です。
ケイトリン・ウィーヴァー&アンドリュー・ポジェが演じる『シング・シング・シング』は浅田さんが08-09に使ったエキシビションナンバー。
ウィーヴァー&ポジェの完成された演技を観ていると、逆に十代の頃の浅田さんのやんちゃな滑りが懐かしく思い出されます。
そして荘厳な響きとともに始まったのはラフマニノフの『鐘』。
ジェフリー・バトルが力を込めた迫力の滑りでその緊張感と重苦しさを作ると、我々はみな、あの頃の理不尽と戦い続けた浅田真央を思い出して胸が締め付けられます。
「観たくない」というファンもいるかもしれませんが、この『鐘』は浅田真央を語る上でなくてはならないプログラムであり、避けては通れないプログラムです。
そんな重い空気でしたが、途中でバトルからバトンタッチした小塚くんが浅田さんの振り付けを完全コピーして、最後のポーズでは大盛り上がり。小塚くんの好演であり”好援”でしたね!さすがわかってる!やっぱり『THE ICE』には小塚くんが必要だ!
そして『愛の夢』はやっぱりチン・パン&ジャン・トン。このプログラムはシングルならば浅田真央、ペアならばこの2人が最高です。
愛というのは儚いものですけど、『愛の夢』を滑っていた頃の浅田さんはジャンプの再構築に四苦八苦したり、ご家族のことがあったせいか、儚いほどに痩せていて、こちらも心配したものです。
でも、そういう浅田さんの内面が滲み出て、プログラムになんともいえない風情があったのも事実ですよね。私も強く印象に残っているプログラムのひとつです。
…それに比べるとパン・トンの”愛”は濃密すぎ!
そして、浅田真央の集大成であるラフマニノフ『ピアノ協奏曲第2番』を演じるのは高橋大輔。
この出演者のなかでラフマニノフを滑ったことがあるのは高橋くらいなものですけど、高橋のラフマニノフといえばあの失意のトリノ五輪ですから、どうするのかなあ、と思っていたら見事に滑ってくれました。これが大ちゃんの男気ですね。
しかも当時と比べるとスケーティングが各段によくなっているので、なんだかまったく違うプログラムに見えました。競技プロでのリベンジがあっても良かったかも。
そしてメドレーの締めくくり、高橋に迎え入れられる形でリンクインしたのは我らが浅田真央。
昨季のFS『恋は魔術師』の衣装の腰に黒い布をつけていたのを、高橋が剥ぎ取り、そこからは火を吹くようなリチュアルダンス!
オープニングではSPの方を演じ、さらにFSですから、このプログラムにはかなりの名残り惜しさがあったのでしょう。
この日はその気持ちを叩きつけるような弩迫力の滑りで、まさに圧巻の内容でした。
『恋は魔術師』もこれで完成しましたね!
私は昨季の浅田さんの公式戦は観に行けなかったんですけど、これで満足しました。
浅田真央が浅田真央であるための”負けん気”が見れたのですらかね!
(さらに後半へと続きます。)
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THE ICE 2017(前)

あの涙と笑いの引退会見から4ヶ月、浅田真央の『THE ICE 2017』がいよいよ始まりました。
今年は浅田さんの”現役引退記念興行”ということもあって、ファンのみなさんも浅田さんに感謝と労いの気持ちを届けたかったでしょうし、”氷の上の浅田真央”を観ることができる機会も少なくなったということで、いつも以上に特別な公演です。
チケット争奪戦もかなりの激しさでしたけど、私と相方は何とか入手することに成功し、8月4日の名古屋公園初日に行ってきました!
(※記憶を頼りに記事を書きますので、間違いがあってもご容赦を。)

会場は昨年に引き続き、名古屋城二の丸の愛知県体育館。
午後12時会場・午後1時開演という暑さが気になる時間帯でしたけど、4日はほどよく曇っていて、体育館前で”真央ちゃんグッズ”を買うために列を成すお客さんもどうにか耐えられたと思います。
そんななか、浅田さんが今年からイメージキャラクターを務めるウォーターサーバーブランド『Kirala』のブースでは、それで作った炭酸水を配っていてなかなか好評のようでした(一杯の量はもっと欲しかった)。炭酸水が作れる家庭用ウォーターサーバーって珍しいですよね。

体育館に入ると、2週間前まで土俵が置かれていたものがリンクに変わり、製氷の匂いが漂うスケートの雰囲気。
リンクの壁には例年通り、佐藤製薬、エアウィーヴ、住友生命、ネピア、アルソアが広告を出していて、各企業ともにファンと同じような思いを持っていることが伝わってきます。
今後もぜひ浅田さんを支えていって欲しいものです。

そうして開演までの時間、私は密かにお客さんたちの顔を眺めたり、会話に聞き耳を立てたりしていたんですけど、みなさんいつもと感じが変わりません。浅田さんが現役を退こうがあまり関係ないようです。”浅田真央を楽しむ名古屋の夏の風物詩”といったところなのでしょう。
私もあまり色々考えず、夢の時間を楽しむ気持ちになってきました。

ところが、そこにショッキングなアナウンスが。
「宮原知子選手が左足首の捻挫で欠場することになりました」。
大阪公演(7月29~31日)のときに痛めてしまったのでしょうか…。
宮原さんは昨季、左股関節を疲労骨折してしまって、その影響から今季は例年より調整が遅れているようでしたけど、この捻挫で公式戦の出場予定も狂ってしまうかもしれません。
五輪出場権を勝ち取るために、どの大会に照準を合わせればいいのか、焦らずにベストな選択をしてください。
私は祈ることしかできません。

宮原さんのニュースに会場からも残念がる声が漏れるなか、「浅田真央の引退を記念して」、会場のモニターに浅田さんの現役生活を振り返る写真と映像が流れ始めます。
ひとつひとつの衣装を眺めながら、「あのプログラムよかったよね」「あれも」「これも」とお客さんはみんな懐かしそう。
天真爛漫な時代、苦悩の戦い、大切な家族との別れ、集大成の演技、復帰から引退へ…。
なんという波乱万丈な現役生活だったのでしょう。私も色々と思い出して胸が熱くなってきました。
フィクションのようですらありますが、これは現実のことだったのです。
それを乗り越えてきた浅田さんへ、私はあらためて敬意を表さずにはいられません。

会場全体の空気もそんな感じになってきたそのとき、照明が落ち、いよいよ『THE ICE 2017』が始まります。
まずは薄暗いなか、ひとりのスケーターがリンクに入ってきて、壁のところに腰をかける。
ファンはみんなそれが誰だかすぐにわかったはずです。
シルエットだけでわかるんです。
そうしてスポットライトが照らしたのは、もちろん浅田真央。
万雷の拍手が終わり、練習着の浅田さんは靴紐を直すような仕草からリンクに入ってゆくと、音のないなか、氷の感触を確かめるような滑り。
身体も伸ばし、コンパルソリのように氷に図形を描き、まるで朝一番の練習風景のよう。
フィギュアスケーター浅田真央の一日はこうして始まり、彼女はこれを20年近く毎日繰り返してきたのでしょう。
その時間の重さに、会場は固唾を呑んだように静まり返っていました。

その浅田さんの練習に、今度はバレエの練習着のような衣装の6人がレッスンバーに見立てた棒を持って加わります。
練習の始まりとショーのオープニングを重ね合わせた演出というわけです。なかなか面白いですよね。
そして、その他の演者たちも次々とリンクインしていって、舞台は徐々に華やかに。
小塚くんの物凄い勢いのイーグルと、宇野くんのクリムキンは特に歓声が大きかったですね。さすが地元。
ちなみに出演者は、高橋大輔、織田信成、鈴木明子、小塚崇彦、無良崇人、宇野昌磨、ジェフリー・バトル、アデリナ・ソトニコワ、長洲未来、チン・パン&ジャン・トン、ケイトリン・ウィーヴァー&アンドリュー・ポジェ、浅田真央と浅田舞。
五輪シーズンということもあって、海外の現役選手は来日しにくかったかもしれませんが、浅田さんと仲のいいスケーターたちが集まってくれて、今年に相応しい陣容だったと思います。

そこでまた舞台が暗転し、スポットライトに浮かび上がるのはリンクの横に置かれたグランドピアノとその奏者。
奏でるのは我々の魂を熱くするような『リチュアルダンス』(バレエ『恋は魔術師』より)。
ジプシーに扮したスケーターたちの力強い滑りがリンク上に焚火の幻を作ると、そこに炎の精霊のような浅田真央が艶やかに舞い踊る。
この『リチュアルダンス』は昨季のSPに用いるも、なかなか思うようが演技が出来ず、浅田さんも消化不良だったでしょうし、それは我々ファンも同じことです。
しかし、この日はそのSPの音源の実際の演奏者である鈴木羊子さんがスペインからわざわざ参加してくれたこともあって、素晴らしい迫力の舞台。鳥肌が立ちました。
この『リチュアルダンス』は浅田真央の持つ”負けん気”に火を点ける、本当に彼女らしいプログラムだったことがよくわかります。ローリー・ニコルはやっぱり素晴らしい振付師ですね。
また、浅田さんの滑りと動きは現役さながらで、公式戦のエントリーを確認したくなるほど。

それにしても、生ピアノと群舞のある『リチュアルダンス』の素晴らしいこと。
こうなると『恋は魔術師』の全幕を氷上バレエで観てみたくなります。
ヨーロッパでランビエールとコストナーが『ル・ポエム』という氷上バレエをやったとき、浅田さんも客演していますし、日本でも”浅田真央の氷上バレエ”があってもいいんじゃないでしょうか!
観たい!観たい!駄々をこねるほど観たい!
オープニングから私はもう興奮しておかしくなりそうでした!
(※続きはたぶんダラダラと書くことになりますので、どうか根気強くお付き合いください。)
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時代と村上佳菜子

昨日4月23日(2017年)、姉貴分である浅田真央に殉じるようにして引退発表をした村上佳菜子さんですが、報道陣に語った「すべてにおいて限界だった」という言葉は、心技体のすべてという意味なだけにとても重たいものでした。

ここ3シーズンの村上さんは国際大会や全日本でも目立った活躍がなかっただけではなく、まとまった演技をすることも難しくなっていました。
そこに下の世代からの突き上げがあり、日本国内での序列も徐々に下がっていったというわけです。
その不調の原因としては怪我もあったでしょうし、体型変化もあったと思いますけど(94年11月生まれ)、何よりもまず、いまの若手たちに比べて”ジャンプの種類”が少なかったことが大きかったはずです。
若手たちが4~5種類のトリプルジャンプを安定的に繰り出すのに対し、村上さんは不安定な4種類でずっと戦ってきました。
これでは勝負になるはずはありません。

ただ、だからといって私は村上さんがいまの若手たちと比べて劣った選手とは思いません。
これは”時代の差”です。
女子のジャンプというのはジュニアの頃に構成が定まり、シニアに上がった後に種類が増えるということはほとんどありませんけど、村上さんがジュニアだった時代のフィギュア界の潮流は、ジャンプの難度を上げたり種類を増やすのではなく、手持ちのジャンプを安定的に綺麗に跳ぶことでした。

なぜそうなったかというと、村上さんのジュニア最終年である2009-10シーズンまでは、ジャンプの回転不足(1/4回転以上1/2回転未満)はすべて”ダウングレード判定”というルールだったんです。
たとえば、基礎点5.0(当時)の3Loを少しでも回転が足りないと判定されれば、2Loにグレードが下がり、わずか1.50の基礎点となるばかりか、そこからGOE(出来栄え)もマイナスされてしまったわけです。
トリプルトリプルなどはハイリスクの代表格といえるでしょう。
現在は回転不足でも基礎点の70%はもらえるので、選手が受けるプレッシャーはまったく異なるものだったと思います。
このルールは2004-5シーズンからのものですから、村上さんなどは直撃世代といっても過言ではありません。
ノービスやジュニアをこの時代で過ごしていたら、ジャンプの種類を増やすよりも、跳べるジャンプを磨くという方向性になるはずです。
しかも、この時代はFSで3回の2Aが許されていたばかりか(いまは2回)、GOEの係数もトリプルジャンプと同じ値だったんです。
ISU(国際スケート連盟)が「複数のトリプルジャンプを跳ぶな」といっていたようなものです。

ですから、村上さんに近い世代というのは世界的に見ても修得ジャンプの種類が少ない選手が多いですし(トリプルトリプルなどは稀)、シニアに上がってからの体型変化によってジュニアの頃に跳べていたジャンプの回転不足に苦しむ選手も多くいました。
そして、そのせいか、あまり活躍した選手もいませんし、悲しいことに活動期間もとても短い…。
村上さんは同世代のなかでは最も活躍した選手だと思います。

そして10-11のルール改正によって3回転以上のジャンプがが跳びやすくなると、女子のレベルは一気に上がってゆきました。
私は毎年全中フィギュアを観にいっていますけど、国内でもそれは加速度的といっていい進歩です。
それまでのシングルスケーティングは進歩の止まった停滞期、まさに冬の時代といえるでしょう。
ですから、その時代に育った選手を”いまの視点”で評価することを私は好みません。
ジャンプの種類が少なくったっていい選手がたくさんいましたし、そのなかでも村上さんはFSの4分間を最後まで強度の高い演技で滑り続けられる類稀な選手でした。
そういう選手をいまの若い選手に比べて実力が劣ると簡単にいいたくありませんし、そういう意見に私は真っ向から反論したいと思っています。

また、村上さんといえば、バンクーバー五輪の翌シーズンに”ジュニア女王”としてシニアデビューしたことから、”次世代エース””ポスト浅田真央”としてメディアに取り上げられると同時に、日本スケート連盟からも熱心に応援された選手でもありました。
あの頃、スケ連やメディアが”次のスター”を作ろうとしていたのもまた”時代”です。
しかし、村上さんは実力がそこまで高い選手ではありませんでしたから(世界のトップを狙えるわけではなく)、世間の期待や注目というのが徐々に重荷になっていったのは想像に難くありませんし、ソチ五輪後は日本女子を引っ張る立場になったことでメンタル的にも「苦しく」なっていったのでしょう。
ファンに愛された選手も、時代には愛されなかったということかもしれません。

我々は村上さんから学んだことが2つあります。
ひとつはルールがどうあれ常に技術を追求しなければならないこと。
もうひとつはジュニア選手に過度な期待と注目をしないこと。
村上さんも今後は育成の方に進むそうですけど、きっと自分の色んな経験を生かしてくれるのではないでしょうか。

まずは『THE ICE』での最高の笑顔と元気な滑りを待っています!
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