2016世界フィギュア女子FS(中)、ロシア勢の強さとそれに負けない宮原知子

(続きです。)
最終グループ先頭はロシアのエレーナ・ラジオノワ。
SPではわずかなミスで5位71.70と出遅れた彼女ですが、FSでベストに近い演技が出来ればまだまだ優勝の可能性は残ります。
そのためにも大切な立ち上がりですが、3Lz+3Tは態勢を崩しながらも上手く着氷(フリーレッグがかすりそう)、3Fは体がやや折れるような着氷、3Lzはそれのより悪い形。ジャンプは揃えたもののヒヤヒヤしました。
独創的なスピンからのステップでは体を大きく使って『タイタニック』の雄大さを表現、エッジも深く使おうとしているのがわかります。
そして物悲しい芝居を挟んでからの後半3Lo+1Lo+3Sはぐしゃぐしゃになりながらも思い切りよくクリア、2Aも折れる着氷。もう癖になっていますね。
3Lz+2Tはこらえるように着氷し、そこからはあの有名なヴォーカルに乗ってのコレオスパイラル、2Aはまた折れる形、結びは力強いコンビネーションスピンとビールマンを連ねてフィニッシュ。
ジャンプがどれも汚くて気になりましたけど、プログラムの流れ自体はキープしながら、大きな瑕疵なくまとめたといっていいでしょう。気持ちはしっかり入っていました。
全力は尽くしたのですから、あとは天命を待つのみですね。
FSは138.11(TES70.17・PCS67.94)、209.81。
スコアは私が思ったより出ましたけど、これだとちと優勝は難しいか…。
それにしても今季のラジオノワは、まさに悪戦苦闘のシーズンでした。
体型変化もあって体のバランスがおかしくなったのと戦い、途中からはロシアスケート連盟の序列付けと戦い、最後はやっぱり自分自身の演技の質との戦いでした。
全体の雑さを克服しなければ、ライバルであるメドベデワには勝てません。公平に見て、いまは向こうが上でしょう。
今季は悲しい顔ばかりでしたけど、来季はあの無邪気な笑顔が見たいですね。

SPはややミスがありながらも73.76をキープしたエフゲニア・メドベデワ(ロシア)。
シーズン通りの演技が出来れば優勝は彼女のものでしょう。しかしそれが簡単でないのが世界選手権。しかも彼女はこれが始めてなのです。
そんなプレッシャーの声が聞こえないようにしたのか、耳をふさいで『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』をスタートさせたメドベデワ、冒頭は綺麗な滑りからのタノ3F+3T!タノ3Lzもエッジを意識して着氷!
柔らかなスピン、芝居がかった振り付けで劇的な音楽を表現からのステップシークエンスでは丁寧で優美なスケート。エッジも正確でしたし、全体の動きも綺麗でした。
後半もタノ3F、3Loをしっかり決めて入ると、伸びのある滑り、足上げからの2A+2T+2Tはややぎこちなく成功、続く気合の助走からの3S+3Tはばっちり決めた!これは盛り上がる!おそらくここで本人も観客も優勝を確信したことでしょう!
そこからはその確信を慎重に掴みとるようなタノ2A、イーグルとY字回転スパイラルで魅せるコレオシークエンスではスタミナも集中力もまったく問題なし。
最後はコンビネーションスピンと美しいビールマンを連ねての圧巻の内容。これには「ボラヴォ!」の声しかありません。本当に素晴らしかった。要素の完成度はもちろん、散りばめられた繋ぎの質も高く、プログラム全体の流れもまったく淀みがありませんでした。
メドベデワ本人もこの会心の演技に大喜び、無邪気な表情を浮かべていました。
課題だった体のラインの緩さ(体幹の弱さ)、スケート靴の重さも、集中した滑りで、ほとんど問題を感じさせませんでしたし、その高い集中力が演技をより輝かしいものにしていました。
初めての世界選手権で優勝候補筆頭に挙げられた16歳が、それをものともしない舞台度胸を見せたのですから敬服するより他ありません。
FSは150.10(77.76・72.34)で世界最高点!合計223.86はパーソナルベスト!
今季のメドベデワはロシアからの猛プッシュで不可解なまでに高い点数が出てきましたけど、ようやく演技がそれに追いついてきたといっていいでしょう。ちょっと高すぎるような気もしますけど、少しずつ信憑性が出てきたと思います。
いまの彼女は間違いなく現役で最も強い選手、いや過去に遡ってもトップクラスということができるでしょう。
まだ16歳なので体型変化がどう作用するかわかりませんが、順調に成長すれば歴史的女王になるかもしれません。
今後はリンク外での発言や立居振舞も含めて世界レベルの人気者になって欲しいですね。
本当に凄かった!

メドベデワの歴代最高点を前に、並の選手なら臆してしまいそうなものですが、我らが宮原知子は微塵も動じません。
鋼の女王、機巧の女王が目指すのは自分の演技の完成のみ!
『ため息』が出るほどに安定した3Lz+2T+2Loでスタートした宮原さん 優雅に滑ってからの3Loもばっちり。
生真面目なターンとフットワークで作るステップではその完成度の高さを見せ、続いてはスピードを上げてからの3F!
SPでの回転不足判定を否定するような力強さ!
代名詞の 逆回転スピンで前半を終わらせ、後半冒頭は流れのある3Lz、2A+3Tもよし!
キャメルスピン、そして初恋に心が踊るようにリンクを駆けてからはウォーレイを挟んでの3S!続く2A+3Tも力強く決めた!
終盤は後ろ向き前向きにスパイラルを重ねるコレオ、最後は精密機械のようなビールマンスピンを回って、堂々のノーミス!これが日本女王、宮原知子だ!
この宮原さんのノーミス演技にはトップ3ルームの浅田さんも破顔しながら拍手。私も映像を観ながら手を鳴らしていました。
この緊張感のある舞台で、メダルが期待されるなかでのいつも通りの完成された演技。普通じゃあできません。
技術もメンタルも本当に強くて逞しい。頼りになる女王です!
スコアはおそらくGPFや四大陸同様に140点を超えてくるはず…、と思ったものの139.89(73.54・66.35)と伸び切らずに、合計210.61。
これにはキスクラの宮原さんとコーチはしばし呆然。
また不当な回転不足やらエッジ判定やらを取られたのかと思ってプロトコルを確認すると、単にGOEが渋いだけでした。SPに続いて抑えつけられた印象です。宮原さんはメダルが欲しいアメリカ勢にとって目の上のタンコブですからね…。
くそ、この嫌がらせを打破するだけの”何か”が欲しい!
それこそが来季の宮原さんの課題だ!

SPで好調さを見せつけたアンナ・ポゴリラヤ(ロシア)は、FSでも軽快に滑り出してからの3Lz+3Tを鮮やかに決め、『シェヘラザード』のアラビアアンダンスで雰囲気を作ってからの3Lo+1Lo+3Sもまずまず、3Lzはちょっと軸が斜めになるも上手くコントロール。勢いのある序盤でした。
ステップでは深いエッジと持ち前のスピードで迫力のある演技、大柄な体でスケール感もアップ。
大らかなフライングコンビネーションスピンで前半を締め、曲調が優雅になった後半は2Aで始まり、丁寧な振り付けから加速をした3Lo+2Tもよし!いい流れ。
そこからは足上げやアラベスクスパイラルによるコレオ、メダルが見えるなかでの慎重な2A、 3Fは着氷を乱しながらもなんとかこらえ、音楽が激しくなるのに合わせてのコンビネーションスピン、気迫のレイバックビールマンでフィニッシュ!
ポゴリラヤも大きなガッツポーズで喜びの叫び!
いやあよくやりました、ブラヴォ!
息もつかせぬ演技で、要素の質も高かった。他の選手に比べて大柄で、スケートスピードが速いので、上手くいったときは演技の迫力が際立ちます。観ていて打ち負かされたような気分になりますよね。
スコアは139.71(71.60・6811)、合計213.69。
けっこう出ましたけど、キスクラのポゴリラヤはちょっと不安そう。
これはSPでのアメリカ勢へのジャッジの偏愛のせいでしょう。
ポゴリラヤは2年前の世界選手権でも酷い判定でメダルを獲れませんでしたしね…。
(というわけで何が起きるか予断を許さない後編に続きます。)
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