2015全日本フィギュア男子SP 予定調和

年の瀬の風物詩としてすっかり定着した感のある全日本フィギュアスケート選手権ですが、今年は大きく違うことがひとつあります。
それは男子シングルの世界選手権の切符が”2枚”しかないということ。
2006年東京大会で高橋大輔が2位、織田信成が7位となったことでもぎ取った栄光の3枠も、昨季の日本男子がまさかの失態を犯し2枠に減ってしまっているわけです。
それなのにいまの日本男子は世界ランキング上位者がひしめいているのですから、2枚の切符をめぐる争いはハイレベルかつ過酷なものになることは確実です。
では、まずはそういう選手の必死な思いがつまったSPを振り返ることにいたします。

その前に全日本といえば、世界で戦う選手のための大会ではなく、国内で真摯に競技に向き合う選手たちにとっては、まさに最高峰の晴れ舞台。
中高生は将来に向けた足がかりを求め、大学生はこれまで応援してくれたひとたちに競技人生の集大成を見せる大事な大会です。
そういう選手たちの気持ちの籠った演技こそが全日本の雰囲気を作るといっても過言ではないでしょう。
SPから本当に食らいつくような演技が多くて、私もテレビに釘付けになってしまいました。
北海道大学や岩手大学という決して競技に有利ではない環境で研鑽を積んでいる選手が華やかな演技を見せたり、社会人として活動している選手がアマチュアリズムのなんたるかと考えさせてくれたり、中学2年の島田高志郎くんが将来性豊かな演舞を披露してくれたりと、充実した内容でした。
やっぱり楽しいですねえ、全日本は。

そうこうしているうちに始まったのは、有力選手が登場する第4グループ(全5G)。
ここには絶対王者羽生結弦と、その座を虎視眈々と狙う宇野昌麿がいるので、早くも熱気は最高潮。
そうして日野龍樹くんがノーミスガッツポーズの滑り、川原星くんのハンサムスケート、服部瑛貴くんの五郎丸ポーズで盛り上がった北海道真駒内のリンクに降り立ったのは羽生結弦。
彼がいる限り2枠の争いは実質1枠、我々が注目するのは羽生結弦が自分自身の戦う姿のみ。
バラードの繊細な音楽に細身の体を躍らせた羽生結弦、まずはイーグルから展開する4S!
でしたけど軸が曲がっての転倒、しかしすくっと立ち上がってイーグルの姿勢を取ったのは気持ちが切れていない証拠。
それがあるから次の4T+3Tはきっちり決めた!
ここ2戦ともSPはノーミスの滑りを見せていたとはいえ、常にノーミスというのはありえないので、ミスをどう扱ってゆくかに私は密かに注目していたんです。ですけど、羽生結弦はいとも簡単に自分をコントロールした。これは高難度ジャンプ構成を習得したのと同じくらいの進化だと思います。
スピンも高い技術で揃え、後半も鮮やかな3A、終盤のステップも細かく激しくよく攻めて、内容は十分な演技でした。
連戦の疲労からか調子はいまいちに見えましたけど、王者の誇りと気持ちで演技を輝かせていましたね。立派でした!
スコアは102.63(TES55.86・PCS47.77)。
自身の持つ世界最高点から4Sの失敗分を引かれただけというわかりやすいスコア。日本のジャッジは楽してますね。
シーズン基準ではこれで正しいのかもしれませんが、転倒があっての100点超えというのは私には違和感が残りました。
まあ、こんなスコアはどうでもよくて、羽生結弦は凄い!とだけ記憶に留めておきますけど。

シーズン前は「羽生結弦にどこまで迫れるか」と注目されていた宇野昌麿ですが、シーズン中に羽生結弦か加速度的に進化したので、ここは迫るのではなく、自分がしっかり自分の演技をして1枠を確保するのが大切。
そういう集中したいい目で演技に入った宇野昌麿、まずはイーグルからの3A!いい流れのジャンプ、余裕が出てきた!
コンパクトにまとまったスピン、『Legends』の世界に魂を練り込むような振り付け、そして勝負の後半4T!こらえながらも決めた!
鉄板といえる3F+3Tのあとは、体を変幻自在に使って難しいリズムを掴んで離さない高度なステップシークエンス。
これが宇野昌麿だ!
繋ぎの部分での工夫や気遣いが少々物足りなかったものの、今季のシーズンベストに近い内容だったと思います。
それをこの大舞台で見せるのですからやっぱり気持ちが強い。
楽しみなスコアは97.94(53.54・44.40)。
確かに素晴らしい内容でしたけど、このスコアは…。
いくらなんでも今季のベストであるGPSフランス大会の89.56(48.71・40.85)と差が開きすぎです。
国内選手権は”別基準”といったってこれじゃあ酷すぎます。他の選手はほぼシーズン基準ですしね。
こういう点の出し方は過去の全日本でも何度か見ましたけど、”代表にしたい選手”をスケート連盟が指名するようなやり方はいい加減に止めてほしい。大会がつまらなくなりますし、選手にも失礼です。
宇野昌麿は自分のチカラで世界に羽ばたける男です。おかしなバックアップなんて必要ありません。ジャッジや連盟が汚していい選手じゃない!

最終グループでは田中刑事くんが2Sになるミスを犯しながらも他を決めて74.19でライバル日野くんを上回り、地元北海道大学の鈴木潤は旧帝大生としてはおそらく初めての3A成功という快挙。
そして登場した”全日本男”小塚崇彦は、冒頭の4Tを両足ながらもなんとか着氷すると、3Aは久々にクリーンに決めた!やっぱりこの舞台は彼を強くする!
しかし後半3Lzが崩れる形で+2Tもお手つき、ステップシークエンスもシーズン中よりも強く氷を踏めるようになってはいたものの、好調時までは攻めきれず、やや尻すぼみな印象を残してしまいました。
SPは78.19(37.08・41.11)。
ジャンプは上向いているように見えるので、FSでは昨季のような魂の追い上げに期待!

今季はGPFにも進出し、世界のトップスケーターの仲間入りを果たした村上大介。
だからこそ今季こそ初の世界選手権に出たいはず。誰よりも誰よりも。
そんな気持ちはマイナスにもプラスにもなるものですが、SPの村上くんはそれを上手く制御して落ち着いた入り方をすると冒頭の4S、続く3Aと安定感のある着氷!
ガッチガチになっていた2年前の全日本はもう過去のものですね!
しっとりとした滑りで『彼を帰して』の 雰囲気を作って、後半はこだわりのセカンドループ予定でしたけど、3Lzでやや詰まって+2Tでおっとっと。やっぱり難しい。
それでもステップではエッジと姿勢をより深く使って曲の奥行を描き出し、成長を見せつけてのフィニッシュ。
本当に世界でも有数の選手だと思います。
スコアは83.49(42.38・41.11)。
これはまさにシーズン基準といっていい点の出方(似たような内容のGPFでは83.47)。
しかし他選手がそうではないので、引き離されるというおかしさ。
こんな扱いに負けるな村上大介、FSでは自分自身がシーズン通りの演技をすれば、観客はついてくる!

全日本ではSPから出遅れることの多い無良崇人ですが、今年は4T+3Tをどっしりと降り、3Aも豪快に決めての好スタートを切ると、後半の3Lzも伸びやかに跳んで、ステップでも『黒い瞳』の攻めたてるような曲調を確かなボディコントロールとフットワークによって上手く裁いてガッツポーズフィニッシュ!
チャーリー・ホワイト振り付けの難しいプログラムをようやく自分のものにしましたね!
また、例年と違って落ち着いて要素を積み上げていったのも好印象で、演技全体に隙がありませんでした。
今後もこれを繰り返していれば、目標の五輪も見えてくる!
SPは93.26(50.16・43.10)。
確かにいい内容でしたけど、無良くんのPBでもある先のNHK杯SPは88.29(47.33・40.96)だったんですから、いくらなんでも違いすぎますぜ。
全選手をシーズンに合わせるか、全選手を全日本独自基準にあてはめるか、どちらかにしてくれないと観ていて混乱してしまいます。

次世代を宇野くんと共に引っ張っていって欲しい最終滑走の山本草太くんは、3A転倒、4T予定が2TなるミスでSPは62.92(29.56・34.36)。
ただ、身長が伸びて演技がよりダイナミックになっているのは見栄えがしましたし、スピンは相変わらず軸が細い。
いいところを残しつつ、少しずつ大人のスケーターになっていっている山本くんが楽しみです。
ただし、テレビで連呼している”羽生2世”だとは思いませんけどね。
タイプが違いすぎます!

というわけでFSでは”予定調和”が待っていそうですけど、ひとりひとりの気持ちの籠った演技を期待することにします!
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