片道登山は見たくない
『山で元気に!田部井淳子の登山入門』。
これはNHK教育テレビの『趣味悠々』で2009年の夏に10回に渡って放送された番組のタイトルで、内容は1939年9月生まれという高齢の女性登山家・田部井淳子さんが登山初心者のテレビタレント(50代男性)に登山のイロハを教えるというものでした。
この番組はとても評判がよかったらしく、その後も再放送され続けていますし、書籍にもなっているのでご存知の方も多くいらっしゃるかもしれませんね。私も視聴したことがありますが、登山経験がさほどない身としてもわかりやすい番組でしたし、ちょっと山に登ってみたくなったものです。
それを実行に移したひとたちが昨今の登山ブームを作ったのでしょうし、この番組はブームの火付け役だったのではないでしょうか。
その証拠といっては何ですが、私の地元の長野県警が発表している山岳遭難件数でも2008年が182件、2009年が173件、2010年が213件、2011年が227件、2012年が254件となっていて、『山で元気に!田部井淳子の登山入門』が放送された2009年がひとつの節目になっていることは明らかです。
また、番組では教える側も教わる側も中高年ということで、ターゲットとする視聴者層も基本的にはそこになっていたように思われるので、事故を起こした年齢を見てみると、50代以上のそれは2009年が85件、2010年が105件となっていて、総増加件数(40件)の半分をその層が占めていることがわかります。2011年のそれが128件と順調に伸びていることからも、昨今の登山ブームは中高年のものといっても差支えがないようです。
それにしても、この中高年の登山ブームはいまではNHKはもとより民放や出版社などもこぞって大きく扱い、商売にしていますが、はたして”登山の危険性”について訴えているものがいくつあるのでしょう?
事故が起きて、死者が出たり行方不明者が出たりしても、メディアは責任を取りませんし、当然のようにテレビニュースや新聞からも批判の声は起こりません。ブームで儲けることのほうが大切なのでしょう。
今日5月29日、80歳という史上最高齢でエベレストに登頂したスキー冒険家の三浦雄一郎さんが日本に帰国し、記者会見を開いていましたけど、マスコミのほぼ全てが「よくやった」という祝福ムードでした。
しかし、三浦さんは登頂した後に体調を崩し、下山はヘリを使ったとのことで、どこか中途半端な結果でしたし、危険への認識が甘かったと指弾されてもおかしくないような挑戦でした。私個人は登山としては”失敗”だったように思われます。
危険な状況に陥った理由について三浦さんは会見で、「山頂で酸素マスクを外して写真を撮るなど約1時間いたため」と語っていましたけど、テレビ中継もありましたし、たぶん後から放送されるテレビ番組やCM、出版物の撮影で必要な時間だったのでしょう。
多くのサポートメンバーを従えての万全の体制での登頂には多額のお金がかかることは容易に想像ができますし、それをまかなってくれるスポンサーのためには一肌も二肌も脱がねばならないというものです(ベースキャンプでは寒風摩擦もしていましたね)。
そういう意味では山頂で1時間のお仕事をこなせたことが何よりの”成功”だったのかもしれませんね。
こういう商売登山は物語としては面白いのかもしれませんが、マスコミが手放しに褒め称えることに私は断固反対です。
「帰りは急斜面で一歩踏み出すたびに足がゴムみたいにふにゃふにゃになりました」という言葉からもわかるように、片道分の燃料しか積んでいなかったような今回の三浦さんのアタックはどう見ても無謀なチャレンジです。決して真似をしてはならないものです。高齢者の登山事故が年々増えているこの国の現状を鑑みれば、むしろ批判的に報道されてしかるべきです。
メディアもマスコミもあの世への片道切符を発行するのはもうやめていただきたい。

これはNHK教育テレビの『趣味悠々』で2009年の夏に10回に渡って放送された番組のタイトルで、内容は1939年9月生まれという高齢の女性登山家・田部井淳子さんが登山初心者のテレビタレント(50代男性)に登山のイロハを教えるというものでした。
この番組はとても評判がよかったらしく、その後も再放送され続けていますし、書籍にもなっているのでご存知の方も多くいらっしゃるかもしれませんね。私も視聴したことがありますが、登山経験がさほどない身としてもわかりやすい番組でしたし、ちょっと山に登ってみたくなったものです。
それを実行に移したひとたちが昨今の登山ブームを作ったのでしょうし、この番組はブームの火付け役だったのではないでしょうか。
その証拠といっては何ですが、私の地元の長野県警が発表している山岳遭難件数でも2008年が182件、2009年が173件、2010年が213件、2011年が227件、2012年が254件となっていて、『山で元気に!田部井淳子の登山入門』が放送された2009年がひとつの節目になっていることは明らかです。
また、番組では教える側も教わる側も中高年ということで、ターゲットとする視聴者層も基本的にはそこになっていたように思われるので、事故を起こした年齢を見てみると、50代以上のそれは2009年が85件、2010年が105件となっていて、総増加件数(40件)の半分をその層が占めていることがわかります。2011年のそれが128件と順調に伸びていることからも、昨今の登山ブームは中高年のものといっても差支えがないようです。
それにしても、この中高年の登山ブームはいまではNHKはもとより民放や出版社などもこぞって大きく扱い、商売にしていますが、はたして”登山の危険性”について訴えているものがいくつあるのでしょう?
事故が起きて、死者が出たり行方不明者が出たりしても、メディアは責任を取りませんし、当然のようにテレビニュースや新聞からも批判の声は起こりません。ブームで儲けることのほうが大切なのでしょう。
今日5月29日、80歳という史上最高齢でエベレストに登頂したスキー冒険家の三浦雄一郎さんが日本に帰国し、記者会見を開いていましたけど、マスコミのほぼ全てが「よくやった」という祝福ムードでした。
しかし、三浦さんは登頂した後に体調を崩し、下山はヘリを使ったとのことで、どこか中途半端な結果でしたし、危険への認識が甘かったと指弾されてもおかしくないような挑戦でした。私個人は登山としては”失敗”だったように思われます。
危険な状況に陥った理由について三浦さんは会見で、「山頂で酸素マスクを外して写真を撮るなど約1時間いたため」と語っていましたけど、テレビ中継もありましたし、たぶん後から放送されるテレビ番組やCM、出版物の撮影で必要な時間だったのでしょう。
多くのサポートメンバーを従えての万全の体制での登頂には多額のお金がかかることは容易に想像ができますし、それをまかなってくれるスポンサーのためには一肌も二肌も脱がねばならないというものです(ベースキャンプでは寒風摩擦もしていましたね)。
そういう意味では山頂で1時間のお仕事をこなせたことが何よりの”成功”だったのかもしれませんね。
こういう商売登山は物語としては面白いのかもしれませんが、マスコミが手放しに褒め称えることに私は断固反対です。
「帰りは急斜面で一歩踏み出すたびに足がゴムみたいにふにゃふにゃになりました」という言葉からもわかるように、片道分の燃料しか積んでいなかったような今回の三浦さんのアタックはどう見ても無謀なチャレンジです。決して真似をしてはならないものです。高齢者の登山事故が年々増えているこの国の現状を鑑みれば、むしろ批判的に報道されてしかるべきです。
メディアもマスコミもあの世への片道切符を発行するのはもうやめていただきたい。


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