2015世界フィギュア・男子FS(後) 一歩届かず

(続きです。)
日本男子3枠のためには優勝しかないという状況に追い込まれた羽生結弦ですが、本人はそれを知っているのかそうでないのか。
普通は伝えない方がよさそうなものですが、逆境に舌なめずりをするこの男に限っては伝えた方がより気合が入るかも。
まあとにかく全力を尽くすだけです。ここまでくれば手術明けの練習不足も足の怪我も関係ない!
しかし冒頭から4S予定が2Sに抜けるまさかのミス、4Tは転倒、3Fは確実に。
気の弱い私などはもうここで血の気が引きました。
ただ、羽生結弦はまったく気持ちを切らすことなく質の高いコンビネーションスピン、感情を込めたステップシークエンスで
『オペラ座の怪人』の世界観を少しずつ作り始め、後半冒頭の3Lz+2Tは綺麗に成功。
そして次はプログラムの山場、3A2連発でしたけど、いつもよりは勢いがなかったものの、3A+3T!3A+1Lo+3Sを
豪快に決めた!この3Aはどんなときも羽生結弦を助けてくれる!
続く3Loと3Lzもしっかり降りて後半ジャンプはノーミス、力を振り絞るようなコレオ、最後の2本のスピンまでよく集中していました。
状況を考えれば「あっぱれ!」としかいいようがありません。私はまさかここまで滑ることができると思っていませんでした。
かなり省エネな感じで演技をしていましたけど、全体に気持ちがのっていましたし、課題のスタミナも終盤にガクっと落ちる感じがなかったのも褒められるべきです。
彼の底力、そして高い誇りに、私は胸が熱くなりました。
FSは175.88(TES88.24・PCS88.64)、合計271.08。
いつもより動きやジャンプに力強さが欠けていたせいか加点が取れず、技術点は伸びませんでしたけど、状態を考えれば十分なスコアです。本当によくがんばってくれました。これぞエースです!

羽生結弦がスコアを伸ばせなかったことでチャンスが見えてきたハビエル・フェルナンデス(スペイン)はクワドキングの名に恥じぬダイナミックな4Tでスタート!羽生結弦が失敗しているだけに物凄い敗北感…。
しかし次の4Sで転倒してしまうフェルナンデス、4回転はやはり難しい。
繋ぎからの3Aはしっかり着氷し、独特の軽妙さを感じさせるスピンとステップ。このあたりはスタミナ温存のために手を抜いているのでしょうけど、見せ方の上手さでごまかすのもまたテクニック。
そして後半冒頭は勝負の4S、ここをコンボで降りなくては優勝はまずない、しかし4Sは前半に転倒している、それを後半に決めることのハードルの高さ、これには想像を絶っする技術とメンタルが要る、そしてフェルナンデスはそれを見事に乗り越えた!4S+2T成功!
これでテンションが上がったのか、そこからの3F+1Lo+3S、3Lo、3Lz+2T、3Tと連続着氷。ジャンプとジャンプの間に雑ながら繋ぎも入っていましたし、ここは凄まじい気迫でした。
さすがに終盤のスピンとコレオは足が棒のようになっていましたけど、それでも決してミスすることなく最後まで駆け抜けた
フェルナンデス、こんな風に粘っこく演技をした彼を見たのは初めてかもしれません。全力を尽くした爽やかさが印象に残る『セルビアの理髪師』でした。
しかし、スコアの方はどうなるでしょう。
ジャンプのミスの差からいえばフェルナンデスが勝ってしかるべきようなものですが、”慣習的”にいえばPCSでは王者(各上)である羽生くんが上になるでしょうし、SPでも羽生くんが2.5点ほどリードしているので勝負はかなり微妙か。
そうして出てきたスコアは181.16(93.10・89.06)、合計273.90!この時点で暫定1位!この瞬間日本男子の3枠も消滅!
あとの選手のSPのスコアを考えれば優勝はほぼ間違いありません。
PCSで羽生結弦を超えたのは意外でしたけど、SP・FSを通して見れば優勝は文句なし。羽生くんやデニスよりもミスが少なかったわけですからね(ある意味、羽生くんがPCSで勝利しなくてよかった…)。
粘りに粘ってミスを抑えて勝つ、この日のフェルナンデスにはフィギュアらしい”熱さ”がありました!

地元中国の閻涵は天下一品の3A+3Tでスタートして上海の会場を爆発させるも、4Tで転倒、3Aでも転倒(回転不足か)という急降下。
これでショックを受けたのか続くスピンとステップではリズムが作れません。会場の温かい後押しがあったものの、後半冒頭の3Lzでも転倒、次も2Loに、3連続も力のない3Lz+2T+1Lo、3Fもふらり、3Sは成功。
このように目を覆いたくなるような演技でしたけど、閻涵は気持ちを切らすことなく、終盤のスピンとコレオを滑り切った。
それこそ翼のない身が月に向かって羽ばたくような絶望的な『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』でしたけど、その諦めない態度だけは立派でした。
FSは144.70(67.70・80.00・減点3)、合計229.15。
先にいってしまうと閻涵の最終順位は10位。1人ならば中国は2枠獲得なのですが、宋楠がSP落ちの26位なので2選手合計だと36位になって来季は1枠。
怪物・金博洋との1枠争いかあ…。

アメリカはここまでリッポンが暫定7位。3枠を獲るためには最終滑走のジェイソン・ブラウンが5位以上にならねばなりませんが、ボロノフや閻涵が崩れたのでかなり楽な状況。FS150点ほどでいいのですから棚ぼたとはこのことです。
突っ立つような3A2Tでスタートしたブラウン、難ポジションで回転も速いキャメルスピン、綺麗なタノ3Lzタノ
小気味いいコンビネーションスピンで彼らしい前半を終えると、3Loで演技を後半へと繋ぎ、体がゴムのようによく動くステップシークエンス。上手いですねえ。
そこからの入り方に工夫をこらした3Aはダウングレード気味の両足着氷になるも、次は焦ることなく3F+3Tをしっかり
着氷、こういうセルフコントロールもブラウンの強さ。
見せ場の3Lz+1Lo+3Sは踏ん張るようにして降り、『トリスタンとイゾルデ』を演劇的に見せるコレオ、終盤の2A、2Aは
連続成功、フィニッシュのコンビネーションスピンも勢いよく回って愛の物語を華々しく締めくくってくれました。
4回転がないのでジャンプを後半(基礎点1.1倍)に寄せ、振り付けも全体的に強化。
演技で見せるだけではなく、勝負にこだわったブラウンの全米王者としての意地を見ました。
FSは163.97(79.37・84.60)、合計248.29で4位。

この結果、優勝ハビエル・フェルナンデス、2位羽生結弦、3位デニス・テン。
3選手ともに個性が違うので見ていて面白い戦いでした。
4位以下とは19点以上離れているのですから、いまはこの3選手が頭ひとつ、いや二つは抜きんでています。
ただ、今回敗れた羽生結弦は、何度も「悔しい」と繰り返していたことでもわかるように、自分がそこから頭ひとつ抜け出したいという思いが強いのでしょう。
今季はさらなる飛躍のシーズンになるはずが、怪我やアクシデントや手術で、我慢のシーズンとなってしまいました。
SPの後半4TやFSの4回転3本を断念しながらもSP・FSの両方ともにノーミスは一度もありませんでしたし、SPではスケーティングや身のこなしに着実な進化が見られたものの、体力のいるFSにはそれを繋げられなかったのも残念です。
私は尿膜管遺残症の手術によって、羽生結弦が慢性的に抱えていた体調不良が改善され、スタミナ面が強化されるのではないかと密かに期待しています。とにかくFSの出来栄えを上げてゆかねば、誰しもが認める王者にはなれません。
羽生結弦はそれらすべてをクリアしようと、いまメラメラと燃えているはずです。

それにしてもこの大会は本当によく頑張ってくれました。
残念ながら日本男子は合計14位で2枠に減ってしまいましたけど、羽生結弦がエースとしての責任をまっとうしたのは間違いありません。
私は心からの拍手を送りたい。
本当に凄い男だとあらためて感心しました。
彼の勝利への執念はこれまでの日本選手にはあまりないもので、ときに冷徹とさえ思えるくらいです。
来季の羽生結弦はもっと強くなる、そして周りを畏怖させるような王者になってゆく。
いまから震えがきそうな2015世界フィギュアでした。
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