2016四大陸フィギュア男子FS(前) 勝利への執念

SPでは金博洋が98.45で首位、2位の宇野昌磨が92.99、3位の閻涵が89.57、4位の無良崇人が89.08、5位のパトリック・チャンが86.22と、やや差が開く展開になっていますが、パーソナルベストとシーズンベストを考えれば、宇野くんだけではなく、チャンも十分優勝が狙える位置取り。
FSでは金がフィギュア史上初となる4回転4本成功て逃げ切るか、それとも宇野くんがノーミスで逆転するか、チャンが演技をまとめてくるか、ひとつのミスが順位を争うような接戦になるのは間違いありません。

と、その優勝争いの最終グループの前に会場を沸かせたのは3年前の四大陸王者で、ここ2年ほどは怪我に苦しんでいるケヴィン・レイノルズ(カナダ)。かつて”複数の4回転”といえば彼の専売特許のようなものがありましたけど、いつの間にか時代は進んでそれが当たり前に。
このFS『グランドピアノ狙われた黒い鍵盤』では、時代の先を行っていた者の意地をかけて、冒頭から4Sと4Tを着氷。両方回転が微妙そうでしたけど、降りたことが嬉しい!
続いては2Aに抜けるも、キャメルスピンを勢いよく回ると、ステップではピアノの鍵盤を弾くような小気味いい体の使い方、そして後半冒頭は果敢な3F+3T+3Lo!これは最後がダウングレードになっちゃいましたけどナイストライ。
この大技で無理をしたせいか続く2Aは転倒、3Lzもやっとな感じ、しかし体もへばってきたなかでの3S+3Loは強引に降りた!
アップライトスピンは細身の彼ならではシャープさ、3Sはステップアウト、コレオは疲労困憊。
そうして七転び八起きの演技をコンビネーションスピンで終えたレイノルズでしたけど、その表情は爽やか。
ようやく戻ってきてくれましたね、おかえりなさい!
FSは143.73(TES68.85・PCS75.88・減点1)、合計198.87で11位。
ジャンプの回転不足があってスコアは伸びませんでしたけど、来季に繋がる演技だったのは間違いありません。
体を労わって、また驚くようなジャンプを見せて欲しいものです!
休養中に練習したのか、日本語がめちゃくちゃ上手くなっていましたね!

田中刑事は4S転倒で始まるも、3Aと3F+3Tを着氷してペースを掴んだかに見えたものの、後半冒頭が1Aになってしまって、いい流れも雲散霧消。それでもそこからのジャンプは全て揃えて意地だけは見せてくれました。
表現面でも落ち着いて『椿姫』を演じていたと思います。
FSは147.88(71.80・77.08・減点1)、222.70で6位。
今季はNHK杯(234.90)と全日本(242.05)でまずまずの演技を披露して上げ潮に乗っていただけに、四大陸でそれを本物にして欲しいところでした。
厳しいいい方ですけど、来季はまたやり直しです。
ハイレベルな日本男子陣に割って入るのは骨が折れるでしょうけど、刑事くんはスタイルもいいし、スケートにもジャンプにも癖がないし(今季はルッツもいい感じですね)、本当に才能があると思うんです。
自分を信じて、いや「オレはやれる!」と自己暗示をかけて、来季こそ殻を破った姿が見たい!

そして勝負の最終グループ、アメリカのグラント・ホクスタインがジャンプミスを連発して(FS140.55、合計213.34)、会場がちょっと嫌な空気になるなか登場したのは我らが宇野昌磨。
”次世代エース”に期待を寄せる日本のファンに応えるためにも四大陸での初めてメダル、それも一番いい色が欲しい!
台湾(台北)の会場にもそんな情熱でバナーを降る日本のお客さんが多いなか、まずは大事な4T!でしたけど、大きくステップアウト。SPから4Tの調子はいまいちのよう、でも、転ばなかっただけよしとしましょう。
宇野くんもこのミスを引きずることなく次の3A+3Tをびしっと決めると、『トゥーランドット』に乗った大らかな滑りで世界を膨らませ、3Aも確実に成功!まずまずの立ち上がり。
ステップでは股関節を上手く使って方向転換が滑らかで動きも躍動的、安定のキャメルスピンで前半を終わらせ、勝負の後半の序章となる3Loと3Sをしっかり揃えた宇野くんは力強い振り付けで曲調を重厚なものに変えてから、気合の表情で4Tへ。
ここは絶対にコンビネーションにしなければならない!
しかし、力んだのか途中で回転がほどけて立ち膝になるような着氷…。これは本当に手痛いミス…。
次の3Lzはリカバリーでセカンドを付ける選択もあったかと思いますけど単独で確実にクリア、そうして鬱憤を晴らすかのような鮮やかな2A+1Lo+3Fを決めると、コレオではハイドロで会場を沸かせ、悔しさを力に変えての大きなフライングからのコンビネーションスピンでフィニッシュ。
FSは176.82(87.60・8922)、合計269.81。これでは優勝は厳しい…。
演技全体でいえば、大きな流れは作れていましたし、体も伸びやかに仕えていたと思います。ただ、ジャンプが硬かった。金博洋やチャンに勝つためにはミスが許されませんでしたから、その重圧に負けたということでしょうか。
そんななか、私が気になったのは3Lzにリカバリーのセカンドジャンプを付けなかった選択です。
宇野くんは演技後に、「冷静にできた」と振り返っていましたけど、全日本のFSで、冒頭の4Tが2Tに抜けたのを最後のジャンプでリカバリーしようとして、あえなく2Tになってしまったことが念頭にあったのかもしれません。確かにあれは無謀でした。
しかし、今回は3Lzに+2Tを付けるというさほど難しくないリカバリーなのですから、これはトライするべきでした。
金とチャンがあとに控えるなかで、1点でも上乗せするという執念が見えなかったのが私には残念でなりません。

優勝争いという面ではちょっと持ち点が足りない閻涵(中国)ですが、冒頭の3A+3Tは軽くステップアウトしたものの、続く4T+2Tと4Tは確実に着氷し、滑らかなスケートを生かしたコレオを終えての後半冒頭3Aもよし!
そこからも大きな3Lo、3L+2T+2Lはぐしゃぐしゃになりながらもなんとか降り、3S、3Fと根性で揃え、終盤はかなり疲れが見えるも、スピン2本とステップは気持ちで体を引っ張るように滑って、その情熱は『ロミオとジュリエット』に通じていると思いました。
いつもはあっさりしたところのある閻涵ですけど、このFSは粘りに粘った熱演で素晴らしかった。ブラヴォ!
FSは181.98(96.26・85.72)でパーソナルベスト、合計271.55もパーソナルベスト!僅差ながら宇野くんを上回った!
中国は世界選手権の切符がたったの一枚。中国選手権で敗れた閻涵はそれを獲得することができませんでした。
しかし、この日は「自分は世界で戦うチカラがあるんだ!」、そう世界中に叫んでいるような意地と誇りを感じる演技でした。
宇野くんはこの閻涵の気持ちに負けたんです。
スポーツではときおりこういうことがあるんです。我々も肝に銘じておかねばなりません。

宇野くんが暫定2位になってしまったことで、日本勢は表彰台を逃しかねないピンチ…。
救ってくれ無良崇人!
そんな観客の願いに応えるようにドデカイ4Tでスタートした無良くんは4T+2Tも成功させ、抜群の立ち上がり。
しかし、好事魔多しといいますか、無良くんには多いパターンですけど、得意の3Aでバランスを崩したステップアウト。
次の3Sはしっかり決めるも、スピンのあとのステップでは躓く場面もあってちょっと嫌な流れ、そして勝負を分けかねない後半の3A3Tでしたけど、これを見事に決めた!よっしゃあ!
続く3Loも手堅く着氷し、シットスピンを挟んでの3F+1Lo+2Sもよし、『オー』の水の流れを瀑布に変えるように加速してからの3Lzも決めた!
その勢いでコレオも駆け抜け、最後のスピンを丁寧に回った無良くんも充実した表情、本当によくやった!
高い集中力が最後まで持続し、『オー』だけに流れが途絶えぬ好演でした!お見事!
注目のスコアはどうか、かなり接戦になりそうですけど…。
そうして出てきたFSのスコアは179.35(93.39・85.96)、合計268.43。閻涵にはわずかに届かない!
悔しい、本当に悔しいんですけど、無良くんはチカラの限りを尽くしてくれました。これなら相手が上だったと諦めがつきます。
今季の無良くんは表現面でのレベルアップを目標に掲げていたなかで、それはある程度形になったと思います。新しい無良崇人像が見えてきたシーズンでした。
来季はおそらくジャンプ面での強化がテーマになるでしょうけど、今季作った骨格にそれが加われば、夢の五輪が見えてくるはずです。
来季も一歩でも前へ!
(驚きと興奮に包まれた勝負の行方は後編で。)
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