氷上を去るのか小塚崇彦

昨日3月15日の小塚崇彦の引退発表に、私は1日経ったいまでもまだ戸惑いがあります。
今季は結婚したり(おめでとう!)、大学院を卒業したりと、区切りはよかったんでしょうけど、小塚くんならば”引退”を宣言してシーズンに入り、ファンと一緒に花道を作ってゆくという引き際になると勝手に想像していたわけです。
しかし、ここ数年悩まされている怪我はかなり悪そうですし、他にもなにか理由があって本人が決断したのでしょうから、「お疲れ様でした」と送り出すしかなさそうです。

小塚崇彦といえば、その類稀なスケーティング技術をベースに、シリコンウェハーに集積回路を焼きつけるような精緻な演技が魅力でした。
それが形となったのは2010-11、初の全日本タイトルを獲り、世界選手権でも銀メダリストとなったシーズンは忘れることができません。特にGPSフランス大会と世界選手権のFSピアノ協奏曲第1番は伝説的な演技だったといっていいでしょう。
自分の思うような図面をリンクに描くことができたときの小塚くんの演技には、ゾクゾクするような迫力と美しさがありました。

また小塚崇彦というのは手堅くまとまっているだけの選手ではありません。
回転不足が異常に厳しく、4回転ジャンプがハイリスクローリターンだった時代(バンクーバー五輪頃)でも、果敢に4回転に挑んでいった世界でも数少ない選手のひとりだったことを我々は憶えています。
あまり感情を表に出すタイプではありませんが、彼の内面にある”負けん気”や”意地”というのは、何があっても揺るがない強固なものといっていいでしょう。
それがあったからこそ、怪我に負けずに現役を続け、ついにはあの2014年全日本選手権のド派手なガッツポーズに繋がったのだと思います。

小塚崇彦といえば祖父は満州王者、父は五輪代表、母もフィギュア選手だったことで、”サラブレッド”と呼ばれることもありますけど、彼は演技もメンタルも本当にフィギュアスケーターらしい選手でした。日本フィギュアの伝統の結晶といってもいいでしょう。
また、その”らしさ”というのは、理論の面でも卓越したものがあり、競技後の自己分析だけではなく、BS放送のフィギュア番組でとてもわかりやすい解説をしていたのも記憶に新しいところです。
小塚くんはフィギュアのテキストのような選手でした。
ですから、誰しもが小塚くんは引退後もフィギュアに関わり続ける、そう思ったはずですし、そう願っていたはずです。

しかし、公式サイトの引退コメントによると、「今後につきましては、氷上を去ることになりますが、これまでの経験を活かし、トヨタ自動車の従業員として新たな人生を歩むことに致しました。」とのことで、信じたくはありませんが、”フィギュアスケーター小塚崇彦”は思い出の彼方に旅立ってしまうようです。
私はこの一文でがっくりきてしまって、体中から元気が抜けてしまっています。

小塚くんがフィギュア界から離れるなんて、こんな損失はありません。
彼はその実績や知性だけではなく、2014年の全日本で女子のジャンプ判定が異常に厳しかった際、「これでは溌剌とした演技にならない」と苦言を呈した男らしさも持ち合わせているんです。
フィギュアでは選手によるジャッジ批判は”ご法度”といっても過言ではなく、これは本当に勇気のある発言でした。
そのリスクを冒した小塚くんが、どれだけ日本フィギュア界を憂えていたかがわかるというものです。

日本フィギュア界と我々ファンはそういう人間を失ってしまった。
なぜ、小塚崇彦はリンクを去ってしまったのか、去らせてしまったのか。
理由は彼の胸のなかにしかないのかもしれません。
しかし、それを関係者やファンが考えることはとても大切だと私は思います。
それこそが小塚崇彦の残した遺産なのではないでしょうか。

私も正直いってまだ気持ちの整理ができません。
こうして書いていても信じられないんです。
夏の『THE ICE』でちゃっかり滑っていて欲しい(マオとコヅカのショーなのに!)。
Io Ci Saro!
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