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選手団の帰国と東京五輪への期待

今日8月24日、リオから帰ってきた小池百合子東京都知事が誇らし気に五輪旗を振りながら搭乗の飛行機から降りてくるのに続いて、ほぼ同時刻の別便で帰ってきた選手たちも羽田空港で多くのひとの歓迎を受けたそうです。
選手団の解団式は明日とのことですが、選手たちのほっとしたような笑顔の映像を見ると、”リオ五輪が終わった”という感慨が深くなってきました。
選手のみなさん、本当にお疲れさまでした。そして大きな興奮と歓喜をありがとう!

満足感溢れる選手団の帰国でもわかるように、この2016リオ五輪での日本勢の活躍は素晴らしいものがありました。
結果でいっても、過去最多の41個のメダルを獲得し(これまではロンドン五輪の38個)、国別のメダル数でも7番、金メダル12個は6番目という見事な順位だったわけです。
今回注目すべきは、金メダルの数が前回の7→12に伸びたこと、そしてこれまでメダルを獲ったことのない競技(種目)で結果を残したことでしょう。

バドミントンの女子シングルスで銅メダルを獲得した奥原希望、卓球男子団体の銀メダルと男子シングルスの水谷準の銅メダル、カヌー・スラロームの羽根田卓也の銅メダル、男子競歩50kmの荒井広宙の銅メダル、それと男子200m個人メドレーで銅、男子400m個人メドレーで金の萩野公介。
この選手たちは日本人初の偉業を達成しました。
なかでも、競技として初めてだったバドミントンとカヌーと競歩は、日本人の新たな可能性を広げたといっていいでしょう。
応援側としても熱を入れてテレビ視聴することで、これらの競技の面白さが少しずつわかってきたような気がします。

また、”復活”という意味で忘れてならないのがシンクロナイズドスイミングで、2大会ぶりにメダルを獲得したシンクロ・ディエットの乾友紀子・三井梨紗子ペア(銅)、3大会ぶりのチーム(銅)には大いに興奮させられました。
やっぱり井村雅代コーチは凄い。東京五輪も頼みますぜ!
同じく間が空いたといえば、男子4×100mリレーのメダル(銀)も2大会ぶりですし、間が空きすぎといえば96年ぶりのメダルとなったテニスの錦織圭(銅)も偉大な記録ということができるでしょう。
陸上やテニスは国際的にも人気があるので、日本勢の活躍は嬉しい限りです。

ただ、新しい分野でメダルを7つも獲得したり、復活のメダルがあるにも関わらず、総メダル数が前回のロンドン五輪の38→41にしか伸びていないというのはちょっとおかしい感じもしますよね。
ようするにメダルを失っている競技・種目があるわけです。
ロンドン五輪では、女子サッカー、アーチェリー男子個人と女子団体、フェンシング男子団体、陸上ハンマー投げ、女子バレーボール、ボクシング(2階級)がメダルを獲得していました。
そのうち、女子サッカーとフェンシング男子団体は本大会にすら出場できなかったのですから残念としかいいようがありません(ハンマー投げは室伏広治が引退したので仕方なし)が、両方とも世界選手権などでは結果を出しているので、東京五輪での復活に期待したいですよね。というかやってもらわねば困ります。

東京五輪ではメダル獲得数の記録更新は至上命題といってもいいでしょう。
そのためには”復活”と”躍進”が必要です。
”復活”でいえば、女子サッカーやフェンシングやアーチェリーは、強化が進めば結果を出してくれるはずです。
ボクシングは、普通ならプロに行く有力選手が、地元大会ということでアマチュアに留まってくれるに違いありません。
また、”躍進”でいば、このリオ五輪で入賞を果たした女子体操、新体操団体、トランポリン、女子バスケットボール、飛込、セーリングなどには注目してゆく必要があると思います。
選手個々がやる気を燃やし、国や競技団体や企業が手厚くサポートすれば、結果は自ずとついてくるものです。
ベースはあるんですからね!

…と、ここまで私も「メダル、メダル」と書いてきたわけですが、もちろん、メダルが獲れれば何でもいいというわけではありません。
大事なのは選手個々の競技への意欲です。
自分が好きな競技があって、それを極めていった先に五輪がある、というのが理想だと思うんです。
ですから私は、このリオ五輪のカヌーで羽根田卓也が銅メダルを獲得した瞬間、本当に胸が熱くなりました。
日本ではマイナー中のマイナーといっていい競技にも関わらず、彼はカヌーを志し、高校卒業後にはカヌー強豪国であるスロバキアへ留学すると、そこでこつこつと腕を磨きながら世界大会や五輪に参加し、ついに念願のメダルを獲得したわけです。
これは日本人としてというだけではなく、アジア人としても初のことです。
”好きが高じた結果”こそが、アマチュア精神であり、五輪精神だと私は思います。
また、こういう選手たちの姿勢や言葉というのは、一般の我々にとっても大きな指標になるものです。

羽根田卓也のような選手が日本代表団にいることは本当に誇らしいことですし、彼のような選手は他にも何人か代表団に入っていました。
メダルだけではなく、こういう選手の数を増やし、それをサポートできるようになったとき、日本は真のスポーツ大国と呼ばれることになるでしょう。
東京五輪が”きっかけ”になることに期待します!
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リオ五輪閉幕、「SEE YOU IN TOKYO」

17日間に渡る熱戦を終え、昨日8月22日(日本時間)に幕を閉じた2016リオ五輪ですが、その閉会式のセレモニーの終盤では、リオの市長からIOC会長を挟んで、東京の小池百合子新都知事へとオリンピック旗が受け渡されました。
いよいよ次は東京五輪ですね!

そしてそこからは東京が自分たちの五輪をアピールし、世界のひとびとに日本や東京を紹介するショーの始まりです。
実は私、リオ五輪が始まる前から、このショーがとっても心配でした。
五輪の閉会式ではもう恒例となっているこの引き継ぎショーですが、北京五輪のときのロンドンのそれ、ロンドン五輪のリオのそれは、ベッカムやペレが登場して、とても華やかでワクワクするショーでした。
冬季でもバンクーバー五輪のときのソチのそれは、スケール感と芸術性に圧倒されましたよね。
そのように、開催国を食ってしまう、忘れさせてしまうようなインパクトを残したショーもあるわけです。
また逆に、ソチ五輪のときの某半島南側国家のそれは、本当にぱっとしない、しょぼくれたショーだったので、観ていて寂しい気持ちになったと同時に、「もし、日本もこうなってしまったら…」と空恐ろしくなったものです。
ですから、今回の私の願いは、ロンドンやソチみたいな凄いものにならなくても、がっかりな感じにならなければそれでいい、という控えめなものでした。
けれでも、結果でいうと、私は日本を大いに見くびっていましたね。

まず、エレクトリックな雅楽調の『君が代』が奏でられると、ロボットに扮した子供たちが乗った数台のセグウェイが大きな日の丸をマラカナンスタジアムに浮かび上がらせ、続いて青森大学男子新体操部を中心とした近未来的なダンス。
アニメの『攻殻機動隊』みたいな世界観で、海外のひとたちがイメージする科学と伝統が融合した未来都市・東京がそこにあったといっていいでしょう。
音楽も演出も冴えていて、初っ端から度肝を抜かれました。
そして、仮想世界と現実を融合させる最新の映像技術を駆使しながら、人文字で作った色んな国の言葉の”ありがとう”が次々に描き出され、東日本大震災へのサポートを感謝しながら一幕が終了。

大雨のなか、お高そうな着物をびしょ濡れにしてこれを眺める小池都知事の姿も綺麗でした。
知事選で代名詞となった”厚化粧”も、海外のひとにとっては日本的に映ったのではないでしょうか。
いやあ本当に新都知事でよかった。

続いては映像によるプロモーションで、色んな種目のアスリートたちが東京の夜景を舞台に躍動したかと思うと、ところどころに『キャプテン翼』や『ハローキティ』、『ドラえもん』といった二次元のキャラクターたちが融合し、終盤は東京の魂が籠った”日の丸ボール”を北島康介から高橋尚子、村田諒太がリレーすると、最後にそれを受け取ったのは安倍晋三内閣総理大臣。
安倍総理はその日の丸ボールをリオの閉会式に届けようとしますが、多忙のため時間がなく、いまからでは飛行機でも間に合いません。
そこでピコーンと閃いた安倍総理は、なんとスーパーマリオに変身し、ドラえもんが四次元ポケットから出した土管を地球の裏側へと通すと、それを伝ってリオへとGO!
プロモーション映像が終わり、現実のスタジアムに目を移すと、いつの間にか実物の土管が置かれていて、そこから例の音楽とともに現れたのはスーパー安倍マリオ!
ちょっと気恥ずかし気に微笑んだ安倍総理が手を振ると、会場は爆笑したような大盛り上がり。
世界のひとびとのハートを鷲掴みにしましたね。
安倍総理の「SEE YOU IN TOKYO」で締めくくられたショーは最高の出来でした。

閉会式後にわかった海外の反応もかなり良好だったようですし、海外メディアも大きく取り上げているので、インパクトを与えたという意味では大成功だったといっていいでしょう。東京五輪はいいスタートを切りました。
ショーの内容でいっても、伝統と科学、アニメやゲームといったサブカルチャーを盛り込んで日本らしさをアピールすると同時に、演出の様式美や”ありがとう”の部分で日本人の精神性を表現していたのも意味のあることでした。
このプレゼンテーションをプロデュースしたのは、歌手の椎名林檎さん、クリエーティブディレクターの佐々木宏さんと菅野薫さん、振り付け師のMIKIKOさんとのことですが、4人はお手柄でしたね。
東京五輪の開会式や閉会式は誰が手掛けるのかわかりませんけど、これに負けないものを作って欲しいものです。

このように私も大いに楽しませてもらったショーのなかで、ひとつだけ不満な点を挙げさせてもらうとすれば、それはやはり日本と東京を代表する人物が安倍総理だったことです。
ロンドンのベッカムも、リオのペレもアスリートでした。本来ならば東京もアスリートであるべきでした。
ただ、そうはいっても世界の誰もが知っている日本人アスリートというのは”存在しない”というのが悲しい現実です。
そこで私は東京五輪に期待したい。
この五輪の前後に世界的な日本人アスリートが出現することを。

日本の若者たちよ、この4年間でスターへの道を掴め!
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最多メダルと信州人の活躍

日本時間の8月21日午後現在で、獲得メダル数”41”と大活躍のリオ五輪日本代表団。
これまでの記録はロンドン五輪の38でしたけど、今大会は18日まで36だったので、抜くのは簡単じゃないかなあ、と思っていたら、19日にバドミントンの奥原希望が銅(対戦相手が棄権)、50キロ競歩の荒井広宙が銅、レスリングフリースタイル57キロ級の樋口黎が銀、シンクロ団体が復活の銅、そして陸上男子400mリレーでアメリカに勝っての歴史的銀というメダルラッシュ!
今大会の日本の強さを象徴するように、まったく違う種類の競技で、粘り強く結果を残してのは、本当に素晴らしかったです。
あまりの強さに、私も少し夢見心地です。
(※メダリストたちへの敬意と親愛の念をこめて敬称略。)

そんな19日のメダルラッシュのなかで、信州に住む私がどうしてもいいたいことがあるんです。
バドミントンの奥原さんは長野県大町市出身。
競歩の新井さんは長野県小布施町出身。
シンクロチームの箱山愛香さんは長野県長野市出身。
そう、みなさんお気づきのように、日本の最多メダル記録は、信州人あってのものなのです!
しかも、奥原さんはバドミントンのシングルスでは日本人初のメダル、新井さんも競歩では日本人初メダル、そして箱山さんはシンクロ日本の復活に大きく貢献したのですから、日本スポーツ史に大きくその名を刻んだといっていいでしょう。

この3選手の試合の時は、各選手の出身地や母校、所属先でパブリックビューイングが開かれていましたけど、そこでも大いに盛り上がっていたようですし、テレビで観ていた私も大いに楽しませてもらいました。
まず奥原さんは準々決勝での山口茜さんとの笑顔なき日本人対決を制し、準決勝ではインド選手に惜しくも敗れたものの、3位決定戦では対戦相手が怪我で棄権して、やや消化不良なメダル獲得。
しかし、そのことが奥原さんの負けん気に火を点けて、東京五輪への意欲は燃え上がらんばかりになっているようです。
我々もコートでのメダル獲得を楽しみにあと4年待つことにしましょう!
荒井さんはリオの突き刺すような陽射しのなかの極限のレースで、カナダ選手と激しく争いながらの銅メダル獲得。
試合後にカナダ選手が荒井さんから接触してきたといってイチャモンを付けられて一度は失格という判定が下されたものの、日本陸連の抗議によって判定が覆って、「お騒がせしました」といって日本の我々を笑わせてくれたのも印象的でした。
そして、なんと、この奥原さんが長野県勢としては初めての夏季五輪メダル獲得者であり、荒井さんは男子初というのですからまさに快挙です。2人は長野県の偉人になりましたね。
本当におめでとう!

2人に一歩遅れたことで長野県初メダルは逃した箱山さんですが、チーム競技としては初なのですから、これもまた記録です。
そしてまたこの箱山さんが素晴らしいのは、長野市にある栗田病院で働き、地元の長野シンクロクラブで練習を積みながら代表に入って、五輪でメダルを獲得したことです。
(※長野シンクロクラブには小学生のときから通っていたそうです。長野日大高校卒業後、日体大に進んだ箱山さんは、そこでロンドン五輪に出場し、卒業後は長野市に帰ってきました。)
シンクロ日本代表選手ともなれば、普通はある程度大きな企業に所属し、都会のシンクロクラブで練習しているものです。
しかし、箱山さんは「地元が一番練習しやすい」といって、長野市からリオへと旅立っていったわけです。
こういう彼女の競技への向き合い方は、五輪を目指す他の選手や、未来ある子供たちに、新たな方向性を示したといっていいと思います。
”地方から五輪へ”。
箱山さんにはいい夢を見させてもらいました。
本当に価値あるメダルだと思います。

というわけで、3選手への県民栄誉賞授与と、ご都合が合えば3選手揃ったパレードに期待!
3選手は信州の宝です!
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吉田沙保里は敗れてもなお勝者

前日の3階級が全て金メダルという女子レスリングですが、19日(日本時間)にはいよいよ52キロ級に吉田沙保里が登場。
伊調馨に続く4連覇の快挙はなるか、いや絶対になる!という国民の期待を背にいざ出陣!

昨年の全日本選手権以降、8ヶ月間、試合に出ず、リオ五輪に集中することを選んだ吉田ですから、実戦感覚にはやや不安が残るかと思われたものの、2回戦、準々決勝、準決勝と、守勢に回る相手から、一瞬の隙をついてポイントを奪い、ディフェンスも鉄壁で、ここまで1Pも失わないという完璧な内容。
決勝戦を前に、私などは金メダルを確信していました。
唯一、不安のようなものがあるとすれば、攻めの迫力のなさくらいだったでしょうか。返し技を軽快して無理攻めはしていない印象でした。

その決勝の相手は、ここ何年も吉田と国際大会の決勝で戦ってきたソフィア・マットソン(スウェーデン)ではなく、ヘレン・マルーリス(アメリカ)。
マルーリスは55キロ級を主戦場にしている選手で、昨年の世界女王ですが、この階級は五輪にないので53キロ級に落としての出場です。過去の世界選手権(55キロ級)では吉田が一方的に勝っているようですけど、ちょっと不気味。準決勝でもマットソンに8-0で完勝していますしね…。
まあ、しかし吉田が負けるはずはありません。私などはそういう画が想像できない。私たち日本人は吉田が負けた記憶をほぼ持たないんですから当たり前です。
なんといっても吉田は世界選手権と五輪ではいまだ負けなしという勝負強さです。勝つに決まってますよ!

そうして始まった第1ピリオドでは、吉田のタックルを警戒して低く構えるマルーリスに対して、吉田も強引には攻めず、相手への消極的警告からの1Pを獲得すると、両者膠着したままインターバルへ。
第1ピリオドでは一度だけ吉田が片足タックルを仕掛けるもポイントには至らない場面がありましたけど、あそこは惜しかった。
マルーリスがカウンター狙いだったので深く攻めるとリスクがあると思ったんでしょうね。

第2ピリオドに入ってもマルーリスは吉田の手指を掴むようにしてタックルを防ぐ戦法を継続。
すると開始25秒、その焦らしに堪えられなくなったように前に出た吉田が強引が首投げ、しかし、それがすっぽ抜けるとバックに回られてまさかの2失点。
リードをしたマルーリスは、よりディフェンスを堅固にし、吉田にタックルを許しません。
時間が徐々に削られてゆくなか、スタンドにいた応援団も、遠く日本でテレビを観ている我々も、気が狂わんばかりに吉田に声援を送るしかなかったわけですけど、残り1分を切ったところで吉田が強引に仕掛けたところを返されて、絶望感のある2失点。これでポイントは1-4に…。

残りわずかな時間、吉田はどうにかタックルに入ろうとしますが、万全な吉田対策をしてきたマルーリスに付け入る隙はなく、試合終了のブザーが残酷に鳴り響きました。
信じられない、いや信じたくない敗戦。
リオの会場に陣取る応援団が呆然とするなか、マットに泣き伏す吉田沙保里。
ああ、これは現実なんだ。

確かにマルーリスは強かった、吉田対策も万全だった。
しかし、そういう相手に勝ってきたからこその絶対女王なわけです。
この決勝の敗因を探すとするならば、それはやはり”負けられない”という思いが強すぎたのだと思います。
決勝だけではなく、初戦から吉田の攻めには積極性が見えませんでした。
あと一歩、あと半歩、踏み込めないところに、怯えのようなものが見えたわけです。

今大会の吉田は4連覇という偉業に挑むにも関わらず、女子レスリングチームのリーダー的存在であり、日本選手団の団長という要職まで快く引き受けていました。
試合後に吉田は、「いろいろな人に金メダルを取って見せると約束していたので、申し訳ありません。日本選手団の主将として役目を果たせなかったことがとても悔しいです。」と涙を流しながら謝っていましたけど、我々は彼女にあまりにも多くのものを背負わせすぎたのかもしれません。
しかも前日、日本女子は3階級で金メダルを獲得していたので、それもプレッシャーになっていたと思います。

ただ、この銀メダルで、吉田沙保里の伝説が色あせることは決してありません。
数々の栄光はもちろんですし、吉田に憧れた若い選手たちが今回、金メダルを量産したことも吉田沙保里の功績です。
吉田が負けたとき、妹分の登坂絵莉が子供のように泣きじゃくっていた姿が吉田の存在をよく表しています。
吉田の父のジュニアクラブ出身の土性沙羅の勝利への執念も吉田譲りでしょう。
そして、吉田の敗戦のすぐあと登場した、63キロ級の川井梨紗子は、全盛期の吉田を彷彿をさせるようなノーモーションタックルと、相手の動きを予測した無駄のない動きで、見事に金メダルを獲得しました(3選手とも大学の後輩)。
吉田沙保里の存在は女子レスリングの未来を照らしているのです。
また、これは何も日本だけに留まりません。
今回、吉田に勝ったマルーリスはアテネ五輪の吉田を観て、より一層レスリングにのめり込んでいったといいますし、吉田への憧れと敬意を公言している選手です。

確かに吉田沙保里は4連覇を逃しました。
しかし、彼女が勝者であることは変わりません。
彼女は自分自身が育てた女子レスリングに負けたのです。
試合後、吉田はマルーリスや日本の後輩たちを称えることを忘れませんでした。

吉田沙保里は、日本の誇りであり、宝です。
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女子レスリング、奇跡の金メダル3連発!

「五輪で最もメダルが期待できる競技は何か?」という質問を日本人にぶつければ、いまはおそらく柔道ではなく、「女子レスリング」という答えが返ってくると思うんです。
もちろん柔道に比べて階級が少ないので実際の数は柔道に負けることもありますが、正式採用された2004年のアテネ五輪以降、メダルを逃したのは前のロンドン大会の72キロ級だけなのですから、我々が期待するのも当然です。

そしてこの2016リオ五輪では、階級が6に増え、期待も増量されるなか、先陣を切って登場した48キロ級の登坂絵莉は、世界選手権3連覇の実力をいかんなく発揮し、危なげなく決勝進出。
しかし、その決勝で待ち構えていたのはマリア・スタドニク(アゼルバイジャン)。ロンドン五輪2位の強豪であり、昨年の世界選手権決勝で、登坂と死闘を演じた相手だけに簡単ではありません。
試合はまず第1ピリオドにスタドニクが押し出しで1Pリード、第2ピリオドでもスタドニクが圧力をかけてきて先に1Pを重ねるも、守りに入るスタドニクを追い詰める形で登坂も1Pを取り返します。
終盤は攻める登坂、しのぐスタドニクという白熱の展開。
スタドニクは北京銅、ロンドン銀と悔し涙を呑んできた選手だけに、金への執念は凄まじいものを感じさせました。
その執念が残り時間を削るなか、我々日本の応援も「もうここまでか…」と諦めかけた残り十数秒、登坂が食らいつくように片足を取りに行くと、スタドニクの体勢が崩れ、登坂はその隙に素早くバックに回っての2P!
その瞬間に試合終了のブザーが鳴り、奇跡的な大逆転勝利!
終盤のスタドニクには疲労が見えたのに対し、登坂はまったく疲れを感じさせませんでしたから、これは練習量の勝利だと思います。そして試合後の登坂が、「いろんな人の顔が浮かんで、感謝です。」と語っていたように、彼女を支える全てのひとの思いが、登坂を最後まで攻めさせたのでしょう。
試合は8月18日の早朝でしたけど、私も興奮して近所迷惑な雄たけびを上げてしまいました。
いやあ、本当に凄かった。
そして栄和人監督を肩車する姿も眩しかった。
登坂さん、本当におめでとう!

この興奮冷めやらぬうちに登場したのは、五輪3連覇中の伊調馨(前回まで63キロ級で今回は58キロ級)。
我々が世界に誇る日本の至宝は、この大会で4連覇を達成すれば、女子選手としては五輪史上初の快挙(男子ではフェルプスが達成)。
日本だけではなく世界のレジェンドになる瞬間がもうそこまで迫っているのです。
ところが、当の伊調はそんな大記録などどこ吹く風で自分のレスリングに集中したまま、完璧な内容での決勝進出。準決勝などは汗ひとつかいていないように見えました。
これなら決勝でも危なげなく勝利を収めるに違いない、と誰しもが思ったに違いありません。
しかし、やはり4連覇のプレッシャーがあったのか、決勝の伊調は動きが硬さ、珍しく攻め急ぎも目立ちます。
相手のレリア・コブロワゾロボワ(ロシア)も伊調のペースを乱すように髪を引っ張る反則を繰り返すなか、まずは相手への警告を足掛かりに伊調が1Pを先取するも、捨て身で攻めてくるコブロワゾロボワにバックを取られて、まさかの1-2。
ビハインドで迎えた第2ピリオドも伊調の体は重く、積極的な攻めが見られません。
逆にコブロワゾロボワは弱り目の伊調に止めを刺すべく、隙あらば仕掛けてきます。
相手にこんなふうに上から目線で襲い掛かられる伊調を見ることになるなんて…。
4連覇へのプレッシャーからなのか、32歳という年齢のせいなのか、伊調馨の伝説は刻々と終焉に向かっていました。
しかし、やはり女王は女王であり、伝説は伝説だった。
残り30秒、伊調の中途半端なタックルをかわしたロシア選手が、逆にカウンターのタックルを仕掛けてくるのをがぶった伊調は、相手に右足を取られた状態から、残り時間が削り取られるなか、執念で足を抜くと、そのままバックを取っての2P!残り時間5秒での大逆転!
そのまま勝利を掴み、女子選手として前人未踏の4連覇を達成した伊調ですが、本当に信じられない、奇跡の大、大、大逆転勝利でした。
これはもはや勝因など分析不可能な不思議の勝ちとしかいいようがありませんが、あるとすれば最後まで諦めなかった勝利への執念です。
また、その勝利への執念と渇望がなければ、五輪や世界選手権を連覇し続けられるわけがないのです。
ようするに、この勝利は、伊調馨が伊調馨であるが故の勝利、そういうことができるでしょう。
この歴史的女王を前に、我々はもうひれ伏すしかありません。
おめでとう、伊調さん!今大会もめちゃくちゃカッコよかった!

早朝から日本列島のボルテージがマックスになるなか、その勢いに乗りたいのは69キロ級の土性沙羅。
あの吉田沙保里と同じ三重県出身で、吉田の父・栄勝さんが指導する一志ジュニア教室でも後輩。父親も元国体選手というサラブレッドの土性は、ジュニアの頃から多くの期待を集め、結果も出してきた選手ですけど、シニアではいまだ世界一になったことがないだけに、五輪をどう乗り切るかは想像がつきません。
しかし土性は21歳の五輪初出場とは思えぬ落ち着きで勝利を重ねての決勝進出。
決勝でも硬くなっている気配はなく、自然体で試合に入るも、ナタリア・ボロベワ(ロシア)の鋭い攻めに防戦一方となって、警告からの失点1。
ボロベワはロンドン五輪と昨年の世界選手権を制しているだけにやはり強い…。
第2ピリオドでも流れはかわらず、土性は消極的警告からの失点1。
攻めても見つからず、時間だけが過ぎて行き、観ているものが「実力差か…」と諦めかけた残り50数秒、土性がこの試合で初めてのタックルを見せるも、相手はそれを切ってバックに回ろうとしたところに、野獣のように身を翻した土性が態勢を入れ替え、そのまま相手を押し倒してバックに回っての2P!
最後の残りわずかな時間をしっかり捌いた土性は、前の2人に続く奇跡の大逆転勝利で金メダル獲得!
栄和人監督は本日2度目の肩車!日の丸が翻った!
「たくさんの方の応援、支えがあっての金メダルです。馨さんも絵莉さんも最後まで諦めなかったので、私も諦めなかった」という土性さんのコメントに、”チーム日本”の強さを見た思いがします。
また、この土性さんの金メダルは、女子重量級としては初めてというのですから、大記録ですね。
土性さんは格上相手の試合のなかでも、どこまでも落ち着いていて、集中していました。体だけではなく、ハートの大きさに脱帽です。
初めての金メダル、おめでとう!

それにしても、”金メダル3連発”ですよ。
しかも、どれも大逆転。
もうなんと表現したらいいのかわかりません。
最高の3選手が、最高の興奮をくれたことに、ただただありがとう!
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