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おれを守る1年

いやあ、それにしても1年てほんとあっという間ですよね。今日はもう大晦日なんですから。
私の住む長野市は氷点下の冷え込みで、外に出ると肌がひりひりして痛いほどです。
こういう日は家でコタツに入りながらTVでも観る、というのが一番ですかね。

年末年始のTV番組といえばやっぱり時代劇。それも勇壮な戦国物なんてお正月っぽくていいですよね。
色んなランキングを見ていると、戦国物で最も人気があるのは織田信長を扱った作品だそうです。
その行動・発想の斬新さ、夢半ばにして倒れた非業の死が人々を惹きつけるのでしょうね。

そんな織田信長関連作品を眺めていて、私がいつも気になるのは、信長が好んだという幸若舞『敦盛』の場面。
幸若舞は室町時代に流行した舞(謡いながら舞うと考えられています)なのですが、江戸時代には衰退し、明治期には失われてしまった芸能です(福岡にその流れを汲む大頭流が現存)。
日本の芸能はすべて口伝を基とするので、詞章が紙に残ることはあっても、謡い方や舞い方は演じる人が絶えれば何も残りません。
つまり、幸若舞にしろ、信長の時代はどのようなものだったかはもはやよくわからないわけです。
時代劇のそれはたぶん大頭流の指導のもと、演出家が様々考えて作っていると思われます。
これはいい意味でいうとアレンジの幅があるので、演出家の腕の見せ所ですよね。

そして、この幸若舞同様、時代劇を観ていて、「これはもう作れないんだよなあ」、と妙な感慨が沸いてくるのが、”お城”です。
現在行われている姫路城天守閣の修復工事でも、その過程で現代の建築家が知らないような技術が発見されて話題になるように、日本伝統の築城技術はすでに失われてしまっています。
昔ながらのお城を新築することはまず不可能で、内部を鉄筋にし、外観を真似ることは出来ても、それはまったく別物です。

幸若舞も築城技術も、それが滅んだ理由は明治期に西洋文文化・明をありがたがりすぎたせいだと思われます。
そこで踏ん張った宮造り、能楽なんかがいまだにほぼ昔ながらの形で残っているのと比べれば、ほんのわずかな差だったんじゃないでしょうか。
伝統技術、伝統文化といっても、ふとした拍子に簡単に滅んでしまうものなんですよね。
そして、そうなれば取り戻すのは容易ではありません。
幸若舞だって築城技術だって、当時はごく当たり前のものだったはずで、人々もそれが失われるなんて思いもよらなかったのではないでしょうか。
なんとなく続いているような伝統も、実はそこに携わっている人々が日々大切に守っているからこそ、いまここにあるんです。

この2010年、私は日本そのものが”ふとした拍子に”滅んでしまうのではないかという、ぞわっとした危機感を何度か抱きました。
その一番の原因は民主党政権の姿勢ですけど、根本的には”日本を大切にする”というごくごくありふれた感覚が、それが当たり前でありすぎるがゆえに、いまの日本で希薄になっているせいだと思われます。
学生時代に読んだある作家のエッセイに、「(日本)文化を守ることは、おれを守ることだ」という言葉がありました。
そのときの私はその意味、というか感覚がよくわかりませんでした。
しかし、年を重ねてゆくうちになんとなく飲み込めてきたんです。私という人間のあらゆる部分に”日本”が混ざり合って、一体となっていることを。
ものの考え方、飲食の趣向、芸術感覚、日々の習慣、他者との関わり方、身の処し方…、数え切れません。

2011年は、日々当たり前のことを大切にする1年、おれを守り抜く1年にしたいと思います。
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この1年、私の拙い雑記を読んでくださったみなさま、どうもありがとうございました。
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