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バックカントリーは規制ではなく安全強化を

もはや冬の風物詩のようになっている”バックカントリー事故”も、COVID19が流行していた期間はずいぶん少なくなっていましたけど、日本政府がその対策を緩和した影響か、この2023年1月はそれが立て続けに起こっています。
場所も北海道、新潟県、長野県、群馬県、鳥取県と様々で、運よくなにごともなかったり、多少の怪我で済む場合もあれば、悲しいことに亡くなってしまったひとも複数いらっしゃいます。
バックカントリースキー・スノーボードといっても、スキー場の外(リフトを使うだけ)を滑るので、その本質は雪山登山(下山)であり、その危険性はレジャーの枠を超えるわけです。

しかし、ほとんどの被害者を見ると”雪山登山の装備”を持っていないことが明らかになっています。
遭難したり雪崩に遭って場合のことを想定していないのです。
〈全国スキー安全対策協議会〉が推奨する装備は予備の防寒具、スコップ、食料、救急セット、ヘッドランプ、火を点けられるもの、雪崩ビーコンなどとなっていますが、それらを用意すると、大きなリュックサックを背負わざるを得なくなり、それだと邪魔くさくて滑りを楽しめないということなのでしょう。

ちなみに被害に被害に遭うひとのほぼすべては”県外”もしくは”国外”からの旅行者なので、日程の都合から、天候や山の状態が悪くとも強引に雪山に挑んでいるようにも見受けられます。
それはこの1月末の大寒波の最中に事故が頻発していることからも明らかです。
”せっかく来たんだから””滞在を延長する費用はないし”みたいな感じなのでしょうし、そういう甘い考えから事故が起こる度に地元の警察や消防が捜索に駆り出されるため、一般のひとたちは本当に嫌な気分になります。
自分勝手なひとたちのためにカネ・ヒト・モノが使われるのですから当然です。
捜索隊が二次遭難する恐れもありますしね。
私の住む長野県などは日本一バックカントリー事故が多いといっても過言ではなく、おそらく県民の多くはバックカントリーになんらかの規制を設けるべきだと思っているはずです。

ところが、県や市町村の行政も議会もそれに同調する動きはありません。
むしろバックカントリーを信州の観光資源にしようと考えている気配すら感じます。
実はこの29日に白馬乗鞍岳で雪崩に遭った外国人5人のグループも、長野県観光機構がそのグループに雪山の様子を撮影してもらう代わりに旅費を一部負担する契約だったらしいんです。
撮影場所の詳細は詰めていなかったらしく、観光機構も彼らがバックカントリーでそれを行うどうかは把握していなかったとのことですが、それも暗黙の了解があったと考えるのが自然です。

長野県のスキー場には一定の管理をしているバックカントリーを用意しているところもありますし、行政もスキー場もバックカントリーを半ば公認し、それを国内外のスキーヤー・スノーボーダーに対する”売り”にしているわけです。
バックカントリーはそれを楽しむだけでも魅力的なのに加え、SNSや動画サイトの普及により、”バックカントリーで滑る自分を発信すること”で二倍の満足が得られるという現代的な遊びです。
そしてそれに憧れて遠い雪山まで足を伸ばすひとびとが世界中に存在し、それが信州のような雪国にとっては大切なお客さんなのです。
登山客と違ってスキーやスノボのお客さんは連泊してくれますしね。

ですから、今後の長野県の方針としては、バックカントリーの規制ではなく、安全強化ということになるでしょう。
県民の理解を求めるために、捜索・救助費用の一部自己負担といった議論も出てくるかもしれません。
私も個人的にはバックカントリーを売りにすることは賛成ですし、長野県は〈冬のアクティビティ利用促進事業〉を貫くべきだと思っています。
そのためにも利用者への注意喚起や知識の提供が重要です。
ネガティブな世論が巻き起こっても、ビバークして耐えたいところですね。
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