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貴ノ富士の往生際

貴公俊といえば、双子の弟・貴源治とともに貴乃花部屋のホープとして知られ、十両にも昇進し、順調に出世街道を邁進しているかに思われた平成30年大阪場所中、支度部屋という公の場で付き人に暴行を加え、謹慎処分になったのは記憶に新しいところです(書類送検・起訴猶予)。
当時の貴乃花親方は日馬富士事件の”被害者側”として、暴力追放の旗頭を自認していただけに、この弟子の不始末は言行不一致そのものであり、これがのちの廃業に繋がったことはいうまでもありません。

そうして貴乃花部屋から千賀ノ浦部屋に移籍した貴公俊は心機一転、貴ノ富士と四股名を改め、十両への最昇格も決め、前の名古屋場所(令和元年)では11勝を上げ、いよいよ幕内も視野に入ってきたところでした。
その貴ノ富士がこの秋場所前に、またもや付け人へ暴力を振るった報道には、耳を疑ったひとも多いのではないでしょうか。
常識的に考えれば、”もう一度やったら終わり”ということはわかるはずですし、なによりも前の事件で恩師たる貴乃花親方を廃業に追いやったわけですから、二度と同じ過ちを繰り返さないよう自戒するというのがまっとうな人間のやり様です。

相撲協会では秋場所中にコンプライアンス委員会の調査が進み、貴ノ富士からの弁明も聞いた上で、秋場所後の9月26日、「自主引退を促す」旨の決議がなされました。7段階ある処分の2番目の引退勧告に準じるものですが、懲戒解雇でもいいような事案なので、協会としては若い貴ノ富士に情けをかけたといっていいでしょう。
懲戒解雇なら退職金がなくなってしまう場合もありますし、今後は角界と絶縁関係になってしまいます(部屋のコーチやアドバイザーなどにもなれない)。

そんんわけですから、この温情処分を貴ノ富士がすんなり受け入れるかと思われたのですが、意外な行動に出ます。
貴ノ富士は引退を断固拒否し、「処分が重すぎる」としてスポーツ庁に上申書を送ったんです。
提出は25日で協会からの勧告前ですが、千賀ノ浦親方や協会関係者から自主的な引退を勧められたことに反発したようです。
さらに今日27日には文部科学省で記者会見を開き、付け人や弟弟子に対する暴行や差別的発言は認め、
謝罪したものの、それは「指導」の一環であり、「言葉で出来なかったので手を出した」と説明した上で、「角界では暴力以外の指導方法を教えてもらっていない」「問題を起こした力士を解雇するだけでは暴力根絶にならない」といって、その責任を協会や親方になすりつける姿勢を見せました。

引退勧告を拒否したことも驚きですけど、行政に訴えたり、子供じみた言い訳を悪びれずに主張するなんて、もはや言葉もありません。
今回は暴力行為だけではなく、ミスをした付け人や弟弟子を障碍者と呼んだり、鶏扱いして(鶏頭の意でしょう)、返事を人間の言葉ではなく「コケ」といえと命じたりというモラルハラスメントのようなことまでしているのですから、より悪質といっていいでしょう。千賀ノ浦部屋では若い衆が3人逃げ出したそうです。

また、貴ノ富士のことを調査する過程で、双子の弟である貴源治にも新弟子への行き過ぎた指導が発覚し、けん責処分を受けています。
もちろんそうなれば千賀ノ浦親方の監督責任も問われ、6ヶ月間20%の報酬減額処分を下されていますが、双子力士や貴乃花部屋から無理矢理預けられただけに、千賀ノ浦親方に同情する向きもあるでしょう。
もともと千賀ノ浦部屋にいた力士には問題が出ていないわけですからね。
貴ノ岩も付け人への暴力で引退していますし、おそらく貴乃花部屋では暴力指導を容認していたのでしょう。「暴力以外の指導を教えてもらっていなかった」ということです。

とはいえ、私は正直、相撲の指導から暴力がなくなるはずはないと思っています。
そもそも稽古が暴力のようなものなんですから、ある程度見て見ぬふりするというのが格闘技の指導というものです。
しかし、公益財団法人となった相撲協会は、それを根絶すると宣言してしまいました。
ならばその道を突き進むしかありません。
貴ノ富士は訴訟をチラつかせていますから、おそらく今後は法廷闘争になるでしょう。
もっとも、過去に例でいうと、力士本人が問題行動を認めたケースでは、すべて協会が勝っていますから、裁判で協会の方針が揺らぐことはありません。

しかし、ルールや法で締め付けたって角界から暴力がなくなるはずがないんです。
根本的な理由は、相撲部屋という閉ざされた空間と、番付による絶対的な上下関係にあるんです。
度重なる暴力問題は、伝統的な仕組みと現代的な価値観の相違のせいです。
相撲協会がその改革に手を付けられるかどうか、私には裁判の行方よりもそちらの方がずっと気になります。
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令和元年の秋場所を制したのは

この令和元年秋場所は、両横綱も白鵬が2日目から、先場所優勝の鶴竜が8日目から休場、大関陣では髙安が初日から休場、角番の栃ノ心は膝の怪我で本来なら休むべき状態、同じく角番の豪栄道だけがまずまず元気という上位陣総崩れの酷い有様でした。
競技レベル的にも興行的にもファンと国民に謝らなければならないような場所だったといっていいでしょう。

そんななか、場所を引っ張ったのは間違いなく関脇・貴景勝でした。
膝の怪我で大関を陥落し、今場所10勝を挙げれば復帰が叶うという貴景勝でしたが、場所前の稽古総見でも調子は上がらず、かなり不安視されていたものの、初日から5連勝、その後連敗を喫するも、中日に同期で難敵の御嶽海を電車道で退けると、そこから連勝を積み重ね、12日目に10勝に達し、見事大関復帰を果たしました。
思いのほかすんなりいった印象です。

しかも、この12日目には優勝争いの方でも2敗で単独トップに立ちます。
そうして場所前の予想を完膚なきまでに覆したことで、そのまま一気に2度目の賜杯も掴みとるかと思われました。
将来の横綱昇進まで夢見たファンもいるかもしれません。

けれども、本場所はそう甘くはなく、翌13日目には高校の先輩、豪栄道の上手投げを食らって3敗。
豪栄道は大関の意地を見せました。
これで優勝争いは、貴景勝、御嶽海、隠岐の海の3人が3敗で並ぶ展開となり、その3人は翌14日目も星を揃え、混戦のなか千秋楽を迎えることとなりました。

気になる取組は、貴景勝と隠岐の海が直接対決、御嶽海は今場所好調の遠藤が相手。
これで優勝は3力士に絞られることが決まっただけではなく、決定戦の可能性も大きくなり、興業面では上位陣不在の影響を感じさせない千秋楽だったといっていいでしょう。

本割ではまず貴景勝が隠岐の海を下し、土俵下から次の御嶽海の相撲を見守ります。
貴景勝は常のように泰然自若としながらも、全身の闘志は熾火のように消さないでいるような雰囲気。
同期のライバルである御嶽海がきっと勝って、決定戦になる!と確信しているようでした。
そんなライバルの無言の応援と圧力を受けた御嶽海は、それを力に変えるようにして遠藤を一蹴。
誰もが期待する決定戦の顔合わせとなりました、
(※隠岐の海は敢闘賞をもらっていましたけど、今場所の活躍は本当に天晴れでした。協会は伏して感謝すべき。)

迎えた決定戦は両者の本割の内容が良かっただけに、勝敗の予想は難しいところでしたけど、中日の相撲を思い出すと貴景勝が有利か。
しかし、御嶽海は14日目に恥も外聞もない注文相撲で豪栄道をはたき込んだように、ここ一番でも何をするかわからない危険な男。
貴景勝の立ち合いに迷いが出れば、御嶽海の思う壺に突き落とされるのは必定です。

そうして軍配が返り、緊張と興奮が頂点に達した立ち合い、両者真向激しくぶつかった!
貴景勝にも御嶽海にも迷いはなし!
しかし、激しい攻防になるかと思われ刹那、貴景勝がすぐに引き、そのままあっけなく御嶽海が押し出して勝負あった。
御嶽海がどうだ!といわんばかりの表情をしている背後で、貴景勝は左胸を抑えて顔をしかめていました。
当たりでどこか痛めたのでしょう。
前の膝の怪我も相手も御嶽海でしたけど、貴景勝からするとまさに天敵です。
しかし、前のときも今回も特段激しい攻防があったわけではありませんから、怪我の原因は貴景勝のフィジカルにあると思われます。
怪我をしない体づくりをしなければ、夢の横綱も見えてきません。

その見えてこないでいえば、大関昇進を目指している御嶽海も同じことです。
今場所優勝したとはいえ、本割では同じ関脇の貴景勝に完敗、不調の栃ノ心は退けたものの、豪栄道には計画性の高い変化で勝ちを拾いにいったのですから、このまま大関になってその地位に相応しいかどうかといえば、大いに疑問符がつきます。
特に批判が集まっているのは変化した一番ですが、変化というのは「自分が格下だ」といっているのと同じことなんです。大関、それも先の長くないベテラン大関相手にそれをかますということは、自ら大関に相応しくないと宣言しているようなものです。

大事な一番で変化をする度胸や批判をものともしないメンタルの強さは、御嶽海の強味であり魅力ですが、その選択がその後にどう響くかよく考えることも覚えねばなりません。
信州に住む我々も、御嶽海が堂々とした大関になることを期待しているんです。
その点は貴景勝を見習うべきです。
敗れたとはいえ、決定戦での貴景勝は「変化上等!」といわんばかりの真っ直ぐな立ち合いを見せました。
あれは己の相撲道を真っ直ぐ貫く覚悟の成せる業です。
上を目指す力士のあるべき姿がそこにあったといっていいでしょう。

御嶽海が超えるべきは33勝の壁だけではありません。
覚悟の壁です。
来場所はそこに注目です。
おめでとう!の言葉はそこまでとっておくことにします。
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白鵬の帰化と国籍条項

ついにこの日が来たということなのでしょう、この9月3日(令和元年)、”日本国籍”を取得した横綱・白鵬は満面の笑みを隠し切れない様子でした。
モンゴル出身でありながら「昭和生まれで平成に育てられた」を口癖にし、心の半分は日本人といっていい白鵬だけに、よほど嬉しかったのでしょう。
これで年寄名跡を襲名することが可能となり、現役引退後も相撲協会に残れることになっただけではなく、さらには協会トップの理事長の座も見えてきました。

もっとも、白鵬は「2つの国が背中にのしかかってくる感じ。人間が変わるわけではない、モンゴルを愛せるから日本を愛せる」とも語り、”モンゴル出身”というアイデンティティーへの誇りは隠そうとしませんでした。
それもそのはずで、白鵬の父親はモンゴル相撲の大横綱であり、モンゴル初の五輪メダリストという英雄だったことから、白鵬もモンゴル国民の期待を一身に集めながら力士人生を歩んできたわけです。
もし、”年寄名跡に日本国籍が必要”という規約がなければ、彼はモンゴル国籍のままの襲名を目指したはずです。その希望も前々から口にしていました。
しかし、規約が変わるはずもなく、父親が昨年亡くなったこともあり、白鵬は日本国籍取得へと向かうこととなりました。

年寄株の国籍条項は、かねてより元外国人力士や人権派のひとびとから「国籍差別ではないか」という指摘が挙がっています。
これがあるため、引退後泣く泣く協会を離れた外国人力士もいますし(旭鷲山)、家族の反対を押し切って日本に帰化した力士もいます。
外国人力士の存在は、大相撲を華やかにし、競技レベルを上げ、興行的にもプラスになっているというのに、引退後の道が残されておらず、”使い捨て”というわけです。
事実を見ると、その通りかもしれません。

とはいえ、相撲協会の方にもいい分はあるんです。
大相撲の年寄(親方)というのは、他の格闘技団体でいうところのトレーナーやジム経営者になるわけですけど、それに加え、協会理事の選挙権と被選挙権を持っているんです。
日本国籍規定をなくしてしまうと、外国人理事が誕生し、それが増えれば協会の運営が外国人の手に委ねられることになり、そうなると日本古来の伝統を守り続けるのが困難になってしまうという理屈です。
これも一理ありますね。

ちなみに、プロスポーツ団体のなかには、国内外問わず、経営に外国人を入れない協会がありますし、外国人や外国資本がクラブ(チーム)のオーナーになれないようになっているところもあります。
Jリーグや日本プロ野球機構がそうですね。
伝統を守ることに加え、経営が不安定にならないようにするのが目的ですから、これを「差別」というひとはほとんどいません。
したがって、年寄名跡の国籍条項というのも差別にはあたらないといっていいでしょう。

ただ、かりに一部の年寄に理事への選挙権・被選挙権がないとすればどうでしょう?
協会運営には関わらず、力士の指導をするだけの部屋があるということです。
その部屋の親方(年寄)は外国人でもかまわないはずです。

私も相撲協会の運営に外国人が関わることへの危機意識を持っていますが、協会から外国人を完全に排除することには賛成できません。
なぜなら、大相撲はすでに外国人力士への門戸を開いているんです。
もともと、それを決断した理由は”新弟子不足”です。
大相撲独特の風習や他競技との待遇差から、体格や運動能力のある若者が大相撲を敬遠するようになり、外国人を助っ人としてスカウトするようになったわけです。
自分たちの都合で入門させた外国人を、引退後はポイ捨てというのは、いくらなんでも酷すぎます。
それ相応の扱いがあってしかるべきです。
彼らに対する感謝とリスペクトがなければ、それはまさに差別です。

相撲協会は、どのような形であれ、外国人力士が協会に残れる方法を模索すべきです。
それが受け入れた側の責任です。
帰化を強いるのは、大相撲らしいパワハラにしか見えません。
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令和元年5月場所、歴史的なトランプ杯

平幕優勝は「上位との対戦がない」ことを理由に、それを好まない相撲ファンもいますけれども、14日目の大関・豪栄道との相撲を見る限り、朝乃山(西前頭8枚目)は賜杯を抱くに相応しい実力を持っているといっていいでしょう。
立ち合いは豪栄道の踏み込みが鋭く、右差し左上手を許した朝乃山が不利に見えたものの、思い切りよく先に攻めることで豪栄道に後手を踏ませ、得意の左上手を取ったことで豪栄道の逆襲をしのぎ、最後は見事に寄り切って勝利を収めました。
大関と胸が合う相撲を取って完勝したのですから、文句のつけようがありません。

この次の取り組みで横綱・鶴竜が栃ノ心の変化に対応できずに敗れたことで、朝乃山の初優勝が決定。
令和最初の初場所で25歳の若武者が爽快な番狂わせを演じてくれました。
「大器」といわれながらも伸び悩んでいた朝乃山ですが、新時代を引っ張る力士のひとりになってくれそうです。
優勝、おめでとう!
(※栃ノ心は13日目に”疑惑の判定”で大関復帰の10勝目を逃していただけに、注文相撲でも会場は大盛り上がり。珍しい光景でした。)

そして今日の千秋楽は、安倍晋三総理夫妻に案内されたトランプ大統領夫妻が来場。
現役アメリカ大統領が大相撲を観戦するのは初めてということで、歴史的な一日となりました。
役力士の取り組みとなる最後の5番だけの観戦でしたけど、午後5時前に総理と大統領が入ってきたときの異様な雰囲気はちょっと記憶にありません。
警護は物々しいのに、観客はそれを一切気にする様子もなくスマホで写真を撮りまくり、なかなか興奮が静まらず、「座ってください」とアナウンスが入るなんて、初めてのことだったと思います。
天覧のときはお行儀良くしている相撲ファンたちも、ここぞとばかりにハメを外したのでしょう。

そこからの5番はどれも真っ向勝負で、力士たちも気合が入っていましたけど、トランプ大統領は相撲のルールがわかっているのかわかっていないのか、ポカンとした顔で土俵を眺めていました。
相撲は最も試合時間の短い格闘技だけに、仕切りも含め、その独特の間合いに慣れるのは時間が必要かもしれません。

もっとも、トランプ大統領の目的は観戦ではなく、表彰式だったのか、朝乃山にアメリカ大統領杯を渡すときは満面の笑顔でした。
表彰状の読み上げの際も「Reiwa One」としっかり入れ、自分が長い大相撲の歴史の一部になったことにご満悦といったところでしょう。
大相撲にも箔がつきましたし、Win-Winの一日でした。

こういうのは来てくれることに意味があります。
楽しんだかどうかではありません。
それは今回のトランプ大統領の来日にもいえることです。
首脳会談はするものの、”共同声明を出さない”ことが事前に明らかになっていたため、一部メディアや野党議員、有識者は「無意味だ!」と批判していますが、新しい時代の最初の国賓としてアメリカ大統領を迎えることそのものに意味があるんです。
現在のアメリカ中心の世界秩序を支えているのはいうまでもなく米英同盟(NATO)と日米同盟(太平洋同盟)です。
アメリカに対抗している国々は、これが少しでも緩むことを期待しています。
日本が民主党政権、アメリカがオバマ政権だった頃のことを思い出せば、その危険性はすぐにわかります。

いまの日本は、アメリカのグループに所属するのが最善の選択肢です。
令和も強固な日米同盟を維持せねばなりません。
アメリカの太刀持ち・露払いと揶揄されても、自分が横綱になるつもりがないのならば、そのポジションで十分なのです。
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栃ノ心のかかと。こういうときは流れと軍配を大切にすべき

令和最初の本場所となる5月場所は、12日目が終わった段階で、2敗に横綱・鶴竜と平幕・朝乃山が並び、3敗で関脇・栃ノ心が追うという展開。優勝争いはこの3人に絞られたといっていいでしょう。
そして今日13日目の注目は、栃ノ心と朝乃山の直接対決。
この勝敗は優勝争いを大きく左右すると同時に、先場所大関陥落した栃ノ心にすれば大関復帰の”10勝目”をかけた大一番。昨日一昨日と平幕に連敗しているだけに、これ以上の足踏みは精神的にもかなり厳しい。

立ち合いは、低く当たった朝乃山の踏み込みが鋭く、栃ノ心は受ける形となり、そのまま土俵際まで押し込まれたものの、ぎりぎりのところで叩き込んでの逆転!
栃ノ心は軽く拳を握り、安堵の表情を浮かべていました。
昨日、一昨日は緊張でガチガチになって、そのまま土俵を割っていましたけど、今日は執念を見せましたね。
場所が終わったわけではありませんが、「おめでとう!」といいたいです。

ただ、その喜びに水をかけるように、土俵下から物言いがついたことで、栃ノ心の顔は強張り、場内も騒然。
テレビで流されるスローVTRを観ると、押し込まれた際の栃ノ心の右かかとがわずかに土俵を割ったように見えたので、これだと審判も確認をしないわけにはゆきません。
しかし、どうやらVTRだと”ついていない”様子。
テレビ解説をしていた、朝乃山の師匠である高砂親方(朝潮)も、「軍配通りじゃないでしょうか」といって、潔く公平な姿勢を見せていました。
おそらく、テレビ視聴者も栃ノ心の勝ちだと思ったはずです。

ところが、審判団の審議が長い。
5分、6分と経過してゆきます。
”出た、出ない”の話ですから、ビデオ室からの示唆や俵の外の蛇の目(砂)の乱れですぐに判断できるはずなのに、この一番ではとにかく長い。
5人の審判がなにやら話し込んでいる様子から、かなりもめていることだけはわかりました。

そして、長い協議が終わり、阿武松審判長のマイクから発せられたのは、「行司差し違えで朝乃山の勝ちとします」という驚くべき裁定。
栃ノ心は呆然とした表情で花道を下がり、それを見守る会場はなんともいえない雰囲気に。

そのあとの結びで鶴竜が不覚を取ったことで、2敗は朝乃山のみとなり、早ければ明日にも朝乃山の初優勝が決まるという状況となり、この”疑惑の一番”はより重みを持つことになりました。
当然、マスメディアやネットでも大いに話題となり、映像や画像の検証がなされることとなりましたが、かなり微妙ながら、”蛇の目が乱れていない”ことから、「誤審ではないか」という意見が優勢のようです。

取組後の報道(ベースボールマガジン社)によると、5人の審判のうち、放駒審判(玉乃島)と湊審判(湊富士)が「かかとがついたのが見えた」と主張し、他の審判は角度的によく見えなかったとのことで、
その2人の意見に従って阿武松審判長が最終決断をしたようです。
相撲規則では、物言いの際は審判の多数決によって判断すると定められていますが、”見えてない審判”は決議への不参加を表明できますから、”見えた”という2人の意見が尊重されたのでしょう。
ビデオ室も映像が微妙過ぎて、はっきりとした判断を送れなかったようです。

大相撲には〈取り直し〉というルールがあるので、今回のような場合にはそうしてもいいように思われますが、取り直しは”同体”、つまり同時に土俵を割ったり、同時に土に着いたりしたときにしか用いないので、”土俵を割ったか割っていないかよく見えなかった”というのは取り直しの要件にはならないんです。
だからこそ今回、6分も審議をすることになったのでしょう。

この一番くらい微妙だと人間の目では正確に判断できないでしょうし、ビデオだって角度や距離の問題がありますから、完全に正しいとはいいきれません。
蛇の目だって、本当にすれすれだったら、乱れているかどうかもよくわかりませんよね。
土俵にはセンサーがついているわけではないので、もうお手上げです。

私は、こういうときは観ているひとの”納得感”を大切にすべきだと思います。
相撲の流れと、それを裁いた行事の軍配を尊重すればいいんです。
今回だって「軍配通り、栃ノ心の勝ち」にすれば、文句をいうひとはほとんどいなかったはずです。
大相撲は興行なのですから、審判にも”丸く収める”という感覚が必要です。

栃ノ心9勝止まり、朝乃山初優勝となれば、”歴史的誤審”として長く語られることになってしまいますぜ。
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かつしき

Author:かつしき
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