無邪気な巨人、山崎豊子

昨日9月29日、小説家の山崎豊子さんがお亡くなりになったというニュースにふれて、”社会派小説”って何なのかと考えさせられました。
私も山崎豊子さんの作品のファンですから、これまで何冊か小説を読ませてもらっていますけど、難しいことを考えながら読んだことは一度もありません。単純に面白いから読む、それだけです。
小説というのはそもそも楽しむためにあるのであって、”勉強になる”とか”ためになる”とかいうのは二の次だと思うんです。
『白い巨塔』や『沈まぬ太陽』で見る医療現場や労働組合の暗部、『不毛地帯』や『大地の子』で知る戦後問題などは確かにフィクションの枠を超えてしまったような作品ではありますが、ヒロイックに展開する物語はやはり極上のエンターテイメントです。
だからこそ映像化された作品も多いわけで、ひょっとすると山崎さんは小説家としてよりも原作者として、より日本人に影響を与えているのかもしれません。

ちなみに私が一番好きな作品は大阪船場の足袋問屋を舞台にした『ぼんち』です。
薄暗い老舗のかび臭い描写と極彩色の花町のコントラスト、そこを歩く主人公の白足袋が戦争とともに少しずつくすんでゆくような物語の進み方が秀逸でした。そして最後に残るのは足袋を脱いだ裸足の力強さ、というところでしょうか。
この作品は映画化もされていて、私の好きな市川雷蔵さんが主演しているのも嬉しいところです。

山崎さんは今年の8月から週刊新潮で海上自衛官を主人公にした『約束の海』という作品の連載が始まったばかりだったので、それが最後まで読めないことは残念としかいいようがありません。
しかし、没年88歳という年齢で新しく仕事を始めようとした気迫こそ山崎さんから我々日本人へのメッセージと考えれば、その物語の続きは我々の心のなかにある、といえるのではないでしょうか。

フィクションとノンフィクションの境目を叩き壊しながら精力的に面白い作品を世に提供し続けた山崎豊子さんの無邪気さが私は大好きでした。
合掌。
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