2015GPF女子シングル(前) 一歩一歩

この2015GPF女子シングルは史上初めて出場6選手全てがシリーズの優勝者という珍しい大会。
つまり連勝した選手がゼロということで、それだけで実力が伯仲しているということになります。
そうなればSPでの出遅れは致命傷。
そういう緊張感のある戦いのなか浅田真央と宮原知子がどれだけの演技を出来るか、大いに注目です!
というわけで、大会を視聴した感想をざっくばらんに。

2週間前のNHK杯で調子を落としていたアシュリー・ワグナー(アメリカ)は、それを引きずったのか、SPでは冒頭の3Fステップアウト、後半3Loにリカバリーの+3Tを強引につけるも転倒してしまって万事休す。
どうもジャンプの際の体の開きが早いように見えました。振り付けも強化してゴージャス感の増した『Hip Hip Chin Chin』だっただけに残念。
SPは60.04(TES28.00・PCS33.04・減点1)で6位。
そんなSPの出来からして、かなりのトラブルが予想されたFSでしたけど、2A、3F+3T、2A+2Tを確実に降りて序盤を駆け抜けると、その勢いのまま後半の3Lo+1Lo+3S、3F、ターンからの3Lo、3Lzと全て揃えたのは驚きでした。1日でしっかりジャンプを修正したのはさすがベテラン。
演技の方も全体に茶目っ気のある振り付けを散りばめ、スピンやステップでも『ムーランルージュ』の世界を存分に表現していて、圧巻の内容だったと思います。
アシュリー本人もこの巻き返しに感極まって涙。気持ちが伝わってくるFSでした。
FSは139.77(68.22・71.55)、合計199.81。
FS最初の滑走でいきなりの高得点、これは後の選手に十分なプレッシャーを与えますね。
しかしいくらいい演技だったとはいえこのPCSちょっと高すぎますぜ。なにが背後でうごめいているんでしょうかねえ…。

フランス大会からの好調を維持し、優勝候補としてファイナルに臨んだグレイシー・ゴールド(アメリカ)は、スタイリッシュな振り付けでSP『エル・チョクロ』の雰囲気を一瞬で造ったものの、3Lz+3Tでふらり、後半も苦手な3Fが2Fに抜ける痛恨のミス。
ただ、いつもながらの正確なスピン、ステップではセクシーな動きも入れつつ、深いエッジで激しく攻めていて大いに魅力的でした。日本でいうところの”小股が切れ上がった”演技でしたね。
今季は上体の動きもずいぶんよくなってきましたね。
SPは66.52(32.14・34.38)の5位だったんですけど、会場からは「高すぎるんじゃない」といったブーイングが。
私もそう思います。ゴールドは”セイフティネット”が分厚いですね。
全米選手権のこともあるので、ワグナーには負けたくないFSでしたけど、冒頭の3Lz+3Tでお手つき、3Loと2Aは着氷するも、後半の2A+3Tでまたしてもお手つきステップアウト、次も1Fにたったと思ったら、3Lzでまたしてもお手つき。最後の3S+2T+2Tは決めるも、悲しみの『火の鳥』になってしまいました。
演技全体でいっても攻めの気持ちが陰っちゃっていましたし、ステップでは手が棒のようになる癖が目出しましたし、見せ場は正確なスピンくらいでした。
FSは128.27(60.91・67.35)、合計194.79。
今季は世界選手権がボストンなので、”全米女王”として出場したいところですけど、かなりの不安を残しちゃいましたね…。

全日本女王、そしてNHK杯の勝者として堂々とファイナルに乗り込んできた宮原知子。
その引き締まった背中を見て、昨季の世界選手権がそうだったように、手堅く演技をまとめて表彰台に乗る姿が容易に浮かんできたのは私だけではなかったはず。
まずは3Lz+3Tを切れ味鋭く降りると、面白い振り付けからのレイバックスピン、正確なキャメル、ステップでも『ファイヤー・ダンス』を情熱的に踊って、3Fはしっかり着氷。
音楽の盛り上がりに乗っていっての2Aもよし、最後の逆回転も決まった!
ケレン味のない一本気な内容、素晴らしい流れ、後半の畳みかけ方もよかったですねえ。
演技の面でも顔と体に表情が出てきた素晴らしかった。
SPは68.76(35.51・33.25)で4位。
これにはゴールドのときとは違って「低すぎる」というブーイング。
宮原さんはセカンドトリプルの回転と3Fのエッジという、わかりにくい弱点を抱えているので、見た目よりも点数が低くなることがありますからね。今回は3Fがエラーでした。!(どちらともいえない)くらいの判定でもいいような気がするんですけどね…。まあ、しかし完全に正確とはいえないのも事実なので修正してゆくしかありません。宮原さんならできる!
SPの点数は伸び切らなかったとはいえ、十分に表彰台が狙える位置でのスタートとなったFSでは緊張感のなか3Lz+2T+2Loをしっかり降りていい入り方をすると、3Loも決め、要素を着実に積み上げてゆくようなステップシークエンス。ここは凄く内容が濃い。
その後の3Fもまるでエッジが気にならないかのように跳び、得意の逆回転スピンで前半を締めくくると、後半冒頭の3Lz、2A+3Tと成功させて、これはもうゾーンに入った。
正確なスピン、3S、2A+3Tを機械のように揃えると、終盤のコレオスパイラルでもスピードは落ちず、最後のレイバックスピンの形の良さは『ため息』が出るよう。
まさにノーミス、一点の曇りもありませんでした(私から見て)。この高難度構成を最後まで一糸乱れず揃えてゆく技術力と体力、そして精神力には脱帽です。
演技の正確性と冷静な組み立てでいえばいま宮原さんは現役トップだと思います。まるで機械の国のお姫様ですよ。氷上のメーテルです。私たちはそれに頼ってばかりの鉄郎といったところですね。
FSは140.09(72.89・67.20)、合計208.85!両方ともにパーソナルベスト!
これで優勝も見えてきた!

NHK杯で自分の演技が出来ず、自信を失ったような表情を見せていた我らが浅田真央。
わずか2週間で立て直すのは難しいでしょうけど、この大会では今後に繋がる何かを掴みたいところ。
そんなSPでしたけど、冒頭からものの見事な3Aを決め、がに股の面白い振り付けからの3F+3Loもセカンドの回転は微妙ながら流れはよく、上々のスタート。
これには会場も大盛り上がり、日本からのファンも多いとはいえ、スペインでも人気が高いのがわかります。
美しいキャメルスピンの後は、ねっとりとした踊りで紫煙の籠る音楽ホールの世界を現出させ、そこから後半の3Lz!のはずでしたけど、力なく1Lzに。6分間練習から苦しんでいましたけど、やはり、といったミスでした。
それでもこれにがっくりせず、流れを繋げたまま回ったレイバックスピンではビールマンの姿勢にも余裕があっていい感じ。腰の状態も上がってきたのかも。
そして見せ場のステップではヴォーカルに合わせてねぶるように入ると、そこから徐々に加速していって、最後は凄まじい盛り上がり!全身で歌い上げるようなステップに鳥肌が立ちました!
最後のスピンもしなやかに力強く回って、華やかな楽団が背後にいるような豪華な『素敵なあなた』、眩いスターの輝きでした!
まあ本当に演技のレベルが違いすぎます。ジャンプミスはあったとはいえ、さすが浅田真央といった貫録を見せましたね。
SPは69.13(340.1・35.12)で3位。
ノーミスならば80点以上が期待できるなかで、ここまで点数が下がるのは、ルッツでまったく点を取れていないのと、3Fと3Loの両方に回転不足(UR)判定がされいたため。3Loは仕方ないにしろ、3Fはかなり疑問。
SP後の浅田さんは「気持ちは前を向いている」と強い表情を見せていたものの、FSでは冒頭の3Aでステップアウト、次が2Fになるという想像もできないミス。私はもう気を失いそうになりました。
それでも浅田真央は少しもめげずに「気持ちを前に向けて」挑んだ3Lz!着氷がやや詰まったものの(両足か)しっかり降りてSPを乗り越えた!これは大きい!
調子のようさそうなスピン、美しいスパイラルでつつがなく滑って行くコレオシークエンスで『蝶々夫人』の儚い雰囲気を醸し出して流れを掴んできた浅田さん、後半で巻き返しだ!
という冒頭のコンボが2A+2Tになるもったいないミス、しかし3Sを繋ぎのように決めと、今季なかなか入らなかった3F+2Lo+2Loもバランスを取りながらなんとか着氷。これも大きな一歩だ!
得意の3Loは美しく決め、レイバックスピンもしなやか、ステップシークエンスは優美な動きと滑りのなかで、『蝶々夫人』の悲劇を迫力を持って伝える二重構造。ここは類まれな美しさと力強さを持つ浅田真央ならではの表現。
最後はY字姿勢が見事なコンビネーションスピンで走馬燈のように物語を描き終え、昨季はこられなかったバルセロナにしっかりとした足跡を残しました。
ジャンプミスが多くて本当に悔しかったですけど、演技自体は気持ちを切らさず、高いレベルで滑り切ったと思います。
この『蝶々夫人』は浅田さんにしてはあっさりとしたプログラムながら、洗練された振り付けとスケート、演技の流れを作るセンス、やはり格が違いましたね。
今大会はなかなか自信を持ってジャンプを跳べていませんでしたけど、SPの3Aはキャリアのなかでも最高の一発のひとつでしたし、3Lzと3F+3Loと3F+2Lo+2Loはそれなりの形で降りることができたので、それを自信に繋げたいですね。
復帰年なのですから一歩一歩です。いまの女子フィギュアはすぐ勝てるほど甘い世界じゃありませんし、浅田さんの目指している”究極の演技”もそんな簡単なものじゃないってことです。挫折と苦労が大きいほど喜びも深い!

そんな浅田さんのFSは125.19(56.75・68.44)、合計194.32。まずまずのスコアながらこの時点でまさかの最下位。
今大会はレベルが高いとはいえ驚きです。私はゴールドよりは上になると思いましたし、そう思ったひとも多いんじゃないでしょうか。
このギャップの原因はPCSにあります。
今季のゴールドのPCSはジャパンオープンのFSが64.96、GPSアメリカ大会SPが33.25・FSが68.93、フランス大会のSPが34.02(FSは中止)。
昨季のゴールドはSPのベストPCSがNHK杯の31.63(世選は30.91)、FSもNHK杯の64.33(世選64.33)なので今季急激に上昇していることはよくわかります。
PCSというのはわけのわからない数字ですけど、”慣習”でいえば、”大きな大会でいい演技をして勝利すること”、が上昇させる
方法としては一般的です。また”格上の選手に勝ってその選手のPCSを食うこと”ができればより効果は抜群です。
しかし、今季のゴールドはアメリカ大会で2位でしたし、フランス大会はSP首位だったもののテロの影響でFSが中止でしたから、結果は残せていないんです。
それなのにPCSが昇してゆくというのはかなり異常です。今大会だって惨敗に近い内容ですしね。
これはやはり今季の世界選手権がボストンで開催されることが大きいのでしょう。
アメリカが無理やり「ゴールドは女王になる資格がある選手」ということにしようとしているとしか思えません。
これはワグナーのFSでもそう。なんの前触れもなく急に上げてくるんですからアメリカは本当に恐ろしい国です。
もうめちゃくちゃですけどね。
(※ちなみに浅田さんはジャパンオープンのFSが69.82、中国大会のSPが34.65・FSが69.60、NHK杯ではSPは32.70・FSは66.06という集計ミスのような数字。地元なのに。)

PCSはわけがわからぬなりに”慣習”としてある程度は機能していたと思うんですけど、今季はどうもそれが崩壊しているような気がしてなりません。
このファイナルではアメリカ女子だけではなく、ロシア女子も自分勝手なことをし始めました。
その顛末は後編で。
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