2015GPF男子SP 絶対王者の条件

伝説的な演技でNHK杯を終えた羽生結弦が宣言した「絶対王者」。
おそらくこれは幼いころから憧れているエフゲニー・プルシェンコを念頭にしての言葉なんでしょうけど、ではいったいフィギュアスケートにおいての絶対性とはなんなのでしょう?
これもプルシェンコから類推するに、まずは現役選手中でトップクラスの基礎点(ジャンプ構成)を持ち、スピンやステップも高いレベルを維持し、表現面でもトップクラスの評価を得るなかで、技術要素の成功率が高いということなんだと思います。
理論上、これなら誰にも負けません。
そして世界王者・世界女王になろうという選手は基本的にはこれを目指します。
なぜ目指すのかといえば、それは試合を”他の選手との勝負”ではなく、”自分との勝負”にすることができるからです。
そうやって「自分の演技をすれば誰にも負けない」という境地に達すれば、気持ちに余裕を与え、演技全体を輝かせ、それが”王者の滑り”になってゆくということなのでしょう。
それは観る側にも”わかりやすい強さ”を提示できる。
羽生結弦はその条件をほぼ手中に収めていますけど、あとは”成功率”です。
他の選手から「あいつはすごいが失敗もする」、というふうに見られていては絶対王者たりえない。
ですから、この2015GPFはとても重要な大会です。
脅威の世界最高点を叩きだしたNHK杯に続いていい演技をすれば、周囲は「今季のユヅルは本物だ」と怯えすくみ上るでしょう。
しかし、逆にミスを連発してしまえば、「まだまだ漬け込む隙はある」となってしまいます。
前者になるか後者になるか、このGPFは羽生結弦の将来がかかっている!
というわけで2年連続となるバルセロナでのGPF男子SPの映像を観た感想を駆け足で。

GPSに参戦して7年、これが悲願の初ファイナルとなった村上大介は、冒頭の4Sからアドレナリン全開でやや跳び過ぎるくらい、私も「落ち着いて」と思いながら観ていましたけど、3Aはほんのちょっと前のめりになった感じながら後にポンっと跳ねる余裕も。
スピンも丁寧に回って、これでいいリズムになるかと思われた後半でしたけど3Lzで手をつき、そこからなんとかループではなく+2Tに。やはり3Lz+3Loは難しいジャンプですね。
ただ、村上くんはこのミスを引きずることなく、ステップシークエンスでは強化した振り付けをしっかりこなし、深いエッジでしっとりとした『彼を帰して』の雰囲気を上手く醸し出していました。演技面でもレベルが上がってきていますねえ。
SPは83.47(TES42.39・PCS41.08)。

休養から復帰したシーズンでも見事にファイナルに進出してきたかつての”絶対王者”パトリック。チャン(カナダ)。
冒頭からスケーティングスピードが速すぎてカメラがとらえらないのはさすがの一言。
しかし4T予定(4T+3T)が3Tに抜ける手痛いミス、3Aもこらえる形、後半は強引に3Lz+3Tを跳んでリカバリーしたかに見えたものの、同一種類ジャンプの跳び過ぎルール(ザヤック)に引っかかってこのコンボがまるまるノーカウント。
そのミスに気付いたのかすぐ後のスピンではバランスを失い、見せ場のステップも気持ちが切れたのか、動きと滑りからはいつもの適格性と輝きが失われていました。
ほんとやっちゃいましたね…。
本人もがっかりなキスクラで出てきたスコアは70.61(TES25.72・PCS44.89)。
ザヤックもそうですけどやはり試合勘が鈍っているのか、FSはそれを少しでも取り戻す場にして欲しいものです。

男子フィギュア史を塗り替えるようなクワドジャンプでシニアデビュー年ながら大注目を浴びている金博洋(中国)は代名詞の4Lzでバランスを崩して手をつくも力で+3Tに。ファイナル初出場で緊張しているのかも。振り付けと滑りにスピードがありません。
しかし、たどたどしいステップからの3Aはその場跳びで決めるのですから凄い才能。
しかし、後半の4Tも着氷を乱し、ステップでも足があまり動かなず、演技は最後まで硬いままでした。
SPは86.95(TES47.99・PCS38.86)。
FSでは開き直って、若々しい勢いのあるジャンプを見せて欲しいですね! 

その金博洋を抑えて昨季はジュニアファイナルと世界選手権の二冠に輝いた我らが宇野昌麿。シニアでも負けるわけにはゆきません!
まずはイーグルから3Aを完璧に決めていいスタート、スピンも相変わらず的確、しかしどうも滑りが硬い。
強豪選手揃いのファイナルの重圧というのは半端なものではないのでしょう。
後半の4Tは助走から緊張が見られ、回転不足気味の転倒。
しかしすぐに立ち上がって跳んだ3F+3Tはばっちり!
終盤はこの転倒で緊張が解けたのかステップでは上半身を上手く脱力させた伸びやかな舞、小柄な体が本当に大きく見えました。
短期間で着実に進化している!
SPは86.47(TES44.95・PCS42.52)。
試合後のインタビューで宇野くんは「みっともないミスではなかった」と語っていましたけど、それはおそらく、びびることなく4Tに立ち向かってゆけた、という意味でしょう。抜けるのが最悪ですからね。
この気持ちの強さがあればFSで挽回できる!

このところは”世界最高点”ばかりがいわれる羽生結弦。
しかし、SPのジャンプ構成は最高点どころかノーミスも難しいということを忘れてはなりません。
SPはもともと”ミスをしない”ことが大事なんです。ある程度予想をしっかりこなし、優勝への道筋をFSに繋げればいいんです。
私はそんなふうに思っていたんですけど、羽生くんは冒頭にステップからの完璧な4Sを降りてイーグルに繋げ、これまたステップからの4T+3Tも稲妻のように決めると、柔軟性と正確性が抜群のキャメルスピンで前半を締めくくり、後半もイナバウアーからのステップ、そして得意のカウンター3A!美しく決めた!ここの一連の流れはそれだけで芸術作品のよう。
ジャンプはいずれも完璧でした。惚れ惚れしました。
シットスピンは深い姿勢ながらバランスが抜群、ステップシークエンスは細かくフットワークを刻み、まるでガラス細工が光を反射しているかのような煌めき。
最後のコンビネーションスピンも非の打ちどころのない出来栄えで、まさに完璧といいたくなるバラード第1番ト短調でした。
もう言葉もありません。
このプログラムはジャンプだけではなく、振り付けもかなり難度が高いのに、それをなんなくこなすのですから、本当にお見事。
それなのに演技後の羽生結弦はもうガッツポーズすらしません。
「これがオレの当たり前」、そんな涼しい顔をしていました。
やはりNHK杯はまぐれではなかった。
これが絶対王者、羽生結弦だ!
SPは自信が持つ世界最高点を超える110.95(TES61.81・PCS4914)。
それにしてもやっぱり羽生結弦のSPは凄い。
振り付けだけではなく、技術要素で演技ができるので、2分50秒がひとつのシークエンスになってしまう。
ただ滑っているところがほとんどないので濃縮感が桁違い。
これもジャンプに絶対的な自信を持っているせいです。
普通の選手にとってはジャンプは演技のストレスでしかないのに、羽生結弦は喜々としてそれを演技に変えてしまう。
ジャンプそのものが凄いのに、さらに前後に質の高い彩を付けるのですから、まったく隙が無い。
PCSが上限に迫る勢いでなんだかもうよくわかりませんけど、いまの羽生結弦の演技はもうどうやって点をつけていいのかわからないレベルに達していると思います。技術点とPCSのバランスという新採点の理念はもう粉々に砕かれちゃっていますね。
羽生結弦、恐ろしい男!

会場の日本ファンが大騒ぎするなか、羽生結弦がそれを抑えるしぐさで迎え入れたのは兄弟子のハビエル・フェルナンデス(スペイン)。いうまでもなくこのバルセロナでのファイナルの主役は彼。
しかし、去年の大会も同じ舞台だったものの、フェルナンデスは応援の重圧に負けてSPからミスを繰り返してしまいました。
もうそれは許されない!
羽生結弦がじっと見守るなか、イケメンな振り付けで会場を一瞬にして『マラゲーニャ』の世界へ誘ったフェルナンデス、しかしどうも滑りが堅い。
案の定といいますか、冒頭の4Sは大きく軸を乱してステップアウト、続くジャンプも3Lz+2Tになって早くも終戦状態。
しかし、スペインのファンはフェルナンデスのアップライトスピンに大声援を送って後押し。
他選手のときもいい雰囲気でしたし、スペインのひとはフィギュアを楽しんでいますねえ。
それに応える形で、後半はターンからの3Aをびしっと決めたフェルナンデス、2本のスピンもいい回転、しかし終盤のステップはやや攻め切れない印象。
やっぱり全体的に硬かった、緊張しすぎ。
フェルナンデスらしい自由闊達さが出せればよかったのに…。
そんなわけで、金博洋や宇野くんより下かなあ、なんて思っていたら、スコアはSPは91.52(TES44.56・PCS46.96)。
いくら地元の大会だからってめちゃくちゃです。プロトコルを見ると加点の付け方が甘々、PCSだってフェルナンデスの自己ベストじゃないでしょうか。今季はもっといい演技をしていると思いますけど…。
新たなフィギュア市場を開拓するにしたって、ISUもやり方というものがあると思いますぜ。

まあ、しかし、何をどうしたって羽生結弦の優勝は揺るがないでしょう。
いまの彼の強さはまさに”絶対”です。
FSも楽しみに待ちましょう!
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