2015GPF女子シングル(後) 天才少女たちの行末

(続きです。)
昨季の世界女王トゥクタミシェワがシリーズでポイントを伸ばせず、ファイナルに進めなかったこともあり、今回は”ロシアのエース”として臨むこととなったのはエレーナ・ラジオノワ。
昨季のロシア選手権覇者であり、世界選手権銅メダリスト、そして今季もGPSロシア大会を制しているので、誰も文句はないでしょう。
昨季のラジオノワはファイナル銀、欧州選手権銅、世界選手権銀だったので、今季は頂点を目指して燃えているはず。
まずはSPで好スタートを切りたいところ、だったんですけど、冒頭の3Lzが屈みこむような着氷になってセカンドを付けられないミス、しかしエネルギッシュで独創的なスピンで落ち着きを取り戻すと、後半の3Loにはこらえながらも気迫の+3T!
2Aはしっかり跳んで、ステップでは全身で愛を叫ぶ『ジュテーム』。上半身を大きく使ってなかなか迫力がありました(スケートが進まず、足もあまり動きませんけど)。
そしてその勢いのまま、天まで伸びるようなビールマンでフィニッシュ。
SPは69.43(TES36.10・PCS33.33)で2位。今大会はPCSがインフレ気味なのでミスの割に高く出ました。
これなら十分に優勝が狙えそう。

ラジオノワといえば、2012-14と2年連続でジュニアを制したことでもしられていますけど、その次のジュニア女王が今季シニアデビューした同国のエフゲニア・メドベデワ。いきなりGPSアメリカ大会で優勝していま大注目の若手です。
このメドベデワのSP『白夜の調べ』はスピンとステップから入る面白いプログラムで、ジャンプは全て後半加点狙い。
柔軟性と手足の長さを生かしたスピンとステップで透き通った雰囲気を作ると、後半は手を上げて跳ぶタノ3F+3Tとタノ2A、そして3Loと思い切りのいいジャンプ。軸を作るのが難しいと思うんですけど、大したものです。
このジャンプの連続成功で会場が盛り上がるのに合わせて、終盤のキャメルとレイバックスピンも美しくまとめたラジオノワ、初のファイナルとは思えぬ度胸に私は思わず拍手を送っていました。やりますね。
そしてスコアは74.58(40.20・34.38)で1位。
順位は妥当でしょうけど、この高得点にはびっくり。
特にPCSです。
芸術感覚に優れた選手であることはわかるものの、体幹が緩いせいで姿勢もあまりよくありませんし、まだまだスケートやフットワークが拙いのと体に筋力がないせいか、プログラムにメリハリや強弱を付けられません。全体に平坦な印象です。ジャンプで踏み切る際の力みが大きいのも気になりますしね。
しかし、今季の彼女は初戦からPSCが高めで、SPでいうとアメリカ大会が31.26、ロシア大会が31.53という破格の扱いでした。
ちなみに、同じように世界ジュニアを制してシニアに上がってきたリプニツカヤやラジオノワは1年目は30点に届いていません。
しかも、ここが重要なのですが、このSPでメドベデワは先輩であり格上のはずのラジオノワのPCSを軽々と超えちゃっているんです。
この2人はわずか3週間前のロシア大会で直接対決していて、そのときはラジオノワが33.35、メドベデワが31.53だったのですから、何がどうしたらこうやって大逆転してしまうのか、私には理解ができません。
PCSは簡単にいえば、”格付け点”ですから、いきなり序列が変わるということはまずないわけです。2人は同国ですからなおさらです。こういうケースは過去になかったと思います。ですから私もびっくり仰天したわけです。
「今大会のエースはメドベデワだ」とロシア連盟が内々にジャッジに伝えているのは確実です。
なぜそんなことをするのかはまったくわかりませんけどね。

FSを迎えるにあたって、このPCSの逆転がラジオノワのメンタルに相当な影響を与えたであろうことは想像に難くありません。
SPでは約5点の差がついたわけですが、PCSがロシア大会と同様の基準ならば、その差は2点ほどになっているはずなんです。
しかも、FSのPCSがSPのそれに引っ張られるのがフィギュアの慣習ですから、FSでもラジオノワは実績(PCS)という名の貯金がない。いやむしろ借金をしているような状況なんです。
そうして始まったFS、私は判官びいきでラジオノワを応援していましたし、こういう逆境での彼女の真の強さが見たかった。
その期待通りといいますか、冒頭はSPと同じく体が折れる着氷の3Lzながら、3F(エッジ微妙)をしっかり跳び、大事な3Lz+3Tも成功!
軸の細いコンビネーションスピンの後は上半身は大げさに動くのに足元はシンプルなステップシークエンス、『タイタニック』の音楽が盛り上がってくるなかでの後半冒頭の3Lo+1Lo+3Sも決めた!
苦手な2Aも慎重にまとめて、これは「いけるかも!」という雰囲気だったんですが、3Loで回転不足気味の転倒…。
終わった…、沈没や…。
そこからのコレオはラジオノワらしい勢いが陰るも、2A+2Tをなんとか降り、結びのコンビネーションスピンとレイバックスピンを気持ちを振り絞るようにして回ってのフィニッシュ。終盤は珍しく疲れも出て、失速してしまいましたね。
今季のラジオノワは体型変化でジャンプのバランスに苦しむなかで、気合でなんとか着氷しているのでスタミナも多く奪われているのかもしれません。
演技後のラジオノワの目からは悔し涙が溢れて止まりませんでした。3週間前は喜びの涙だったのに…。
FSは131.70(64.14・68.56・減点1)、合計201.13。
この時点で宮原さんに及ばず、優勝はなくなりました。
しかし、ラジオノワにはこの結果はすでに見えていたのかもしれません。
それでも負戦に堂々と立ち向かっていった彼女を私は立派だと思います。

対するメドベデワはSPのリードとPCSの高評価のせいか、余裕を感じさせるFS。
3F+3T、3Lz(エッジが微妙)を軽々跳んで流れ作ると、細くて長い脚が印象的なコンビネーションスピン、ステップでは体を柔らかく使って丁寧に滑り、後半もタノ3F、3Lo、2A+2T+2Tと立て続けに決めると、盛り上がりどころの3S+3Tもお見事!
タノ2Aの後は、”勝利の舞”そのものの優雅なコレオシークエンス、最後2つのスピンも美しく華やかに回り納めて、圧巻の内容、ノーミスというよりパーフェクトに近い滑りでした。ブラヴォ!
FSは147.96(75.59・72.37)、合計222.54。
点数はもうめちゃくちゃですね。昨季の彼女はジュニアではなく世界を制したのかも。いやロシアからすればトゥクタミシェワがいなくても、「女王点だけはよこせ」ということかもしれませんね。
ただ、順位は正当だと思うので、それを称えましょう。
この大会のメドベデワは素晴らしかった!
邪念を払ってプログラムに没頭している滑りが、若い選手ならではの輝きになっていたと思います。
一時の花の美しさを堪能しました。

このメドベデワは誰にも負けない特徴のある選手というより、近年ロシアが輩出している天才少女の完成形といった選手です。
ジャンプの基礎点が高く、スピンの質が高く独創性があり、プログラムに繋ぎを散りばめながらもスタミナが落ちない。
そういう”採点ポイントを抑えた演技”ができる選手というわけです。
ただ、ロシアの少女たちは、繋ぎが多い割にそれが雑なのと、スケーティングやフットワークには注力せず、音楽表現も気にかけない、という特徴もあります。これらはあまり点数に影響しないと割り切っているのでしょう。
メドベデワもそういう部分の見える選手です。
ただ、この選手はまだ16歳(99年11月生まれ)。
演技を磨いていけば、おそろしく魅力的な選手になるのは間違いありません。
私は彼女がじっくりと成長するのを楽しみたい。
しかし、ロシアという国がそれを許してくるのかどうか…。
”天才少女は使い捨て”。
ラジオノワの扱いを見ていれば誰しもがそう思うはずです(リプニツカヤも)。
表彰式でのラジオノワの陰のある表情に、私はやるせなさを感じました。
ラジオノワだってまだ16歳(98年1月生まれ)なのにこんな扱いをするなんて…。
国内の勢力争いか何かなんでしょうかねえ…。

負けるな、天才少女たち!
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