2016四大陸フィギュア男子FS(後) 順位なんていらない

(続きです。)
SP首位の金博洋(中国)にとってこのFSは自分との闘い。予定している4回転4本の構成、国際大会で史上初の偉業を完遂することができれば、優勝は自ずと手に入る、そういう気持ちでしょう。
そしてFS冒頭は未来を切り開くような4Lz!百発百中!
続く4Sも綺麗に決めると、3A+1Lo+3Tは汚い流れになりながらも降りて、大迫力の立ち上がり。
不得手のステップでもきびきびとした動きと笑顔でどうにか映画『ヒックとドラゴン』の雰囲気を作って乗り越えると、いったん自分を落ち着けるような間合いを取って、勝負の後半は4T+2Tから!ちょっと踏ん張るようになるもセカンドをちょこんと付けてしっかり降りた!
ただ、このジャンプでちょっと足にきたのか滑りがヘタってきてちょっと嫌な感じ。ここで簡単なジャンプを跳びたいところですけど、次も4Tが待ってる。さあ、どうなるか…、という心配もなんのそのの見事な4T!すげえ!偉業達成!
しかし、ここで気を抜いてはなりません。偉業に”優勝”という花を添えるためにもここからが大切です。
そうして軸の細いコンビネーションスピンでちょっと休憩してから、3Lz+3Tをなんなく降りると、次の3Aは氷を跳ね上げての着氷!FS終盤でも難しいジャンプを決めてみせるのですから、金博洋は本当にモンスターです。
スタミナ面でいっても、へばってきたかに見えても、スピンやわずかな助走で回復してしまうのですから、ここもモンスターです。
そしてコレオはたどたどしいながらも気持ちよさそうな滑り、最後のジャンプ3Fも決めた!
最後の2つのスピンはさすがに疲れていましたけど、予定ジャンプを全て跳んだ喜びがすでに溢れていました。
台北の会場の割れるような大歓声のなか、若々しいガッツポーズで吠えた金博洋。歴史に名を刻みました!ブラヴォ!
FSは191.38(TES110.66・PCS80.72)、合計289.83!
この選手はジャンプばかりが目立って演技全体には拙さが残りますけど、スピンやステップ、表現面でも決して手を抜いていないのが好印象です。これは人間性といってもいいでしょう。
金博洋はスターの資質を備えた選手です。

会場が偉業達成の興奮に包まれるなか、最終滑走のパトリック・チャン(カナダ)の心境やいかに。
SPで出遅れたため(86.22)、FSでPB(196.75)を出しても優勝には手が届きません。
しかし、リンクインしたチャンは気負いが一切なく、落ち着いた表情。
おそらく優勝は頭になく、試合前に目標にしていた4T2本、3A2本の構成を成功させることしか考えていなかったのでしょう。この構成を自分のものにしなくては、羽生結弦やハビエル・フェルナンデスとまともに戦えませんからね。チャンにも未来に向けた戦いです。
そうしてショパンメドレーの美しい音色の上をブレードでなぞるようにして滑り出した助走に入ると、まずは4T+3Tを軽々と成功!次の苦手の3Aも珍しく綺麗に決まると、今季は抜けることが多かった4Tも伸びやかな飛翔!ものの見事な立ち上がり!
ステップシークエンスでは音の微妙な強弱を完璧なスケートと柔らかい身のこなしで美しく表現。股関節を上手く使って流れをスムースにするテクニックは休養前にはなかったもの。チャンもまだまだ進化している!
そうしてキレのあるキャメルスピンで前半を終わらせ、後半冒頭は”何年ぶりか”という3A+2Tでしたけど、これも滑らかに降りた!今日は何かが違う!
続いてはまだちょっと慣れない3Lz+2T+2Loを食らいつく感じで決めると、3Lo、3Sと流れるように揃え、美しいフライングからのシットスピン、最後の3Fもびしっと降りた!
完全にゾーンに入っているチャン、瞬きすらしていないように見える!
演技をまとめながら盛り上げるコレオでは正確無比のスケートだけではなく、体のラインの美しさも存分に見せつけ、フィニッシュのコンビネーションスピンも完璧なメカニック。
いや、本当に”完璧”という言葉しか見つからない内容でした。フィギュアスケーターとしての技術と美しさが他の選手と隔絶していました。
フィギュアスケートって本当に素晴らしいと教えてもらった気分です。本当に凄い男です、パトリック・チャンは。
この歴史的な演技を生で観られた台北のお客さんが心の底から羨ましい。
チャンは攻めた演技のときはミスが出がちで、勝負に徹したときはミスが少なくなるタイプですけど、このFSでは攻めながらもパーフェクトという、本人もこれまでにない手ごたえを感じたのではないでしょうか。今後もこういう”気持ちの入ったチャン”が観たいですねえ。
そして注目のスコアですけど、PB超えは確実ながら、金博洋に勝つためには203点以上必要なのでちょっと足りないかなあ、というのが私の予想。前のPBのときと基礎点は2点ちょっとしか変わりませんし、そのときもPCSは96.50まで出ていたので伸びしろはそんなにありません。
しかし出てきたスコアは203.99(97.14)、合計290.21!僅差で金博洋を上回った!
細かいことはわかりませんけど、優勝に相応しい演技だったことは確かです!おめでとう!
ついにかつての絶対王者が牙をむき始めましたね。
ボストンでの世界選手権が恐ろしいけど楽しみです!

と、私もこの試合の中継があった2月21日の夜は興奮しっぱなしだったんですけど、次の日、冷静になって考えてみると、ちょっとおかしいような気がしてきたんです。
金博洋はSP・FSの合計で4回転6本・3A3本跳んでミスらしいミスなし。対するチャンは4回転3本・3A3本で、SPではお手つきや着氷ミスがあって金博洋に12点以上離されたんです。
それをいくら歴史的な滑りをしたからといって、FSの基礎点が14点以上劣っている選手が逆転しちゃっていいものなんでしょうか?
勝負を分けたのはPCSですけど、もちろんこの部分ではチャンが何段階も上なのは確かだと思います。
ただ、SPでのPCS5.03差、FSの16.42差が正しいのか私にはわかりませんし、おそらく誰も説明がつかないでしょう。
もちろんジャンプの基礎点だってそれが適切なのかどうかはわかりません。
しかし、他の選手よりも多く回転するという凄さ、技術的な”出来る出来ない”の差というのは見ていてわかりやすいものです。
私は今回、チャンのFSに心を奪われましたし、フィギュア史上に残る最高の演技のひとつだったと諸手を挙げて賞賛しますけど、フィギュアスケートがスポーツであるならば、金博洋が優勝すべきだったと思います。
芸術性と完成度のチャンが怪物ジャンプの金博洋に勝つのであれば、せめてSPもノーミスであるべきでした。
それが競技ってものじゃないでしょうか。
(中国での反応に興味があります。もし、金博洋が日本の選手なら私はちょっと我慢なりませんけど…。)

フィギュアスケートの採点てほんと難しいです。
この2016四大陸フィギュア男子シングルはいい演技が多かっただけに、ちょっともやもやしたものが残りました。
順位なんてなくなればいいのに!
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