2014NHK杯女子FS、繋いだものと繋がらなかったもの

五輪の翌年のフィギュアスケートはよく”新時代到来”といわれるわけですが、浅田真央が休養し、鈴木明子が引退した今季の日本女子は強制的なまでにその状態。
そんななか、”新女王”の座を争う村上佳菜子さんと宮原知子さんにとってこのNHK杯の直接対決は全日本に向けてのまさに前哨戦。互いに負けられない戦いです。
SPでは村上さんが64.38の3位、宮原さんが60.69の4位とやや点差は開きましたけど、まだまだ十分に逆転は可能。
では、熱戦を期待しながら視聴した2014NHK杯女子FSのテレビ中継を振り返ってみたいと思います。

SPでは初GPSの緊張からか得意のジャンプで転倒してしまった加藤利緒菜さんでしたけど、このFSでは冒頭から開き直ったいいジャンプ!
3F+3T、3S、2A、3F、2A+3T、3Lz(eでしたけど!になるといいですね)、3Lo+1Lo+2Sという予定構成のすべて思うように成功させ、スピンもいい軸で回れていましたし、フットワークや振り付けも丁寧でした。3連続の後の笑顔がよかったですねえ。
そしてノーミスの演技の後は涙を溢れさせながらコーチと歓喜の抱擁。私も思わず、ぐっときました。
FSは117.51(TES63.75・PCS53.76)でパーソナルベスト、合計168.38もパーソナルベスト!
初GPSのNHK杯でこの結果は本当に素晴らしいです。おめでとう!
加藤さんは同世代に比べても(98年2月生まれ)演技がたどたどしいのは事実でしょうけど、ジャンプやスピンが得意な選手なだけに今後はそこを強化する余裕もあるはずです。大きな癖もありませんしね。
今後が本当に楽しみです!

今大会はアメリカ、カナダ、中国から期待の若手が3選手出場していて、私も表彰台争いにからんでくると思っていましたけど、みなSPで失敗してしまってがっかりしたものです。
しかし、FSでは実力をある程度見せてくれました。
まず、アメリカのポリーナ・エドモンズは3Lz2本、3F2本という難度の高いジャンプ構成をほぼノーミス。長身を生かした演技の大きさといい、潜在能力を見せつけたといっていいでしょう。FSは112.83(59.29・53.54)、合計161.79。あとはSPでのミスを減らすこと(2戦連続出遅れ)とスタミナ増強でしょうね。
カナダのガブリエル・デールマンはものすごいスケーティングスピードからのパワーあふれるジャンプを繰り返すも、それを制御できず四苦八苦、ミスがいくつか出てしまいました。それでも6本の3回転の入った構成を強引にまとめて111.28(56.95・54.33)、合計164.74。ジャンプの成功率が上がってきたら怖い選手になりそうです。
日本でも人気の李子君は冒頭の3F+3Tでステップアウトするも、2A+3Tを綺麗に跳んで巻き返すというスタートでわかるように、不安定ながらも3回転7本の構成をなんとか完遂(ルッツはエラー)。特に後半はバテてジャンプはどれもふらふらしていました。FSは106.46(50.29・56.17)、合計162.90。彼女に必要なのはとにかく体力、それだけです!

期待の若手というくくりでいえば、宮原知子さんもそれにあたるわけですが、克己心のあふれる演技はすでにベテランの風情。
しかし、さしもの宮原さんでもこの大会は硬くなりすぎたのか、冒頭の3Lzでお手付き回転不足+2Tという珍しいミス、3Fは成功させたものの、3Loでは着氷時にブレードが氷にひっかかるミス。ジャンプはどれも軸が斜めになっていてちょっと嫌な感じ。
しかし、機械のように正確なステップシークエンスとスピンで落ち着きを取り戻した宮原さんは、後半になるとジャンプも修正し、3Lz+2T+2Lo、気迫の2A+3T、3Sと連続成功!しかも最後の2A予定を3T(冒頭が+2Tだったので)に変更する冷静さまで見せるのですから、もう痺れました。さとちゃんかっけー!
また、宮原さんの凄味といえば終盤まで衰えない体力と集中力。へばったのを観たことがありません。
ですからこの『ミス・サイゴン』でも終盤のコレオで世界観を際立たせることができますし、最後の力強く正確なコンビネーションスピンで演技全体の印象を良くすることができるのです。
FSは118.33(60.34・57.99)、合計179.02。
このFSは本当に内容の濃い4分間でした。宮原さんの実力を存分に示したといっていいでしょう。
ただ、緊張して演技に入って、徐々にそれがほぐれてゆくというパターンは改善する必要があります。SPでもそうですけど、もっと思い切って入ったほうがジャンプの回転不足もなくなるはずですからね。
もっと大胆に、もっと堂々とした宮原知子が見たい!

宮原さんとは正反対に伸び伸びとしたスケーティングから豪快な3T+3Tで演技を始めた村上佳菜子さん、2Aもしっかり決めて、安定感のあるスピンを2本、ステップでは『オペラ座の怪人』のファントムを演じるために力んだ感じでしたけど、前よりはよくなっているように思いました。
その前回大会の比較でいうとジャンプ構成も大きくテコ入れ。昨季とほぼ同じにして(違うのはエラーがあった3Lzを2Aに
したくらい)滑りやすくしたのでしょう。前の大会はかなりミスがありましたからね。
しかし、後半冒頭が2Loになり、3Fで手痛い転倒、3F+2Tはそれを引っ張らずに成功させたのは立派、3S+2Lo+2Loも思い切って決めた!…といいたいところなのですが、2Loをすでに跳んでしまっているので、”同じ2回転は2本まで”のルールに抵触してしまってこの3連続はキックアウト…。
しかも、終盤のコレオでは珍しくヘバリが見え、2Aはふらり、最後のスピンも勢いが出ませんでした。
FSは108.71(48.51・61.20・減点1)、合計173.09。
演技の失速はジャンプのミスもあるでしょうけど、振り付けで力み過ぎているようにも感じます。村上さんの良さは大胆さや伸びやかさなのですから、そこを生かして欲しいと思いますし、ジャンプ構成にしても”村上さんのやりやすいように”組むのが一番ではないでしょうか。シーズン中にいじってばかりではプログラムの質が上がりません(昨季もそう)。
ジャンプ構成が弱い村上さんなのですから、完成度で勝負しなければ、世界のトップレベルで戦うのは正直厳しいといわざるをえません。
もうこんなことをいうのは遅いかもしれませんが、五輪も終わって一段落なのですから、村上さんはコーチを変更してはどうでしょう。
もっと能動的にフィギュアスケートと向き合う経験は、今後にも必ず生きてくると思います。

SPのチャップリンから一転、マダム路線のFSとなったアリョーナ・レオノワ(ロシア)は毒々しいまでの振り付けから、好調の3T+3Tでスタートするも、苦手の3Lzでステップアウト、3Lo予定が2Loに抜ける不安な立ち上がり。
後半冒頭の3Fでも着氷を乱し、前の大会同様そのままそのまま崩れるかと思いましたけど、3F+2T、3S+2T+2Lo(回転不足)、2Aは粘っこく着氷。今季にかけるレオノワの意気込みが見えましたね。
終盤のコレオでもスタミナ切れは明らかでしたけど、顔や状態の演技でそれを上手くごまかし、最後も気合の入ったスピンでフィニッシュ。お疲れ様でした!
FSは118.29(56.23・61.06)、合計186.40。暫定1位。
私は演技が終わった瞬間はさとちゃんの勝ちだと思ったので、ほんと悔しかったんですけど、レオノワの粘り勝ちといったところでしょうか。SPでのリードもありましたしね。
レオノワはもうちょっと体を絞って、ロシア選手権の台風の目になることを期待しています!

ここまでの選手がスコアを伸ばせず、余裕がある状態でリンクインしたSP1位のグレイシー・ゴールド(アメリカ)は、冒頭の3Lzのバランスが乱れて+2Tになるも、次の2A+3Tはばっちり。
そうして3Loを丁寧に着氷し、調子の戻ってきたスピンで流れを作り、成功させたい後半冒頭の3Fでしたけど、2Fに抜けるミス、3Lzは綺麗に決めるも、3Sでは転倒(コンボ予定)。今季はやっぱり調子よくないですねえ。
それでもステップシークエンスでは失敗を少しも引きずらない正確な振り付けとフットワーク。
こういうプライド、気高さというのがゴールドらしさであり、彼女の美しさの本質。
2Aにもしっかりリカバリーで+2Tを付け、美しいレイバックスピン、完璧な笑顔が印象的なコレオシークエンスで『オペラ座の怪人』を彩って、堂々たるフィニッシュ。根性を見せました。
FSは123.00(59.67・64.33・減点1)、合計191.16。
ジャンプミスも多く、演技の方も相変わらずメリハリがなくて、スコアは高すぎるようにも思いますが、それでも順位は1位でしょうね。執念を感じました。
しかもこれはゴールドにとってのGPS初優勝!おめでとう!来季はアメリカ大会制覇だ!

この結果、優勝ゴールド、2位レオノワ、見事3位に入って14年連続日本女子表彰台を繋いだのは宮原知子さん!よくやってくれました!
ただ、ここで残念なお知らせがあるんです。
その連続でいうと、日本女子は11年連続でGPFに出場していたのが、今季は惜しくも途絶えてしまいました(日本女子最高は本郷理華さんのGPSポイント7位、宮原さん8位、村上さん9位)。
そのことが示すように、いまの日本女子は世界のトップに比べて、わずかに力が足りないのは事実でしょう。世界選手権で3枠を取るのも厳しい戦いになるはずです。
しかし、希望がないわけではありません。
宮原さんや本郷さんは着実に成長していますし、加藤さんという新しい芽も出てきました。
いまはそれを温かく見守り、大切に育てる時期です。
もちろん、育成の現場を抜本的に改革し、すそ野を広げることも必要でしょうけど(私は中学高校との連携を深めてはどうかと思っています)、それにはまだ時間がかかるのですから、我々も我慢をしなければなりません。
いい時代を振り返るのではなく、新たなる春を待ちましょう。
それが日本フィギュアにとっての真の進歩というものです。
人気ブログランキングへ
スポンサーサイト
プロフィール

かつしき

Author:かつしき
FC2ブログへようこそ!

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード