2015世界フィギュア・女子FS(後) あっぱれ日本女子フィギュア!

(続きです。)
李子君に投げ込まれたプレゼントの山をかき分けるようにリンクインした宮原知子は、その異様なムードに一切動じることのない集中した表情。暫定1位のゴールドの上に立つには約122点が必要ですが、今季は平均が120点くらいなので、いかにミスを減らせるかが肝要、特に回転不足には注意です。
しかし、SPの勢いを見る限り、「いける!」、私はそう確信していました。さっとんがんば!
まずは『ミス・サイゴン』の抒情に身を任せ、そこから冒頭は小気味いい3Lz+2T+2Lo!難関の3F!3Loもばっちり!
これはもう完璧なスタートといっていい。宮原さんは立ち上がりが硬くなる癖がありますけど、この日は思い切りがよく、ジャンプに高さがありました。
動き全体もスピード感、力感ともに十分で、ステップシークエンスでは機械のように精密に演技を組み立て、スピンはあいかわらず正確無比。
これは史上最高の宮原知子が来る、そんな戦慄のなか、後半冒頭の3Lzはタイミングがずれる形の転倒、少し考えすぎたか。
しかし、すぐに気持ちを立て直すと力強い2A+3T!しびれる!
生真面目な気質そのもののレイバックスピンの後の3Sもいつも以上の高さ、コレオスパイラルでは大らかな滑りで揺蕩うような雰囲気を作って演技をいったん落ち着け、そこからまた加速しての勝負の2A+3T!決まったあああ!
テレビを観ていた私はこの瞬間、立ち上がって、「勝った、勝った!」と大はしゃぎ。
最後は代名詞の逆回転スピンで物語を美しく終わらせた宮原さん、今日は本当にひとまわり大きく見えました。ブラヴォ!
FSは126.58(TES65.31・PCS61.27・減点1)、合計193.60で暫定1位!これは両方ともパーソナルベスト!
宮原さんといえばジャンプの回転不足が課題ですけど、この日はどれも力強く跳べていたのが勝因だと思います。
これはフィジカルや技術以上に、メンタルで自分の壁をぶち破った証です。これからもジャンプは”攻めて”いって欲しいですよね。
そしてもうひとつ特筆すべきなのはその”スタミナ”。へばったのを見たことがありません。このスタミナがあるから後半にセカンドトリプル2本という離れ業をやってのけられるのです。もちろんそのスタミナが絶対的な練習量によって支えられているのはいうまでもありません。
いままでの宮原さんは”鉄の少女”というイメージでしたけど、精神面での飛躍で”鋼の女”と呼びたくなってきました!

SPで首位のトゥクタミシェワに7点以上の大差を付けられ、優勝は難しい状況になっているエレーナ・ラジオノワ。
しかし、今季のトゥクタミシェワはFSのノーミスというのは少ないので、まずは自分自身がしっかり演技をして、天命を待つより他ありません。
ところが冒頭の3Lzが詰まった感じになってコンボにならない嫌なスタート、3F(エラー気味)はしっかり跳んで、次は強引な3Lz+3Tでリカバリー!この気持ちの強さこそラジオノワ!
ただ、ステップシークエンスではいつものようにガチャガチャ動きますけど、なんだかいつもよりパワーがありません。
軟体コンビネーションスピンで前半を終わらせ、後半冒頭の3Lo+1Lo+3Sもバランスが崩れていましたし(回転不足か)、苦手の2A2連発の1本目はよっこらしょと跳ぶも、2本目は大きくステップアウト、次もまさかの2Lo+2Tに。
コレオシークエンスも失速気味でしたし、得意のスピンも回転が緩く、どうもこの日は体調がよくなかった模様(高熱という報道も)。
しかし、食らいつくような滑りで演技の質自体はさして落とさなかったのは立派でした。これが世界フィギュア初出場ですしね。
FSは121.96(60.01・61.95)、合計191.47。
これでは優勝は絶望的…、いや、これ暫定2位です、宮原さんがラジオの上に!

ライバルのラジオノワが崩れたのを目の前で見て、余裕を持った状況で登場したエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)は3Lzオーバーターン+2T+2Loというスタートになるも、次の3Lzを素晴らしい高さで跳んで流れを作り直すと、3Fも無事着氷。
シンプルながら形のいいレイバックスピンとシットスピンで前半を終わらせ、勝負を分ける後半コンボはまたしても3Tオーバーターン+3Tになるも、3Loと3S+2Aをしっかり跳んで軌道修正。
そして、これで気になるジャンプが終わって緊張が取れたのか、いい笑顔のままステップシークエンスへ。動きが少なく、リンクの使い方も狭い省エネ演技に手先や顔の表情で彩をつけるのが彼女の得意技。
正直いって中だるみといった感じでしたけど、次のタノ2Aを大きく跳んで観客の目を変え、優勝への喜びが隠し切れない
コレオと最後のスピンはフラフラしながらも、そつなく全体をまとめました。
FSは132.74(66.75・65.99)、合計210.36。
私はこのFSは高すぎると思います。もう7点くらい低くて丁度いいんじゃないでしょうか。宮原さんより上はない。
ただ、フィギュアの採点というのはおかしなもので、”SPのリード”というのがFSの採点にも影響することが往々にしてあります。
今回のトゥクタミシェワもSPで作った優勝への道筋をFSでしっかり守ったにすぎません。「基礎点だけは取る」、そんな
手堅い演技でしたよね。
SPでの3A挑戦が見事だっただけに、FSでももった楽しみたかったです。来季に期待しましょう!

この時点で宮原さんが暫定4位以上、残すは日本女子2人のみということで、3枠確保はほぼ確実の状況。
こうなれば本郷理華さんにもメダルを狙って欲しいようにも思いますけど、そのためには約130点が必要。
しかしこれはベストから8点も高いので現実的ではありません。ここは大会前に目標としていたトータル180点に狙いを定め、鮮烈な飛躍のシーズンを美しく締めくくって欲しいものです!
冒頭に今季のもうひとつの目標である3F+3Tを丁寧に降りると、続いての3Lz+2Tも慎重な助走から成功、3Loはよし、そして豪快なウィンドミルという上々の序盤に、会場からは手拍子が起こり、それにのっての『カルメン』ステップは力強く鮮やか、振り付けも強化されていて見栄えもしましたし、ステップは観る度によくなっている印象です。課題の姿勢もいまではまったく気になりません。
そしてキャメルスピンを数えるようにして回ってからの後半冒頭の3Fもしっかり着氷、2A+1Lo+3Sも確かめるように跳んで、石橋を叩くような3Lzも無事着氷、2Aも決めてジャンプはノーミス!
コレオはいつも通りに大胆に攻め、最後のスピンも勢いはまったく落ちません、この強さ、逞しさ、肝っ玉が太いカルメンでした!
FSは122.41(61.83・60.58)、合計184.58は両方ともにパーソナルベスト!そしてこの時点で暫定6位となり、日本女子の3枠は確定!
今季は大会ごとの成長も凄まじかったんですけど、今大会もまたSP・FSで大きなミスなしで、これは今季を通してずっと変わりません。世界ナンバーワンの安定感といっていいでしょう。本郷さんがいるからこその”3枠”だったと思います。
それにしても、ここまでの選手の演技と比べると、3位か4位でいいような気がするんですけど、点数はそこまで伸びてくれません。
その原因はジャンプの回転不足。慎重なジャンプが多いのがその理由でしょう。
このおかげで”大きなミスをしない”わけですけど、さらなる飛躍のためには”ミスを恐れずに跳ぶ”ことも必要です。
来季の本郷さんはそういう自分自身との厳しい戦いになるでしょう。
そして彼女なら必ずやそれを乗り越える。
さらなるシンデレラストーリーを楽しみにしています!

若手2人が3枠を確保してくれたので、肩の荷が下りた状況でリンクに入ることができた村上佳菜子。あとは自分自身が納得する演技でシーズンを締めくくるのみ。
しかし丁寧な3Loでスタートした次の2Aでこらえる形、ミスを続けるわけにはゆかない3F+2Tは手堅く降りたものの、なかなかの緊張感。
安定したスピン、勢いのあるスケーティングで『オペラ座の怪人』の雰囲気を盛り上げるコレオシークエンス、後半冒頭の3Lo+2T+2Loもしっかり跳んで、流れはできてきたかに思われたものの、レイバックスピンの後の3Fが慎重になって、次が1Sに抜ける手痛いミス、これで動揺したのか最後の3Sもコンボになりません。
ジャンプに不安があったのでしょうか、どうも”乗り切れない”という印象。終盤のステップやコンビネーションスピンも技術の高さは垣間見られたものの、持ち味の勢いが出なくて残念。
このFSはずっと滑りにくそうでしたし、今回は少し手直ししたとはいえ、プログラム的な問題もあったと思います。
FSは114.18(52.48・61.70)、合計179.55。
演技後の村上さんは去就について「周りと相談して考えたい」と言葉を濁しましたけど、ここでやめていいはずがありません。能動的にプログラムに挑んだときの村上さんの演技というのは稀有なものです。
私は海外にでも行って、コーチも替えて、もっと主体的にフィギュアに取り組む村上さんが見てみたい。
まだまだ演技の世界は広がりますよ!

この結果、優勝トゥクタミシェワ、2位宮原さん、3位ラジオノワ。
3人ともに初表彰台というフレッシュな光景となりました!おめでとう!
それにしても宮原さんは凄かった。
3枠確保に大きく貢献するだけではなく、日本女子が9年間立ち続けていた表彰台まで守ってくれたのですから、これでもう押しも押されぬ日本の若きエースです。
”世代交代”でシーズン前は色々不安視されていた日本女子ですが、終わってみれば伝統は守られました。
それは結果だけではなく、質の高い演技、フィギュアに対する真摯な姿勢、あきらめない粘り強さも含めてのものです。それはどの国にも負けていません。
あっぱれ日本女子フィギュア。
今季も大いに楽しめました、本当にありがとう!
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