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ロンドン五輪最終日(後)選手のみなさんありがとう

(続きです。)
私は五輪だけではなくスポーツ観戦(生・テレビ)というものが大好きですが、それは好選手たちの強さや速さや高さや美しさを”芸”として堪能するだけではなく、ひとが人生を賭けた瞬間を観られることの感慨がそこにあるからです。
ひとはみな仕事だったり打ち込んでいることだったりで、大勝負をすることがあるわけですが、普通はそれを他人が覗き見ることは叶いません。
しかし、スポーツはそれが出来る。
そして強烈な具体性を持って観る者に訴えかけ、さらには選手たちが自分の思いを語ることでより深い理解が生まれる。
私はそれが楽しいわけです。
その意味でいえばこのロンドン五輪はとても満足のゆく大会でした。日本選手たちが史上最多となる38個のメダルを獲得し(金7、銀14、銅17)、色んな競技で決勝進出してくれた上に、素晴らしいコメントの数々を残してくれましたからね。本当に誇らしい代表団でした。

また、今回活躍が目立った団体競技・団体種目ですが、そこにはやはり東日本大震災を含む多くの災害が影響していたことは想像に難くありません。
日本は”わ”の国ですから、やはり団結したときに力が出る、それを体現してくれた選手たちには私も感謝の気持ちでいっぱいです。
そしてこの団結力というのは選手だけではなく、それを支えるコーチやスタッフ、役員のみなさんが加わった力でもあると思うんです。現代スポーツはひとりでは戦えません(※柔道だけはこれが足りなかったように見受けられます)。
そのサポートといえば、今大会では文部科学省直轄事業として、選手村から徒歩10分の場所にマルチサポートハウスという施設を設置したのも効果的だったように思われます(普段ダンスホールなどに利用される3階建ての劇場を借り切ったそうです)。
そこでは日本人シェフが選手村にはないきちんとした日本食をこしらえたり、練習や試合後の体のケアをする設備やスタッフ・情報分析スタッフが揃っていたり、柔道やレスリングのためのだだっ広い練習場が用意されていたりしたというのですからいたれりつくせりです。
5億4000万円ほどの費用がかかったそうですが、必要なものは揃えるべきですよね。

そうして大興奮のロンドン五輪が終わり、選手たちが帰国した8月20日には銀座に50万人ものひとびとが集まったメダリストパレードが華々しく行われ、笑顔と歓喜でロンドン五輪の思い出に華をそえてくれました。こういうときって東京のひとが羨ましい!
また、テレビニュースなどによればその前には各選手が自分の地元に帰って大歓迎を受けていたようです。
その映像を見ていると、小さな町の小さな道場、小さなプールから世界に羽ばたいていった選手がなんと多いことかと驚かされます。
地元のひとたちの熱い応援、そして無欲な草の根の指導者たちの存在。
私はそれこそが日本のスポーツの強みだと思っています。
だからこそ国や企業はそれを支える度量を持ち続けて欲しい。スポーツを軸に選手と地域と国と企業が連携すれば、日本はもっと明るく元気で前向きな国になるはずです。

そして、その魁となってロンドン五輪で活躍した日本選手のみなさん、本当にありがとう、2012年は忘れられない夏になりました。
みなさんを誇りに思います!
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2020年は私利私欲にまみれていない、新たな形の五輪を東京が提示するときです。
選手も観客も最高の思いができる、最高の五輪を!
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ロンドン五輪最終日(前)

長かったロンドン五輪もこの8月12日で最終日(競技16日目)。
日本は前日までに獲得したメダル総数が37と、歴代最多のアテネ五輪に並んでいるので、最終日でそれを越えられるかどうか。しかもこの38個目は日本の夏季五輪通算400個目なので記録尽くめ。
誰が有終の美を飾るのか、競争です!

五輪の最終日といえばなんといっても男子マラソン。これだけは閉会式で表彰式が行われるので勝者は五輪の”顔”になれちゃいます。
今回の日本勢の目標は入賞でしたけど、日本の3選手は12キロくらいから先頭集団にはついてゆけなくなり、その目標も危うい感じ。
夏の五輪でもしかも曲がりくねった市街地コースということでスローペースが予想されましたけど、先頭集団は普通に速い!
そんななか、藤原新がねばっこい走りで10位集団(第2集団)に食らいつき、そのまま中間地点を過ぎ、8位入賞の可能性を日本のファンにアピールすると、23キロには中本健太郎が地道な走りでその集団に加わります。日本ランナーはやっぱりねばりです。

30キロくらいからは先頭集団から脱落してきた選手が第2集団に加わってきて、日本選手の順位はアップ。入賞が現実味を帯びてきました。
しかし徐々に第2集団からも脱落者が出るなか、33キロ過ぎから藤原がみるみる下がってゆきます。走りに力が感じられませんでしたし、「ガス欠」だったんでしょう。
逆に中本の方は調子がよさそうで、第2集団を引っ張り、一時は5位まで浮上。
ただ、それでも4位からは1分ほど、先頭からは2分以上遅れていたので、そこからの上積みは難しいか。

そして先頭集団では37キロにさしかかろうかというところでウガンダのキプロティクがスパート。これに他の2選手はついてゆけず、キプロティクとの差が少しずつ広がると、キプロティクは独走状態のまま2時間8分1秒で見事優勝!
中本は4位をうかがう走りをしたものの6位でフィニッシュ、しかし目標は達成!
山本亮は40位、藤原新はへとへとになりながらも45位で完走。
おつかれさまでした!

しかし、この優勝したスティーブン・キプロティクってまだ23歳と若い選手で、実績もほとんどなく、今年2月の東京マラソンだって藤原新に次ぐ3位だったんです。
それが半年ほどでこんな強い選手に生まれ変わっているんですからおみそれしました。脱帽です。

男子レスリングフリースタイル66キロ級では今大会の男子レスラーでは最も期待されていた米満達弘の登場(11年世界レスリング銀メダル)。
しかし、初っ端(2回戦)に当たったのが強豪で合口の悪いロペスヌネス(キューバ)。
いきなりの難敵相手に第1ピリオドはタックルで1ポイントとっての逃げ切り、第2ピリオドでは31秒にタックルを返されてバックで1ポイントを奪われるも、1分18秒にバックを取って並び、相手の攻めをなんとかしのいでラストポイントでの勝利!しんどかったあ。
3回戦のベラネス(カナダ)はさほど強い相手とも思われませんでしたが、第1ピリオドは延長のボールピックアップで有利なボールを引いたものの攻めきれず落としてしまう米満。ちょっと用心しすぎた感じでしょうか。
しかし、第2、第3ピリオドはあっさり相手を制して着実な勝利。さすがメダル候補!強い!
次は歴史的メダル獲得がかかった準決勝でしたが、米満はそんなことに惑わされることなく、ハサノフ(アゼルバイジャン)を確実に料理し、2-0で決勝進出。集中力も高まってきて、ゾーンに入ってきた感じです。テレビで観ていて鳥肌が立ちました。

そして決勝の相手はインドのスシル・クマール。2010年世界レスリング同級王者。最後の難関です。
米満のセコンドにはアテネ五輪フリースタイル55キロ級銅メダルの井上井謙二。
スタンドから見守るのは日本レスリング協会男子強化委員長でソウル五輪のフリースタイル52キロ級金メダルの佐藤満。
日本レスリングの歴史と伝統を背に、やってやれ米満達弘!新たな未来を切り開くために!

第1ピリオド、集中したいい表情の米満は立ち上がりから相手に圧力をかけ、1分にはタックルからバックで1ポイント。その後はクマールも取り返そうと攻めにきますが、あまり迫力もなく、米満がピリオド先取!
体つきに対して手がとっても長い米満はタックルもよく決まりますし、守りに入ったときも相手との距離感を取るのが上手いです。
しかし相手も元世界王者、このまま簡単に勝たせてくれるはずはありません。第2ピリオドは接戦になるでしょうね、きっと。
なんて思っていた矢先の開始30秒、米満の胴タックルが深く入って、そのまま抱え込んで持ち上げると思い切りクマールをマットに叩きつけて3点奪取!弩迫力でした!
クマールはこれで戦意を喪失したのか、その後も追いすがる気力が感じられず、終盤には米満が時間をつぶすように背を取らせるとまんまとこれに引っかかって、1ポイント奪ったものの、タイムアップ。優勝は米満!
まさに完璧な勝利。勝つべくして勝った!日本男児は強い!

長い腕をぷらぷらさせた不思議な踊りで喜びを表現し、日の丸をはためかせながらマットを駆け回る米満。
歴代最多の38個目のメダルを金で締めただけではなく、これは男子レスリングでも佐藤満以来24年ぶりの金、そしてなんと夏季五輪で日本が獲得した130個目の金メダルという記録尽くめ!
この12日の日本はお盆前日の日曜日で、試合時間はゴールデンからプライムにかけてのものでしたから、どれだけの日本人がこの快挙を生中継で目にしたかしれません。米満が聞かせてくれた君が代に胸が熱くなったひとも多かったんじゃないでしょうか。
”持っている”とはこういうことをいうんでしょうねえ。ロンドン五輪最終日に新たなスーパーヒーロー誕生です!

この米満の活躍でロンドン五輪は日本にとってさらに素晴らしい五輪となりました。こんなプレゼントってなかなかありません。
ありがとう、米満達弘、今五輪のユニフォームには虎の顔が描かれていましたけど、あなたこそ現代のタイガーマスクだ!
(”まとめ”に続きます。)
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ロンドン五輪競技15日目(後)ボクシング村田金メダル

(続きです。)
槍投げ決勝は村上幸史団長が予選落ちしてしまったので、期待はイギリス人の父を持ち、ロンドン五輪に並々ならぬ意欲を燃やすディーン元気に集まります。
その1投目、右にそれてファウル。距離は70mを超えたくらい。早くフィーリングをつかんで欲しいところ。
ただ、1投目での80m超えは2選手のみ。どうやら気温が低く各選手調子が出ない模様。
驚きはトリニダード・トバゴの19歳、ウォルコットが83m51のベストで首位に立ったこと。
ディーンの2投目は79m95とまずまず。倒れこみのフォームもばっちり。
優勝候補にはトルキルドセン(ノルウェー)やピトカマキ(フィンランド)らベテランが多いので肌寒いコンディションは若手に有利なのかも。ディーンは自己ベストが84m28ですから、そこに近い距離を投げればメダルだって夢じゃない!
なんて思っていたらトルキルドセンもピトカマキも82m以上投げちゃいました…。
ただ、この2投目、またしても驚きはウォルコットで自己ベストをさらに更新する84m58!

槍投げ決勝は3投目までで上位8人に残っていなければ4投目以上に進めないシステム。
ディーンは2投目を終えた時点で8位でしたから、記録を伸ばさなければまずい3投目、頼むぞディーン、日本国民の楽しみも引き伸ばしてくれ!
そんな祈りが篭った投擲でしたが、バランスがかみ合わず、75m付近に落下。これをわざとファウルにするディーン。
こうなれば残り選手4人の失敗を待つしかありませんでしたが、3人目のハーバーがディーンを超えて結局、ベスト8入りはならず(10位)。残念でしたけ初の五輪で決勝まで進んだんですから、大したものです。
まだ大学生のディーン、記録をガンガン伸ばして、次のリオ五輪ではメダル候補だ!

ちなみに優勝はそのままウォルコット。無名の若者が一夜にして王者になりました!
2位は3投目に84m51を投げたウクライナのピヤトニシア、3位は5投げる目に84m12を投げたフィンランドのルースカネン(予選で88m34を投げたチェコのベセリーが83m34で4位に終わったのは予想外)。
3連覇を狙っていたトルキルドセンは82m63で6位、ピトカマキは82m80で5位でしたし、槍投げも世代交代のようです。

ロンドン五輪の陸上競技を締めくくる男子4×100mリレー。
北京五輪の銅メダルチームとして予選4位(3位のカナダと0秒02差)で堂々決勝に進出した我らが日本チームは、1走の山縣亮太、2走の江里口匡史とまずまずの位置をキープをできたものの、江里口から3走の高平慎士にバトンが渡るところでややもたついて真ん中より下になってしまうと、高平の美しいコーナーワークがあったものの、4走の飯塚翔太の段階ではかなり難しい状況となって6位フィニッシュ。
優勝はもちろんジャマイカで、ボルトやブレイクといった反則級のメンバーで36秒84の世界新記録を樹立。アンカーのボルトが個人競技のときとは別人のようにゴールまで全力で駆け抜けたのが印象的でした。それにしてもジャマイカは速すぎますね。
2位は3走まではジャマイカと競っていた37秒04のアメリカ(ナショナルレコードなんですよ!)、3位はカナダ、だったんですけどどうやらバトンパスのテイクオーバーゾンを超える違反で失格。国旗を肩にかけうなだれるカナダチーム。ちょっと可哀想でした…。
日本は38秒35で6番目にゴールしたものの繰り上がりで5位。
3位は38秒12でトリニダード・トバゴ、4位は38秒16でフランスでしたから、日本だって予選の38秒07を出していればメダルを取れたんです。
ただ、惜しくも敗れたとはいえ100m×4リレーで”メダルの可能性がある”というだけで世界に誇らしいことです。アジアの陸上選手たちに希望を与えているのは間違いなく日本人です。

それに今回の日本チームは若手主体ですから今後はもっともっと記録を伸ばしてくれるはず。
そんなか、もちろんチームの中心にいたのは北京五輪銅メダルメンバーの高平慎士。
「自分の走りが納得いかない。申し訳ない。目指していたところにたどり着けなかった。悔しいが色んなひとのサポートがあってここまでやってきたので胸を張って帰りたい。伝統のバトンをしっかりつなげてゆくことが大切だと思います」、さすがのコメントです。
伝統のバトンが今後どうつながってゆくのか楽しみ!

古代のヨーロッパ(やエジプト)にその原型があったとされるボクシング。近代的なルールや組織を作ったのもイギリス人ですから、これはもう完全に西洋の価値観に基づくスポーツなわけです。
そんななかで私がなんとも他の国々に失礼だと思うのは、フライ級(ハエ)だとかバンタム級(鶏の一種チャボ)だとかフェザー級(羽)だとかいう階級名称。これらはみなライト級(60キロ)より下の階級なんですけど、ヨーロッパ人ってほんと自己中心的です。
しかし!このロンドン五輪でそんな価値観に強烈なパンチを食らわせ続けているのがミドル級(75キロ級)の村田諒太。必殺のボディブローと強靭なスタミナで世界の猛者たちを退けての決勝進出です。

金メダルを賭けて戦う相手はブラジルのエスキバ・ファルカン。昨年の世界選手権では村田が勝利をおさめてはいるものの、ファルカンは準決勝で地元イギリスの選手を圧倒して16-9での勝ち上がり。調子はかなりよさそう。村田は前半は相手の攻撃を耐えながらお返しにボディを入れる”肉を斬らせて骨を絶つ”ボクシングでここまで勝ち上がってきましたし、それをやるしかない!

ところが村田は1R目から上下を打ち分けるいいボクシング。ファルカンがなぜか村田が得意な中間距離で打ち合ってくれるので、ボディも入っていましたし、フックもアッパーもいいのが当たるんです。
1Rは5-3。立ち上がりから村田がリードするのはこの五輪では珍しい展開。
しかし2Rになると急に足を使い始めるファルカン。遠間から打ってきて、村田が距離を詰めるとクリンチという繰り返し。村田はこれになかなか対応できず、2Rは4-5。
たぶんこのやり方がファルカンの村田対策だったんでしょうけど、1Rは浮き足立っていたというですかね。

ちょっと嫌な流れのまま3R開始、普段はこの最終Rに強い村田ですが、どうもこの日はスタミナ切れ。相手の方が元気なんです。2Rで相手にペースを握られて得意のボディもあまり入れられなかったこともあれば、1Rの攻め疲れもあったのかも。
村田が1ポイントリードしているということでファルカンは逆転しようと気合のラッシュ。ただし足を使って村田の距離にはならないようにしるのは忘れません。
村田は必死のディフェンスから、とにかくボディ。こうなればもう得意技を繰り出すしかない!
けれども、徐々にへろへろになって腰が回らず、パンチに威力がなくなってくる村田。ファルカンの打撃音とは雲泥の差。
”有効打”の数で競うアマチュアボクシングですが、その有効打は的確性と威力で判断されるのでこれはまずい。ポイントが同点になった場合の判定にも響きそうですし…。

私もことここまでくると異常な興奮と焦りと祈りと願いとなんやかんやでもうおかしくなって、「がんばれ、村田、がんばれ!」、日本は朝の6時過ぎだというのにかまわず大声で叫んでいました。みなさんそうだったんじゃないでしょうか(近所の方々すみません)。
そうこうしているうちに村田のボディが効いてきたのか、打ち合うのを嫌がってクリンチばかりしてくるファルカン。序盤から注意をされていたので本当はやっちゃいけなかったんでしょうけど、こらえきれなくなったみたいです。
そしてこれに減点2!大きい!
しかもこれで抱きつけなくなったファルカンと村田にはいい具合の距離ができて、終了間際には村田の渾身の右ストレートがヒット!絵に描いたような美しいパンチ!
そして終了のゴングが鳴り、両手を挙げて勝利宣言したのは村田。ファルカンはうなだれ気味。
私の脳内計算でも村田の勝ちと出ていましたけど、何があるのかわからないのが五輪のボクシング。
私ももう立ち上がってしまって、テレビの前ではあはあはあ、と異常な息遣いで判定を待っていると、出た、14-13で村田勝利!金メダル!
最後の一発が大きかった!やったやったやったー!
ミドル級での優勝というのは歴史的快挙であり偉業なんですけど、ただ、終わってみれば、ひとりの男が全力で戦って栄光を勝ち取った、そんなシンプルなことこそが素晴らしいのだと、そう思います。
おめでとう、村田諒太、熱狂と興奮をありがとう!
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ロンドン五輪競技15日目(前)女子バレー28年ぶりの銅メダル獲得

この8月11日でロンドン五輪も競技15日目。12日が閉会式ですから、もう色んな競技が終わってゆくんですよね。少し寂しいような思いはありますけど、日本はここまで連日メダル獲得の大健闘ぶりなのでこのまま気持ちよく大会を駆け抜けて欲しいです。

メダルが期待される女子バレー、いよいよこの日は運命の3位決定戦(準決勝はブラジルに負けました)。
それにしても今大会の日本バレーは運がありましたよね。予選プールAを3勝2敗の3位で勝ち上がったものの、その2敗は格上のロシアとイタリアで、3勝はすべて格下のチーム相手。それで決勝トーナメント1回戦でアジアでのライバル中国を大激戦の末に下して、ベスト4だったんですから、自分たちと同等以上のチームには中国以外に勝っていないというわけです。
そしてまた特筆すべきは3位決定戦の相手が韓国だったこと。
ここの組み合わせは大方の予想だと日本が予選プールAで1-3と敗れたイタリアが上がってくると考えられていましたが、韓国がエース、キム・ヨンギョンの活躍もあってイタリアを倒す大金星でベスト4に進出し、その後アメリカに敗れて3位決定戦に回ってきてくれたのは、日本にとってはありがたいことこの上ありませんでした。
韓国とは世界最終予選で足元をすくわれてしまったものの、ここ数年で負けたのはこのときくらいで、あとはカモにしている相手。メダルを賭けた3位決定戦で自分たちより力の劣るチームと戦えるというのはまさに千載一遇のチャンスです!ロス五輪以来28年ぶりのメダルはすぐそこにある!
(スタメンは木村沙織、荒木絵里香、竹下佳江、大友愛、新鍋理沙、迫田さおり、リベロの佐野優子。日本代表を熱烈応援したいので敬称は略。)

勝利のために必要なのはこの大会で当たりに当たっているキム・ヨンギョンを徹底マークし封じ込めること(キムは大会MVP&ベストスコアラーに)。
だったわけですど、日本の対策うんぬんの前に日本を前にした韓国チームはやけに入れ込みすぎていて、キムもプレイの精度を欠き、いらいらしてジャッジに不服をいう場面も。平常心って大事です。
そうして第1セットは白熱したシーソーゲームだったものの、最後は今大会のラッキーガール迫田さおりが決めて日本が先取!
そのいい流れのまま第2セットは立ち上がりから8-1とリードを広げる日本。
しかし異様な執念を燃やした韓国が中盤で1点差、終盤、日本が引き離したかと思ったら、24-24のデュースまでくるのですから驚きです。迫田のスパイクと相手のミスでなんとか日本がこのセットも取りましたけど、やはり韓国相手だと少しの油断もできません。異常なほど日本を目の敵にしていますからね。

気を引き締めていきたい第3セットでしたが、追い詰められた韓国が牙をむき、序盤はポイントリードされる展開。それでも実力を発揮した日本が中盤から追い上げ、16-15と逆転。
そこからも徐々にポイントを積み重ねる日本。木村木村木村、荒木で決めて19-16!勝利の予感!
しかし、韓国はここでも怨念めいた粘りを見せ、19-19に。いやあ、これは凄かったです。見習いたいようなそうでもないような気持ちの強さでした。

ただ、本当に凄いのは日本女子バレーで、この韓国の粘りに少しも動じず、迫田で20、いいレシーブから新鍋で21、木村の攻めのサーブがわずかに外れて21ー20、迫田で22、相手のバタバタしたミスで23、24、そして最後はやはりこのひと、迫田!
鮮やかに決めて日本勝利!28年ぶりの銅メダル獲得!喜びを爆発させる選手たちはまるで春高バレーで優勝したようなきゃっきゃっとした笑顔!日本を元気にする笑顔でした!

それにしてもメダルのかかった大一番で相手にいくら粘られようと、自分たちのバレーを貫く日本チームの気持ちの強さは天晴れとしかいいようがありませんでした。
やはり竹下さんや佐野さん、大友さんといった百戦錬磨のベテランが屋台骨を支えているせいですかねえ。この大会はベテラン勢の冴えが目立ちました。
試合後のコメントでも、竹下さん「自分が犠牲になってでもチームが勝つためにという気持ちでやってきた」、佐野さん「メダルが取れたという嬉しさと、これがで終わりかなという寂しさもあった。自分自身最後の五輪。最高の終わり方だったと思います」と、かっこいいんです。

勝つべき試合に勝ってみせた日本女子バレー。
私には魔女ではなく、日本を救う聖女たちに見えました。
ありがとう、そして、おめでとう!

男子レスリングフリースタイル60キロ級は湯元健一の登場。弟進一との双子メダル、そして自身も北京五輪に続くメダル奪取に向けた戦いの始まりです。
初戦(2回戦)はキューバ人選手を危なげなく2-0で下した湯元兄でしたが、3回戦の相手は2011年世界レスリング55キロ級銀メダリスト、世界ジュニア60キロ級王者で2012年ヨーロッパレスリング60キロ級王者のトグルル・アスガロフ(アゼルバイジャン)。いわゆる伸び盛りの若手です。
この選手がまたガゼルのようにすばしっこくて、対応できないまま第1ピリオドを落とし、第2ピリオドも開始40秒でバックを取られてそこから2ポイントを先に奪われるまずい展開。
ビッグポイントでのリードを取った相手が露骨に守りに入ったことで、湯元兄も好機を見出し、残り30秒の首投げで1ポイント、終了間際にももう1ポイント追加と執念を見せますが、そこでタイムアップ。同点ではビッグポイントが優先されるため、無念の敗退。
これはちょっと相手が強かった…。
ただ、この”強い”というのは湯元兄にとってはいいことで、アスガロフが見事決勝に進出してくれたお陰で敗者復活に回ることに。
その最初の相手のドイツ人が思ったより歯ごたえのない選手で、第1ピリオドを6-0、第2ピリオドは勇み足をしてポイントを失う場面があったもののタックルからのローリングで勝利。

そして迎えた3位決定戦、前日に弟進一がこれを制しているんです、兄の矜持を見せてくれ!
相手は実績も実力もあまりなさそうなアメリカ選手。
しかし、湯元兄は慎重になりすぎたのか、第1ピリオドから手数があまり出ません。ボールピックアップでたまたま自分の色が出て、ピリオドを先取しましたけど、なんとも息苦しい試合。
第2ピリオドは開始20秒で先に仕掛けた湯元兄でしたが、タックルをかわされ逆にカウンターで相手に2ポイント。ちょっと雑なタックルでしたかね。この相手のポイントに審議を求めた湯元兄でしたが、くつがえらず0-3になってこのピリオドを落としてしまい、メダルへの焦りがちらつきます(審議が通らないと相手に+1されます)。
しかし、第3ピリオドは落ち着いた試合運びで、開始1分24秒にバックで1ポイント!さすが北京五輪の銅メダリスト!
実力差を見る限り残り時間は守り切れそう、双子メダルも時間の問題!
…のはずだったんですけど、残り20秒を切ったそのとき、相手にタックルからバックを取られ1ポイント、さらにローリングで2ポイントを奪われるまさかの展開。完全に体が固くなっちゃっていましたね…。
不覚を取った湯元兄はマットの上で亀の子になって悔し泣き。
しかし、インタビューでは「やり切った思いはある。進一と2人で自分のレスリングができたので十分です」と爽やかなコメント。
北京五輪は兄、ロンドン五輪は弟、それぞれが銅メダルを取ったんですからやはりすごいことです。喜びを分かち合える双子って羨ましいですよね。
(長くなりましたので後編に続きます。)
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ロンドン五輪競技14日目(前)レスリング湯元、バンタム清水銅メダル

ロンドン五輪競技14日目の8月10日、前日まで日本は毎日メダルを取り続けていたわけですが、この日、それをつないでくれたのは男子レスリングフリースタイル55キロ級の湯元進一。双子の湯元兄弟の弟さんです。
湯元兄弟は北京五輪のとき、兄弟揃っての出場を目指しながらも弟さんの方が惜しくもそれを逃し、「弟の分も」と意気込んだお兄さんが60キロ級で銅メダルを獲得したのはまだまだ記憶に新しいところ。
ロンドン五輪は揃っての出場なので、今度は”双子メダル”が期待されていました。

初戦(2回戦)を第3ピリオドでのボールピックアップ(くじ引きで有利な体勢から始められるか否かが決まります)の末、辛くも韓国選手を撃破した湯元はその勢いのまま準々決勝ではアルメニア選手から4-1、6-0の快勝、メダルを賭けた準決勝に挑みます。
相手はグルジアのブラディメル・キンチェガシャビリ。若手で実績がない選手ですが、それだけにデータにも乏しそうなので一発勝負では嫌な種類の相手。
しかし1ピリオド序盤から優勢だったのは湯元。組み合いを制していましたし、これならいけそう、と思われた1分40秒、タックルにいったところを後ろに回られてポイントを取られ、そのまま1ピリオドを奪われてしまいます。敵は若い選手だけに動きに妙な切れがありました。
後がない2ピリオドの湯元が積極的な攻め。タックルから足をとってのローリングで4ポイント!これで流れは湯元か。
しかし、勝負の第3ピリオド、開始わずか16秒で相手にバックで1ポイントを取られ、ラストポイントを狙って攻めにいったところをグラウンドの攻防に引き込まれた末、相手に1分も粘られて結局そのまま敗戦。体が変に絡み合ってグラウンドから抜けられませんでした。運がないとしかいいようがありません。

そしてメダルを賭けた3位決定戦。今回の55キロ級は群雄割拠で本命不在でしたから誰でも優勝のチャンスがあれば、有力選手でもメダルを逃すこともある、そんな状況でしたが、湯元の相手、ブルガリアのラドスラフ・ベリコフは北京五輪銅メダル、2011世界選手権銀メダルという強豪でありながら敗者復活にまわっていたんです。こんな相手と当たるとは…。
1ピリオド、最初にポイントを奪ったのは52秒の湯元。タックルからの押し出し。しかし、相手もさる者、すぐに押し出しで1ポイント奪われてしまいます。
ただ、最初の湯元の押し出しのとき相手に”場外逃避”の警告が出ていたため、同点だったものの湯元が1ピリオド先取。
実はこの警告のことをベリコフ陣営は気づいていなかったらしく、自分にラストポイント(同点の場合、最後にポイントを取った方が優先される)があると思っていたため終盤も攻めにいかなかったんです。これは大チョンボでした(私も最初、気がつかなくて、「湯元なぜ攻めないんだ!」と騒いでいました)。
第2ピリオド、やや焦った様子のベリコフの強引な攻めで開始54秒にバックで1ポイントを取られた湯元でしたが、カウンターばかりを狙う相手との精神戦に負けず、1分44秒にタックルで押し出し!よっしゃあ!これは本物のラストポイント!
そして残りの長い長い16秒をしのいだ湯元が嬉しい銅メダル、お兄さんに並んだ!
「北京五輪のとき兄は「2人で取ったメダル」といってくれたが(練習パートナーとして協力)、自分はまったく思っていなかった。取ってくれた安心感はあったけどすぐに悔しさが出た。4年間それをバネしてきた」。
双子の兄弟ならではの熱いライバル関係に拍手!

男子ボクシングバンタム級準決勝、清水聡の相手は地元イギリスのルーク・キャンベル。かなりいい選手です。
清水は179cm、キャンベル175cmとバンタム級にしては長身の2人は利き腕もともに左。というわけで真っ向勝負の打ち合いでしたが、ディフェンス力にいかんともしがたい差があって、清水が劣勢。結果11-20というはっきりとした敗北となってしまいました。清水は長身選手のせいかガードが下がる癖があるのを相手にうまくつかれてしまいましたね。
こうして銅メダリストとなった清水ですが、今大会はとんでもないイカサマジャッジに苦しめられたり、日本ボクシング44年ぶりのメダルを確定させるなど(村田諒太より先に決めました)、かなり目立っていましたよね。
ライバルの村田をいじるトーク力といい、今後も色々と活躍しそうです!

続く村田諒太の男子ミドル級準決勝、対戦相手は昨年村田が2位になった世界選手権で勝利を収めたというウズベキスタン選手でしたが、互角の攻防に見えた1Rが1-4、2Rはクリンチで距離を詰めたがる相手に村田の強烈なボディが炸裂し、へばってきたところをラッシュ!これなら大きくポイントリードだろう、と思われましたが4-4。アマチュアボクシングって難解です。
そうしてビハインドで入った3Rでしたけど、村田に焦りはなく、クリンチばかりの相手をうまくさばいて攻めきってくれました。相手にはクリンチ減点もあって、このラウンドは8-4、トータル13-12で村田は見事、決勝進出!
私はこの村田諒太のボクシングはこの大会で初めて見させてもらいましたけど、序盤はボディで相手にダメージを与え、終盤は相手の足が止まってきたところでラッシュをかけるというスタイルは爽快感すら覚えました。
ボディブローとスタミナという誰にも負けない武器がある村田、これは決勝戦もやってくれるに違いありません。
48年ぶりの金メダルは目の前だ!
(後編に続きます。)
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