リオ五輪男子サッカー予選決勝、「アジアで勝てる世代」

「2点を取られてムカついていたので、優勝してすっきりしましたね」。
試合後の手倉森誠監督が興奮のなか語っていたように、すっきり、いやスカッとする決勝戦でした!

リオ五輪アジア予選も兼ねたU23アジア選手権は、出場切符が”3”ということで、我らが若き日本代表は決勝に進出したことでそれを見事獲得。
日本国内も決勝戦を前にしてすでに祝福ムードに包まれていたわけですが、選手たちは口々に「アジア王者になって五輪に出場したい」と決意を語っていました。
この世代はU17でもU19でも世界に羽ばたくことができず、「アジアで勝てない世代」などという不名誉なニックネームが付いていたので、それを覆したかったのでしょう。

しかし、韓国との決勝戦では、前半20分に韓国の大きなサイドチェンジにボールウォッチャーになると、相手のマークを外してしまっての失点。
これは今大会初めて流れのなかでやられた失点であり、ビハインドもまた初めて。
ここまでの日本は、前半は粘り強い守備で耐えて、後半に相手が息切れしてきたところで得点を奪うというのが勝利の方程式でしたから、それがいきなり崩れたことになります。
追いつきたい日本ですが、この手倉森ジャパンは”攻撃の形”というものがいまだ確立されていないので、ボールを持って攻め込んでもアタッキングサードでどん詰まるという繰り返し。
守備でも韓国の小気味よいパスワークに振り回さることが多く、苦しい前半でした。1失点で凌げてホッとするくらい。

後半の手倉森監督は出だしからオナイウ阿道に代えて原川力を入れ、フォーメーションも4-4-2から4-3ー3へ。
中盤を厚くして韓国の攻撃を防ごうという思惑だったのでしょうけど、この変化に日本の側が慣れていない立ち上がりの2分、左サイドを破られると、CB岩波拓也が釣り出されたところにクロスを通され、フリーの選手にシュートを決められてまさかの0-2。
この試合は日本では1月30日の深夜11時45分キックオフでしたから、テレビを消してふて寝しちゃったひともいるかもしれませんね…。

その後の韓国は2点リードの余裕からかやや受けに回り、圧力も弱まりますが、日本は6分にラッキーなこぼれ弾を拾った中島翔哉のシュートが惜しかったくらいで、チャンスすらほとんど作れません。
逆に韓国は日本が前掛かりになったところをカウンターで狙っていて常に危険な感じがしました。
そして15分、その状況を打破するために手倉森監督は大島僚太を下げてスピードスター浅野拓磨を投入し、フォーメーションも再び4-4-2へ。
そこからの日本はとにかく”浅野を走らせる”という戦法にシフト。

しかし、フォーメーション変化によってまたしても生じた混乱に漬けこまれる形で韓国が立て続けにチャンスを作り、かなりヒヤヒヤ。相手がシュートを外してくれて助かりました。
日本は攻撃だけではなく、守備でも組織的が機能ないので、相手に連動して攻め込まれるとなかなか対応ができません。
最後のところでGK櫛引政敏を中心とした”個人”ががんばってってはいたものの、それだけではとうてい凌げそうもない。

このままじゃ韓国に追加点を与えてしまう…、そんな嫌な流れでしたけど、21分の日本は今大会でもほとんど見たことのない連動で左サイドから仕掛けると、最後は浅野がシュート!
これは惜しくも外れますが、にわかに光明が射したようなプレイでした。
するとその1分後、右サイドの矢島慎也からのスルーパスに素早く反応した浅野が韓国守備陣の裏を取ると鮮やかに決めた!
これで1-2に!絵に描いたようなな美しいパスとシュートでした!

このゴールで完全に潮目が変わったのか、その1分後、左サイドを駆け上がった山中亮輔が得意の左足でクロス、これを中央で待っていた矢島がどんぴしゃヘッドで決めて電光石火の同点劇!
山中も矢島もここまで存在感が希薄でしたけど、急に光り輝いた!

この大会の韓国は後半にスタミナ切れを起こし、失点するというパターンでしたけど、この試合もまさにそう。
攻守ともに圧力もスピードも技術もどんどん落ちてきます。
逆に日本は後半に強い。
日本選手たちはそれを自信にしていましたし、「オレたちは後半に強い!」という自己暗示もかかっていたことでしょう。

同点に追いつかれた韓国は、それまでのパスワークではなく、伝統的なロングボールによる攻撃を選択しますが、日本はそれを粘り強く跳ね返してのカウンター。
28分には必死に耐えてから、久保裕也と中島が走って惜しいチャンスを作る場面も。
この2人は攻守に渡って前半から走り抜いたのは本当に凄い。

30分には殊勲の矢島がどこかを痛めて豊川雄太と交代。
韓国側も足を釣った選手が下がるなど、中2日・中3日というハードな日程による疲労の蓄積は計り知れません。
あとは気力の勝負だ。

韓国は34分に190センチ近い選手を2人投入して完全にパワープレイの体勢。
しかし、日本は中盤の守備とCB植田直通を中心にした最終ラインが、手堅くそれを跳ね返すのですから本当に逞しい。
かなり押し込まれても、どこか安心感がありました(足元のパスを回された方が嫌でしたね)。
その守備陣を心から信じていたのは攻撃陣で、カウンターに入る場面でも、常に前線に2人以上残っているんです。
普通はもっと人数をかけて守りたくなるものです。これには勇気がいります。
しかし、そこをぐっと我慢して守備陣に任せることで、チャンスは広がる!

36分にカウンターに入った日本、パスが合わずに相手にクリアされるも、それが中途半端になったところを中島が素早く拾って、すぐさま浅野を走らせるパス、浅野もそれを予測していたように抜け出すと、GKを冷静に見て右隅に流し込む値千金のゴール!
少年漫画のような大、大、大逆転劇!
これは仲間への信頼と勇気が生んだ奇跡のゴールだ!

日本はベンチもスタンドも含めて勝ったような喜びよう。
しかし、まだ試合は終わっていない、残り時間はロスタイムも含めてまだ10分以上ある。
試合会場はあの悲劇の地”カタール・ドーハ”なんだ、最後まで気を抜いてはいけない!

そんなふうにテレビの前で激を飛ばしたひとも多いでしょうけど、この日本の若者たちはそんなことは百も承知で、韓国が死に物狂いでロングボールを蹴ってくるのを最終ラインが的確に弾きかえし、46分に左SB室屋成が相手のトラップミスを奪ったプレイは本当に大きかった。
しかも前線はマイボールになったときは冷静にキープして時間を上手く潰すんです。見ていて私もニヤリとしちゃいましたよ。
このように体のスタミナだけではなく、心のスタミナでも韓国を凌駕し、勝者に相応しい余裕があった手倉森ジャパン。
ドーハの悲劇から20余年、日本サッカーはよくもここまで進歩したものです。本当に感慨深いものがありました。

そして試合終了のホイッスル。
喜びを爆発させる若きサムライたち。
その笑顔の爽やかで華やかなこと。
これには日本列島が大いに満足し、呵々大笑したことでしょう。
そして、スタンドでは「アジアで勝てる世代」という粋な応援プレートを掲げるひともいました。
本当におめでとう、アジア王者!

日本代表といえば、フル代表も世代別も、”技術と内容”重視でしたけど、この手倉森ジャパンは”勝負強さ”に比重が置かれる珍しいチームでした。
それもここまでアジアでもベスト8止まりの世代ということで、”自分たちは弱い”というところからスタートしたせいでしょう。
その”弱さ”を”強さ”に変え、サッカーの内容では上回っていたイラン、イラク、韓国という、これまで壁になっていたチームを次々に撃破しての優勝というのは、本当に爽快でした。
チームが同じ方向を見て一丸となって戦えば、岩をも通すことがある、これがサッカーであり、チームスポーツです。
…ただ、このままのサッカーではリオ五輪での活躍は難しいでしょう。
しかし、この”勝負強さ”をベースに、今後サッカーの質を上げゆけば、ワクワクするような魅力的なチームになるはずです。
この若きサムライたちが、日本サッカーの在り様に新しい要素を付け加えてくれたことは確かなのです。
これには私も日本サッカーのファンのひとりとして、心から感謝したいと思います。

手倉森ジャパンが残したのは結果だけではありません。
本当に凄いことをやってのけたんです。
日本サッカーの歴史を変えたんです。
これを自信に、世界を驚かせてくれ!
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