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大相撲はそんなにご立派なものではない

早いもので、今年2017年も今日が大晦日。
この1年を振り返り、なにか書き忘れたことがあるかなあ、と少し考えたとき、思い浮かんだのは”大相撲”でした。

今年の大相撲は、まず初場所後に”2場所連続優勝かそれに準じる成績”という慣例を無視して稀勢の里が横綱になり、四横綱時代を迎えたはずなのに、その稀勢の里を始め、白鵬や鶴竜も怪我での休場が相次ぎ、複数の横綱による激しい優勝争いはひと場所も観ることができませんでした。
そんななか、初場所を途中休場した以外はずっと土俵を守り、大相撲の看板を背負っていたのが横綱・日馬富士。
満身創痍のなか、ひとり横綱の重圧に打ち勝って秋場所を制したのは特に立派でした。年間を通しての貢献度はナンバーワンだったはずです。

ところが、その日馬富士が九州場所前の巡業で暴力事件を起こして場所後に引退するのですから、まさに天国と地獄としかいいようがありません。
これは大相撲全体にもいえることで、九州場所まで全場所満員御礼だったのにそれが途切れたばかりか、渦中のモンゴル人力士や親方衆はワイドショーの格好の餌食となり、無秩序でダーティなイメージがどんどん膨らんで行きました。

また、一連の問題に油を注いでるのが貴乃花親方(理事)であることは言をまちません。
本人はいまだに説明をしてくれないのでなにを考えているのかはよくわかりませんが、いまの相撲協会に不信感と嫌悪感を持っていることは明らかで、理事会では対決姿勢を見せ、危機管理委員会にも非協力的。
貴乃花親方は黙して語りませんが、とにかく”いまの相撲協会は間違っていて、改革が必要だ”というのだけを態度で示し、マスメディアはその真意をあれやこれやと勘ぐって適当なことばかりを書いたりいったりするので、余計に混乱が増しているといった状況です。

この1ヶ月というもの、私も連日のように相撲記者やスポーツジャーナリスト、好角家の話を聞いてきました。
しかし、なんだかどれも少しもピンとこないんです。
それはなぜなんだろう…?と考えていてわかったことがあります。。
彼ら(彼女ら)は大相撲を随分立派なもののように語っているんですね。
「神事」だの「国技」だのと。
でも、それって本当なのでしょうか?
大相撲ってそんなに立派なものなんでしょうか?

〈相撲〉の起源といえば、古事記や日本書紀にあるように”力比べ”ですね。
純粋に競技として楽しんでいたといってもいいですし、〈出雲の国譲り〉のように勝者がなにかを手にすることもありました。
そして、各地の神社や宮中にも記録があるように、収穫を占ったり祝ったりするための〈奉納相撲〉というのも長い歴史があります。
数十年前の日本では、秋になると地域の神社で子供同士で相撲を取らせたり、力自慢の男たちが村(集落)の横綱を決める相撲大会をするのも珍しいことではありませんでした。
その姿はまさに〈国技〉といっていいでしょうね。

そして、その奉納相撲がより儀礼的になったものが〈神事相撲〉です。
形式が定まっていて、それに従って相撲の型を見せるというものですから、見えない神様と一人相撲を取ったり、2人で勝ち負けを最初から決めておいて何番も取るという場合もあります。
そこに競技性はなく、神様に対して人間が自分の力を示すことが本質なのでしょう。
ですから、大相撲のことを「神事」というひとは競技性を否定しているとしかいいようがありません。
神事相撲というのは悪くいえば八百長ですしね。

勘違いしてはいけないのは、〈大相撲〉は〈相撲〉の一形態であるということです。
日本には、奉納相撲があり、神事相撲があり、学生相撲があり、アマチュア相撲があるのです。
大相撲というのは江戸時代に成立した勧進(興行)相撲にすぎません。
大銀杏を結った力士たちが東西の別れ、櫓の下で行うという形はいまもそのまま残っていますし、化粧廻しや番付もその頃に生まれたものです。
人気力士は大名や商家のお抱えとなり、美々しく着飾り、広告塔のようにもなっていましたし、東西力士の土俵入りや横綱土俵入りも、神事でもなんでもなく役者の顔見世と同じでした。
つまり、大相撲というのは”興業と芸能の側面が強い相撲の一形態”なのです。
そんなにご立派なものではありません。
歌舞伎なんかもそうですけど、大相撲が大上段に構えている姿を江戸時代のひとが見たら笑っちゃうんじゃないでしょうか。

年末のすす払いではありませんが、作られた常識を頭のなかから取っ払って新年を迎えたいものです。
みなさん、よいお年を!
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