2014ブラジルW杯、ドイツ優勝!

延長後半8分、ドイツFWシュルレが左サイドをドリブルで仕掛け、2人のアルゼンチンDFに寄せられながらも、ここしかないというピンポイントのセンタリング、これを左サイドから中央へ斜め走りしたゲッツェが胸トラップからの流れるような左足のシュート!
ボールは鋭い軌道を描きながらネットに吸い込まれ、これが決勝点となり、ドイツが24年ぶりのW杯制覇となったわけですが、ドイツにとってはあまりにも美しいも美しいゴール、アルゼンチンにとってはあまりにも残酷なゴールでした。
しかし、試合は本当に素晴らしかった。
両者が死力を尽くして戦い、ミスらしいミスがほとんどなく、激しいながらも汚いプレイは数えるほどしかないという引き締まった内容は、サッカーの面白さと、勝負に賭ける戦士たちの執念に満ち満ちていて、世界中のひとびとの目を釘付けにしたことでしょう。
ここ2大会の決勝が褒められるような試合ではなかっただけに、私も両チームには心からの感謝を送りたいと思います。
(2010年決勝はオランダのラフプレイ、2006年大会はジダンの頭突きが残念。)

また、それと同時にアルゼンチンには謝らなければなりません。
実は私は試合前はドイツが大勝するものと思っていたんです。これまでの勝ち上がり方を比べれば力の差は歴然でしたからね。
しかし、アルゼンチンは一瞬も気を緩めない集中力の高い守備陣と、一瞬のチャンスも逃すものかと目を光らせる攻撃陣とで最後までドイツを苦しめ、内容ではやや劣勢だったものの何か歯車がかみ合えば勝利していてもおかしくない試合運びでした。
ドイツに点が入るまでは、”両チーム優勝”というルールはないものかと本気で思いました。

そして試合後、ドイツチームが奥さんや恋人(みんなすごい美人)と喜びを爆発させている傍らでやさぐれた表情で立ち尽くすアルゼンチンチーム。銀メダルをもらう際もまるで屍が行進しているようでしたし、はしゃぎ回るドイツチームとは本当に
対照的でした。
なかでもメッシは、なぜか大会MVPに選ばれたわけですが、その表彰式でも子供のようにふて腐れ、ベストGKに選ばれたノイアーもどう称え合えばいいのかわからず目を泳がせるほどなのですから、心底がっくりきていたのでしょう。
ウィンブルドン決勝なんかでは敗れた選手が試合の直後に優勝者を称えるスピーチをするのが慣例で、そこでいかに爽やかに振る舞うかが大切になるわけですが、私はアルゼンチンのように悔しさを隠さない方が人間らしい気がしますし、それがまた勝者を称えるもっともわかりやすい方法のようにも思えます。
彼らはそれほどW杯が欲しかった、それほどまでにW杯に価値を置いていた、そしてそれを勝ち取るために全力を尽くした、素晴らしい敗者でした。

一方の優勝したドイツは、アメリカ大陸で開催されたW杯で優勝した初のヨーロッパチームとなりました。
これはW杯の歴史のなかではかなり画期的な勝利であり、W杯のジンクスを打ち破る偉業といえます。
また、近年いわれていたヨーロッパ優位はこれで揺るぎないものとなり、ヨーロッパと南米の力の均衡は完全に崩れたといっていいでしょう。
アルゼンチンは南米サッカーの誇りは守りましたけど、サッカーの勢力図を守るにはいま一歩力が足りませんでした。

そして、そんなドイツの戦い方が今後の世界のサッカーに影響を与えるのは間違いありません。
今大会は前線にスーパースターを要する強豪チームが”堅守速攻”の”リアクションサッカー”という戦術を取るなか、スーパースターのいないドイツは攻守ともにチームの連動性とハードワークを大切にし、ポゼッションとカウンターをバランスよく使い分けていました。
つまり今後は、自分たちのサッカーをベースに、選手個々がいかに臨機応変に試合の流れに対応できるか、というのが大切になってくるのではないでしょうか。
サッカーという競技はまた一段と難しくなってきましたね。

それにしてもこの2014大会のドイツは本当にすごいことをやってのけました。
開催国ブラジルと南米予選1位のアルゼンチンを撃破してのアメリカ大陸大会でのヨーロッパ勢初優勝。
クローゼは怪物ロナウド超えのW杯最多得点記録更新。
このところのブンデスリーガの充実といい、有望な若手選手の存在といい、これからしばらくはドイツの時代が続くかもしれませんね。

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2014ブラジルW杯、3位決定戦、再びの惨劇

W杯の”3位”にいったいどのような意味があるのか、これまでも色んな国の選手や監督から疑問の声が上がってきましたけど、確かにW杯の結果というのはベスト16、ベスト8、ベスト4という語られ方をされるのが普通で、3位がどこだったかはあまり気にもとめられません。たとえば4年前、8年前の3位のチームを憶えているひとがいったいどれだけいるでしょう?私も思い出すのにしばらくかかりました。

しかし、この2014年大会に限っていえば無意味とばかりはいってはいられません。
開催国として優勝を目標に掲げて準決勝で無残にも敗れたブラジルだけは、少しでもこの大会の記憶を美しいものにするためにも、絶対に勝たなければならない3位決定戦なのです。
対するオランダのファン・ハール監督は、「無意味」だの「(準決勝からの休養日が)ブラジルと比べて1日短い」だのと試合前から不平ばかりを並べて、やる気もあまり見られない様子。
これならばモチベーションの差でブラジル有利、そう思われた7月13日の3位決定戦ですが、先制したのはオランダ。

開始2分の縦パスをロッベンがファン・ペルシとの縦のワンツーでブラジルDFを完全に振り切ると、たまらずその背後から迫ったチアゴ・シウバがロッベンの肩に手をかけ引きずり倒すのを見た主審がイエローカードとPKの笛。
(※スローVTRではペナルティエリアの外で倒されているようにも見えましたが、チアゴ・シウバのファウルは”レッド”でもおかしくなかったので、退場の代わりにPKと考えれば辻褄は合うかもしれませんね。)
このPKをファン・ペルシがゴール右上に豪快に蹴りこんで1点を先制したオランダは、5バックを軸としたブロックを敷いてブラジルの反撃を待ち構えることになったわけですが、ブラジルは準決勝ドイツ戦の1-7の悪夢を思い出しのか、反撃に勢いがありません。

オランダはブラジルの攻撃を易々としのぎ、ときおり効果的なカウンターを狙うという、この大会の戦い方。
そして16分のオランダの攻撃、右サイドからのクロスのこぼれ球をブリントが決めて追加点。
ブラジルの中盤がブリントをまったくのフリーにしてしまっていたのには驚くとともに呆れました。
ドイツ戦でも似たようなシーンがありましたけど、まったく修正されていません。
この2点で会場は静まり返ってしまったわけですが、2億人のブラジル人すべての脳裏にあの惨劇が蘇ったはずです。

ただ、幸運なことに、やはりオランダのモチベーションはそう高くなく、2点を取った以降は明らかにエネルギーをセーブして、ブラジルの攻めを受け流そうという消極的な試合運び。
ですから、普通ならブラジルは嵩に攻めねばならないわけですが、オランダ以上に元気がなく、単発的な攻撃を繰り返すのみ。オスカルが孤軍奮闘していたものの、ひとりで試合を決められる選手でもないので、空回りが続き、悲壮感すら漂っていました。
準々決勝で負傷したネイマールは仲間を鼓舞するためにベンチ入りだけはしていましたけど、いまのブラジルは彼なしでの攻撃パターンが本当に少ないんですね…。

後半もそのような感じで試合はダラダラと続き、席を立つブラジル人もちらほら。
終了間際のオランダは第3GKを投入し、これで今大会登録23人が全てピッチに立ち、大団円の雰囲気のなか、ロスタイムにはダメ押しの3点目。
ブラジルはある意味で、準決勝より酷い敗北を味わわされることとなりました。

ただ、この試合を観ていて感じたのは両者の力の差。
おそらくこれが決勝戦だろうが、ネイマールがいようが、ブラジルは勝てなかったでしょう。
個人でも組織でも明らかにオランダが上でした。
もはやブラジルには王者の面影はどこにもありません。ブランドは完全に崩壊しました。

そしてこの試合のMOMはアリエン・ロッベン。
準決勝から中2日とは思えない切れ味鋭い動きで、ブラジル守備陣をあざ笑うプレイを連発。
この試合だけではなく、この大会のロッベンは絶好調で、敵からすれば、ファウルでしか止めることができない、といった感じでしたよね。
決勝戦次第でしょうけど、大会MVPの可能性も十分あると思いますし、それがあるからこの3位決定戦でもひとり気を吐いていたのだと思います。

ロッベンのような前線の化け物と、ずる賢い試合運びというのはブラジルの持ち味だったはずなのに…。
私は”サッカー=ブラジル”という世代なので、この大会での結果と内容が本当に寂しいです。
しかも、今回のブラジルは記憶に残るような美しい攻撃というのがほとんどありませんでした。
技術やアイデアを”芸”の域まで高めるのがブラジルサッカーであり、だからこそブラジル国民はいつだってどこだった自分たちが「世界で一番サッカーが上手い」と自慢げに振る舞っているのではありませんか。
この3位決定戦を観ていても、ファウル狙いの仕掛けばかり。
審判の笛を懇願する演技は”芸”とはいいません。

カッコ悪くて弱いブラジルなんてもう見たくない!
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2014ブラジルW杯、準決勝オランダ×アルゼンチン

”欧州で行われるW杯では欧州のチームが優勝し、南米で行われるときは南米のチームが優勝する”、そんなW杯の”鉄則”も、準決勝第1試合でブラジルがドイツに敗れたこの2014ブラジルW杯では、いよいよそれも崩れ去るかもしれませんが、もしそうなれば1-7というスコア以上の衝撃を南米サッカーに与えることは必至です。
7月10日の準決勝第2試合、アルゼンチンは南米サッカーの誇りを守るためにも是が非でもオランダを下さねばなりません。
しかし、アルゼンチンは前の試合でディ・マリアが太腿を痛めてこの試合には出られず、アグエロはGLでの負傷で先発を外れているという状況は、いかにも戦力不足。サッカーファンもメディアも、事前予想ではオランダ優位とする意見が多かったようです。
両チームともこの大会では守備に重きを置き、アルゼンチンは5試合で3失点、オランダは4失点という堅さを見せてきましたけど、得点力ではアルゼンチンが8点、オランダが12点と、やや差があるだけに、そういう結論に達したのでしょう。
私も同じ意見で、試合も序盤からオランダがコントロールすると思っていました。

しかし、いざ蓋を開けてみると、睨み合い、いや、すくみ合いのような展開。
決勝に進むために先に失点したくないという思いはもとちろん、前の試合の1-7が脳裏にちらついていたのかもしれません。あんな試合を観てしまえば、どうしたって負けるのが怖くなります。
そして、両者ともに中盤が互いのいいところを潰す、つまりエースを封じることに集中しているので、攻撃に厚みが出ず、得点の匂いのするプレイはほとんどありません。
もちろん、メッシ、ロッベン、ファン・ペルシ、スナイデルに輝きを与えない両チームのディフェンスには拍手を送らねばなりませんけどね。

そうしてじりじりと時間が進み、前半が終わり、後半が始まっても、両チームともなかなか勝負にいきません。
後半途中からはオランダがややペースを握り始めるも、アルゼンチンは集中力の高い守備でそれを凌ぐと、後半37分にパラシオとアグエロを一気に投入しましたけど、両選手ともあまり機能せず不発。
対するオランダはジョーカーのフンテラールを延長に備えて温存する消極姿勢も、後半終了間際にはカイトの縦パスをスナイデルがヒールで流し、そこに反応したロッベンが突破、そしてシュート!
しかし、この日誰よりもオランダを苦しめていたマスケラーノがスライディングタックルでアルゼンチンを守った!
縦パスが入った瞬間から、ロッベンだけを見ていたマスケラーノの読みと気迫、本当に素晴らしかった!

そうして予定調和のように入った延長戦の6分にオランダはファン・ペルシ(この日は腸の調子が悪かったらしく、動きも冴えませんでした)に代えてフンテラールを投入。サイドからの攻撃でアルゼンチンを押し込んで優位に立ちますが、リスク(人数)はあまりかけないので、どうしても攻撃に厚みがでません。準々決勝のコスタリカ戦もそうでしたけど、オランダのサッカーには必死さが見られません。
いくら前線に世界的名手を揃えていたって、そういう姿勢で得点が取れる場所なのでしょうか、W杯の準決勝は。

そういう意味でいえば数が少なかったとはいえ、アルゼンチンの攻めにはまだ気迫が感じられました。
メッシが抑えられているだけに美しい攻撃はほとんどありませんでしたけど、泥臭くゴールに迫るプレイはときおりオランダゴールを脅かし、延長後半10分のパラシオのヘッドはあまりヒットせず惜しかったですし、12分には右サイドを突破したメッシのクロスから(ここは凄かった!)、マキシ・ロドリゲスのシュートはGKの正面。
この2つは両方ともフリーの状況だったので、ちょっとガッカリする場面でしたけど、気持ちは伝わってきました。たぶん技術や落ち着きの問題でしょう。
対するオランダはまったくといっていいほど攻めにリスクをかけません。
PK戦にそんなに自信があったのでしょうか、私にはとても不可解に映りました。

結局0-0のまま終わった120分ですが、手放しに面白いゲームということはできないまでも、剣豪が鍔迫り合いをするような緊張感には、それなりの醍醐味がありました。
しかし、そんななかで負けを恐れる心に打ち勝つ闘志が見たかった、というのが私の本音です。

そうして始まったPK戦、まず最初にオランダのキッカーとしてペナルティアークに立ったのはDFのフラール。
これには世界中のサッカーファンが「え?」と首を傾げたはずです。
PK戦の一番手はエースやキャプテンが務めるというのが道理です。オランダは準々決勝でもPK戦でしたけど、そのときはファン・ペルシでした。
この試合ではファン・ペルシ途中で退いているので蹴ることができませんが、そうなれば当然、ロッベンかスナイデルが蹴るべきです。苦手だのなんだのという言い訳をいっていい場面ではありません。

しかし、おそらく”押しつけられた”であろうフラールは縮こまったようなキックになっての失敗。
一方、アルゼンチンの一番手、大エースのメッシは表情を一切変えぬまま機械のように正確なキックをゴール左隅に突き刺します。
結果論かもしれませんが、これで勝負あった、といっていいでしょう。
2本目はロッベンとガライ(チームを鼓舞するド真ん中)がともに決めたものの、3本目はスナイデルが外し、アグエロは成功、4本目は外せばオランダの負けという状況でカイトがしっかりと決めると、入れば勝利というアルゼンチンのマキシ・ロドリゲスも豪快に蹴り込んで歓喜の咆哮。
アルゼンチンは24年ぶりの決勝進出!

120分の試合内容に”判定”というものがあるとしたら、僅差でオランダの勝ちだったかもしれませんが、実際の結果を手繰り寄せたのはアルゼンチンの執念でした。
より勝者に相応しいのはアルゼンチンだったと思います。

これで決勝のカードはドイツ×アルゼンチンに決まりました。
ここまでの戦いを見る限り、ドイツの優位は揺るがないでしょう。両者にかなりの力の差があるのは間違いありません。
しかし、スポ根ものの漫画でいうならば主役はアルゼンチンです。
絶対的不利の状況から強者に挑む、この神の配剤といっていい状況を伝説に変えることのできる男がアルゼンチンにはいる。

私はいちサッカーファンとして、ここまでいいサッカーをしてきたドイツを応援する気持ちの方が大きいですけど、伝説を見てみたいという欲求も抑えがたいものがあります。
そういう自分のなかの二律背反を7月13日の決勝戦では大いに楽しむつもりでいます!
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2014ブラジルW杯、ベリオリゾンテの惨劇

〈ベロオリゾンテの惨劇〉。

ブラジルW杯準決勝第1試合は、”王国”ブラジル対”最後には勝つ”ドイツという伝統国同士のぶつかり合いとなり、世界中のサッカーファンが7月9日を楽しみに待っていたものと思われますが、まさか1-7などという大差が開くとは、誰も思ってもみなかったことでしょう。
ベロオリゾンテのミネイロンスタジアム(収容62547)の大半を占めたブラジルサポーターも、試合が進むとともに、カナリア色のレプリカユニフォームを涙で濡らし、優勝という夢が散ったばかりか、サッカー王国の誇りさえ失う無残な90分間の現実を直視することは難しかったように見えました。

試合はまず、選手とスタジアムが一体となっ国歌のアカペラで勇気百倍となったブラジルが人数をかけての怒涛の攻め、これで相手の戦意を挫くのが昨年のコンフェデからのブラジルのやり方だったわけですが、ドイツはそれに動じることなく、いなすように受け流すと、8分頃からいよいよ反撃開始。そして中盤の支配力を生かした攻めから、CKを獲得すると、ミュラーが相手DFのマークの緩さをあざ笑うかのようにフリーになって右足で先制点!
このときのCKではドイツはリスク(人数)をかけておらず、数的にはブラジルが有利だったものの、ブラジルは完全にボールウォッチャーになっていたのですから、あまりにもお粗末でした(準々決勝のブラジルはこれと似た形で、コロンビアの隙をついて先制しているのですから皮肉)。
この原因として考えられるのは、イエローカードの累積によって守備の要であるチアゴ・シウバが出場停止になっていたことでしょう。彼がいたら”あんなに簡単にやられなかった”と誰だって思うはずです。

もちろん、その”誰だって”はブラジルチームにもあてはまるわけで、このCKでブラジルは自分たちの守備への自信が揺らいだのは疑いありません。
しかし、ブラジルはそれを攻めの方で払拭しようと、果敢に同点を狙いに行きますが、エースのネイマールが不在のため攻撃パターンが不足し、ノイアーを中心としたドイツ守備陣には歯が立ちません。
そうやって手をこまねいているブラジルに対し、ドイツの中盤から前は連動した守備を繰り返してのカウンター、23分にもその形から、最後は大ベテランのクローゼのW杯記録となる通算16Gでドイツの追加点!
クローゼはその前から素晴らしい守備意識でブラジルボールになりそうなのをマイボールにしたりと、一瞬もさぼっていませんでした。そういうフォアザチームの意識が大記録へと繋がったでしょう。こういう選手がいるからドイツは強いんでしょうねえ。
(※スタジアムの放送席にもいた怪物ロナウドは、大会前に自身が持つ15Gという記録が14Gのクローゼに破られないよう、ブラジル観客の”応援”をお願いしていましたけど、無駄に終わりました…。)

このクローゼのゴールはブラジルの不安を確信に変えさせたのか、その後のブラジルの守備は完全なる混乱状態。
24分にはドイツのCpラームが右サイドをえぐってからバイタルへクロス、それをクロースが左足アウトサイドで外に逃げる美しいシュートで3点目、26分には中盤でクロースがブラジルボールを奪取してからケディラとパスを繋いで、最後はクロースで4点目、26分にはケディラとエジルで小気味よくパスを交換してからケディラが5点目のゴール。
その後もドイツが惜しいチャンスをいくつか作って前半終了。
0-5という悪夢のようなスコアにスタジアム全体が呆然自失。ボクシングだったらタオルを投入してもいいような状況でした。

後半のブラジルはドイツに支配されていた中盤の権益を取り戻そうと選手を2人交代。
立ち上がりからマルセロとマイコンの両サイドバックが積極的に前線に上がり、せめて誇りだけでも取り戻そうと果敢な攻め、オスカルやフレッジが枠に向かって惜しいシュートを放つ場面も。
しかし、そこに立ちふさがったのは現役最高のGKといわれるマヌエル・ノイアー。抜群のポジショニングやセービング技術、巧みな足技や豪快なスローイングと戦術眼から成る組み立て能力、そして何よりもこのひとには失敗を恐れぬ”勇気”がある!
そしてその勇気こそが相手を圧する迫力へと繋がり、チーム全体の守備を鉄壁と化す、まさに守護神です。

後半のドイツは大差がついている状況に合わせて攻撃のエネルギーを抑えていましたけど、ときおり見せるカウンターは威力十分。15分のミュラーのシュートなどは本当に危険でした。
このチームにはスーパースターはいないものの、粒ぞろいの選手たちが連動して動いたときの攻撃は世界一かもしれません。

試合の後半は、ドイツもブラジルのいいところを早々と潰すという厳しい戦術を取らなかったので、ブラジルも割と自由に攻撃ができましたけど、ドイツは最終ラインはまったく手を抜かないので、そこの牙城がどうしても崩せません(審判もかなりブラジル贔屓。オフサイドの見逃しもいくつかあったように思います)。
ここにいまのブラジルの限界を見たような思いがして、私もなんだか寂しくなってきました。
ネイマールの不在は確かに残念ですけど、以前のブラジルならそれをカバーするだけの人材がしっかり控えていたはずです。
”世界的名手”と呼ばれる選手が複数いてこそのブラジルだったはずです。
全盛期を過ぎたとはいえ、ロナウジーニョやカカはまだ現役なのですから、彼らを呼ぶべきだったようにすら思いました。
悲しいことにネイマールはまだその2人の全盛期とは比較にならないレベルですしね…。

そんなふうに私が過去を振り返っていた後半24分、右サイドのラームのグラウンダーにシュルレ(後半途中にクローゼと交代)が合わせてドイツ6点目。このときもブラジルDFはシュルレとミュラーの2人とフリーにしていました。
シュルレは34分にも角度のないところから左足で豪快なシュートを決め、ドイツ7点目。
ブラジルは45分に縦パスに反応したオスカルが一矢報いたものの、試合は1-7という衝撃的なスコアでの幕切れ。
ブラジルとしても史上最悪の点差だったばかりか、W杯決勝トーナメントでも7失点というのは最多記録。
開催国の敗れ方としては無残としかいいようがなく、チームと国民が被ったショックは計り知れません。
(3位決定戦で立ち直れるか不安です。)

ただ、勝ち負けだけでいえば、試合前からドイツ優勢と考えていたサッカーファンが多かったのではないでしょうか。
今大会のブラジルは地の利があったとはいえ、快勝といえるのはGLのカメルーン戦と準々決勝のコロンビア戦くらいで、クロアチアやメキシコ、チリには負けていてもおかしくないような試合内容でした。
カメルーンがチーム内のごたごたを抱えていた今大会最悪チームだったこと、コロンビアがベスト8に舞い上がっていた(満足していた)ことを考えれば、それなりのレベルのチームがモチベーションを高めて挑んできた際には四苦八苦していたということになります。
こんなことは以前の王者ブラジルならば考えられません。これでは普通の”強豪”チームです。
ドイツは戦術、規律、選手の質のいずれもブラジルを上回っていました。勝つべくして勝ったといえるでしょう。
これではネイマールやチアゴ・シルバがいても、点差が縮むだけで結果は変わらなかったはずです。

”ブラジルはもはや王国ではない”。
世界的名手の不在や代表の力不足もあって、このところよく聞かれた言葉ですが、このドイツ戦の結果から、もはや当たり前の認識となってしまったかもしれません。ブラジルに対する”畏怖”はもうどこにもないのです。カナリア色の王国は完全に崩壊してしまいました。
しかし、ブラジルはこれで終わるような国なのでしょうか?
あの王様ペレは、1950年のブラジルW杯決勝でブラジルがウルグアイに逆転負けを喫した〈マラカナンの悲劇〉に打ちひしがれる家族を見て、「いつか僕がブラジルをW杯で優勝させる」と子供心に誓い、その後、母国を3度も優勝に導いたんです。〈ベロオリゾンテの惨劇〉から新しいペレが生まれてこそのブラジルです。

いままさにブラジルは分水嶺にありますし、ひょっとすると南米サッカー自体がそこに立っているのかもしれません。
2006年W杯も2010年W杯もヨーロッパ勢が優勝していますし(準優勝もヨーロッパ)、もし今回もそうなれば南米勢はもはやヨーロッパのライバルといえなくなってしまいます。
私はブラジルや南米サッカーのファンというわけではありまえんが、サッカーの多様性という意味で、彼らを応援します。

ヨーロッパ一強なんて、つまらないですからね!
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2014ブラジルW杯、出揃ったベスト4

7月5日のオランダ×コスタリカが終わり、いよいよベスト4が出そろった2014ブラジルW杯ですが、今大会は素晴らしい勝者よりも素晴らしい敗者が目立っているように思えます。
ベスト16でブラジルにPK戦の末敗れたチリなどは、前半はブラジルの圧力にきゅうきゅうとしていたのもの、屈することなく戦い、後半途中からは連動性をベースに徐々に流れを自分のものにしすると、延長戦でも後一歩というチャンスを演出し、内容的には勝っていたといっていい試合でした。PK戦ではちょっと緊張しすぎたのか足が縮こまっていましたけど、胸を張ってピッチを去れる敗者でした。
同じように格上に善戦したといえば、ベスト16でオランダに敗れたメキシコ、ベルギーに敗れたアメリカ、ドイツに敗れたアルジェリアもそうです。格上相手ですからどうしても守備の時間が多くなるものの、決して攻める気持ちを忘れず、チャンスと見ればリスクを犯して牙をむく、そういう姿勢は見ていてとても興奮しました。
自分たちのスタイルを生かしながら、選手もコーチもスタッフも勝利を目指して全力で戦う、そういうチームは勝っても負けても美しい。
そういうわけで、いずれの国も故郷の空港では、まさに”凱旋”といったムードで出迎えられているようです。
いやあ本当に羨ましい!

ただ、逆に今大会は美しい勝者というのはあまり見ていないような気がします。
ひとつには今大会はいわゆる堅守速攻のリアクションサッカーを選択しているチームが多く、相手のミスを突いたり、攻撃してきた背後ばかりを狙うようになって、どうしても主体的に攻撃する時間は少なくなるということでしょう。
ベスト4に残っているブラジル、オランダ、アルゼンチンなども人数をかけて手堅く守り、攻めは前線のスーパースターに頼るという効率のいい戦術をとっていますけど、それが”勝利”という現実を手にするための最善の方法ということなのでしょう。今大会はスーパースターがとっても目立っています。メッシやロッベンなどの輝きは強烈で、まさに”ゲームを決めるプレイ”を連発していますよね。

ただ、スーパースターのプレイというのはファンには楽しい反面、対戦相手にとっては悪魔そのものですから、それを止めるためのファウルがどうてしても多くなってしまいます。
ブラジル×コロンビアなどでは、互いのエース、ネイマールとハメス・ロドリゲスの潰しあいといった様相を呈し、最後にはネイマールが膝蹴りを食らって背骨を追ってしまうというアクシデントまであったのですから、本当につまらない試合でした。
ああいうファウルの応酬をやめさせるためにも、FIFAはぜひ新ルールの導入を検討して欲しいものです。
個人的にはアイスホッケーのように、ファウルの酷さによって数分間、選手をゲームから退席させるようなルールはどうかと思っています。
いまのサッカーのルールだと、審判がファウルで選手を退場させてしまえば人数のバランスが崩れて試合そのものが価値を失ってしまいますけど、選手はそれを盾に取ってずる賢くファウルをコントロールしているようにも見えます。
とにかく、ファウルばかりになっても、退場選手が出ても、サッカーの試合はつまらなくなるので、そこをどうにかして欲しいですよね。

そしてもうひとつ、ファウルの問題では、選手が審判を欺くプレイというのがあります。いわゆる”シミュレーション”や”ダイブ”というやつです。
これは一瞬のことなので、主審が見抜くのは大変でしょうから、第4審判などが目を光らせているといった防御策が必要ですし、試合後にVTRをもとに検証して、後から罰を与えていいと思います。判定が一番の話題になるというのが最悪ですからね。

ちなみに今大会での私の優勝予想は”ドイツ”です。
スーパースターはいませんけど、チーム全体に規律があって、攻守のバランスがよく、繋ぐサッカーもカウンターサッカーも出来ますから、見ていて隙がありません。
常に主体性を持ってゲームをコントロールしているのも、まさに強者の風格、横綱相撲ですしね。
決勝はおそらくドイツ×オランダで、南米主催で初めて欧州チームの優勝が見られるはずです。

ただ、それだとブラジルでは3位決定戦の方が盛り上がったりして!
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