平成30年夏場所の光と影

昨日、千秋楽を迎えた平成30年夏場所は、横綱・鶴竜の堂々たる連覇と、大関取りを決定づける関脇・栃ノ心の13勝があって、笑顔の多い場所でしたけど、勝負には光と影があるもので、寂しい話題もありました。
怪我や病気のため、十両で相撲を取っていた元大関・照富士の幕下陥落が決定的になってしまったんです。
大関が幕下に落ちるのは史上初のことなので、誰もが”引退”の二文字を想像するところです。
ところが、照富士と伊勢ヶ浜親方は引退を否定し、どうやら現役を続けるみたいです。
こうなればじっくり休んで体を治して欲しいですね。

それにしても、負け続けた際の大相撲番付の転落の速いこと。
”大関”照富士は昨年の3月場所で13勝で優勝決定戦に進んでの準優勝、5月場所も12勝を挙げ、いよいよ綱取りかと思われたものの、7月場所は膝の古傷が悪化してわずか1勝5敗9休、角番で迎えた秋場所も1勝5敗9休みで大関陥落。
11月場所は5敗10休で関脇の座から滑り落ち、年が明けての初場所は8敗7休で十両へ。
そして3月場所では6勝9敗で負け越し、この夏場所では9敗6休で関取の地位を手放すことになってしまったわけです。
1年前は大関だったのが信じられません。

もっとも、照富士はまだ26歳(91年11月生まれ)ですから、また幕内に戻ってくる可能性もあると思います。
いま活躍中の栃ノ心だって、同じ26歳のときに膝の怪我で幕下に落ち、そこから這い上がって大関を確実にしたんですからね。
照富士が第2のサクセスストーリーを描いたって不思議ではありません。
大相撲は勝ちさえすればまた番付を上げられるんです。
再チャレンジが出来る実力社会です。
だからこそ面白いんです。

ただ、その実力社会も、頂点を極めると、その秩序の外に立場が置かれるのもまた大相撲です。
よく知られているように、横綱という地位はいくら負けてもいくら休んでも番付けが下がりません。
昨年の3月場所で照富士と優勝を争った横綱・稀勢の里は、その後7場所連続休場(全休3)という最多連続休場タイ記録を更新中ですけど、その地位はまったく揺るがないわけです。
照富士が来場所から大銀杏も結えず、黒の木綿廻しで相撲を取ると思うと、あまりの格差に愕然とします。

稀勢の里の来場所への出場はいまのところ判然としませんが、横綱審議委員会は出場勧告をするつもりも引退勧告をするつもりもないとのことです。
私はこれには甚だ疑問を感じています。
横綱には休場の制限がないとはいえ、7場所や8場所となれば1年以上になってしまうわけですから、さすがにどうかと思います。
貴乃花が7場所連続全休した際の横綱審議委員会は出場勧告をしたのですから、そのときと対応が違うのも”伝統を貴ぶ”大相撲として齟齬があるのではないでしょうか。
ここでなんの勧告も出来ないようならば、横綱審議委員会の存在意義が問われるというものです。

稀勢の里は来場所なにがなんでも出場し、10勝以上挙げられなければ引退。
それが潔さですし、名誉も守られるというものです。
恥という言葉を知っていれば、浴衣姿の照富士の前を、結城紬の着物で歩けませんよ。
人気ブログランキングへ
スポンサーサイト

いまとむかしの連続休場記録

今日5月14日、初日を迎えた平成30年大相撲夏場所の注目は土俵の上ではなく、その下の審判席に座る貴乃花親方だったらしく、観客席から「がんばれ!」と声援が飛んだみたいですね。
ごたごたのなか、あっという間に理事から年寄りにまで落ちた(5階級降格)貴乃花親方ですが、会場のファンと同じ目線に立ち、ここからまた大相撲の将来について考えていって欲しいものです。親方に成りたての頃の貴乃花の改革案は本当に新鮮でした。

その”貴乃花”でいえば、今場所はもうひとつ話題になったのが、横綱・稀勢の里の休場が貴乃花と同じ連続7場所になってしまったことでした。
稀勢の里は昨年初場所で優勝して横綱に昇進し、次の大阪場所で大怪我を負いながら連続優勝したものの、その後は途中休場を含め、1場所も皆勤がないのですから”横綱の責任”という意味では失格の烙印を押されても仕方ありません。
休場の原因となった左胸の怪我も、アクシデントというよりも土俵際で無理に粘ったせいなので自己責任でしょうし、その後も怪我をしっかり治すでもなく強行出場し、2場所連続途中休場したのも判断ミスといっていいでしょう。

そういうなかでの貴乃花と並ぶ最多連続休場記録ですから、当然横綱審議委員会やメディアなどから厳しい声が聞かれるかと思いきや、まったく聞こえてきませんよね。
それどころか、「じっくり治せ」というエールなのですから、ちょっと理解に苦しみます。
相撲界が一丸となってこしらえた”日本人横綱”への未練でしょうけど、稀勢の里はこの1年以上しっかり治せなかったんですぜ。

ちなみに貴乃花の休場が長引いていたときは、メディアも厳しい論調でしたし、横綱審議委員も苦言を呈し、最後は”出場勧告”の末に貴乃花が復帰してきたんです。
それまで6年以上も綱を張り、大相撲人気を牽引してきた平成の大横綱に対して、あまりにも敬意を欠いた対応でした。
ですが、貴乃花は復帰場所で白星を積み重ね、千秋楽まで優勝争いをしたのは本当に立派でした。
傲岸不遜な横審たちの横っ面を引っぱたいたようで本当に痛快でした。
しかし、貴乃花は自分のタイミングで復帰できなかったせいか、怪我が再発し、次の場所を全休、その次の場所は出場したものの自分の相撲が取れず、引退を決断することとなりました。
いま思えば、もう少しじっくり治していたら違った引退のタイミングになっていたかもしれませんね。
年齢でいってもいまの稀勢の里より1歳以上若かったですし…。

これは私の推測ですが、おそらく稀勢の里は内々には”引退”を漏らしているのだと思います。
2日前、稀勢の里の休場を発表した田子ノ浦親方が記者の前で涙を流し、明らかに挙動不審だったのは、稀勢の里を慰留しているからではないでしょうか。
”もう一場所あれば”という奇跡を願う気持ちに他ありません。
ただ、来場所は休場すれば新記録ですから、どんな状態であれ出場し、黒星が先行すれば引退になるはずです。
多くの相撲ファンはそれをわかっているはずですし、名古屋場所のチケットは飛ぶように売れるでしょうね。
興行のために無理やり作られた”日本人横綱”らしく、最後も興行に貢献するというわけです。

稀勢の里は土俵の上でも下でもガチンコで、メディア対応も素っ気なく、興行力士ではなかったはずなんですけど、なんだか悔しい思いがします。
人気ブログランキングへ

大相撲を女人たちが守る

このところなにかと注目を集める大相撲ですが、悲しいことに悪い話ばかりなので、たまにはなにかいい話がないかなあ、と思っていたら、今度もやはり残念なニュースでした。

この4月4日(2018年)の舞鶴市での春巡業、土俵上で多々見良三市長(67歳)が開会の挨拶をしている最中にその場に倒れ込んでしまったんです。
土俵下にいた関係者(すべて男性)が駆け上がり、市長の状態を見ると、心臓が止まっていたらしく、心臓マッサージに入ったのですが、手慣れていない様子で、それに見かねた数名の女性観客が土俵に上がり、マッサージを交代します。
医療の心得があるのでしょう(看護婦さんと思われます)、女性たちは警察と救命が到着するまで堂に入った処置を見せていました。
動画サイトに上がっていた映像では観客もこれに感銘を受けたのか、賞賛するようなどよめきが起こりかけるなか、会場に流れた相撲協会からのアナウンスは「女性の方は土俵から下りてください」という無機質な言葉。
こういう緊急時でも”土俵は女人禁制”が大切ということなのでしょう。
女性たちも巡業に来るくらいなのでそれを知っていたのでしょう、ちょっと笑いながら土俵を降りて行きましたけど、「ありがとうございました」というアナウンスがあってしかるべきですよね…。

もちろんこの相撲協会の杓子定規な態度には批判の声が上がり、八角理事長も「とっさの応急処置をしてくださった女性の方々に深く感謝申し上げます。行司が動転して呼びかけたものでしたが、人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くおわび申し上げます」とのコメントをすぐに発表することとなりました。
女人禁制のしきたりはわかりますけど、こういうときはそれを横に置いておくのが粋ってものですよね。
不満な様子もなく、笑いながら土俵を降りて行った女性たちの方がずっと粋でした。

おそらくこの一件を機会にメディアでは女人禁制の是非が議論の的になり、一部の男女平等論者が騒ぎ出すはずです。
太田房江元大阪府知事が大阪場所で自ら府知事賞を贈呈するために土俵に上がりたいと要望し、断られたのが2004年ですけど、議論が再燃するかもしれません。
ちなみにその04年のときは、横綱審議委員も務めた女性作家の内館牧子さんが、相撲が神事を基していることと、大相撲が200年を超える伝統を持っていることを理由に、女人禁制を支持したことから、男女平等論者はすぐに口をつぐんでしまいました。

私も内館牧子さの意見に賛成です。
たとえば日本には女性が立ち入れない宗教施設や霊場がまだまだたくさんありますし、女性は宮司になれないというしきたりもありますが(神社本庁管轄)、”時代に合わない”という理由だけでそれを変える必然性がわかりません。
しきたりや伝統というのは一度壊してしまえば元に戻らないものです。
そうなってしまえば、我々は過去の人間の宗教観や美意識といったものを学ぶ手段を永遠に失うのです。
平等論者が反対すべきは、新たに作られようとする女人禁制や男人禁制です。

そして、その伝統やしきたりでいうと、私は力士と行事、呼び出し以外が土俵に上がることも違うのではないかと思うんです。
たとえば神社の本殿は宮司しか立ち入ることができないのですから、土俵を神聖な場所というならば、それに倣うべきです。
大相撲の表彰式で一般人(男性)が土俵に上がるのは江戸時代の資料にはないので、おそらく昭和からでしょう。
しきたりでも伝統でもありませんし、その光景は美しくもありません。
今回の舞鶴市の一件も市長挨拶が土俵下ならば、トラブルは避けられました。

また、神事の際は眼鏡や腕時計、ピアスなどといった貴金属類を身に付けないのが日本のしきたりです。
祭祀を執り行う宮司や舞を奉納する巫女を見ればわかりやすいですし、相撲の行事や呼び出しだってそうです。
それなのに協会挨拶で理事長が時計や眼鏡をしながら土俵に立っている。
しかも、その口で”女人禁制”をいうのですから甚だおかしいわけです。

今回の一件で大相撲は伝統やしきたりをもう一度見直して欲しいものです。
見習うべきは、命の尊さと同時に、伝統としきたりも守ろうとしていた女性観客たちですね。
人気ブログランキングへ

止まらない暴力問題はその場しのぎのツケ

”初の双子関取誕生”といって貴公俊が師匠である貴乃花親方と華々しい記者会見を開いたのが2月26日(2018年)。
暴力事件や無免許事件、セクハラ問題に揺れていた大相撲界にとって、久々に明るいニュースでした。
ところがそれから1ヶ月も経っていないというのに、その貴公俊がこともあろうに本場所中の支度部屋で付け人を殴打してしまうのですから本当に残念としかいいようがありません。

ただ、この暴力事案の経緯にはやや同情するところもあって、土俵下の控えに入る時間を告げることになっていた付け人がそれを遅れて伝え、慌てて会場にすっ飛んで行った貴公俊は境川審判委員に注意をされた末に、取り組みでも敗れてしまったんです(3勝5敗)。
それでおそらくムシャクシャした貴公俊は支度部屋に戻ってから付け人をぶん殴ってしまったのでしょう。
支度部屋には他の力士や協会員、メディア関係者もいたということで、目撃証言によると拳での顔面への殴打は数発に及び、さらには腹部に膝蹴りも入り、付け人は口から血を流していたとのことです。
”傷害事件”になる可能性もあるかもしれませんね。

それにしても貴公俊は頭に来ていたとしても、とんでもない時期に問題を起こしてしまったものです。
昨年の日馬富士事件から角界の暴力体質はメディアでも議論の的になり、世論も厳しい目を向けるようになりました。
”かわいがり”や”独特の上下関係”という言い訳は通用しなくなってきたわけです。
そして相撲協会も暴力追放の方針を固め、力士たちへは稽古場でもそれ以外でも暴力を振るわないよう誓約書まで書かせる事態になりました。
それなのに衆人環視の支度部屋で付け人を血まみれにさせるのですから、貴公俊は本当に愚かなことをしたものです。

しかも師匠である貴乃花親方は暴力追放の急先鋒として日馬富士事件では相撲協会と対立するほどの強硬な態度を取り、結果日馬富士を引退に追い込んだわけです。
貴乃花親方は”暴力があった際は協会の内々で処理するのではなく、警察に届け、加害者は法的に裁かれるべき”という主張を貫きました。
今回は加害者も被害者も自分の部屋に所属する人間ですけど、親方がどう処理するか注目です。
とりあえず明くる今日3月19日から貴公俊は休場することとなりました。

そして相撲協会でも危機管理委員会が貴公俊とその付け人(序二段)からの事情聴取を終え、それを元に今後協議をし、場所後にはなんらかの処分が下される見込みのようです。
ちなみに同じ暴力問題でいうと昨年11月に日馬富士が引退勧告を前に自ら引退、無免許での追突事故(怪我人なし)を起こした大砂嵐が大阪場所前に引退勧告を受けて引退しています。
一部報道によると貴公俊は「相撲を辞める」といって自らの愚行を悔やみ、涙を流したと伝えられていますけど、最近の事例と比較すれば引退勧告を受けても不思議ではありません。
今回は将来有望な”若手日本人力士”だけに相撲協会も頭を抱えていると思いますけど…。

私は日馬富士(罰金刑)のときも大砂嵐(罰金刑)のときも、もっといえば朝青龍(傷害容疑・示談もあり不起訴)や琴光喜(野球賭博・容疑不十分で不起訴)のときも引退まで追い込むのは反対でしたし、このブログでもそう書いています。
もちろん貴公俊にも相撲を続けて欲しいです。
それはただ単に彼らがいい力士でもったいないというのではなく、一般社会や他のスポーツ界と比較して引退・廃業が重すぎると感じたからです。
例えば公務員は禁固刑以上で解雇されることが法律で定められていますが、上記の4人は誰も禁固刑以上にはなっていません。
Jリーグやプロ野球でも身柄を拘束されないような軽微な事件を起こす選手がたまにいますけど、そういう場合は出場停止何試合とか何ヶ月とかいう処分ですし、逮捕されるような事件でリーグを追放されても数年後に復帰しているケースもあります。

それに対し、大相撲は常に厳しい処分を取っていますけど、その多くが騒ぎを鎮静化させるためだったり、トカゲの尻尾切りをして他に波及しないようにするためです。組織防衛といってもいいでしょう。
しかし、それは”その場しのぎ”にすぎません。だから同じことを繰り返すのです。
”国技”を名乗り、国民からの信頼を得たいのであれば、問題を起こした力士と一緒に反省し、更生するというプロセスを踏むべきです。
それが公益財団法人として公益に適った態度ではないでしょうか。
人気ブログランキングへ

春場所を荒らす男

〈タニマチ〉の語源は大坂の谷町筋に住んでいた相撲好きのお医者さんといわれていますが、そのタニマチがたくさんいて、力士たちを連れ回すので、大阪場所は〈荒れる春場所〉になるともいわれているわけです。
今日3月11日に初日を迎えた平成30年春場所も2大関が敗れるという波乱の幕開けとなりました。

しかしそれ以上に荒れているのが土俵の外です。
その主人公はみなさんご承知の貴乃花親方。
昨年秋の〈日馬富士問題〉から相撲協会執行部と大喧嘩を続けている貴乃花親方ですが、2月の理事選で落選したことで大人しくなったかと思われたものの、そこで立ち止まるような人間ではありませんでした。
一昨日9日、内閣府の公益認定等委員会に対し、日馬富士問題への相撲協会の対応と、その際貴乃花親方を処分したことについて重大な疑義があるとして告発状を送ったというのです。

日馬富士問題では理事会から独立した調査委員会が調査を行い、それをもとに最終決定機関である評議委員会が日馬富士とその師匠である伊勢ケ浜親方の処分、そして調査に非協力的だったことを理由に貴乃花親方の処分を決定したわけですが、貴乃花親方はその調査の仕方も、処分の決定も不公正で不当だと訴えているとのことです。
(※私は大砂嵐の解雇こそ過去の事案と比べて不当に重いと思うのですが、誰かそれを訴えて欲しいものです。)

本場所目前での貴乃花親方の”反乱”のおかげで、理事会には動揺が走り、八角理事長らはメディア対応などで大童となっているようですが、場所への影響も否定はできません。
親方衆の多くも困惑している様子で、「本場所が始まるという時期に…。何が目的なのか分からない」(日刊スポーツ)との声もあるようです。
2月の理事会で一応の決着を見たわけですから、親方衆としては”これからはみんなで大相撲を盛り上げよう!”という気持ちだったでしょうに、水を差されたという思うでしょう。
貴乃花親方は「土俵の充実」と常々語っていますが、行動は矛盾しているとしかいいようがありません。
告発するにしても”場所後”という選択肢があったはずです。

いまの貴乃花親方はなにを目指しているのかわけがわかりません。
日馬富士問題に対する頑なすぎる態度も、多くの親方衆や力士たちを困惑させ、強固だった貴乃花一門の結束を弱めたともいわれていますが、今回の告発でさらに孤立を深める可能性が高いといっていいでしょう。
なによりも残念なのは、このところの貴乃花親方は以前のように”具体的な改革案”を語らないことです。
親方になりたての頃に発表した改革案などは少々突飛ではありましたが大相撲への愛と情熱が溢れたものでした。
そこに希望を見た大相撲ファンも多いはずです。

それなのに、いまの貴乃花親方は大相撲を”荒らす”だけの存在にしか見えせん。
これまで応援していた相撲ファン、貴乃花ファンも離れてしまいますぜ…。
人気ブログランキングへ
プロフィール

かつしき

Author:かつしき
FC2ブログへようこそ!

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード