2015GPSカナダ大会 男子シングル(後)

(続きです。)
昨季NHK杯優勝で男を上げた村上大介は、その評価を確固たるものにするためにも大事なシーズンの始まりです。
しかし、力んだのかSP冒頭の4Sでステップアウトのお手つき。
それでも次の3Aは慎重に決め、キャメルスピンで落ち着きを取り戻すと、神経が行き届いた身ごなしとスケートで後半に突入すると、細かいステップからの3Lz+3Loを思い切って跳んだ!男子ではセカンドループは珍しいのでびっくりしました。
そこからのスピンとステップも『彼を帰して』(レ・ミゼラブル)のヴォーカルを噛みしめるようにして仕上げてゆき、SPは80.88(TES42.17・PCS38.71)。
冒頭のミスから崩れることなく、精神的な成長を見せましたね。笑顔もよかったです!

地元ファンの大声援のなか登場したパトリック・チャンのSPはこれが初めてとは思えない『マック・ザ・ナイフ』。
ファンを安心させるために大事な最初の4T+3Tはこらえる感じでなんとか着氷、大きく息をはいて長い助走に入った3Aは転倒。
以前もよく見た失敗なので気にしない、気にしない!
しかし、後半も3Lz予定が2Lzに抜ける手痛いミス。
全体的な動きも重く、スピンもキレがなく、まだまだ調整不足なんでしょうね。
ただ、チャンらしいどこまでも伸びるスケートと正確無比のエッジワーク、そして機械のような身のこなしは健在で、お客さんを楽しませることはできたんじゃないでしょうか。技術の正確さは見ていて清々しいほどでした。
本人が悔しさを噛みしめるなか出てきたSPのスコアは80.81(37.43・44.38・減点1)。
 
チャンが大きく崩れたことで、滑る前からSP1位は当確といっていい羽生結弦。
昨季から持ち越しの『バラード第1番ト短調』の繊細な調べにのってまずはイーグルからの3A!
これを切れ味鋭く跳ぶと、降りてすぐにまたイーグルに戻る驚異の技術、この部分だけでも芸術作品と呼べる完成度です。
深い姿勢のシットスピンとキャメルスピンも曲を奏でるように回り、王者の余裕すら感じさせます。
そして美しい滑りで後半へと入り、昨季から挑戦を続けている4Tでしたけど、これがまさかの2Tに。ルールでは”3回転以上”なのでこの部分の得点はキックアウト。
この失敗で力んだのか、次の3Lzも踏み切りで前傾しすぎる悪い癖が出て、セカンドが+2Tに。
同種の2回転は禁止されているので、このコンビネーションもまるまるキックアウト…。前半が完璧だっただけに悪夢のようでした。
それでも羽生結弦は己を叱咤するように攻めのステップを見せ、最後も柔軟で正確なスピンでフィニッシュ。精神的に折れなかったところは立派!
SPは73.25(28.43・44.82)。
プログラム全体は完成度がより高くなっていて、表現面での進歩もいくつか見られただけでにジャンプミスが本当に残念。
昨季は途中でジャンプ構成をいじりましたけど、今季はたぶんこのまま行くでしょうし、強い気持ちで立ち向かっていって欲しいですよね。

こうしてSPが終わった結果、1位村上くん、2位チャン、羽生くんはまさかの6位に沈む波乱の展開。
しかし、羽生くんのFSにはとんでもない爆発力があるので、私のなかでの優勝予想は揺らぎません。
圧倒的な基礎点で、傍若無人なまでに頂点をもぎ取ることでしょう。

そして始まったFS最終グループの先頭でリンクインした羽生結弦。
曲は『SEIMEI』、衣装は狩衣、しかし表情は鬼。SPの悔しさをぶつけてやる!と顔に書いてあるようでした。
その気迫が空回りする心配もあるんですけど、この日の羽生結弦は4Sと4Tを豪快に揃えて、3Fもしっかり着氷する見事なスタート。序盤でカナダの観客を黙らせたといっていいでしょう。
そんなパワフルなジャンプの後はビールマンスピンで柔軟性を見せ、ステップでは細かいフットワークとツイズルで邪気を払い、いい流れを加速させます。ここ数年のFSのステップは体力の温存場所でしたけど、今季はエッジも深くて攻めの演技をしているのは
ある意味で意外でした。
そしてこのFSの見せ場であり勝負どころの後半冒頭は4Tで軽く手をつくも根性で+2Tに!よく跳んだ!
しかし、ここで踏ん張ったために脚にきたのか、得意の3Aからのコンビネーションは+1Tに。
それでも次の3A+1Lo+3Sはしっかり決めるのですから、ほんとこの羽生結弦の肉体はどうなっているのでしょう、すごすぎる!
4回転3本+3A2本などというFSは本来は狂気の沙汰です。
そうして3Loも降りた羽生結弦でしたが、さすがに足が棒になっていたのか、最後の3Lzではこらえきれずに転倒。
しかしキャメルスピンで息を吹き返すと、コレオでは見事なイナバウアーを披露し、最後のコンビネーションスピンも乱れることなく
回ったのは、体力的にも成長を見せたんじゃないでしょうか。終盤のスピードは落ちていましたけど、気持ちは落ちていませんでした。表情も演技もまさに”鬼”でしたね。
この『SEIMEI』は割としっかり作り込まれていますし、羽生くんも滑りやすそうですし、久しぶりにいプログラムになりそうなので、私も大いに期待しています。
FSは186.29(98.35・88.94)、合計259.54。
大きなミスがいくつかありながらもこの点数なのですから、”200点超え”の可能性も十分。
2015-16は記録のシーズンになりそうですね!

パトリック・チャンが羽生結弦を上回るためには、おおよそ180点が必要ですが、これはいいときのチャンでも簡単ではありません。
しかもこの大会が復帰戦で、SPではミスを連発しているのですから、ちょっと無理でしょうねえ。
多くのフィギュアファンがそう思っていたであろうなか滑り始めたチャンの最初のジャンプは見事な4T+3T!
続いての苦手な3Aも奇跡的に綺麗な着氷になって、これはもしかして!という空気。
しかし次の4T予定が3Tになって、やっぱりなあ、と掌返し。
そんな状況でしたけど、チャンは意に介すことなく、鏡の上で滑っているようなステップシークエンスへ。
動きと滑りの正確性が際立っていて、シークエンスが本当にひとつの線になっている、これぞパトリック・チャンの世界!
その流れのままのスピンで前半を締めくくり、後半は3Lz+2T、3Lz+2T+2Lo、3Loと余裕の着氷。
これでのってきたチャンの集中力はいや増しに高まり、終盤のシットスピン、3F、コレオシークエンス、コンビネーションスピンに一切の乱れなし。
動きにはまだまだキレが足りないものの、全体的に集中力が途切れることのなく、とても明度の高い『ショパンメドレー』でした!ブラヴォ!
チャンはたまにこういう素晴らしい演技をする日がありますけど、それをこの復帰戦で持ってくるのですから、やはり大した男ですね。私も最敬礼です。
優勝争いでも、スコアが出る前から私も負けた気分だったわけですが、スコアでいうとかなり接戦を予想しました。
チャンは一見ノーミスですけど、4T予定がひとつ3Tになっていますし、そもそも基礎点が現在のトップ選手のなかではけっこう低いんです。後半にビッグジャンプがひとつもありませんしね。
しかし、出てきたスコアは190.33(95.17・95.16)、合計271.14での優勝。
地元カナダということで”おかえり得点”なんでしょうけど、ちょっと奮発しすぎ…。PCSだってこれから演技はもっとよくなってゆくはずなのに…。 
”あやしげな採点”も復活というところでしょうね。
ただ、この大会を見る限り、もはや羽生結弦はチャンを意識しなくてもいい段階に入ったことは間違いありません。
自分の演技をすれば勝てるんです。
また逆にいえばチャンも羽生結弦を意識しなくていいはずです。基礎点が違いすぎるのですから意識していたら自分の演技がおかしくなってしまいます。羽生結弦のミス待ちは屈辱かもしれませんが、自分に集中した方がいい演技ができると思いますし、フィギュアファンもそちらの方を期待しているんじゃないでしょうか。そういう意味でチャンの今季も楽しみです!

チャンの素晴らしい演技で、なんとなく大会が終わったような雰囲気になったカナダ大会ですが、
オレがいるぜ!とばかりに滑り出した村上大介は、4Sと4S+2Tを立て続けに成功させる抜群のスタート!
しかも丁寧なシットスピンから3A+2Tも決めるのですからチャンの余韻もふっ飛ばしたといっていいでしょう。
表彰台に立つためにも大切な後半も、3Aを食らいつくように着氷すると、3F、3Lz+1Lo+2S、3Lo、3Sと連続成功!今日は”村神”だ!
ステップとコレオは『Anniversary』を噛みしめるように大切に滑り、それが徐々に喜びへと変わってゆくと、いい笑顔も浮かび、ぐいぐい惹きつけられるような演技に。
技術的には拙い部分もあったかもしれませんが、気持ちが籠っていたという意味では、この日の村上大介は誰にも負けていませんでした。
最終滑走の重圧を跳ね除け、見事な成長を見せた村上くんに大きな拍手を送りたいと思います。胸にぐっとくる滑りでした。
FSは171.37(89.37・82.00)、合計252.25で堂々の3位。本当に素晴らしかった。

こうして終わった2015カナダ大会男子シングルですが、技術の羽生、表現のチャン、気持ちの村上、と三者三様にフィギュアスケートの素晴らしさを見せてくれたのですから、なんとも充実していました。
フィギュアスケートってやっぱりいいものですね!
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