暑い日のバター

今日(8月31日)の長野市は忘れかけていた真夏の暑さが戻ってきた猛暑日。このところずっと涼しかったので私もぐったりしちゃいました。
こういう日は何か元気になるものが食べたくなるものですが、私の頭に浮かぶのは「ライスカレーは印度が本場、従って真夏にあれを食べるのが一番けっこうなのです」という言葉。
これは『勝海舟』や『ふところ手帖』(映画『座頭市』原作)や『新撰組始末記』などで有名な作家、子母澤寛のエッセイ『味覚極楽』のなかにある〈印度志士ボース氏の話〉にある言葉なのですが、子母澤寛は安い油でウドン粉を炒めた日本式カレーをぼろくそにけなし、「カレーをこしらえる上で一番大切なのはカレー粉より何よりバタのいいのを選ぶことです」と断言した上で、1915~28年(死去)に日本に亡命していたインドの独立運動家、ラース・ビハーリー・ボースに作ってもらったカレーを褒め称えています。

ここでのバタはインド式のバターである”ギー”のことだと思われますが、ギーは一般的なバターと違って牛乳(水牛)を加熱した後に乳酸発行させ、凝固させるという工程を取るので、独特の香りが生じ、それが味の個性になります。
ご承知の方も多いでしょうが、このボース氏が匿われていたのが新宿中村屋で、ボース氏が教えたカレーはいまでも〈純印度式カリー〉として店の名物となっているわけですが、子母澤寛の舌からすると中村屋のカレーはボース氏のものとは違うらしく、「ちっともうまくない」とボース氏に文句をいうと、数日待ってくれたら「あれ以上にうまいものを差し上げる」といわれたものの、面倒くさがっているうちにボース氏がお亡くなりになってしまったとのことです。
これは私の想像ですが、ボース氏は牛乳を発酵させる時間が欲しかったのではないでしょうか。そうすれば”最高のギー”でライスカレーをこしらえることが出来ると。
「カレーはバタ」が信条の子母澤寛としては何とももったいないことをしたものです。

このギーはいまでは日本でも簡単に手に入るようになりましたが、料理に使うと独特の風味がついて面白いものです。その香ばしさは異国情緒そのものといっていいでしょうね。
ちなみに、絵本『ちびくろサンボ』で、サンボを襲った虎が溶けてバターになってそれでホットケーキ(パンケーキ)を焼くという場面がありますが、そのバターもギーのことです。
この場面は絵本からぷーんといい匂いがしてくるようで私も大好きでした。ある世代以上の方はみなそうではないでしょうか。
そして大人になって、これを思い出してギーでホットケーキを焼いたことがあるんです。
「ホットケーキは粉ではなくバタ」といいたくなる味でした。
暑い日にアイスコーヒー片手にこれを食べるのが一番けっこうです。
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