日本人の秋刀魚愛

”秋刀魚のお寿司”といえば、おそらくいまは生の秋刀魚の切り身がのった”握り寿司”を思い浮かべるひとが多いのではないかと
思うんです。回るお寿司屋さんだけではなく、スーパーで売っているお寿司にだってありますからね。
ただ、よくよく思い出してみると、一昔前は秋刀魚の握り寿司などめったに見かけるものではありませんでしたし、私も初めて食べた秋刀魚寿司は、和歌山の”秋刀魚の押し寿司”でした。
これは棒状の酢飯の上に、塩でしめた開きの秋刀魚をのせ、枠のなかでしっかり押し固めたものです。山陰の方でも食べたことが
あります。
私は当時20歳を過ぎたくらいでしたけど、それまで秋刀魚といえば焼いたものか、缶詰くらいしか食べたことがなかったので、秋刀魚の押し寿司とはこんなに美味いものなのかと、えらく衝撃を受けたのを憶えています。会うひと会うひとに「美味しいよ」っていって回ったものです。
さらに2000年代になると、刺身の秋刀魚が気軽に食べられるようになって、あのとろけるような食感と、濃厚ながらあっさりとした脂にしてやられ、秋刀魚は生が一番と思うようになったものです。

秋刀魚は近海で獲れることもあって、その歴史がわからないくらい古くから日本人の舌を楽しませてきた魚ですが、江戸時代に刺網漁が考案されてからより広く食べられるようになったと考えられています。
ただ、落語の『目黒の秋刀魚』に描かれているように、秋刀魚はその脂の多さから、”下品(げぼん)な魚”とされ、庶民の味覚でした。
食べ方も炭火でよく焼いて、余分な脂を落としたものです。その煙もまた下品なものだったのでしょう。
また、”七輪”も、江戸時代に一般化されたものですから、それとの出会いもまた秋刀魚に幸運でしたし(いや、それを食べる我々ですね)。ひょうっとすると七輪がなければ秋刀魚はそうまで人気にはならなかったかもしれません。

そんな秋刀魚も現在は漁獲量が不安定で、「食べられなくなるのでは」と心配されるだけではなく、最近では中国や台湾や韓国が
日本近海にやってくる前の秋刀魚を公海で乱獲してしまうため、今年(2015年)の日本での初水揚げ量は昨年の3分の1になってしまいました。
この3国のうち、中国は自分で食べるために獲ってきたのですが、台湾や韓国は自分たちで食べるためというより、中国、それとロシアにそれを売るのが目的でした。
もともと秋刀魚を食べる習慣というのは日本とロシアにしかありません。中国はここ10年くらいです。
なのでロシアは以前から秋刀魚のよく獲れる日本から買ってくれていたのに、福島原発の事故以降、日本の水産物を危険視し、台湾や韓国から買うようになったというわけです。
そうしているうちに台湾人などは秋刀魚の味も覚えてしまい、いつの間にか消費量も上がっているのですから困ってしまいます。

ちなみに中国も台湾も韓国も、秋刀魚は日本式の塩焼きがポピュラーだそうです。
この秋刀魚の調理方法をいったい誰が教えてしまったのか。
生で食べることだけは教えてはなりません。
まあ、輸送技術と調理技術の問題で彼らには不可能でしょうけど。
生で秋刀魚を食べることは、日本人の秋刀魚への愛の深さの証明でもあります。
人気ブログランキングへ
スポンサーサイト
プロフィール

かつしき

Author:かつしき
FC2ブログへようこそ!

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード