2014NHK杯男子FS、フィギュアはスポーツだ!

SPを終えて無良崇人が2位以下を5点近くもリードして、初優勝への足場をしっかり固めた2014NHK杯男子シングルもいよいよFSへ。
昨季の世界王者・羽生結弦はSP5位からの巻き返しはなるか、SP3位の村上大介はその順位を守り切ることができるか。
日本男子の表彰台独占に期待しつつテレビ観戦した感想をざっくばらんに。

SPでは4T転倒、3Lzでお手つきという大きなミスで失速した羽生結弦ですが、動き自体には中国大会での衝突事故の影響はあまり見られなかったので、FSでの挽回は十分にありそう。
私は大きなミスを1つ2つに抑えれば逆転優勝もあると思っていました。負けん気の強い選手ですしね。
しかし、冒頭の4S予定が2Sに、4T予定は3Tになって転倒という阿鼻叫喚の立ち上がり。
『オペラ座の怪人』だけにシャンデリアが落ちてきて粉々に砕けたようでした。
それでも羽生結弦は流れを切らさぬよう3Fは綺麗に跳んで、柔軟性のあるスピン、ステップでは純愛からドロドロした感情に変わってゆく様を演じていい雰囲気。
後半も3Lz+2T、3A+3Tと抜群のジャンプを並べ、まだまだこれから!
と思われた3Aからのコンボ予定が1A+1Lo+3Sという勝負を決するようなミス。
ここは踏み切りのタイミングがずれていましたけど、3Tと2Sを跳んでしまっていので、ザヤック(同一種類ジャンプ制限ルール)を心配して迷いが出たのかもしれません。
その後は3Loは成功させたものの、3Lzで着氷を乱し、終盤は相変わらずスタミナ切れが目立ち、コレオやスピンの輪郭がぼやけてしまっていました。大崩れといっていいでしょう。
FSは151.79(TES70.31・PCS82.48)、合計229.80。
今季は例の衝突事故だけではなく、シーズン序盤のフィンランディアを怪我で欠場するなど、どうもリズムがよくありません。
ただ、フィジカルコンディションは上がってきていると思うので、”終わりよければ”という気持ちで、我慢しながら練習するしかないでしょうね。シーズンはまだまだこれからです。

日本勢の最大のライバルと目されるセルゲイ・ボロノフ(ロシア)は弩迫力の4T+3Tと3A+2Tでなみはやドームを沸かせてスタートするも、次の4T予定が3Tに、3Lz予定も2Lzになるという急失速。
しかし、ベテランのボロノフはそんなことではまったく動じず、手堅くレベルを取るキャメルスピン、丁寧なステップで『Caruso』のペースを取り戻すと、後半は3A、3S、3Lo+2T+2Lo、2Aをしっかり決め、その勢いのままシットスピン、コレオ、コンビネーションスピンと駆け抜けて、終わってみれば”まとまった演技”になっていました。さすがといっていいでしょうね。
FSは157.72(80.34・77.38)、合計236.65。
ボロノフはスケーティングスピードや表現技術に課題のある選手ですが、プログラム全体の流れをしっかり意識して演技ができているのか、”まずまずよくやった”といった印象が残ります。
逆に技術要素も振り付けも綺麗なのにプログラムが作品にならない選手もいるのですから、フィギュアって面白いですよね。

NHK杯初表彰台を賭けた村上大介のFSはラフマニノフピラのピアノ協奏曲2番。
この曲は選手に力を与えてくれると同時に、ミスをすればするほど雰囲気が壊れてゆく曲でもあります。
果たして村上くんの滑りはどちらに向かうのか、100か0か、勝負のときです。
まずは4Sを独特の切れ味で成功させ、4S+2Tもまったく同じ呼吸で決めた村上くん、きっちりしたシットスピンの後の3A+2Tも完璧。こういうのを”ゾーンに入った”というのでしょう、凄まじい集中力を感じました。
ただ、邪念が出るのは後半から、それがフィギュアスケートです。表彰台や優勝がチラつき、それで崩れてゆく選手が何人いたでしょう。”無欲”とは言葉にすれば易しいですけど、それをなかなか体現できないのが人間というものです。
しかし、村上くんは違った。
後半冒頭3Aを爽快に着氷すると、3Lzと3Loもクリーン、会場の手拍子に押されるようなステップシークエンスのあとの3Fはやや詰まるも、3Sはばっちり!ガッツポーズも出た!(コンボは前半に2Tを2本跳んでしまっているので打ち止めにしたのでしょう。)
そこからは疲れはやや見えたものの、拍手と歓声を気持ちよく浴びて恍惚としコレオ、喜びがあふれるようなコンビネーションスピンで、会場が爆発するようなフィニッシュ!
非の打ちどころのない4分半、一点の曇りもない4分半、眩いばかりの4分半。日本にはもうひとりの素晴らしいダイスケがいた!村上大介だ!ムラ神だ!
感極まって顔を覆いむせび泣く村上くんに、私も思わず自宅でスタオベ。こちらも村上くんのゾーンにぐいぐい引き込まれました。鳥肌が立つ演技でした。
FSは166.39(86.53・79.86)はパーソナルベスト、合計246.07もパーソナルベスト!もちろん暫定1位。
これはサルコウの村上の復活であり、”3M”の復活です!
ブラヴォ!

ジェレミー・アボット(アメリカ)のFS『弦楽のためのアダージョ』は名筆の一筆書き。
細くなったり太くなったり、強くなったりたおやかになったりしつつも、4分半を一息で貫くというある意味究極のフィギュアスケート。それを成し遂げるために必要な技術と体力と精神力は並大抵のものではありません。
結果を先にいってしまうと、このNHK杯のアボットはまた一歩その究極に近づきました。
今季はプログラムか4回転を外しているのと、スピンの調子がいいので流れがほとんど切れませんよね。
この日は3T、3F+2T、アップライトスピン、3A、3Lo、シットスピン、3F+1Lo+3S、3A、ステップ、2A、2Lz、コレオ、コンビネーションスピンという演技構成でしたけど、目に見えるミスは2本目の3Aと2Lz、最後のスピンのところだけ。
そこがまとまったとき、私たちはひとつの理想を見ることになるでしょう。
FSは148.14(64.28・83.86)、合計229.65。羽生くん下の暫定4位。
アボットはジャンプ構成が低いので、この日の出来だと羽生くんに負けてもおかしくないのかもしれませんが、0.15差というのはまるで計ったようです。
”羽生くんのGPF出場がフィギュア界の総意”ということなんでしょうかね…。

パーソナルベストが255.81の無良崇人にとっても、村上くんの246.07はそう簡単なスコアではありません。許されるミスは1つか2つといっていいでしょう。
最終滑走の重圧のなかでそれをどう打ち破るのか、これはNHK杯の歴史に名を刻むための試練です。
しかし、最初の4Tで大きくステップアウト(回転不足)、次の4Tは軸が曲がりながらも強引に+2Tに、3A予定は1Aに抜けて、もうこの時点で貯金は使い切りました。あとはガチンコ勝負です!
昨年までの無良くんならここから簡単に崩れていたでしょうけど、シットスピンとステップシークエンスを集中して乗り越えるうちに、『オペラ座の怪人』の世界も徐々にリンクに現出し始め、後半の3Loと3A+2Tは軸も修正!
ここからすべてジャンプを降りれば(3連続の2Sは3Sでリカバリーできればなおよし)、まだまだ優勝はある!
そんな矢先の3Fが中途半端な回転での両足ふんばり着氷、これで勝負はあったといっていいでしょう。
それでも無良くんは汗みずくになりながらキャメルスピンを回り、3S+1Lo+2Sを降り、ありったけの気持ちをこめたコレオ、豪快な3Lz、最後の力を振り絞るコンビネーションスピンでフィニッシュ。
根性と誇りは見せました。ファンの方もある程度納得したのではないでしょうか。
FSは148.16(67.88・80.28)、234.44。
今回は重圧に負けたのは確かでしょうけど、真向挑んだのもまた真実。
気持ちは負けていなかった!
次は勝てるさ!

この結果、優勝はSP・FSをノーミスで揃えた村上くん!本当に見事な演技でした、おめでとう!そして『君が代』を聞かせてくれてありがとう!
2年前に布石が置かれた復活劇は歓喜の幕を閉じました!
表彰式では2位のボロノフと3位の無良くんが涙を抑えきれない村上くんの背中を抱き、男くさくも美しい光景。
ボロノフも無良くんもスポーツマンらしい清々しい態度でした。
その”スポーツ”でいえば、最近の男子フィギュアは大きなミスをしても”序列の高い選手”が優勝するというもやもやが多くありますけど、村上くんの優勝はフィギュアスケートがスポーツであることを証明したと思います。きっちり演技をすれば優勝のチャンスはあるんです。
フィギュアにもスポーツらしいサプライズはある、そしてサプライズが必要なんだと、あらためて実感しました。
SPのあと村上くんは「FSでは僕の順位は下がる」といっていましたけど、もうそんなことはいわないでください。
村上くんはトップ選手を脅かす存在になりました。
全日本が本当に楽しみです!
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