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2011世界選手権フィギュア男子シングルSP

3・11大震災の影響で1ヶ月の延期、しかも開催地も日本からロシアへ移るという非常事態のなか、いよいよ始まった2011世界選手権フィギュアスケート(4月24~5月1日)。
日本選手たちはこれまでにない緊張と、これまでにないようなパワーを受けての大会となるはず。
見せてくれ、フィギュアスケートの底力を!

というわけで昨日4月27日に行われた男子SPの映像を観た感想をざっくりと。

ランキングによってグループ分けされるため、若手の多い序盤戦。そこで目に付いたのはアメリカ勢。
リチャード・ドーンブッシュ(91年8月生まれ)はこれが初のシニアの国際大会、ロス・マイナー(91年1月生まれ)は今季からシニアデビューした選手。
全米選手権でアボットやリッポンといった一流選手を退けて表彰台に立って、見事世界選手権出場を果たした2人は、このSPでも確かな能力を見せつけ、大きなミスなくまとめて70.54と70.40。アメリカフィギュアの裾野の広さを改めて実感させられますね。

若手といえば今季飛躍が期待されながらも体型変化に苦しめられたのか不調が続いていたデニス・テン(カザフスタン)。先の冬季アジア大会で見せた復調の兆しは本物でした。
ジャンプが安定してきたことで持ち前の情熱的な滑りを発揮することができるようになってきましたし、なんとかいいシーズンの締めくくりにして欲しいものですね。SPは71.00(TES39.23・PCS31.77)。

そんな若手の多い序盤戦で存在感を見せ付けたのはアメリカのベテラン、ライアン・ブラッドレー(83年11月生まれ)。
今季は公式戦にまったく出場していなかったのにもかかわらず全米選手権優勝をかっさらうという離れ業をやってのけた彼が世界選手権でどのような滑りを見せるのかとっても楽しみ。
ところがリンクに出てきたブラッドレーは失礼ながら体型は中年そのもの。「これでジャンプが跳べるのだろうか…」、ひとごとながら私も少々心配になってしまいました。
ところがブラッドレーはゆったりとしたスケーティングからヨッコラと4T+2T、3A、3F!
ある意味超人ですね。こういう選手が観られるのも世界選手権ならではといったところでしょうか。
SPは70.45(TES38.84・PCS31.61)。
本人も競技を心から楽しんでいる感じで好感が持てました。

話は競技から離れますが、この世界選手権の日程変更でスケート人生が変ってしまった選手がいます。
それはカナダのショーン・ソーヤー。
今季はジャンプが好調、軟体を生かした滑りでも観客の喝采を浴び、カナダ選手権では2位を確保し、アマチュア最後の世界選手権で優秀の美を飾るはずでした。
ところが、1ヶ月の延期により、スターズ・オン・アイスの契約と期間がかぶることになってしまい、苦渋の決断として世界選手権を辞退することになったのです。
これは本当に残念。ISUも柔軟に対応して欲しかったものです。今季のソーヤーは素晴らしかったのに。

ちなみにソーヤーの代わりに出場とあいなったケビン・レイノルズは4Sで転倒するなどまたしても悔しい滑り。調整が難しかったのかもしれませんが…。

そして始まった第4、5グループ。ここからランキング上位選手の登場です。日本の3人ももちろんここ。

ヨーロッパ王者として臨んだフランスのフローラン・アモディオは今季の好調そのままの滑りでほぼノーミス。スコアも77.64(TES40.46・PCS37.18)とまずまず。トップ選手としての評価はもはや揺るぎませんね。FSのがんばり次第ではメダルもあるかも。

このところ競い合いの外で己の演技に集中しているように見えるブライアン・ジュベール(フランス)は大相撲に例えれば魁皇といったところでしょうか。
このSPでは冒頭の4T+3Tの4Tでステップアウトするものの後の要素は冷静に建て直して71.29(TES34.37・PCS36.92)。大崩しなくてほっとしました。
めっきり表情が冴えなくなったジュベールですが、FSではいい笑顔が見たいですね。

現在の男子シングルで話題の中心にいる人物といえば良くも悪くもパトリック・チャン(カナダ)。このSPではなんと93.02(TES51.48・PCS41.54)という夢のようなハイスコア。
確かにいい滑りだったもののここまで高いのはかなりの違和感。
この私の感じ方は会場のお客さんも同じだったのか、テレビを通して観ていても、スコアが出たときの歓声があまりないように思えました。普通はいい演技の後にそれ相応のスコアが出れば観客は大盛り上がりになるものですけど、チャンの場合は観客も混乱してしまうのでしょうね。
この日のチャンは各要素を確かめるように滑っているように見え、技術は精密だったものの、要素の出来栄え、曲全体の流れはいまひとつだったというのが私の印象です。体がちょっと大きくなっていましたし、そのせいかスピードとキレもいいときほどではありませんでした。
私はチャンがベストの演技をすれば93点もあながち夢ではないと思っているものの、この日がそうだとはどうしても思えません。
プロトコルを見ると一部のジャッジが異常な援護射撃をしていましたけど、それが必ずしもチャンのためになっているのかどうか…。

そして第4グループ5人目の滑走は日本王者、小塚崇彦!チャンに食らいつくためには80点台後半のスコアが欲しいところです。25日の予選や練習ではキレのいい動きを見せていましたからやってくれるはず。
しかし冒頭の3Lz+3Tはまずまずだったものの、3Aでバランスを崩し、まさかのお手つき。昨季よくあったミスでも今季はなかったのに…。
それでも小塚くんは得意のスピンとステップで盛り返し、77.62(TES39.83・PCS37.79)をキープ。
ミスはあったものの動きの質は高かったですし、調子は良さそう。SPはちょっと硬かったですね。
プロトコルを見るとチャンのステップシークエンスはレベル4。小塚くんはレベル3。同じくらいの評価でしかるべきじゃないでしょうかね。
FSでは表彰台を目指してGPSフランス杯のときのような爆発を期待!

第5グループの一番手はミハル・ブレジナ(チェコ)。
今季前半は病気のために出遅れましたが、後半から調子を上げてきています。とくにSPは和太鼓に乗った和風の好プログラムなので楽しみ(衣装が中華風なのは先輩のベルネルのよう)。
胃の病気をしたということで昨季よりほっそりしたブレジナ。力強さは減退したものの、その分キレやしなやかさは増してきて、これはこれで魅力的。まとまった演技で空に向かってカメハメ波フィニッシュ!
スコアは77.50(TES41.10・PCS36.40)。

この大会で注目選手は誰かと問われれば、世界中のフィギュアファンがこの人の名を叫ぶはず。それは高橋大輔!
昨季の世界王者であり、高い技術とともに”芸”としてのフィギュアスケートを観客に提供できる現役唯一といっていい選手、いやアーティスト。
そして日本の誇り。
ド派手なピンクの衣装を颯爽と着こなした高橋は不適な表情でリンクイン。
すると会場からは日本かと錯覚するくらいの大声援。日本のファンもたくさんいってらしたみたいですけど、それに加えてロシアのお客さんの人気もあったんじゃないでしょうか。
全日本からスイッチを入れたという高橋はその言葉通り、調子を上げ、素晴らしい躍動感。体も心も踊っていました。
ただ、ジャンプがやや慎重だったのと、ステップシークエンスでひとつバランスを崩したのがもったいない。
スコアは80.25(TES39.33・PCS40.92)。
PCSはこの日ここまでで最も見せる滑りだった高橋がチャンよりも低いというのは私には疑問。
そして思ったより低い技術点は、プロトコルをのぞいてみると3Fにエラー、あとの2つのジャンプの加点も辛目。
大ちゃんはこういう抑え付けられたスコアはあんまり見たことがないのでなんだかもやもやします。長光コーチも鬼の形相でしたね。

この世界選手権で虎視眈々とメダルを狙っているのではないかと私が勝ってに思っているのがチェコのトマシュ・ベルネル。今季はSPもFSは好プログラムな上、調子も安定しています。
ただ、メダル獲得のためにはそれだけじゃ足りません。あとは勇気です!
そしてベルネルはその勇気を集めた4回転からのコンビネーション!しかし惜しくも転倒!
それでも不得手な3Aを確実に降り、3Lzに3Tをつけてリカバリーしたベルネルは品のあるスケーティングで華やかにフィニッシュ。
スコアは75.94(TES39.62・TES37.32・減点1)で、一縷の望みを繋ぎました。

開催地変更で思わぬホームの歓声を受けることになったロシアの希望の星、アルトゥール・ガチンスキーは客席から鋭い視線を飛ばす兄弟子プルシェンコの前で見事に4T+3Tを着氷し、3Lzでおっとっとした以外はなかなかの滑り。
スコアは78.34(TES42.45・PCS35.89)。
私は彼は周囲の期待が大きすぎて縮こまっているように見えるので、もっと若者らしく、わがままになってもいいように思っています。それが演技のダイナミックさに繋がることは偉大なるロシアの先人たちが証明していますしね。

昨季の世界選手権でFSに進めなかった選手が今季SPで最終滑走というかなりの面白い状況。
そしてそこにすんなり溶け込めるのが織田信成の個性!
チャンに技術点で対抗できるのは織田くんのみ。やってくれ!
しかし大切な4T+3Tはステップアウトでコンビネーションに繋がらず。
それでも軽いステップからの美しくしなやかな3Aは惚れ惚れ。
そして3Lzに3Tをつけるのも忘れなかった織田くんはステップシークエンスでバランスを崩したものの81.81(43.37・PCS38.44)という好スコア。
悲願の世界選手権表彰台が見えてきましたけど、すんなりと終わらないのがドラマチックスケーター織田信成の真骨頂でもあるので、色んな意味でどきどきします。

こうして無事に終わった男子SP。1ヶ月の延期が選手の調整にどのような影響を及ぼすか心配されたものの、みなさんいい感じでしたね。やっぱり世界選手権はこうでないと。
チャンの異常スコアで優勝争いの興味がかなり薄れましたFSですけど、各選手のフィギュアにかける情熱を存分に堪能したいと思います。
そして日本男子は「蘇れ日本」のメッセージをリンクに描いて欲しい。
このまま終わってはなりません!
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