2015世界フィギュア・男子SP(前) 風前の灯

日本男子フィギュアといえば、昨季は世界の表彰台の金銀を奪い、今季もGPF(GPSトップ6)に3選手を送り込むなど、まさに盤石の布陣を誇っていたわけですが、全日本での町田樹の電撃引退、王者・羽生結弦の腹部手術で、にわかに暗雲が立ち込めてきました。
この2015世界フィギュア上海大会で、はたして日本男子は表彰台に立つことができるのか、そして至上命題でもある”3枠”確保を果たして大丈夫なのか。楽しみだったはずの大会が不安でいっぱいになってしまったファンの方も多いと思います。
しかし、こういうときだからこそチームの結束が問われる、選手ひとりひとりの責任感が問われる、そしてファンの信じる心が問われる。
では、そんなふうに手に汗握りながらテレビ観戦した男子SPを振り返ることにいたします。

第3グループ(全5G)で小塚崇彦が登場すると会場からは割れんばかりの大声援と波のように広がる日の丸。
これがあれば小塚くんはまだまだ飛べる!あとに続く無良くんや羽生くんのためにも兄貴分としていい道筋を作らねばなりません。
まずは緊張感のある助走から跳んだ4Tは両足気味ながらなんとか立った!十分十分!
問題はここではなく次の3A、しかし、軸がぶれての大きなお手つき(転倒扱いか微妙)。
これ以上の失敗が許されないなか、2つのスピンを数えるようにして回った小塚くん、後半は昨季から苦しめつづけられているコンビネーションジャンプ、ここはもう祈るしかない!
結果は最初の3Lzで転倒…。
私はもう目の前が真っ暗になりそうでしたけど、自分に鞭うつようにして凝視したテレビ画面では、小塚崇彦が鏡の上を踊っているような滑らかなステップシークエンスを見せている。ジャンプミスを引きずることなく力強く全身を動かし、ブレードは決して氷を離さない圧巻の技術力。
そうして最後のスピンまで気持ちを切らすことなく演じきったのはベテランの意地でしょう。
SPは70.15(TES33.75・PCS37.40・減点1)。
競技後、「6分間でアクセルがおかしかった」と語っていた小塚くん、FSではしっかり立て直して欲しいものです。
枠取りの方は無良くんと羽生くんに任せましょう!

大声援といえば地元中国の閻涵が第4Gで姿をあらわすと会場は大いに沸いていました。
しかし、その雰囲気に閻涵は見るからに強張った表情。
意外なことに中国が世界フィギュアを開催するのはこれが初めてで、その中国男子のエースとして恥ずかしい滑りはできないというプレッシャーがあったのでしょう。
代名詞の幅広3Aを丁寧に降りたときからいつもとリズムが違っていましたけど、やはりといいますか4Tはお手つきステップアウト、3Lz+3Tはバランスを崩しながら気迫で着氷。
ただ、ジャンプが終わると気持ちが落ち着いたのか、工夫をこらしたスピン、ステップでも『屋根の上のバイオリン弾き』らしくお客さんをを煽る茶目っ気のある仕草、ここの滑りは大きくてよかったです。
凄まじい緊張感のなかまずまずまとめた、気持ちが伝わる粘りの演技でした。
SPは84.45(44.86・39.49)。

新全米王者として世界フィギュアに乗り込んできたジェイソン・ブラウンは、突っ立つような3A、詰まり気味の3F+3Tという微妙なスタートながら、柔軟性と演技性を生かしたスピン、全身をくねらせながら巧みに音をひろうステップシークエンスで『Juke』を巧みに表現すると、もうすっかり流れは自分のもの。上手いですねえ。
これで気持ちよく後半のステップからのタノ3Lzを決めて、女性的なキャメルスピン、高速コンビネーションスピンで鮮やかにフィニッシュ。
演技の全て”繋ぎ”といっていい、内容の濃いプログラムでした。お客さんを少しも飽きさせないのはさすがブラウン。
4回転はなくとも、しっかりと全米王者の看板を守ったと思います。
SPは84.32(44.18・40.14)。

今季は表現者としてではなく、競技者としてもその力を存分に見せつけているミーシャ・ジー(ウズベキスタン)。
この日も苦手だったはずの3Aを余裕の着氷、3Lz+3Tも決めて、スピンを挟んでの後半3Fは独特な入りからの見事な成功。
そして、しなやかさと大胆さを織り交ぜたステップで『アヴェ・マリア』のヴォーカルを我が物にして、最後も演技しているようなコンビネーションスピンで大いに盛り上げ、いい余韻を残してのガッツポーズ。観客を完全に虜にしていました。
今季の成長は本当に素晴らしいものがありますし、能動的に表現できるタイプの選手が、今季は能動的に結果も求め、
それを手にしているのも本当に凄い。
SPは78.52(40.82・37.70)。

世界フィギュア初の”4Lz”を狙ったアダム・リッポン(アメリカ)ですが、立って降りたものの完全なDGで夢ならず。
しかし苦手の3Aは前のめりにこらえて降り、後半のタノ3Lz+3Tも決めて早くもガッツポーズ!
表情からして気合が入りまくっていたリッポンはステップでものりのりで、『Tuxedo Junction』の力強さと男くささを見せつけ、軸のどっしりしたキャメルスピンと、最後のコンビネーションスピンは両方ともに勢いがありました。やっぱりイケメンです。
SPは75.14(36.33・38.81)。
3Lzが回転不足(UR)を取られていたせいで思ったよりスコアは伸びません。ちょっと厳しい判定かと思うんですけど、4Lzの降り方といい”チート”をジャッジが疑っているのかもしれませんね。

そしていよいよ最終G、この6分間練習で気になるのはここ数か月ベールにつつまれていた羽生結弦の状態。
肌艶や筋肉の付き具合、滑りの姿勢を見る限り、”悪くはない”といった感じながら、4Tの調整では転倒もあって、どうやら着氷のフィーリングは戻っていない様子。あとは彼の天性の才能と強運を信じるしかない。

その羽生結弦が万全でないことで重要性が増すのは無良崇人の存在。
小塚くんはこの時点で14位。3枠のためには2選手合計”13位以内”なので、もう小塚くんは計算に入れない方がいい、無良くんと羽生くんの2人がしっかり滑れば問題はないんです。
そうして最終G一番手で滑り始めた無良くんでしたけど冒頭の4TがUR気味のステップアウト、こうなると次の3Aは確実に決めねばならないわけですが、これがまさかのパンク1Aに。
これは悪い夢だ、私はここで本当に目の前が真っ暗になって、次のスピンはよく憶えていません。
無良くんは後半の3Lz+3Tでも軽くステップアウトしてしまって、その後のステップやスピンも当然のように意気消沈。『カルメン』の心を奪った雄々しい闘牛士エスカミーリョの姿はどこにもありませんでした。
おそらく現地の日本の応援席は水を打ったように静まり返っていたことでしょう。
SPは64.93(27.61・37.32)。
無良くんはこの時点で18位。FSを前にして早くも日本男子の3枠は風前の灯に…。
(※羽生結弦が奇跡を起こすことを祈りつつ後編に続きます。)
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