2015GPSアメリカ大会 男子シングル(後)

(続きです。)
昨季は羽生結弦との衝突事故もあって不本意なシーズンを送った閻涵(中国)のSPは、それを払拭するような明るい『シング・シング・シング』。
冒頭の4Tは着氷のバランスを乱しながらもこらえ、なおざりな感じの振り付けとスピンから後半3Aは壁際になりながらもしっかり決めたものの、3Lz+3Tで大きくお手つき。ステップも教えられたことをなぞるような滑りで面白みはありませんでした。
閻涵は演技中の表情がとっても堅い選手ですが、表現をする際の人間というのは、顔が堅いと動きも堅くなるものです。
そのせいで曲の楽しさが出てきませんし、全体にスケール感もなくなってしまいます。もうちょっと精進して欲しいですね。才能はある選手ですから。
SP86.53(TES46.25・PCS40.28)で2位。4回転2本のメンショフさんより高いんや…。
FSでは3Aを決めてスタートするも、単独4Tでこらえる感じの着氷、次のコンボ予定の4Tは転倒に近い大きなステップアウトでセカンドを付けられません。
その4Tのミスでリズムが狂ったのか、スピンやコレオの動きも鈍く、後半冒頭に予定していた3Aがまさかの1Aになって万事休す。
そこからの4本のジャンプな粘ってなんとか着氷するもセカンドトリプルは入らず、スコアメイクできません。
後半はスタミナ切れが酷くて完全に失速。曲は『ロミオ+ジュリエット』だったんですけど、何を表現したいのかわからないまま終わっちゃいました…。
FSは149.50(68.72・80.78)、合計236.03で4位。
今季もジャンプの精度(特にセカンドジャンプ)やスタミナ面で苦労しそうです。
金博洋との世界選手権出場(1枠)争いが不安ですね…。

地元アメリカで大人気のジェイソン・ブラウンのSPは、エンターテイメント性あふれた『グレート・ギャッツビー』。しかし冒頭の3Tはなんとか跳んだものの、スピンを挟んでからのコンボが3F+1Tになる痛恨のミス。
これには会場も静まり返っちゃいましたけど、ブラウンの凄いのは、その後のキャメルスピンで男子とは思えぬ柔らかい姿勢で驚くような速度で回って空気を温め直し、動きがてんこ盛りのステップシークエンスでお客さんを大いに楽しませたところ。
3Lzも小さいジャンプでしたけど、最後の独創的なスピンは素晴らしかったです。
SPは78.64(36.57・42.07)で8位。4回転がないだけにジャンプのミスを取り返せませんね。
まさかの最終グループ落ちとなったFSでは冒頭に4Tに挑戦するも回れそうにない感じの転倒、しかしそれは織り込みずみなのか、落ち着いて3A+2Tを決めると、ステップシークエンスで『ピアノ・レッスン』をリンクに映し出して、観客を演技に引き込みます。
これで後半はまとめてくるのがいつものブラウンなんですけど、3Aがまったく回転の足りないジャンプになると、その後の
ジャンプも跳躍に勢いがありません。
スピンやコレオで見せ場は作れても、これでは演技全体が萎んでしまい、残念なホーム開幕戦になってしまいました。
FSは159.83(75.47・85.36・減点1)、合計238.47で3位。 
閻涵とメンショフがFSで自爆してくれたおかげとはいえ、地元で表彰台を確保したのは立派。終盤の演技をまとめてくる執念がブラウンの強さでしょうね。

私も軽々に「ジーニアス」だの「天才」だのという言葉を使いたくはないのですが、”宇野昌磨”を評する際に、それらほど適切な言葉はないので、今後も乱発することをまずはお許しください。
ジュニア最高得点保持者の看板を引っ提げて、まずは名刺代わりのイーグル3Aをビシッと決めてSPをスタートした宇野昌磨、そこから機械のように正確でクールなスピンを2本、そして柔らかい股関節で自由自在に体の向きを変える見事なスケーティングで『Legends』の原初的な雄の匂いを色気に昇華させると、後半はステップからの4Tにチャレンジ!
でしたけど、惜しくも転倒。ちょっといつもと踏み切りの具合が違いましたね。アドレナリンの制御が難しかったのかも。
それでも、すくっと立ち上がってすぐに曲に戻ると、次の3F+3Tはしっかり着氷し、全身で細かく音を取るステップシークエンス、そのままの流れからのコンビネーションスピンという技巧の高さを見せての鮮やかなフィニッシュ。
本人はすごく悔しそうな顔をしていましたけど、私も本当に悔しい!
17歳のデビュー戦と考えれば上々といってもいいのかもしれませんが、彼は”宇野昌磨”なんです。
私は口が裂けても上々などとはいいません。
SPは80.78(43.28・38.50・減点1)で残念な4位。
この結果、首位とは6点近い差となってしまいましたが、FS『トゥーランドット』ならば、宇野昌磨ならば逆転できる!
そんな願いのなか始まったFSでは、冒頭の4Tはこらえる形、3Aはしっかり跳んだものの、3A+3Tでもおっとっと。
ヒヤヒヤして肝が縮みました…。
しかし前半の山場を乗り越えたのもまた事実、シットステップで一息つくと、さぼる選手が多い前半のステップでもエンジン全開のパワー溢れる滑り、そして安定感抜群のキャメルスピンから後半の3Loと3Sをこともなげに決めると、力と気迫を貯めるような振り付けからプログラム最難関の4T+2Tへ。
ここはまさに勝負を決する分水嶺、いや、この試合だけではなく宇野昌磨という男が頂点を狙える男かどうかを占う分水嶺。
王者に相応しい技術とメンタルを見せてくれ!
そうして宇野昌磨は跳んだ、迷いのない踏み切りから鮮やかに決めた!
これにはさすがにアメリカ観客からも大きな拍手、あなたたちは本当に貴重な瞬間の目撃者だ、羨ましい!
こういう大ジャンプの後は気が緩みがちなものですが、宇野昌磨は懸案の3Lzもしっかり降りると、終盤の盛り上がりのきっかけとなる2A+1Lo+3Sも執念で着氷するド根性、コレオでは得意のエビぞりハイドロブレ―ディングで開場を沸かし、最後は疲れをしらない正確無比なコンビネーションスピンでフィニッシュ!
FSは177.65(92.35・84.30)、合計257.43。
シニアデビュー戦ということで、SPでは「緊張と闘争心」をなかなかコントロールできなかったようですが(本人談)、FSではそういう自分に少し慣れてきたんじゃないでしょうか。
17歳でこの高難度のジャンプ構成を跳び切り、しかも演技も魅せたのですからさすが宇野昌磨です。
ただ、実をいうと、私はこの大会の宇野くんに不満を感じているんです。
それは技術要素ではなく、演技の面。
今季は氷をつよく押せるようになって、滑りにこれまでになかった迫力が出ているのは確かです。
しかし、それはシニアのトップでは当たり前の技術。
では、宇野昌磨が他選手と隔絶している部分は何か。
それはやはり、技巧的な身のこなしとスケートをベースにした天性の音楽表現です。
彼はジュニアやノービスの時代に、それによって我々に驚きと興奮を幾度も届けてきました。
そしてその表現技術は幼くして凄まじいほどの完成度を見せながら、年々進化していたところがまた驚異的だったわけです。
しかし、私には今季の宇野くんから進化の驚きを感じない。
期待が大きすぎるのかもしれませんが、それが私の偽らざる本音です。
もちろん、今季はシニアでもトップを取るために、ジャンプ構成を難しくして、演技面に余裕がないのかもしれません。
昨季からのジャンプ技術の進化は本当に凄まじくて、私の想像を超えるほどですから、その部分では私も大いに感服しています。
ですが、だからといって演技面での要求を取り下げるわけにはゆきません。
宇野昌磨という選手はそれくらいの期待をしてあげなくてはならない選手なんです。しない方が失礼です。
私は浅田真央や高橋大輔の系譜を継ぐのは宇野昌磨だと思っています。
これからも宇野くんには厳しい視線を送るつもりでいます。

”257.43”。
普通の大会ならば、これは十分優勝できるスコアです。SPとFSを通してもミスらしいミスはSPの4T転倒のところくらいでしたしね。
しかし、この大会の優勝者は宇野くんではなかった。
マックス・アーロン(アメリカ)が一世一代ともいえる素晴らしい滑りをしたんです。
まずはSPから4S+3T、3A、3Lzを綺麗に揃え、スピンやステップも集中して遂行すると、その超特急のスケーティングスピードが演技を華やかにしていました。
86.67(47.96・38.71)は彼のパーソナルベストです(1位)。
FSでもその勢いは止まらず、4S+2T、3A+2T、3Loを伸びやかに跳んでスタートすると、歩くようなステップと、シンプルなスピンで前半を終わらせ、勝負の後半冒頭もものの見事な4Sの成功!
いつもはここらあたりでスタミナと集中力が切れてくるアーロンですが、この日は3A、3Lz+1Lo+3S、3Tと素晴らしい跳躍。
コレオの後の2Aの着氷はちょっと乱しますけど、ご愛嬌といったところでしょう。
スピンを終えると、会心の滑りに「どうだ!」といわんばかりに吠えて、お客さんと一緒に大盛り上がり。
私の脳内では宇野くんが逆転するという計算だったので、アメリカ人のから騒ぎに同情していたんですけど、出てきたスコアは172.28(90.98・81.30)の合計258.95で宇野くんのわずかに上。
正直いって『ブラックスワン』らしいところはほとんどないこのプログラムにこのPCSはない、という印象なんですけど、まあ地元ですし、2日間で技術要素にほぼマイナスがないので、しょうがない、と今回は涙を呑んで諦めます。
アスリートとして今大会のアーロンは立派でした。それを素直に認めることにしましょう!
今回のアーロンはSPで苦手のセカンドトリプルを決めたことが勝因でしょうけど、演技面でも「まじめにフィギュアをやるのはかっこわるい」といったいつものスカしたところがなく、真正直にスケートに取り組んでいたことが大きかったように思われます。
今季はいいシーズンになるといいですね。

というわけで、アメリカ大会男子シングルは、地元のアーロンがいい演技をして優勝したので、まさに大団円でした。
GPSのなかでもアメリカ大会は観客が最も少なく見えますし、アメリカ選手のがんばりはフィギュア界全体にとってもいいことだと思います。アメリカ人は身びいきが強いですからね。
ですから、外国選手がアメリカで会場を味方にできれば本物です。世界的なスケーターといっていいでしょう。
宇野昌磨ならばいつかそれができる!
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