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コスタリカ戦での森保監督は間違っていない。

ドイツ戦で代表史上最高のゲームをして日本中が大いに沸かせた森保ジャパンですが、次のコスタリカ戦で代表史上最低最悪のゲームをしてしまい、メディアと専門家、ネット世論から壮大な手の平返しの大バッシングを受けています。
まあ本当に信じられない敗戦、許されないミスからの敗戦ですから、そういう反応も当然といえるでしょう。

しかし、そんな批判も感情的なものが多く、結果論だったり、的外れだったりするものが散見されるのもまた事実です。
たとえば最も槍玉に上がっている森保監督の”ターンオーバー”です。
初戦から5人が入れ替わっているのが、「手抜きだ」というわけです。
この日のスタメンを並べると、GK権田修一、4バックは右から山根視来・板倉滉・吉田麻也(CAP)・長友佑都、ダブルボランチに遠藤航と守田英正、攻撃的中盤は堂安律・鎌田大地・相馬勇紀、ワントップに上田絢世でした。
5人違うといっても主軸は替えていませんし、”休ませる”という本来の意味でのターンオーバーだったのは伊東純也→堂安、久保建英の→相馬のところだけです。。
他の3人は右SBは酒井宏樹が足を痛めたので山根になり、ボランチはレギュラー格の守田が復調したことで田中碧と替わり、1トップはコスタリカが引いて守ってくることを予想してのFWで最もボールが納められそうな上田を起用したというだけのことでしょう。
ですから、「森保監督はターンオーバーで手を抜いた」という批判は正しくありません。
鎌田と遠藤と吉田を休ませていたらそういわれても仕方ありませんが。

とはいえ、このスタメンの前半は攻撃でまったくといっていいほど得点の匂いがしなかったので観ていてフラストレーションが溜まったひとも多いのだとは思います。
コスタリカも前への意欲がなかったので、いわゆる塩漬けされたようなゲームになっていて、まったく面白くなかったのもそれに拍車をかけたことでしょう。
しかし、森保監督からすれば、コスタリカはこの試合で”勝利”を得ることがGS突破の絶対的な条件だったので、どこかのタイミングで
攻撃的に来ることを予想し、まずは様子見で4-2-3-1の守備的な布陣を選択したはずですし、それは常道といってもいい判断です。
”前半の0-0”は間違いなくゲームプランの内であり、日本にとってもそう悪いものではありませんでした。
この日のコスタリカ相手に最初から攻撃的布陣を組んでガンガン行くという選択肢ももちろんあったかもしれませんが、カウンターの危険度も高まるので、それは結果論です。

そして勝負の後半、森保監督は頭から長友→伊藤洋輝、上田→浅野琢磨でシステムも3-4-3に変え、攻撃的に舵を切ると同時に、コスタリカの両WBの攻撃力を封じにかかります。
この交代はばっちりハマって後半は立ち上がりから日本のペースになりました。
いわゆるワンコートゲームの様相を呈し、ボールはコスタリカ陣内でのみ動き、コスタリカはカウンターを狙う気配もなかったほどです。
敵は拍子抜けするほどに攻めてきませんでした。
コスタリカは初戦を0-7で落としていたため、これ以上の失点が恐ろしく、勝利を目指すのではなく、ただただ0-0の勝ち点1が欲しいという心理だったのかもしれません。
この試合が引き分けならば3戦目までGS突破の可能性も残りますし、自国民に対してもなんとなく面目が保てますからね。

そうして5バックで引いて守るコスタリカから日本はなかなかゴールを奪うことができず、後半17分には山根→三笘薫、22分に堂安→伊東純也でさらに攻撃をぶ厚くします(三笘が左WB、相馬が右WBに)。
これでさらにコスタリカを一方的に押し込む日本ですが、アジア予選の頃から引いた相手を打開する術を持っていないので、ゴールが遠い、というより決定機すら作れません。
一番のチャンスは後半25分、伊東が中央で仕掛けて上手く抜け出し、PA前で相手のファウルで止められた場面だったでしょうか(相手の15番はレッドでもよかったと思います)。
これ以外にもコスタリカはアタッキングサードでのファウルで日本の攻撃を止めていましたけど、日本のFKは悉く不発でした。
ここもずっと課題ですし、コスタリカもそれがわかっていたからこそ簡単にファウルで止めに来たのかもしれません。

そんなじれったい展開のなか、問題の後半36分、日本の攻め疲れを察したのか、コスタリカが前への意識を強め始めたそのとき、伊藤(3バックの左)の背後に浮き球が入ったのを伊藤がヘッドで吉田に繋ぐと、吉田はクリアすることなく、少し前にいた守田へのパスを選択。
そのパスがなぜかふわりとしたルーズなものだったため、守田が慌てて処理に行くも、コスタリカの選手3人がチャンス!とばかりに寄せてきてボールを奪われると、そこから簡単にパスを繋がれてのゴール。

吉田のミスが責任の8割9割の占めているとはいえ、伊藤が最初のところでセイフティーにクリアせず、しかも吉田がおかしなパスミスをしたあと、シュートを決めた相手4番のマークを外してしまっていたのも大きかったです。
もっとも、伊藤からすれば吉田があんなミスをするとは思いもよらず、まさか!という感じだったのかもしれません。すっごい慌てていましたしね。
また、専門家やサッカーファンからはGK権田のセービング能力に失望する声も上がっているようです。確かにシュートがしょぼかった
だけに、止めるか弾くかしてくれという感じはしました。
守田についても、もうちょっと上手く処理して欲しかったという声もあって、ようするにミスが連鎖しまくって、誰もそれを止められなかったということです。

この失点の発端となった”繋ぎ”でいうと、試合後の伊藤と、翌日の吉田が「クリアでもよかったのではないか」という後悔を漏らしていました。
時間帯や状況からすればそれがセオリーだったはずですが、攻撃陣がなかなか得点を奪えないなか、少しでも相手に時間をあげたくないという思いが”繋ぎ”の判断になったのでしょう。
つまり、責任はミスした選手だけにあるのではなく、チーム全体にあるということです。
攻撃で攻めども攻めども点が入らなければ、守備陣もリズムが狂うというものです。

ちなみに、チーム全体の意識共有として、この試合は「引き分けで勝ち点1でもOK」と試合前から話し合っていたそうです。
森保監督が吉田・板倉・遠藤をターンオーバーしなかったのも零封が大前提にあったからだと思います。
勝ち点4にしておけば、7時間後のスペイン×ドイツでドイツが負ければ日本はGS突破でしたし、ドイツが勝つか引き分けでも、日本は第3節のスペイン戦で引き分けでよかったのですから、コスタリカ戦は”勝ち点1”が最優先だったわけです。
逆にコスタリカ戦を落とすと一気に暗雲が垂れ込めてくるというのがこの段階の日本でしたから、「引き分けでもよし」というのがチームの共通認識となって然るべきだったのです。
ところが、試合後の堂安が「試合中に選手それぞれが”勝ち点3を取らなければ”という考えが頭をよぎったのではないか」と語っていたように、やはり欲が出てしまったのだと思います。
コスタリカが想定よりも弱かったのもその欲を刺激し、守備陣のリスク管理を疎かにさせてしまったのではないでしょうか。

そして失点後に残された時間は15分ほどあったものの、失点直後の日本はやや混乱したような感じになっていましたし、37分に相馬→南野拓実(南野がシャドー、純也が右WB)に替え、左WBの三笘を頼って攻めの形を作ろうとするも、その回数は限定的で、コスタリカの堅守を破ることなくそのまま0-1で試合終了。
引いた相手に弱い日本にとって堅守のコスタリカは最も勝ち点3を奪いにくい相手だったかもしれませんが、勝ち点1をキープするには最も容易な相手のはずでした。
その相手に”勝ち点1でもOK”という状況で負けてしまうのですから、本当に最低最悪の試合でした。
二度とあってはならない試合です。

さて、こうして怒りを抑えながら試合を振り返ってみても、森保監督の戦術・采配・選手交代には大きな間違いを感じません。
「勝利を目指して前半からベストメンバーで攻撃的に行くべきだった」といっているひともいますが、メンバー的にはほぼベストでしたし、コスタリカがどういうふうに試合に入ってくるかわからないなか、攻撃的に戦術を取るというのは現実的ではありません。

先発メンバーの選択でも、存在感が皆無だった上田は単なる実力不足ですし、前田や浅野の先発だったとしても点が獲れていたとも思えません。コスタリカの守備に有効そうなタイプは上田でしたし、起用自体は間違いじゃないんです。彼の実力や経験が足りなかっただけです(大迫勇也を選ぶべきだったというのはあります)。
堂安がいまいちだったのは、全体的に不安定で自信なさげだった山根のサポートが得られなかったせいでしょう。堂安はひとりで打開するタイプではありません。
山根は酒井の怪我なので仕方ないの一言です。
相馬はまずまずの出来でした。左右のWGとWBが出来てFK・CKも蹴れるのでチームの力にはなっていたと思います。
怪我明けの守田はまだまだ本調子ではありませんでしたが、それでも田中よりはましかな…。

途中交代に関しては、フィーリングがおかしかった鎌田→久保、攻めてこないコスタリカには必要性が低かった遠藤→柴崎という選択肢を取らなかったのは疑問ですが、森保監督はエース鎌田には絶対的な信頼を置いているのでしょうし、遠藤はコスタリカがいつ捨て身で攻撃してくるかわからなかったため残さざるを得なかったのかもしれません。
「三笘の投入が遅い」という指摘については、ジョーカー三笘で成功してきた過去があるのであのタイミングだったのでしょう。ドイツ戦でもそれで同点弾に絡んでいますね。

そう考えると、交代カードの使い方も間違っていたとはいい切れないんです。
森保監督は”最低でも勝ち点1、上手く行けば勝ち点3”というプランのなか、バランスの取れたマネージメントをしたと思います。
それを「中途半端」と断じるひともいるかもしれませんが、失点場面のミスがなければ、終盤に日本の得点があったかもしれませし、少なくとも引き分けて、「悪くない結果だった」という評価になっていたはずです。

森保監督に非があるとすれば、終盤のリスク管理を徹底させなかったことです。
ピッチサイドから大声で指示を送っていたのでしょうか?
交代で入れる選手にどんなメッセージを託していたのでしょうか?
以前から「試合中の判断を選手任せにしている」と批判されている森保監督ですが、それが結果に影響した可能性は否定できません。

日本はこの敗戦と、スペイン×ドイツが引き分けだったことにより、第3節のスペイン戦で勝ちを拾わねばGS突破が難しいという剣が峰に立たされてしまいました。
コスタリカに勝っていればGS突破が決まっており、引き分けていてもかなり有利な勝ち点でスペイン戦を迎えられただけに、本当に悔やまれる敗戦です。
私も試合後は絶望感に包まれ、しばらくなにも手につかず、なにも喉を通りませんでした。
おそらく選手たちはそれ以上のショックを受けていることでしょうし、そこから立ち直るのも容易ではないはずです。
私も24時間経ってもまったく元気が出てきません。気持ちが切り替えられません。
(試合の翌日、長友は「スペインに負ける気がしない。日本の勝利がはっきりと見えている」と豪語していました。こういうベテランは本当にありがたいです。)

ですが、そんなんじゃスペイン戦は戦う前に惨敗が確定してしまいます。
”勝てばいい”というシンプルな試合なのですから、監督も選手も迷うことなく戦えるはずですし、ここからはメンタルの問題です。
スペイン戦に集中するために重要なのは、”ベスト8”という当初の目標を忘れることです。
今後を一切考えず、すべてをスペイン戦にぶつける覚悟で臨むのです。
全選手が疲労や怪我で次の日ベッドから起き上がれないような試合をするしかありません。
スペインに勝って決勝トーナメントに進んだとき、選手が足りなくて不戦敗になるくらいの覚悟が必要です。

1大会でドイツとスペインを破ればベスト8と同等以上の価値があると思いますし、私はそれで大満足です。
サムライブルーなのですから、主君たる国民・サポーターのために「武士道とは死ぬ事と見付けたり」という姿を見せて欲しいものです。
ここからが番狂わせの本番です。
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