2015世界フィギュア・男子SP(後) 希望は繋がった
(※続きです。)
中国は今回の世界フィギュア上海大会を2022年の冬季五輪招致(北京)のPRに使おうとしているのは間違いないわけですが、その招致のライバルであるカザフスタンに所属するのがデニス・テン。
彼が優勝したら中国は嫌だろうなあ、なんて思っていたら、SPの曲が途中からかかるアクシデント。
デニス・テンは不快そうに掛け直しをさせてスタートしましたけど、冒頭の4Tで転倒。
中国って最低ですね。私も思わずテレビに向かって「デニスがんば!」と声をかけてしまいました。
以前は失敗が連鎖するタイプでしたけど、成長したデニス・テンは3Aを慎重に降りると、体のラインが綺麗なキャメルスピン、後半の3Lz+3Tはこらえる形になったもののなんとか着氷。
高品質で安定感のあるスピン2本の後は、エッジが常に氷を捉えているステップシークエンスでは『Caruso』の情熱に持ち前の気品をブレンドさせて世界を広げ、なにものにも負けないという気持ちの強さを表情に出しながらのフィニッシュ。
SPは85.89(TES44.33・PCS42.57・減点1)。
演技のインタビューでは「いい経験ができたと思います」と嫌味たっぷり。
雪が黒くなりそうな北京より、カザフスタンでの冬季五輪の方が選手には優しいんじゃないでしょうか。
羽生結弦は病み上がり、デニス・テンに大きなミスが出たことで、にわかに優勝のチャンスが広がったハビエル・フェルナンデス(スペイン)は、クワドキングらしいターンからの爽快な4Sで演技スタート!
3Lz+3Tはやや突っ立つようになるもしっかり降り、『Black Betty』のセクシーな踊りとイケメンを強調するアップライトスピンで黄色い歓声を浴び、後半は屈伸運動のような入り方の3A!でしたけど、これは少し前のめり。
ステップではロックな音楽を細かいステップで表現してお客さんをノリノリにさせると、最後のスピンまで鮮やかに駆け抜けました。
この大舞台でのノーミスは大したもの。ここまであまりいい演技がなかったので会場をあっためましたね。
SPは92.74(48.63・44.11)。これには本人はちょっと不満顔。
フェルナンデスはいつも”思ったより点が高い選手”ですが、今回は思ったより低かったので、プロトコルを確認すると、3Aの加点が0.14とやや渋く、ステップもレベルが3でした。ステップは今季も3が付いた試合はありましたけど、だいたいは44(私には3のときと4のときと何が違うのかよくわかりません。体が大きく動かないのでどちらかというと3が正しいような気はしますが…)。
いつもの追い風はどこへやら、といった感じですかね。
27歳のベテランながら、GPFと欧州選手権で銅メダルを獲得するという好調ぶりを見せるセルゲイ・ボロノフ(ロシア)。
今大会では後輩のコフトゥンとともに3枠を狙っているでしょうから最低限の仕事はしたいはず。
しかし両膝に慢性的な不安を抱えるボロノフは最初のコンボが4Tオーバーターン+3Tになる不安なスタート。
正確なスピンの後のシンプルなステップでは振り付けも強化して『死の舞踏』の雰囲気を盛り上げると、後半の3A大きく跳び、3Loも鋭い切れ味!なんと頼りになる男なんだ!
締めの2本のスピンも音楽に合わせて盛り上げ、ニヒルな表情で堂々のフィニッシュ!
最初にミスがありましたけど、すぐに立て直したのはさすが。ベテランの凄味を見せましたね。
SPは84.70(44.46・40.24)。
PCSもしっかり評価されましたし、ロシアは”Wエース”態勢ですね。
腰の怪我でフィンランディア杯を欠場、GPS中国大会で他選手と衝突事故、全日本後には腹部の手術、世界フィギュアに向けての調整では足の捻挫。
羽生結弦の今季はまさに”厄年”としかいいようがありません。
昨季の五輪と世界を獲った新王者にとって、今季はさらに上に飛翔するシーズンだったはずなのに、天は彼になんという試練を与えるのでしょう。
しかも、このSPでは無良くんと小塚くんがミスを連発し、3枠維持のための期待が一身に集まるという状況。
調整不足の羽生結弦には過酷すぎます。
しかし我々は知っている。羽生結弦が逆境に舌なめずりをする男であることを。
私はなぜかまったく不安はありませんでした。今季は怪我や調整不足の試合を数多くこなしているので”慣れ”もあるはず。
ショパンの『バラード』にのって繊細に滑り始めた羽生結弦、冒頭の4Tは惜しくもお手つきステップアウトになるも、抜けなかっただけよし。
シットスピンとキャメルスピンは相変わらずの柔軟性とキリキリっとした回転速度、伸びやかなスケートで世界を膨らませてからの3Aは入りも降りも美しく、イーグルにつなげる圧巻の技術力は曲調をぐっと演出にも繋がっている。
そして鬼門ともいえる3Lz+3Tも落ち着いて決めると、深いエッジで緩急をつけ、長い手足で彩る恍惚としたステップシークエンス。テレビからも会場がうっとりしているのがわかりました。
最後のコンビネーションスピンも音楽の流れのままに透き通るように回った羽生結弦、ミスはありましたけど、手術明けに
これほどの演技を見せられば、もう黙って拍手を送るしかありません。
彼はやはり王者です。
SPは95.20(49.92・45.28)で暫定1位。
テレビを観ていて、ノーミスのフェルナンデスの上になったことを「なんで?」と思われた方もいらっしゃるでしょうけど、これは後半ジャンプ(基礎点1.1倍)の数の違いと、スピンとステップの加点の差が主な要因です。
そういった”技術”の差は客観的な部分だと思うので、テレビでよく説明して欲しいですよね。PCSだけで勝っていたら説明しにくいでしょうけど…。
そのポテンシャルは世界のメダルも夢ではないロシア王者マキシム・コフトゥン。
それを見せつけるかのような豪快な4S+3Tでスタート!これは何か波乱が起きるかも!
なんて興奮していたら次の4T予定が2Tに…。
しかも3A予定までもが1Aになるというとんでもない大チョンボ。
急降下しすぎ。
男子SPの規定は単独3回転以上のジャンプと2A以上のアクセルジャンプですから、この2本のジャンプはそれをクリア出来ず、得点ゼロですぜ。
ステップなんかでも体格の良さをいかした大胆な演技をできていて、全体の動きも好調さが感じられただけに本当に残念。SPの4回転2本はほんとリスク高いですね…。
キスクラで人目を憚らず涙をこぼすコフトゥンの前に提示されたスコアは70.82(30.67・40.15)。
日本人も君の気持ちはよくわかる、諦めずにFSもがんばれ!
何かを起こせるだけのチカラは持っている!
というわけで、取りあえず羽生結弦は可能性をFSに繋げてくれましたし、ベテラン2人の奮闘にも期待しましょう!
これは奇跡のドラマの伏線だ!

中国は今回の世界フィギュア上海大会を2022年の冬季五輪招致(北京)のPRに使おうとしているのは間違いないわけですが、その招致のライバルであるカザフスタンに所属するのがデニス・テン。
彼が優勝したら中国は嫌だろうなあ、なんて思っていたら、SPの曲が途中からかかるアクシデント。
デニス・テンは不快そうに掛け直しをさせてスタートしましたけど、冒頭の4Tで転倒。
中国って最低ですね。私も思わずテレビに向かって「デニスがんば!」と声をかけてしまいました。
以前は失敗が連鎖するタイプでしたけど、成長したデニス・テンは3Aを慎重に降りると、体のラインが綺麗なキャメルスピン、後半の3Lz+3Tはこらえる形になったもののなんとか着氷。
高品質で安定感のあるスピン2本の後は、エッジが常に氷を捉えているステップシークエンスでは『Caruso』の情熱に持ち前の気品をブレンドさせて世界を広げ、なにものにも負けないという気持ちの強さを表情に出しながらのフィニッシュ。
SPは85.89(TES44.33・PCS42.57・減点1)。
演技のインタビューでは「いい経験ができたと思います」と嫌味たっぷり。
雪が黒くなりそうな北京より、カザフスタンでの冬季五輪の方が選手には優しいんじゃないでしょうか。
羽生結弦は病み上がり、デニス・テンに大きなミスが出たことで、にわかに優勝のチャンスが広がったハビエル・フェルナンデス(スペイン)は、クワドキングらしいターンからの爽快な4Sで演技スタート!
3Lz+3Tはやや突っ立つようになるもしっかり降り、『Black Betty』のセクシーな踊りとイケメンを強調するアップライトスピンで黄色い歓声を浴び、後半は屈伸運動のような入り方の3A!でしたけど、これは少し前のめり。
ステップではロックな音楽を細かいステップで表現してお客さんをノリノリにさせると、最後のスピンまで鮮やかに駆け抜けました。
この大舞台でのノーミスは大したもの。ここまであまりいい演技がなかったので会場をあっためましたね。
SPは92.74(48.63・44.11)。これには本人はちょっと不満顔。
フェルナンデスはいつも”思ったより点が高い選手”ですが、今回は思ったより低かったので、プロトコルを確認すると、3Aの加点が0.14とやや渋く、ステップもレベルが3でした。ステップは今季も3が付いた試合はありましたけど、だいたいは44(私には3のときと4のときと何が違うのかよくわかりません。体が大きく動かないのでどちらかというと3が正しいような気はしますが…)。
いつもの追い風はどこへやら、といった感じですかね。
27歳のベテランながら、GPFと欧州選手権で銅メダルを獲得するという好調ぶりを見せるセルゲイ・ボロノフ(ロシア)。
今大会では後輩のコフトゥンとともに3枠を狙っているでしょうから最低限の仕事はしたいはず。
しかし両膝に慢性的な不安を抱えるボロノフは最初のコンボが4Tオーバーターン+3Tになる不安なスタート。
正確なスピンの後のシンプルなステップでは振り付けも強化して『死の舞踏』の雰囲気を盛り上げると、後半の3A大きく跳び、3Loも鋭い切れ味!なんと頼りになる男なんだ!
締めの2本のスピンも音楽に合わせて盛り上げ、ニヒルな表情で堂々のフィニッシュ!
最初にミスがありましたけど、すぐに立て直したのはさすが。ベテランの凄味を見せましたね。
SPは84.70(44.46・40.24)。
PCSもしっかり評価されましたし、ロシアは”Wエース”態勢ですね。
腰の怪我でフィンランディア杯を欠場、GPS中国大会で他選手と衝突事故、全日本後には腹部の手術、世界フィギュアに向けての調整では足の捻挫。
羽生結弦の今季はまさに”厄年”としかいいようがありません。
昨季の五輪と世界を獲った新王者にとって、今季はさらに上に飛翔するシーズンだったはずなのに、天は彼になんという試練を与えるのでしょう。
しかも、このSPでは無良くんと小塚くんがミスを連発し、3枠維持のための期待が一身に集まるという状況。
調整不足の羽生結弦には過酷すぎます。
しかし我々は知っている。羽生結弦が逆境に舌なめずりをする男であることを。
私はなぜかまったく不安はありませんでした。今季は怪我や調整不足の試合を数多くこなしているので”慣れ”もあるはず。
ショパンの『バラード』にのって繊細に滑り始めた羽生結弦、冒頭の4Tは惜しくもお手つきステップアウトになるも、抜けなかっただけよし。
シットスピンとキャメルスピンは相変わらずの柔軟性とキリキリっとした回転速度、伸びやかなスケートで世界を膨らませてからの3Aは入りも降りも美しく、イーグルにつなげる圧巻の技術力は曲調をぐっと演出にも繋がっている。
そして鬼門ともいえる3Lz+3Tも落ち着いて決めると、深いエッジで緩急をつけ、長い手足で彩る恍惚としたステップシークエンス。テレビからも会場がうっとりしているのがわかりました。
最後のコンビネーションスピンも音楽の流れのままに透き通るように回った羽生結弦、ミスはありましたけど、手術明けに
これほどの演技を見せられば、もう黙って拍手を送るしかありません。
彼はやはり王者です。
SPは95.20(49.92・45.28)で暫定1位。
テレビを観ていて、ノーミスのフェルナンデスの上になったことを「なんで?」と思われた方もいらっしゃるでしょうけど、これは後半ジャンプ(基礎点1.1倍)の数の違いと、スピンとステップの加点の差が主な要因です。
そういった”技術”の差は客観的な部分だと思うので、テレビでよく説明して欲しいですよね。PCSだけで勝っていたら説明しにくいでしょうけど…。
そのポテンシャルは世界のメダルも夢ではないロシア王者マキシム・コフトゥン。
それを見せつけるかのような豪快な4S+3Tでスタート!これは何か波乱が起きるかも!
なんて興奮していたら次の4T予定が2Tに…。
しかも3A予定までもが1Aになるというとんでもない大チョンボ。
急降下しすぎ。
男子SPの規定は単独3回転以上のジャンプと2A以上のアクセルジャンプですから、この2本のジャンプはそれをクリア出来ず、得点ゼロですぜ。
ステップなんかでも体格の良さをいかした大胆な演技をできていて、全体の動きも好調さが感じられただけに本当に残念。SPの4回転2本はほんとリスク高いですね…。
キスクラで人目を憚らず涙をこぼすコフトゥンの前に提示されたスコアは70.82(30.67・40.15)。
日本人も君の気持ちはよくわかる、諦めずにFSもがんばれ!
何かを起こせるだけのチカラは持っている!
というわけで、取りあえず羽生結弦は可能性をFSに繋げてくれましたし、ベテラン2人の奮闘にも期待しましょう!
これは奇跡のドラマの伏線だ!

