『THE ICE』2015(後1)、それぞれの成長と進化

(続きです。)
いつもなら第2部はダンスバトルで盛り上がってゆくところですが、この日(名古屋公演2日目夕方の部)はジェフリー・バトル振り付けのクールな群舞でスタート。
出演はウィーバー&ポジェ、ワグナー、アボット、チャン、それに鈴木明子。
なぜ北米勢に鈴木さんが加わっているのか不思議でしたけど、滑りもダンスも上手い選手で揃えたって感じでしょうか、ギャング帽をかぶったメンバーたちが悪の香りを漂わせながら観客を大いに魅了。
個人的にはアボットとチャンが競い合うように滑る場面の緊張感が見どころでした。

今年の『THE ICE』は残念なことに日本スケート連盟の合宿と日程が重なってしまって、7月26日の大阪公演と29日の名古屋公演に、日本の現役選手たちが出演できなかったんです。
そこで急遽、その代役となったのがロシアのアデリナ・ソトニコワとマキシム・コフトゥンだったのですが、嬉しいことに日本勢が戻ってきた30日の公演も引き続き参加してくれたんです。オープニングに2人の姿があったとき、会場はドッと沸いていました。こんなサプライズはなかなかありません。
そしてまたコフトゥンが披露してくれたのが、今季のFS『運命』(他)というのですからこちらも嬉しいプレゼント。
ふわっとした貴族風のシャツに身を包み、ハンサムなプログラムかと思ったら、完全にコミカルな内容に会場は大盛り上がり。
ジャンプは抜けが目立ちましたけど、笑わせる演技が上手い選手なので、それもあまり気になりませんでした。
ジャンプで畳みかけるようなプログラムなので、それが決まっていったらかなり見応えのあるものになりそうです。

昨季は全日本制覇、そして世界選手権銀メダルと躍進を遂げた新日本女王、宮原知子にとって、この『THE ICE』は凱旋といってもいい公演。
いつもは新FSをきっちり仕上げて披露している彼女ですが、今年はエキシビションのジャズナンバー『Pennies from Heaven』。
アダルトかつ小悪魔的なプログラムという宮原さんには珍しいものでしたけど、ジェフリー・バトルが上手く振り付けをしてくれて、とっても自然な感じでした。体格がまた少し成長してきたというのもあるでしょうね。
ただ、体型変化といえば体のバランスも気になるところでしたけど、得意技といっていい傘を持ってのジャンプもバッチリ決めて余裕の演技内容。なんとなく貫録を感じました。地位がひとを育てるのでしょうねえ。
今季は浅田さんとの新旧女王対決もありますし、いまから楽しみです!

『THE ICE』はアイスショー、それも女性観客の多いショーであることを考えれば、単純にいいプログラムを見せればいいというわけではありません。
そこで必要になるのが”イケメン枠”。
もちろんレギュラー陣もイケメンで揃えていますけど、そこにさらにプラスしてゆかなければお客さんは納得しない!それが真理!
その意味でアダム・リッポンはその役割を完璧に遂行していました。
オープニングでは仮面ピエロのひとりに扮し、仮面を取ったその下から新しく銀に染めた髪型で驚かせ、ワグナーとのペアプロではたどたどしいながらも必死にエスコートしようとする姿で女性観客の心をくすぐり、そして個人プログラムでは今季のSP、クイーンの『リヴ・フォーエヴァー』では4回転は入れなかったものの本気の内容。
その熱演とシースルーの衣装は確かなインパクトを残したといっていいでしょう。
(ワグナーとはコーチが同じせいか演技の方向性がよく似ています。)

今季をもってショースケートからも引退し、医師になるための勉強に入るというジョアニー・ロシェットが選んだプログラムは『La Vie en rose』。スケートへの愛と、悔いなきスケート人生を終えて新たな人生へと旅立つ決意を込めたのでしょう。
ロシェットの持つ高いスケーティングスキルと美しい身のこなしが、曲の繊細な調べと完全に同調し、本当にうっとりするような時間でした。あっという間に終わってしまいました。
決して派手なことをするわけではないのに、観る者をぐいぐい惹きつけるというのはロシェットの凄味ですよね。
しかも股関節を生かしたスケーティングなど、技術的にもまだまだ貪欲に進化しているのですから頭が下がります。
最近のフィギュアスケートは点を取ることばかりを考えて、基本的な部分が雑のままの選手が多いように見えるので、ロシェットのようなひとこそフィギュア界に残ってくれればなあ、と思えて仕方ありません。
今年の『THE ICE』が日本での最後の滑り(おそらく)ということもあってか、今回のロシェットは調整もばっちりで本当によかった!

このところ海外に修行にいったり、ロシア人コーチに4回転を教わったりと、積極的な姿勢が目立つ無良崇人ですが、この『THE ICE』で披露する今季のFSなんとジェフリー・バトル振り付けというのですから、さらなる進化を求めているようです(SPはチャーリー・ホワイト)。
色とりどりのド派手なシャツで現れた無良くん、緊張感のある助走から4Tを飛んでスタートすると(両足気味)、アコースティックギターと女性ヴォーカルに乗せての軽やかで華やかな滑り。フットワークや身のこなしが本当に生き生きしていました。
お客さんを楽しませること、そして自分も楽しむことを意識したプログラムといったところでしょうか。
無良くんといえば、無骨というイメージですけど、それを完全に覆すような滑りはまさに新境地。
このプログラムは本当に楽しみです。
実はオープニングのときから無良くんのスケーティングが凄く滑らかで、いつもとは違う感じだったので、技術的にもなにか新しいものを掴んだのかもしれませんね。
これもジェフ&チャーリーのお蔭かと思うと、この若き振付師たちの手腕には末恐ろしいものを感じます。

進化といえば、アデリナ・ソトニコワの滑りと身のこなしが洗練されていてちょっとびっくりしました。”雑だけど派手”という印象でしたからね。
ショールを使った演出で情熱的な女性ヴォーカルの曲を見事に演じたソトニコワ、そのショールを誤って踏んでしまって転倒する場面があっても、雰囲気を壊すことなく最後まで滑ったのもトップスケーターらしい気持ちの強さでした。
ただ、「昨季は足の靭帯の損傷で試合を休んでいた」という影響か、ジャンプは不調。
ここがよくならなければ過酷なロシア国内の戦いを勝ち進むことは難しいでしょう。
このままではせっかく演技の方がよくなってきたのに、世界のトップレベルの試合で彼女を観る機会はかなり減っちゃうかもしれません…。
地元五輪のために追い立てられるようにして成長を促された結果、才能のあるスケーターの競技人生が短いものになってしまうと
したら、それは本当に不幸なことです。
(配分がうまくゆかずまだ終わりません。もう少しだけお付き合い願います。本当に申し訳ありません。全力を尽くします。)
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