黒田広島復帰の背景を想像する

1600万ドル~1800万ドル(米新聞)というオファーを断り、7季過ごしたメジャーリーグから広島カープに復帰した黒田博樹。
広島との契約が1年4億+出来高(推定)ということで、”お金よりも古巣広島を選んだ男気”を称える内容のスポーツニュースがプロ野球キャンプ情報の最大のトピックスとして連日のように流れています。

しかし、私はどうもこれにピンとこないんです。
黒田はメジャーを去るにあたって、アメリカのテレビ局のインタビューに応え、「一言でいうとメジャーでの7年間は苦しかったですね。言葉も分からないなかで、1シーズン162試合をずっと戦い抜くのは、体力的にも苦しい思いの方が多かったんじゃないかと思います」と話しているように、ここ最近はシーズンが終わる度に”広島に復帰”かという報道がなされては、メジャー残留という繰り返しでした。
おそらく黒田本人は広島カープに帰りたかったものの、カープの側がそれを受け入れる体制が整わなかったということでしょう。その体制を一言でいえば、”お金”です。

カープといえば日本プロ野球(NPB)でももっとも貧乏な球団として知られ、FA権を取得した選手とは基本的に残留交渉しない、FA選手の争奪戦にも加わらないという、独自路線を貫いてきました。そういう球団だけに、黒田の復帰が延び延びになってしまっていたのでしょう。
しかしカープはここ2年連続のリーグ3位、昨季は観客動員も伸び、今季は”優勝を狙うシーズン”ということで、受け入れる土壌ができたわけです(来季、エース前田健太をポスティングにかけることも念頭にあるのかも)。

それに、そもそも黒田博樹という投手はどこまでメジャー志向が強かったのでしょう?
広島を去る際の記者会見で涙を流していたのように、本心では”生涯広島”という思いが強かったようい見えます。
それがなぜメジャーに移籍しなければならなかったのか?
それもある意味では”お金”だったのではないかと私は思います。

2006年、FA権を取得した黒田に対してカープは球団の方針をかなぐり捨てる形で、4年10億+出来高というオファーを出したと報道されています。カープからしたら最大件の誠意を示したといえるでしょう。
黒田はそれを断ったものの、1年契約での残留という誠意で返し、2007年シーズンが終わってからの渡米となりました。
メジャー志向が強ければ1年待つなんてことはするはずがありませんし、広島への愛着が強ければ、複数年契約を結んでもいいわけですが、黒田はそれをしなかった。ここにはひとつの矛盾があります。

その矛盾を紐解くカギは”4年10億+出来高”という額だと私は考えます。
これはカープからしたら清水の舞台から飛び降りるような額なのですが、当時の球界のエースと呼ばれる投手、
松坂大輔や上原浩治、岩瀬仁紀(抑えですけど)は年俸3億円をゆうに超えていたんです。
黒田のキャリア、2005年からの投球内容を見れば、彼らと同じ、いやそれ以上に評価されていてもおかしくはありませんでした。
黒田がFAを取得した際、阪神タイガースがそういう球界のエース級の超高額オファーを用意しているという報道もありましたよね(黒田は大阪出身)。
私は黒田がお金を欲しがっていた、といいたいのではありません。
NPBでもメジャーリーグでもそうですが、選手は自分を安くは売りません。
それは自分のためだけではなく、選手全体のことを考えてのことです。
古い時代のNPBは、王・長嶋の”表”の年俸を安くしておいて、全体の年俸を抑えたといわれていますけど、いまはそういうわけにもゆきません。”選手会”がそれを許さないからです。
ですから、黒田は自分が安く契約することで選手全体に悪影響が出ることを危惧したのと、その自分の年俸が広島カープの球団経営を圧迫することを懸念し、揺れ動きながらもメジャー移籍を決断した、そう考えれば辻褄があいます。

私はこういうことを思ったのは、このオフに日本のテレビ番組に出演したダルビッシュ有が、対談相手の田中将大に、「俺らも年俸が高くなりすぎたからメジャーに行かざるを得なかった部分があるよな」といった話を振ると、田中将大も同意するように頷いたのを観たからです。
黒田の広島復帰は”男気”ばかりが注目されますが、”飛びぬけた実力を持った選手が日本でずっとプレイするのが難しい”というNPBが置かれた難しい状況にこそ着目すべきだと私は思います。
あらゆるプロスポーツにいえることですが、選手が”実力に見合った評価を求める”というのは当然のことです。
しかし、それは必ずしも具体的な額でなくてもいいわけです。
たとえば、メジャーリーグサッカーやAリーグ(オーストラリア)はサラリーキャップ制を導入していて、トップ選手はこれくらい、と最高年俸がだいたい決まっているんです。
その額ならばトップ選手の地位やプライドは守られますよね。
NPBもこういった制度を検討してもいいと私は思います。

とにかく、”男気”というだけで黒田の復帰を語ってはなりません。
それはいまある問題から目を背けることです。
…それに黒田の件を美談仕立てにしてばかりいると、古巣でもないところにアメリカから高額年俸で復帰した選手がいたたまれないじゃないですか…。
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