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2013GPSスケートカナダ男子FS(後)

(続きです。)
今季の羽生結弦のFSは『ロミオとジュリエット』。
2011-12シーズンの『ロミオ+ジュリエット』とは違う曲になりますが(わかりやすくいうとディカプリオ版→オリビア・ハッセー版)、本人いわく「あの頃の気持ちを思い出すため」に選んだとのこと。
3・11による苦難の時期に色んなひとから応援されながら掴んだ世界選手権の銅メダルと同様に、ソチ五輪でも結果を出して東北と日本のみんなを喜ばせたい、そういうことなのでしょう。その意気やよし、がんばれ羽生結弦!
しかし、この日は冒頭の4Sの着氷で前のめりになる転倒、4Tも前傾してしまてお手つき。ちょっと力んでしまいましたかね。3Fは慎重に着氷。
そしてそこからはステップシークエンスだったのですが、羽生結弦にしては短くてあっさりした感じ。次のビールマンスピンで曲を盛り上げていましたけど、前半は少々物足りなかったですね。
これ以上ミスのできない後半は長い助走からの3A予定が、なんと1A+1Tというまさかのすっぽ抜け。
次は集中しなおしての3A+2Tを成功させたものの、もはや優勝は絶望的な状況。しかし、3Lo、今季導入の3Lz+1Lo+3S(ややつまり気味)、思い切りのいい3Lzと連続着氷したのは成長の証。ルッツはSPでミスをしているだけに気持ちの強さも見せました。
こうして流れを取り戻した終盤はイナバウアーが際立つコレオシークエンス、しなやかで力強いシットスピンとコンビネーションスピンでフィニッシュ。
それにしてもさすがにミスが多すぎました。羽生くんも「やっちゃった」という表情。
FSは154.40(78.54・76.86・減点1)、合計234.80。
私は素人ですからプログラムの組み立てにはあまりケチをつけたくないのですが、この『ロミオとジュリエット』には色々と問題を感じます。
たぶんこれは前半は女性的、後半は男性的に演じるというコンセプトなのでしょうけど、前半はビッグジャンプを跳ぶためかつなぎも少なく、ステップもあっさりしすぎで女性的な柔らかさとか優しさとかではなく、ただ弱々しいというだけの印象です。ステップの部分の時間を増やして、ビールマンをもうちょっと後にして3Aの助走時間を削るというのが常道ではないでしょうか。
後半はジャンプパートと表現パートにくっきりと別れすぎで、唐突にコレオから盛り上げようとしてもさすがに難しいと思います。もっとジャンプの前後に演技をするべきです。
全体でいうと技術要素とキメポーズだけが印象に残り、演技内容が希薄になる、プログラムが1本の線、ひとつの物語になっていない、そんなところですかね。

羽生結弦の魅力とはいったい何のか、私は、”いつでも全力の演技をするところ”だと思っています。スタミナ温存やジャンプのために点数になりにくい部分で手を抜く、というのは彼らしくありません。
「あの頃」の羽生結弦には爆発しそうなエネルギーと壊れそうな繊細さ、そして歓喜と興奮がありました。
それを取り戻すためにはとにかく全力で演技をすることです。途中で倒れたっていい、息が続かなくなったっていい、それでも必死に氷の上であがき続けるのが羽生結弦の魅力です。そしてそうやっているうちに本当のスタミナと表現技術を獲得するのだと私は思います。
いまのようになってしまった原因はたぶん、”省エネ演技でプログラムを小奇麗にまとめさせること”が得意なあのコーチのせいでしょうけど、そんなダラダラした演技では”特定の選手”しかハイスコアは望めませんし、観客の気持ちを掴むことも到底かないません。
まあ、キスクラの様子を見ていると、羽生くんもあのコーチをあまり信頼していなさそうですよね。もちろんコンビ解消は時期的に難しいでしょうけど、それでも今後は自分自身の判断で演技を作ってゆく必要があると思います。
このままだと五輪に出場はできても東北のひとたちに笑顔を届けることはできなくなってしまいますぜ。

今季をラストシーズンと明言している我らが織田信成のFSは『ウィリアム・テル序曲』。ずっと前から決めていたんじゃないかというくらい似合いますよね。織田くんなら明るく楽しい大活劇にしてくれるはず!
ところがこの日は冒頭の4T予定が3Tになり、さらに次の4Tからのコンビネーション予定までもが単独の3Tになるという信じられないスタート。
これには私などは目の前が真っ暗になりそうでしたし、一緒にテレビを観ていた相方も言葉を失っていました。
織田くんといえばザヤック(ジャンプの跳びすぎ)。このミスは本当にやばい。種類の跳びすぎと、コンビネーションの跳びすぎという2つの罠を自ら作ってしまっているんです!
正直いうと私はもう演技うんぬんという気持ちではありませんでした。とにかく「跳びすぎないで!」の一念です。
そして次の3Aからのコンビネーションは+2T!OK!+3Tだったらノーカンでした。
後半冒頭も完璧な3A!織田くんらしい夢のような大ジャンプ!
ウォーレイからの3Lzも成功、しかし3Fは惜しくも転倒、ここで会場から思いのこもったの「がんば!」の声、それに応えるように3Loと3Sは成功!
結局もうひとつ跳べたコンボは跳ばなかったわけですけど、それはそれでよかったように思います。前半の失敗を取り返す+3T!とかになったらどうしようかとドキドキしていました…。
そうしてジャンプが終わって笑顔になった織田くんは伸びやかで愛嬌のあるコレオシークエンスとコンビネーションスピンでフィニッシュ。ここは私も大いに楽しめました。やはりいいプログラムになりそうですね。
FSは152.18(73.32・79.86・減点1)、233.00。
しかし厳しいことをいうようですが、織田くんももうベテランなのですから、このFSのようなミスを犯してはいけません。「転んでもいい」というくらいの気持ちで4Tにしなくては、そのジャンプだけではなく後からの
コンビネーションも+3Tにできなくなって基礎点が大きく下がってしまいます。後ろ向きの気持ちでは全日本を勝ち抜けはせいません。
いまの織田くんは挑戦者なんです。死ぬ気で跳ばなくてはなりません。
信長でいったら桶狭間にいるんですよ!

パトリック・チャン(カナダ)は羽生くんや織田くんの結果を知ってか知らずか、力をセーブして無難に演技をまとめたという格好のFS。身ごなしやスケーティングはいつものように正確無比でしたけど、全体的にあっさりした感じでした。
ジャンプは4T+3Tと4Tをしっかり決めてスタートするも、3A予定は2Aになって、後半冒頭も3Lz+1Lo+2Sに。3Lzは軸がやや斜めになりながらの着氷、3Loは後傾、3F+2Tは綺麗、しかし最後は1Aに。
ジャンプの助走や踏み切りにいつもの力感がありませんでしたし、終盤も何だかずいぶんバテていてコレオに勢いがなく、最後のスピンも大きくバランスを崩すミスで尻すぼみ。ままだまだ調子は上がっていないようですね。
それとFSの『四季』ですが、昨季のプログラムと音楽以外何が違うかわからないような感じで、とても残念です。以前にやったことのあるプログラムで、思い入れのある曲だそうですが、それならば振り付けも以前のひとに頼むべきだったんじゃないでしょうか。観ていて”特別なもの”とは感じませんでした。
それでもFSは173.93(83.01・90.92)で合計262.03という圧勝劇。
これに日本のメディアの一部が「チャンは磐石」といった内容の記事を書いていましたけど、今大会のチャンはいつものように転びまくらなかったものの、SPでは4T→3T、FSでは3A→2A、3S→2S、2A→1Aというミスを繰り返しているんです。少しも磐石ではありません。
いまの彼のジャンプ構成はトップ選手のなかでは決して高くないので、本来、ミスは許されないんです。
わけのわからない力でスコアが底上げされていても、いまでは日本男子や他の有力選手が勝てない相手ではありません。自分がノーミスの演技をすればいいだけで、怖がる必要はないんです。
今回の結果だってチャン云々の話ではなく、大きなミスを連発した羽生結弦や織田信成の問題です。

「こういうときに勝たなくてどうする!?」
この2013スケートカナダ男子シングルを総括すればその一言です。
猛省してください。
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