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2014全日本フィギュア女子シングル(後)、新女王誕生

(続きです。)
NHK杯で5位に入って成長を見せた加藤利緒菜さんにとってこの全日本はチャンスを掴みとる場。
SPは3T+3Tを綺麗に跳んでスタートさせると、丁寧なスピンとステップ、後半も必死さが伝わってくる3Loと2Aを成功させてのノーミスの演技。色んな意味で凄い緊張感でした。
SPは58.10(TES33.14・PCS24.96)で5位。もうちょっと全体的にスピードが出てくるといいですね。
FSは他人に勝つというより、いかに自分に打ち勝てるかが栄光への分かれ道。
冒頭の3F+3Tは回転不足気味に詰まった着氷、観ているこちらが息が詰まりそうになるくらい顔が強張る加藤さんでしたが、3Sと2Aは無事着氷、ステップもガチガチになりながら一歩一歩確かめるように。
そうして後半も3F、2A+3T、3Lz(エラー)、3Lo+2T+2Loと連続着氷、素晴らしい集中力でした。
スピンも数えるように回っていましたし、振り付けも本当に丁寧(腕でバランスを取り過ぎる癖あり)、全体的にも粘り強くまとめた演技は、ある意味で勝者のそれでいた。自分に勝ったといっていいでしょう。全日本の表彰台がかかるなか本当に
立派。
しかし、スコアは思ったより伸びず、107.43(55.43・52.00)、合計165.53。
理由はやはり微妙な回転不足(UR)。NHK杯FSの117.51と比べればややミスはありましたけど、点差はそれ以上の開き。こんなんだと本人も観ている側も混乱してしまいます。

シーズン前から”新エース”と呼ばれながらも、GPSではなかなかいい演技できなかった村上佳菜子さんですが、毎年全日本では復調しているので今年もそこに期待。
しかし、SPでは3T+3Tを着氷するも、3Fで詰まった感じの着氷、フライングキャメルスピンの入りでもミス、他のスピンとステップ、それと全体的にやや動きが硬いか、後半の2Aは成功。
細かいミスはありましたけど、手堅くまとめて、プログラムにも一本筋が通っていたように思います。
ところがSPは57.55(26.95・30.60)という思ったより低いスコアでキスクラの村上さんは唖然とした表情。
プロトコルで確認するとコンビネーションは両方ともUR判定、3Fもそう。
ただ、今大会ならでは厳しさと思えるのはファースト3Tだけで、セカンド3Tと3Fは国際大会基準でもおそらくURを取られるでしょう。ここ数年の村上さんのジャンプは一見回っているようでもスローVTRだと回転不足がわかる、いわゆるチート降りになっているのは否定できません。
こうなるとFSでもURが気になるでしょうけど、SP9位に留まったのですからもう攻めるしかない!
しかし3T+3Tと2Aを成功させてスタートしたFSも動きが硬く、いいときの思い切りのよさが感じられません。
しかもこの『オペラ座の怪人』の振り付けでは得意なはずのステップで村上さんが輝かない。
SPでもそうでしたけど、やはり村上さんのプログラムはステップを中心に作って欲しいですし、そうするべきです。
後半冒頭の3Loは転倒しそうなお手つき、3F+2Tはかなりひやひや、続いてはパンクの1F、これで夢であった日本女王、そして表彰台までもが遠のいてしまったわけですが、それでも村上さんは気持ちを切らすことなく代名詞の3S+2T+2Loを着氷し、気持ちで演じるコレオ、2Aも着氷、最後のスピンも乱すことなく回り切りました。意地と誇りは見せたと思います。
FSは110.74(48.18・62.56)、合計168.29。
PCSが思ったより高く、合計スコアもまずまずのところまで出ましたけど、他の選手と比べてジャンプの基礎点が低いので回転不足があろうがなかろうが、どうしても技術点が伸びません。
テレビ放送ではそのことをまったくいわないので、多くの視聴者は村上さんの惨敗の理由がよくわからないのではないでしょうか。
村上さんは技術要素と演技の出来栄えで勝負するタイプの選手なので、よほどいい内容でないと高いスコアは出せません。
そしてこれはバンクーバー五輪以前に国際スケート連盟が求めていたスタイルなんです。
あの頃の女子シングルは回転不足の判定が厳しかった上に(いまのURがダウングレード)、FSで2Aが3本まで許されていたので(いまは2本)、選手たちはジャンプの難度を上げるというより、自分が出来るジャンプの精度を上げるという選択をしていました。
世界を見渡してもそうですし、日本でもそうなのですが、そういう時代をジュニアで過ごした世代は3回転ジャンプの種類が少ない選手が本当に多いんです。
逆にいまのジュニア選手は色んなジャンプを習得し、試合でも果敢に挑戦して自分のものにしていますけれども、それは
ルールの違いであって、能力の違いではないと私は思います。
ですから、ルールに振り回されないよう、いつだって自分たち自身で高い目標を持ち続けることが大切なのでしょう。
日本のフィギュア界はそれを意識して若年層を指導していって欲しいものです。

繰り上がりながらもGPFに日本女子としてただ一人出場し、堂々とした演技を披露した本郷理華さん。
シンデレラガールとして臨んだSPでも3T+3Tを思い切って跳んでスタートすると、丁寧なスピン、後半の3Fも成功、長身が映える大きな2A、『海賊』を誘惑する大胆なステップ、勢いにのったままのコンビネーションスピンからの華やかなフィニッシュ!ガッツポーズも飛び出した!
今季得た自信がそのまま演技に直結した見栄えのする演技でした。今季一番の出来でしたね!
それにしてもこのひとは大舞台に強い、なんという本番力!
SPは66.70(36.82・29.88)で堂々の1位。
これで優勝の二文字が現実を帯び、観ているこっちはかなり緊張したFSでしたけど、立ち上がりから3F+3T(ややUR気味)、3Lz(エラー)、3Loと丁寧に着氷し、ステップシークエンスでは力強い滑りで『カルメン』の迫力と匂うような世界を演出。曲もよく似合っています。
後半も3S、2A+1Lo+3S、3F、2A+2Tと連続着氷!すごい集中力です。
終盤のコレオシークエンスでもスピードと勢いは衰えないばかりか、燃え上がるような滑りで会場全体を熱くし、コンビネーションスピンで歓喜の渦を作っての堂々たるフィニッシュ!本人もほっとしたようなガッツポーズ!
SP首位で迎えたFSでここまで自分の演技ができるのは本当に大したもの、脱帽です。なんというメンタルなるの強さでしょう、惚れますね。
FSは121.93(59.69・62.24)、合計188.63。
このあと宮原さんを残していたので結果はわかりませんが、どうなろうと本郷さんは”勝者”だ思います。 
本番でどんどん成長している彼女の姿が本当に眩しかった!

宮原知子さんは女王獲りを宣言してこの全日本に乗り込んだだけに、SP『魔笛』から気合の入った内容。
3Lz+3T、3F、2Aと着氷し、一糸乱れぬといいたくなるスピン、機械仕掛けの人形のように正確なステップシークエンス、日頃の修練が結実した美しさがそこにはありました。
SPは64.48(34.48・30.00)で2位。いつものように3Lzと3TにURが付いてスコアは思ったより伸びませんでしたけど、ジャンプ少しずつ力強くなってきていると思います。あとちょっとです。
運命の悪戯か、FSは最終滑走となった宮原さん、ほぼノーミスで演技を終えた本郷さんを逆転するためにはそれと同等かそれ以上のクオリティが必要です。
それがわかっているせいでしょう、会場も息を呑んだような静けさ、そんななか滑り始めた宮原さん、冒頭の3Lz+2T+2Loは開き直ったような伸びやかなジャンプ!3Fと3Loも力強い!この大一番で弱点を克服してきた!
早くも私は胸が熱くなってきてしまいました。
ステップシークエンスでは全身を限界まで大きく使いながらもその正確性を失わない動きとフットワーク、安定感抜群のシットスピンで前半を締めくくると、後半は3Lz、畳みかけるような2A+3T!よし!
ピンとしたビールマン、すぱっと3S、そして『ミス・サイゴン』の可憐さ、いじらしさ、燃え上がる恋心を全身全霊で表現するコレオ、その情熱を爆発させる2A+3T!よっしゃあ!
最後は自分が女王であることを宣言するかのような逆回転コンビネーションスピンで会場を総立ちにさせた宮原さん。プロトコルなんて見ていませんが、私には一点の曇りもない演技に思えました。
新女王に最敬礼!
シーズン中とジャンプ構成を変えて後半セカンドトリプル2本というリスクの高い攻めの構成にしたのはスコアの面だけではなく、曲を盛り上げるという意味でも大成功でした。
また、そのジャンプも失敗を恐れず、バチっと降りることができていて、自分の殻をぶち破ったといっていいでしょう。
FSは131.12(66.88・64.24)、合計195.60。
基礎点もトップという完璧な勝利、文句なしの優勝、宮原知子のフィギュア道がついに栄光へとたどり着いたのです。
あくことなき努力を積み重ねること、逆境に立ち向かい続けること、自分を信じること、2014年の締めくくりに宮原さんは我々に大切なものを教えてくれました。
本当にありがとう、そしておめでとう!

本郷さんとの息詰まる女王争いといい、本当にいい大会でした。
ジュニア選手たちの活躍も本当に素晴らしかった。
日本女子の未来は明るい!

それではみなさんよいお年を!
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