2015GPSロシア大会女子シングル(後) 幸せな大会

(続きです。)
昨季は怪我もあって公式戦は全休だったアデリナ・ソトニコワ(ロシア)。
いわずと知れたソチ五輪の金メダリストが、どのような状態で国際舞台に復帰するか、世界中のフィギュアファンが興味深々だったはず。
地元ロシア観客が作る温かな雰囲気のなか、煽情的な踊りでSP『ある恋の物語』をスタートさせたソトニコワ、最初のジャンプは軸が曲がって3T+2Tになるも、気にすることなく体をくねらせて音楽にのると、3Fでは踏み切りのタイミングを狂わせながらもなんとか成功。
懸案のジャンプを終わらせ、得意のスピンで勢いをつけると、曲のテンポアップに合わせて加速し、後半の2Aは軸が曲がりながらもなんとか着氷、片手ビールマンを挟んでのステップは笑顔は華やかながらフットワークはいまいちで、バランスを崩す場面も。
終盤は疲れでスピードが落ちたものの、最後のキャメルスピンでは独特の姿勢で観客を楽しませてほっとしたような演技終了。
表現することへの前向きさは感じられたものの、体と技術がそれについてこないという内容でしたね。
SPは65.48(TES32.31・PCS33.17)で4位。思ったより高いスコア。軸が狂った3T+2TにGOE1.40がついていたことがすべてを物語っています。
フェンス際から芝居っ気たっぷりに始まったFS『恋のやまい』の冒頭は3Lz+3Tに挑戦するも、ルッツはエラーでセカンドは回転不足(UR)。しかし3Fと3Loは気持ちの籠ったジャンプで意地を感じる序盤戦。
安定したコンビネーションスピンのあとのステップではスケートの技術ではなく、体を感情的に動かすことで曲調を表現。
勝負がかかる後半冒頭の2A+3Tは回転不足でこらえる形、次も2F+1Tになるミス、口で息をしてからの3Sは気持ちで降りるも、レイバックスピンに勢いがありません。スタミナ切れは明らか。
そうなると加速したいコレオもスパイラルのスピードが上がらず、2Aは足が棒になっての転倒、最後は独特の形のキャメルスピンで観客の声援に応えてのフィニッシュ。
演技後は重圧からの解放か、悔しさからか、涙で顔をゆがめるソトニコワ。
内容はいまいちでしたけど、競技に戻ってきたこと自体を私も称えたいと思います。勝ち逃げをしないことは本当に立派です。
演技の面でも慌てたような感じがだいぶなくなってきましたし、動きも少しずつ磨かれてきました。表現者としての今後が楽しみです。
FSは119.63(51.25・69.38・減点1)、合計185.11…。おかえりボーナスにしてもちょっと高すぎ。

前のアメリカ大会の優勝で鮮烈なシニアデビューを飾ったエフゲニア・メドベデワ(ロシア)は、このSPでも美しく踊ってからのスピン、細かく丁寧に音をひろうステップで観客を『白夜の調べ』の世界に引き込むも、後半のタノ3Fでまさかの転倒。しかしタノ2Aを慎重に降りると、気合で跳んだ3Lo+3Tはお見事(ジャンプ全て後半というのはリスクがありますね)。
最後はしなやかさと逞しさを兼ね備えたキャメルスピンとレイバックスピンで透き通るように舞台の幕を閉じてくれました。
SPは67.03(36.50・31.53)で3位。
まだまだ優勝が狙える位置でのスタートとなったFSでは、バレエダンサーのように踊って『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』の雰囲気を作ると、タノ3F+3T、タノ3Lzという気迫あふれる序盤戦。
滑りは荒さはあるも力強く、しなやかなコンビネーションスピン、ステップでは靴が重そうな動きながらも(ちょっとバランスを崩す部分も)上半身を大きく柔らかく使うことでそれを引っ張り上げて、流れを殺しません。
後半もタノ3Fで入ると3Loも成功、足上げからの2A+2T+2Tはぎこちなくなるも着氷、強引にいった3S+3Tはややふらりとするも食らいつくという根性を見せたのは本当に立派。可憐な花でも芯がしっかりしていますね、この少女は。
しかし、慎重に跳んだタノ2Aはステップアウト、さすがに足が残っていなかったか。
それでも終盤のコレオの滑りには陰りがなく優雅、いい流れのまま芸術的な姿勢のコンビネーションスピン、鮮やかなレイバックスピンで堂々のフィニッシュ!スタミナ面にまったく問題なし!
素晴らしい内容でした。次の世代を担う存在であることを高らかにアピールしましたね!
演技に対する集中力が高く、没入できるタイプなだけに、それが観る者を引き込む、氷上の女優といっていいでしょう(すごい美人になりそう)。若さゆえの必死さから演技に邪念がないのも清々しいです。
スコアの面でもジャンプとスピンでしっかり基礎点と加点を大きな武器ですし、演技中ずっと動きっぱなしでも最後までスタミナが切れないのも強みですね。前のアメリカ大会に比べても全体的に演技が磨き上げられていますし、練習も凄そう。
今後はもうちょっと筋力をつけて体の動きをより正確にするのと、スケーティングの強化、ジャンプの前後の力みがなくなってくれば、もう完璧な選手になるかもしれません。わくわくしますよね。
FSは139.73(72.12・67.61)、合計206.76。ジャッジは早くも”未来”のメドベデワを見ているようです。

今大会の伏兵といってよかったのが、カナダのアレイン・チャートランド。
SPの『Pina』では高さのある3Lz+3Tを成功させると、場面転換に合わせた切れのあるい動き、後半の3Loはちょっと危なっかしかったものの、ひとつ息を吐いての2Aは成功、ステップでは勢いよく踊っておかしな振り付け。
エッジも深くて、体も大きく動いていましたし、ボディバランスがいいですね。最後のコンビネーションスピンも勢いがありました。
弱点である雑さを勢いでカバーした好プログラム。体と顔の表情でよく演技できていてお客さんにも受けていました。
SPはパーソナルベストの67.38(37.30・30.08)で2位。これにはチャートランドも「キャーッ」と大喜び。明るいです。
このSPの勢いを繋げたいFS『風と共に去りぬ』の冒頭は3Aに果敢に挑戦するも完全に回転が足りない転倒。
これが影響したのかその後も2Lzになっての転倒、3Fはステップアウト。
コレオとスピンの動きも精彩を欠き、後半冒頭の3Loも転倒。もともと跳び急ぐタイプの選手ですけど、タイミングも軸も全てがおかしくなっていました。
それでも2A+1Lo+3Sは成功させ、3Lzに+3T(UR)を狙っていったところはジャンパーとしての矜持。
この2つのジャンプの着氷で気持ちが落ち着いたのか、ステップでは自分を取り戻していましたし、3S+2Aも成功、最後は安定感のあるスピン2つを重ねて、なんとか演技を締めくくることができました。
FSは106.04(50.40・58.64・減点3)、合計173.42の6位。
それにしてもやはり女子の3Aというのは負担が大きいのでしょう。チャートランドは前のアメリカ大会のFSでも冒頭の3Aを転倒するとあとは大崩れになってしまいました。
3Aは習得すれば大きな武器になりますけど、すべてのジャンプのバランスを崩しかねない諸刃の剣だということです。
現在の女子シングルはFSでのセカンドトリプル2本が標準になっていますけど、バンクーバー五輪シーズンまではセカンドトリプル自体が稀でしたよね。それが回転不足のルールの緩和によってこれだけ進歩したんですから、やはり”ルールは選手の背中を押すものでなければならない”、そう思います。
しかしそんななかでも3Aに挑戦する女子はほとんどいないのですから、それだけ3Aというのが難しいジャンプということです。
それをずっと跳び続けている選手の偉大さを痛感しますよね。

地元ロシアで優勝候補筆頭として大会に臨むこととなったエレーナ・ラジオノワは、やや詰まりながらも3Lz+3Tを気持ちで決めてSPをスタートすると、よく回転を制御できているキャメルスピン、ひとつひとつの姿勢に意味があるようなコンビネーションスピンで『ジュテーム』を高らかに歌うと、後半は3Loを成功、苦手の2Aも慎重に着氷。
これで肩の荷が下りたのか、いい勢いで入ったステップでは動きに彼女らしいエネルギッシュさが出始め、強く氷を踏めていて(エッジはあまり利いていません)、曲の雰囲気がよく出ていました。
ピンと伸びたビールマンで演技を終えると、早くも涙が溢れだして仕方ないラジオノワ。まだFSがありますよ!
スケートがあまり伸びないのと、ジャンプに迷いがあってその度に流れが途切れるのが気になりましたけど、背が伸びて影を潜めていた大胆さが戻ってきたのは嬉しいですね。
SPはPBの71.79(3844・33.35)で1位。思ったより高くてびっくらこきました。ちょっとよくわかりませんけど、ここは”ロシア”ですからね…。
SPの採点傾向から優勝へのレールが敷かれたように見えたラジオノワですが、後輩のメドベデワが猛追してきたためFSではミスが許されない状況。
『タイタニック』に乗って海風を受けるように伸びやかに滑り出したラジオノワ、冒頭の3Lz+3Tはややバランスを崩しながらも決め、3F(エラー)も慎重に着氷、3Lzはまずまず。ジャンプにはやはり迷いを感じます。
それでも自慢のコンビネーションスピンで流れを作ると、ステップでは自らを鼓舞するような力強い滑り。
ただし、上半身ばかりに気がいって、下半身が動かず、全体的にぎこちない印象。
ロシア女子はほとんどこれですけど、フィギュアの表現はスケーティングをベースにしたものが基本ですし、昨今はそれがブームのようになっていますから(P・チャンのせいでしょう)、ちょっと逸脱した感じがします。
後半はいったん音楽とともに滑りを落ち着け、そこから加速しての3Lo+1Lo+3Sをぎくしゃくしながらも降り、2Aはやや軸が曲がりながらの着氷、3Lo+2Tも決めた!このあたりは優勝への執念を感じました。
そこからは残ったエネルギーを燃やし尽くすようなコレオスパイラル、2Aを丁寧に降りると、重圧から解き放たれたように鮮やかなコンビネーションスピンとレイバックピンで鳴りやまぬ大歓声のなかノーミスフィニッシュ!よくやった!お見事!
嬉し涙とともにガッツポーズを見せるラジオノワ、素晴らしかった、自分に勝った!
スピン以外の技術要素は出来がさほどよかったわけではありませんが、どれも一定水準を必死に守り、食らいつき、そういう気持ちが演技全体にパワーを与えていたと思います。そしてそれが観客の胸を打った。これぞフィギュアスケートの醍醐味ですね。
この日観に行ったロシアのひとは幸せだ!
FSはPBの139.53(70.75・68.78)、合計もPBの211.32で圧巻の優勝。
スコアは胡散臭いんですけど、どこのGPSでもあることなのでおいておいて、地元選手がいい演技をして表彰台に立つというのは本当に素晴らしいことです。
大会の盛り上がりというのは、結果じゃないんです、内容なんです。
これを各国が繰り返すことで、GPSが活況を取り戻すことを私は期待します。

次は日本が幸せな気分に浸る大会だ!
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