2015世界フィギュア・女子SP(後) 3Aの衝撃と日本女子の活躍

(続きです。)
いよいよ始まった最終グループの6分間練習。
ここでの注目はなんといってもエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)の3A。
B級大会でも成功させ、今大会もSPに組み込んでくると発言しているものの、それなしでラジオノワを破って欧州女王に輝いているだけに、「無理をしなくても」という気持ちもどこかにあるはずです。
そうしてなかなか3Aを跳ばなかったトゥクタミシェワが終盤に1本!
なんとか降りたものの前のめりになってしまったせいか、やや迷いの表情に。それからはもう跳びません。
しかし第1滑走なので迷っている暇もない。
どうする。

そうして始まったトゥクタミシェワの『ボレロ』。
滑り出しにちょこちょこっと振り付けをして、すぐに助走に入ったその滑りも表情も凄まじい緊張感。
これは来る。
彼女らしからぬ力みのある踏み切りと、ぶわっとした軸ながら、降りた!ブレードで氷を掴むような着氷!
新たなる3Aジャンパーの誕生だ!
悩みのなか、緊張のなか、自分に打ち勝って決めただけにこの成功は本当に素晴らしい。ブラヴォ!
また、ビッグジャンプ成功の後はリズムを乱しがちなものですけど、トゥクタミシェワは3Lzも浮き上がるようにして着氷し、独特の腕の使い方で彩るシンプルなスピンで前半を終わらせると、後半も3T+3Tをしっかり着氷!
女子のSPの最後のジャンプがトリプルトリプルというのもまた凄い。
見せ場のステップシークエンスでは彼女らしく上体でリズムを上手く取ってゴージャス感を醸し出し、最後のコンビネーションスピンもここまでのいい流れそのままの気持ち良さそうな回転、そして満面の笑顔でフィニッシュ!歴史的なSPでした!
スポーツとしてのフィギュアという意味で今季最もエキサイティングなプログラムだったといっていいでしょう。
演技全体的にはやや硬さが見られ、動きもいつもより小さかったですけど(3Aによるスタミナ消費もあったか)、ビッグジャンプの余韻でそれをカバーしていたように思います。それもまた”芸”です。
3Aはこれからも入れ続けられる精度に見えましたし、新時代はトゥクタミシェワが引っ張ってゆきそうですねえ。
楽しみなスコアは77.62(TES44.09・PCS33.53)。
誰しもがトゥクタミシェワの世界制覇を確信するスコア。
そして今後もトゥクタミシェワが勝ち続けるであろうことを予感させるスコア。
これでは誰も彼女に勝てません、休養中のあの伝説の選手以外には。
SP後のインタビューで、トゥクタミシェワは3Aの成功について、「フィギュアスケートは常に進化しなくてはならない」と語っていました。
この”フィギュアの進化”は、トゥクタミシェワの兄弟子である皇帝エフゲニー・プルシェンコが、その休養中の選手を評してよく使っていた言葉でもあります。
なんだか私の心もざわついてきました。

今季は怪我での不調が続き、先の四大陸選手権でもミスを連発していたのグレイシー・ゴールド(アメリカ)ですが、このSPでも3Lz踏ん張りステップアウト(コンボ予定)という苦しいスタート。
しかし、ぽっちゃりしていた体を絞ったせいか、動きにはキレが出ていて、スピンの回転もよし。
これで後半盛り返せるか、と思われたものの、3Loが詰まってコンボにならない手痛いミス。2Aは慎重に着氷。
ステップシークエンスでは輝くような笑顔も織り交ぜて、美しく伸びやかな舞を舞ったのは彼女のフィギュア選手としての気高い誇り。最後のスピンも集中力を切らしませんでした。
SPは60.73(29.82・30.91)。
ジャンプのフィーリングが戻っていない限り、FSでもかなり厳しそうです…。

6分間練習ではこれまで以上にきりっとした表情を見せていた宮原知子。
その凄まじい集中力はテレビ画面の前に座っているこちらの気持ちまでをも引き締めるほど。
高らかな『魔笛』とともに軽快に踊り始めた宮原さん、冒頭は思い切った3Lz+3T!迷いがないぶんよく浮いていました!
得意の逆回転スピンと精度抜群のキャメルでいったん空気を落ち着かせ、スピードにのった後半3Fもしっかり着氷、2Aも的確。
ステップでは体の動き、フットワークともによくコントロールされていて、顔の表情も上手く使えていました。計算通りといった感じ。
最後のレイバックスピンも集中力、スタミナともに満点で、微塵の隙もない。これもまた宮原知子の凄味!
あいかわらず技術要素も演技も完成度が高くて精密機械のようでした。
しかもこの日はメンタルにも揺らぎがなく、まさに高品質。
細かいとろこまで神経を行き渡らせるというのは、宮原知子の持ち味であり、日本的美徳であり価値観。
四大陸では”新日本女王”という看板の重圧に苦しんだように見えましたけど、それに打ち勝った強さにも拍手を送りたいです。
今季のベストSPでした!
スコアは67.02(37.19・29.83)でパーソナルベスト!
ジャッジからもしっかり評価してもらえて本当によかったです。これが彼女の実力です。
17歳の誕生日おめでとう!

それにしても、”3枠取り”使命を背負うなかで、日本女子は3人ともノーミス、これは本当に凄いことです!

昨季の世界フィギュア4位から虎視眈々と表彰台を狙うアンナ・ポゴリラヤ(ロシア)ですが、足首の怪我で練習がほとんどできていないという情報も。
そんななか冒頭の3Lz+3Tを力強く決めるポゴリラヤ、しかし豪快なスピンを2本回ってからの後半3Lo(回転不足か)で腰と側頭部を打つような大転倒。
誰しもが目を覆いたくなるような場面でしたが、すぐさま立ち上がったポゴリラヤは予定通りのタイミングで2Aへ!なんという気迫!
しかも苦手だった2Aももはや克服しています。この気迫で普段から練習しているのでしょう。
ステップでは転倒の影響からか、少しつまずく場面があったり、終盤は動きが重くなってきたものの、彼女の気持ちの強さが『アルビノーニのアダージョ』によく合っていたと思います。
スコアは60.50(32.41・29.09・減点1)。

同国のライバルであるトゥクタミシェワの凄まじい演技とスコアは、たとえそれを見なくても、会場やロシアスタッフの雰囲気からもわかったであろうエレーナ・ラジオノワ。スコアで迫るのは難しいでしょうけど、ここは気持ちを強くして自分の演技をするしかありません。
冒頭の3Lz+3Tを強引に決めると、長い脚を折りたたんだシットスピン、ステップではがちゃがちゃとよく動くラジオノワ、よく自分をコントロールしていました。
彼女はまだ16歳で、世界フィギュアもこれが初出場だというのになんというメンタルの強さ。
後半も思い切りのいい3Lo、2Aもしっかり跳び、運動能力の高さがわかるコンビネーションスピン、そして誇りの高さを感じさせるピンとしたビールマンからの決めポーズでフィニッシュ!
やはりちょっとした緊張感があって、全体的にいつものような伸びやかさはありませんでしたけど、状況を考えれば十分な内容だったのではないでしょうか。
69.51(38.03・31.48)は、SB(70.46)に迫ろうかというハイスコア。
それでもキスクラではコーチともどもがっかりな表情を浮かべていたのはトゥクタミシェワとの点差のせいでしょう…。

これまで数々の実績を残してきたアシュリー・ワグナー(アメリカ)に足りないものは世界のメダル。
ソチ五輪後の引退を匂わせていたものの今季も続行しているのはそれを掴みとるためでしょう。
今季の序盤は体つきもゆったりとしていましたけど、それを徐々に絞ってきて、この日は好調時の切れ上がり。
世界フィギュアの照準を絞っていたのは間違いありません。
それなのに…。
まず冒頭の3Lz+3Tは回転不足気味の転倒、2本のスピンで自分を落ち着かせたかと思われたものの、後半の2Aでふらり、得意のはずのイーグルからの3Fでは両足着氷…。
これでさすがにステップでの元気もなくなって、青ざめたような表情でのフィニッシュ。
転倒で混乱してしまったのか、メダルがチラついて最初から心が乱れていたのかわかりませんが、どちらにしろいつものリズムをまったく失っていました。
ベテランでもこういうことになる、これぞフィギュアの怖さですね。
57.81(28.09・30.72・減点1)。
こうなればFSで開き直れるかどうかです。がんばれワグナー!

SPの結果、首位はダントツでトゥクタミシェワ、2位にラジオノワ、そしてなんと3位に宮原さん、4位に村上さん、5位に本郷さんが入って、日本女子はすべて最終グループ入り!これは快挙です!
全員が同じグループならば互いのメンタルにも好影響を及ぼすでしょうし、これならば”3枠”も”メダル”もチーム一丸となって奪い獲ることができる!
人気ブログランキングへ
スポンサーサイト
プロフィール

かつしき

Author:かつしき
FC2ブログへようこそ!

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード