みんなに望まれる新国立競技場を

7月7日(2015年)に日本スポーツ振興センター(JSC)の有識者会議で着工内容とスケジュールが”了承”されたことで、ついに建設がスタートすることとなった”新国立競技場”ですが、その費用がロンドン五輪や北京五輪のメインスタジアムと比べてもべらぼうに高い2520億円ということで、メディアではここ数日、大きく取り上げられていますよね。
(※現在の日本円に換算するとロンドンが640億、北京が530億円くらいだそうです。)
私もスタジアムの建築費用の”相場”はわかりませんが、2012年当時には1300億円だといっていましたし、他の開催地の値段を見ても、どうしてこんな額になってしまうのか不思議でなりません。
もちろん、今回の新国立のデザインには”屋根”がついていたので、過去の五輪の屋根なしスタジアムよりは高額になるとは思っていましたけど、2520億円と聞くと、「屋根にいくらかかるんだ!」って思っちゃいますよね。
読売新聞が7月6日に公表した世論調査でも、81%が「見直すべき」と答えていたそうですけど、私も同意見です。

ただ、そういう世論の後押しもあってか、メディアが”バッシング”ともいえるような姿勢で報道していることには違和感を覚えます。
まるで、”建て替えの必要もない”、”五輪もいらない”、という方向に持ってゆきたいようにすら見えるんです。
10日には俳優の渡辺謙さんが「不思議なニュース、一杯国に借金があって建て直さなくちゃいけないのに、ずーっとお金がかかり続ける体育館を建てて世界に驚いて貰おうとする。建てちゃったから使わないと勿体ないと発電所を動かそうとする。事故が起きて人が住めなくなったことは、もう忘れたんだ。あちこちで火山は噴火してるのに。」(7月8日)とTwitterで発言したことを各メディアが嬉しそうに伝えていました。
短い文章なので渡辺さんの真意はわかりませんが、新スタジアム建設や五輪そのものに反対しているようにも見て取れます。
一部メディアにとっては渡りに船といったところでしょう。

しかし、私はどうもこの手の考え方には賛同できかねないんです。
渡辺さんには失礼ですが、たとえば何十億円もかけてヒットするかどうかもわからない映画を作ることはどうなんでしょう、それに2010年に終わった甲子園球場の改修には200億円かかったそうですそうですけど、税金を使わなければいいのでしょうか?
いや、正確にいえば映画産業には国からの助成金の制度がありますし、甲子園球場は阪神電鉄の自前でも甲子園球場のための甲子園駅の改築費は5分の2を国と地方自治体が補助しているので、税金が入っていないとはいえないんです。
(※渡辺さんの真意が新国立が”高すぎる”ことへの批判だったらほんと申し訳ありません。)

日本には1億2千万を超えるひとが住んでいますけど、”娯楽”に一銭も使わないというひとはほぼいないでしょう。
無駄なことも人生にはやっぱり必要なんです。
土地土地のお祭りなんかもそうですよね、なんの生産性もありませんが、とっても大切なものです。
問題があるとすれば、その規模が”身の丈にあっているかどうか”ということだけだと私は思うんです。

新国立競技場に関していえば、大前提として前の国立競技場は老朽化が進んでいましたし、現在の競技基準や安全基準を満たしていないので、改築か建て替えをする必要があったわけです。
日本の首都に国際的な競技場がなくてもいいというなら話は別ですが、国民がスポーツを楽しむ場としても、先進国の誇りと義務としても、持っていてしかるべき施設だと私は思います。
問題はその”値段”なんです。
ですから、メディアには、”新国立も五輪もいらない”、ではなく、”国民の理解が得られる額のスタジアムにしよう”という議論をしてほしいと願っています。

そもそもこの新国立競技場は2012年のデザインコンクールで現行案に決まったものの、審査員11名のうちの建築関係者7名のなかでスタジアム建設に携わった経験があるのはノーマン・フォスターさん(イギリス人)のみで、そのフォスターさんですら”改修”しかやったことがないんです。
そこで選定されたザハ・ハディッドさん(イラク系イギリス人)のデザインは、キールアーチと呼ばれる流線型の天井部が美しく、私も素晴らしいものだと思いましたけど、建築家の森山高至さんなどからは、そのアーチは建築ではなく橋を架けるのと同じ”土木”の分野に属するもので、しかもそれは過去に例を見ないほどの長さであり、その工事を川や海ではない地上で行うことの困難さは計り知れないという指摘がありました。
私もそれを聞いたとき”なるほどお”と感心したのですが、コンクールでそういう指摘をするひとはいなかったのでしょうか?
そういえば審査員には”土木関係”のひとは見当たりませんね…。

ちなみに審査員のなかには”実現可能性を確認する専門アドバイザー”という役職があって、その和田章東京工業大学名誉教授は会議で、「最終選考に残った案のうちで実現可能性のあるものは2つあったが、それはインパクトに欠けていた」、「2位3位は
絶対に作るのは無理なので、ザハ案になった」という説明をしています。
このときの試算は1900億円だったのですが、作るのが難しくて少々金がかかっても、インパクトを残したいというのが和田教授の考えだったのでしょう。”実現可能性”をアドバイスしているようには見えませんが。

そうして決まったデザインですが、見積もりを出す過程で費用がどんどんどんどん増えていって問題になると、ハディットさんは「デザインを変更してもいい」といってくれたんです。
それなにのなぜかJCSの有識者会議ではもともとのキールアーチのデザインにこだわって、変更は規模をやや縮小するくらいで、
7日に2520億円で”了承”の決断をしてしまったわけです。
しかも、この有識者会議は14人の委員で構成されていますが、そのなかに建築関係者は安藤忠雄さんひとりしかいないんです。
あとは政治家、スポーツ関係、役人、作曲家です。
このひとたちがどうして2520億円を決められるのか、その判断材料はなんだったのか、私には本当に理解できません。
これを止められるのは安藤忠雄さんだけだったと思います。
それなのに安藤さんは7日の会議を欠席してしまっていたんですからもうわけがわかりません。

安藤さんが会議に来なかった理由は報道されていませんし、本人からのコメントもいまのところ(7月10日現在)まったくありません。
安藤さんはデザインコンクールの審査委員長でもあり、ザハ案を圧していたのですから、新国立競技場建設に関して最も責任のある人物といえるでしょう。
それなのに安藤さんは重要な会議を欠席したというだけではなく、ここ最近は新国立に関する記者会見や取材にすら応じていないんです。

私は安藤さん不在での有識者会議など無効だと思いますし、安藤さんの説明なしに建設が進んでゆくことにも反対です。
いつもメディアでカッコいいことばかりいっているひとなのですから、「俺が新しくデザインしてやる!」とでもいって、いますぐ出てきてほしいものです。
もちろんそれは予算や工期をしっかり守った適切なものでお願いします。
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