2011全国中学校スケート大会・フィギュアスケートの部

2008年から今年で4年連続の長野市開催となる全国中学校スケート。長野市民の間でもたぶんお馴染みのはず。
去年行けなかった私ですけど、今年は早々にカレンダーに○をつけて臨戦態勢でした(といっても最終日の今日1月31日の男女フリーだけですけど)。
まずは男子。午前中に所用をこなし、お昼すぎに到着してなんとか最終グループには間に合いました。
知っている選手は宇野昌磨くんくらいなものの、未知の有力選手を発見する楽しみもあります。
会場の空気も選手の表情も前のインターハイよりもどこか熱がありました。いい雰囲気です。
国体(1月26日~30日)に出た選手もそんなにいないでしょうし、中学生にとって、この大会のプライオリティーが高いのかもしれません。
選手紹介ではインターハイ同様、学校名のみをいうだけで所在の都道府県や選手の学年はアナウンスしません。私はこれはぜひアナウンスして欲しいです。後方の席にいた関係者たちですら、「この子、どこの県?」ってひそひそといっていましたしね。
6分間練習を観ていると選手の対格差にびっくり。小学生でも通用しそうな選手(宇野くん)と高校生でもおかしくなさそうな選手が混在。
中学生ってまさに成長期ですから1年生と3年生でもかなり違うでしょうし、個人差もありますもんね。
最終グループの一番手は宇野昌磨くん(名古屋市立冨士中学校)。
これまでなんどかショーでは拝見してきましたけど、競技会はお初なのでとっても楽しみ。
曲は繊細なクラシック。宇野くんは出だしの踊りからすうっとそれに入っちゃうんですから、もう普通じゃありません。滑りの風情も堂々としていましたし、やっぱり場慣れしていますね。
ジャンプはまずまず(ひとつ転倒)だったものの、曲調が激しくなる後半も体力が落ちず、攻めの滑り。ステップシークエンスのノリなんかも圧巻でした。ほんとこの歳にして魅せる選手ですよね。現代に足利義満が生きていたら間違いなくパトロンに名乗り出ますよ。
FSの得点は108.93(TES57.13・PCS52.80・減点1)、SPとの合計161.12。
SPで2位と7点差以上ありましたから、もう優勝は確実ってスコアです。
全体の印象でいえばインターハイの最終グループにいても不自然じゃないくらい。課題はジャンプですかね。ちょっと癖もありますし、やや大きさや勢いに欠けます。それとルッツがこれでもかというくらいロングエッジなのがかなり気になりました…。
でも、そういった癖を薄めて、フィジカルを鍛えてゆけばとんでもない選手になりますぜ!
私はもうファンです。
宇野くんの他で目立った選手を挙げるとするならば、中村優くん(北海道教育大学附属釧路中学校)。
とてもスタイリッシュで独創性もありました。思わず「カッコいいねえ」って唸っちゃうほど。
ジャンプで2ヶ所抜けたのもあまり気にならないくらい流れもありました。
私は彼のような自分の感性を上手く表現できるタイプの選手はかなり好みです。
FSは96.61(TES51.01・PCS45.60)、合計141.33。
スピードスケートが盛んな北海道のフィギュア選手というところもちょっと気になる存在です。
2人以外の選手も気持ちの入ったいい滑りが多く、「すべてを出し切ってやる!」という情熱に溢れていました。青春のきらめきが眩しかったです。
男子の優勝は宇野くん、2位が中村くん、3位が川原星くん(久留米市立筑邦西中学校)。
川原くんは回転不足で転倒してしまったものの3Aに果敢に挑戦。そして後半冒頭に3Lz+3Tを決めて力をアピール。この選手も興味深い存在ですね。
製氷作業後は女子のFS。
男子もそうでしたけど、女子は一段と衣装が煌びやか。
このくらいの年代だと衣装はお母さんなどが手作りすると聞きますけど、玄人はだしといいますか、目を奪われるような素晴らしさで、我が子への愛情の深さに感服します。
会場でも選手のご家族と思しき方々が多くいらっしゃいましたし、駐車場の車のナンバーも日本各地。頭が下がります。
そんな親御さんたちの期待を一身に受ける選手のみなさんはといいますと、十二分に応えているといって過言じゃありません。よく修練が積まれたいい選手ばかりです。日本フィギュアの未来は明るいですね。
第2グループには宮原知子さん(関西大学中等部)の姿が。
私と相方が京都に住んでいたころ、知人から「天才少女がいる」と教えてもらっていて、とりわけ注目している選手です。去年のナガノオンアイスでエキシビジョンを観て以来、どう成長しているか楽しみ。
体格はあまり変化を感じませんでしたけど、ジャンプのバランスがちょっと狂っていて(軸が斜め)、観ていてハラハラ。
でも、宮原さんは根性で着氷。2A+3Tのところでは転んじゃいましたけど、気持ちの強さを見せましたね。スピンは相変わらずの美しいポジションと正確な回転を堪能。
表現の部分はまだまだこれからって感じでしたけど、すくすく伸びていって欲しいです。
FSは90.80(TES50.12・PCS41.68・減点1)、合計134.64。
女子は欠点がなくまとまっている、といった選手が多く、観ていてそのレベルの高さに驚かされたものの、若いのだしもうちょっと弾けてもいいのになあ、と思ったのも本音です。
そんななか思い切りのよい滑りを見せてくれたのが最終グループ1番滑走の佐藤未生さん(名古屋市立伊勢山中学校)。けれん味のないジャンプをバンバン決めて爽快でした(3Sがひとつ1S)。
FSは93.12(TES48.72・PCS44.40)。
そしてこの大会の最後を飾るのは庄司理紗さん(成蹊中学校)。
いわずとしれた全日本ジュニア女王、そして今季の全日本5位の選手です。
「お目当て」といってしまっては他の選手に失礼かもしれませんけど、会場の集中力が一段階上がったことは事実。おしゃべりの囁きが止みました。
ウォームアップのスケーティングもちょっと他の選手とは質が違う感じ(鈴木春奈さんもよかったですけど)。
しかし、この庄司さんというのは本当に中学2年(14歳)なんでしょうか。そのしっとりとした風情はすでに大人。落ち着いた染めの江戸小紋が似合いそう。最初の左手を上げる所作だけで観客を曲の世界へ誘います。
冒頭の3Lzは呼吸が合わずに大きく着氷ミス。
ルッツは6分間練習のときから念入りに踏み切りを調整していましたけど残念。エッジにエラーが付きがちなので手直し中ですね。
このミスを引きずったのか2A+3Tは繋がらず単独2Aに。
「うーん、やばいかも…」、と思われたものの、それはつかの間。
3Fをばっちり決めた後はペースを取り戻します。
というか、その後は素晴らしかった。
美しいスピン、うっとりするようなストレートラインステップ、その流れのまま跳んだ3Lo。
ポワーンとしたあとゾクゾクってきました。
次の3Lz+2Tは慎重だったものの着氷(ルッツのエッジは大丈夫みたいに見えました)。
その後の流れも清浄そのもの。心が雪がれました。
動きは素晴らしく繊細で、指先の一本一本まで優雅。全日本ジュニアや全日本選手権を経て、さらに磨かれたんじゃないでしょうか。滑りも音楽と溶け合うようでしたし、この人は美しいものを呼び込んで、それを自分の感性と調和させることのできる選手ですね。こういう人は世界でもなかなかいないと思います。ジャンプへのチャレンジスピリッツも旺盛ですし、ワクワクが止まりません。
FSは100.38(TES50.70・PCS49.68)、合計153.06。
会場を歩く姿もお見かけしたんですけど、息をしていないんじゃないかと思うくらいしっとりとした女の子でした。
しかし、それでいて、はっとするような強い輝きを放っているんです。野の撫子を想起させます。
これにて優勝は庄司さん、2位は佐藤さん、3位は藤沢亮子さん(飯塚市立飯塚第一中学校)とあいなりました。
藤沢さんは元気な演技を期待していたんですけど、ちょっと動きが重かったですね。ただ、大きく回転不足だったものの3Aに挑戦した場面は興奮しました。
中学校フィギュアは選手と観客(応援)の熱の入った雰囲気がとても心地よかったです。
将来有望な選手を発見するのもいいですし、選手たちの凝縮された”いま”を楽しませてもらえるのもまた素敵です。選手のみなさん、本当にありがとうございました。お疲れ様です。
来年も長野市で開催されることを願っています!


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