fc2ブログ

市民の城と国民の城

私は昔から池波正太郎先生の作品が大好きで、その舞台となった地へも足を運ぶことも多いのですが、いまだ行ったことがなく、そしてずっと思い続けている場所があるんです。
それはかの加藤清正が築いた熊本城。
子供の頃、初めて手に取った池波作品が『忍者丹波大介』だったこともあって、その続編たる『火の国の城』も夢中になって読んで、そこで描かれる熊本城の勇壮さに強い憧れを抱いたものです。
映像や写真で見ながら、想像のなかの城がどんどん膨らんでいって、私にとっても「夢の城」なんです。

そのことを熊本出身の友人に話したら、普段は大人しいのに驚くくらい食いついてきて、熊本城のことを事細かに、そして誇らしげに語るんです。
「日本一の城だ、絶対行った方がいい、なんなら一緒に行って案内してやる」と凄い勢いでした。
馬刺しも熊本が一番で信州のなんて目じゃないともいっていましたけど、馬刺し以上に熊本城でしたね。
地元のひとがそんなにも愛着を持つ熊本城ですから、私の憧れが一層強くなったのはいうまでもありません。

ですから、2016年4月の熊本地震で大きな被害を受けた熊本城の姿は私も本当にショックでしたし、熊本のひとたちの心中を察するにあまりあるものがありました。
生まれたときから見守ってくれている存在であり、地元を離れたときもまた心の支えとなってくれる大きな存在、それが熊本城のはずです。
その瓦が、壁が、そして自慢の石垣が崩れたとき、自らのアイデンティティーが揺らいだひとも多いかもしれません。

その熊本城は西南戦争で大小天守や本丸御殿、多くの櫓が焼け落ち、その後、城跡になっていたのを1960年に熊本市が”一般からの寄付”を募り、天守や櫓を再建したわけです。
つまりは熊本を愛するひとたちの城です。
自分のおじいちゃんおばあちゃん、ひいじいさんひいばあさんがなけなしの金を城のために供与したことも、いまを生きる熊本人の城への愛着を一層を強くしていることでしょう。

熊本地震の被害では、文化庁所管の石垣や建造物については国庫から多くの補助金が下りることになっていますし、それ以外の部分にも地方交付税が投入されるとのことですが、それでも熊本市の負担はかなりの額になりますから、市では〈復興城主制度〉という名の寄付を募り、熊本城の再建を目指しています。
今回も”市民の城”というスタイルを踏襲するわけです。
震災という不運ではあっても、全額を国に出してもらっていたら、市民の誇りにはなりません。

ちなみに、沖縄戦で全焼した首里城は90年代から正殿などが徐々に再建されてきたわけですが(※復元ではなく再建)、首里城公園が国営公園だということもあってか、城郭内の建物の費用は国が出しました。
地域のランドマークを国に作ってもらうというのは聞いたことがなく、異常な感じがします。
そしてその首里城は昨年2019年10月に”失火”によって正殿と北殿と南殿を含む多くの部分が焼失したわけですが、城郭内の建物はもともと国のものなので再建費用(これは再建)は当然のように国が出すことになってしまっています。
沖縄県議会で県の政策調整監が「一義的には国が復元すると考えている」と述べていますから間違いありません。
また、”失火”ですから、本来ならば指定管理者である〈沖縄美ら島財団〉の責任が問われるべきですし、場合によっては国は財団に賠償請求すべきだと思いますが、それらの動きはまったくありません。これも異常な感じがします。

そしてまたおかしなことに、”復元への一般からの寄付”を募っているのがなぜだか沖縄県と那覇市なんです。
復元するのは国なのですから、県と市が寄付金をもらっても意味ないですよね?
何十億円も集まっているみたいですけど、いったいなにに使うんでしょ…。
寄付をしたひとたちは、首里城を自分たちの城として誇りに思いたいはずなのに…。
人気ブログランキングへ
スポンサーサイト



プロフィール

かつしき

Author:かつしき
FC2ブログへようこそ!

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード