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スポーツへのサウジマネーの影響

欧州サッカーの22-23シーズンが終わってからというもの、連日のように世界のスター選手を巨額マネーで買い漁っているサウジアラビアですが、そのターゲットはサッカーだけに留まらず、今度はテニスにも大規模な投資をすると報道されています。
そういうと〈LIVゴルフ〉のように既存の組織に喧嘩を売るのではないかと想像してしまうところですが、そうではなく、超高額賞金ツアーやスターを集めたエキシビションなどを開催するのみとのことですから、混乱はなさそうです。
テニス関係者・ファンからもいまのところは反発は起きていないようですし、報酬が増えることを喜んでいる有力若手選手もいるので歓迎ムードをいったところでしょうか。

ただ、そのムードに静かに反対しているひとたちもいるとは思うんです。
サウジとテニスでいえば、18年に起きた反ムハンマド皇太子の論陣を張っていたジャーナリストが殺された事件で、皇太子の関与が疑われていたため、その年の12月にサウジで開かれる予定だったエキシビションへの参加について、フェデラーが断り、ナダルとジョコビッチが懸念を示したことで、結局それが中止になったということがありました(表向きはナダルの怪我)。
マリーも22年6月に「僕がサウジでプレイすることはない。多くのトッププレイヤーも断っている」と語っているように、サウジと関わりたくないという選手は一定数いるようです。

しかし、19年から現在までそのサウジのエキシビションツアーは、若手選手を中心に何事もなく開催されるようになっていますから、独裁者の凶行に対する反応には世代間ギャップがあるのかもしれません。
BIG4やそのちょっと下の世代はクリーンイメージで多くのスポンサーを集め、いまだに若手の何倍もの収入があるため、オイルマネーにすり寄る必要がないこともあるでしょう。
もちろん、若手たちからすれば、BIG4時代が終焉を迎えつつある影響で世界的なテニス人気にも陰りが見え始めているなか、現実的になるのも頷けますけどね。

こうしてサッカー、ゴルフ、テニスと積極的に展開されるサウジの巨額投資ですが、その背景にあるのはここ十数年間中東諸国が躍起になっている”スポーツウォッシング”であり、サウジのしていることはその際たる例といっていいでしょう。
中東諸国はイスラム教を国教とする君主制の国ばかりですから、欧米の価値観とかけ離れた人権侵害が度々指摘されていて、その非難をかわしたり、また海外からの投資を盛んにするためにも国のイメージアップが必須とされていて、そのためにスポーツが利用されているというわけです。
加えてサウジでいえば、実質的なトップであるムハンマド皇太子(22年には首相に)のダークなイメージを覆い隠そうという思惑もあるはずです。

そしてそれは成功しているように見えます。
LIVゴルフとPGAの統合でも、サッカークラブ・サッカー選手の高価買取でも、テニスの新ツアーでも、ムハンマド皇太子の疑惑と絡めて破談するということはありませんでした。
世界のメディアもオイルマネーが流れているのか、ムハンマド皇太子を糾弾する記事もすっかり見かけなくなっています。
反ムハンマド皇太子で頑張っているのは国際的人権団体アムネスティ・インターナショナルくらいでしょうか。

また、サウジのイメージ戦力でずる賢いのは、女性スポーツにけっこう力を入れていることです。
中東諸国はイスラム教の影響もあって女性の権利がかなり抑圧されていますが、近年のサウジはそれを緩和する政策を取っていて、女性が徐々に社会進出できるようになっていますし、18年に女性のサッカー観戦が一部許されたり、女性が運転免許証を取得できるようになったことは世界的にも報道されました。
そして女子サッカーはその象徴といってもいいような存在で、19年にサッカー連盟の女子部門が設立され、22年からは女子サッカーリーグの試合が行われるようになっただけではなく、若手選手を育成する施設が国内にいくつも建てられ、外国人女性指導者を招聘するなどして猛スピードで強化が進んでいます。
女子W杯に出場できるようになれば、国際社会への最高のアイコンになることでしょう。
(いまのサウジ女子はアジアカップの予選にでも出場できないレベル。)

ちなみに、23年女子W杯にはサウジはの観光部門がスポンサーに手を上げたものの、国がスポンサーになるのはよくない、とか人権問題なんかがあって、FIFAの会議で断ることを決めたそうですが、サウジの女子サッカーへの投資の意欲は本物みたいです。
サウジの政府系ファンドが買収したニューカッスルでも女子部門の完全プロ化が発表されていますし、こと女子サッカーにおいてサウジはいい影響しか与えていません。

女子ゴルフでも優勝賞金70万ドルという目が飛び出そうな超高額賞金ツアーがサウジで開催されていますし、女子テニスだとアル・ホグバニ(03年1月生まれ)というサウジ初の女性プロ選手がいて、おそらく彼女を軸にツアーやエキシビションが企画されるのではないでしょうか。
他にもボクシングやモータースポーツでも女性選手が生まれていますし、サッカーの女性審判やコーチの育成も始まりつつあるというのですから、こと女性スポーツにおいてはサウジのイメージは良好そのものです。
サウジ政府の積極投資に感謝する女性選手の声も多く聞かれているのも事実です。
”女性の人権問題”は確実にウォッシュされているといっていいでしょう。

私個人の心証としてもサウジのイメージはかなり良化していますから、マネーの力って本当に恐ろしいです。
卑しい乞食根性だとわかってはいるもものの、日本のスポーツ界にも投資してくれないかなあ、なんて考えてしまうこともあるくらいです。
もっとも、サウジのスポーツウォッシュは”世界”に向けてのものですから、影響の薄い地域やマイナースポーツに投資するつもりはさらさらないようです。
そうして生まれるであろう”格差”もちょっと恐ろしいですよね。
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