4回転フリップの衝撃

ボストンでの世界選手権が終わってわずか3週間、大陸対抗のチームチャレンジカップなる大会の記念すべき第1回大会がワシントンで開催されるということでしたけど、いわゆる花相撲的な大会でしょうし、選手たちの応援風景のみが見所の、なんとも緩い大会になるだろうと、私も高をくくっていました。
むろん、真面目な選手もいますし、ノリのいい若手もいますし、地元アメリカの選手たちも声援を受けてがんばるだろうということは予想の範囲です。驚きはありません。

そんななか、大会の緩さをぶち壊し、大陸間の争いという趣旨をチープなものにし、主役の座を強奪したのは、日本が誇る天才、宇野昌磨でした。
4月22日(現地)のSPでいきなり世界初の快挙である4回転フリップを成功させると、4T+3Tと3Aもきっちり決めて、105.74という世界歴代2位となるハイスコア。
4Fは天才的な軸の作り方と、着氷時のフリーレッグの捌きで回転を上手く制御することで、紙一重の成功という感じでしたけど、世界選手権後に本格的に練習を開始したとのことですから、その習得の速さと本番度胸には、鳥肌が立ちます。
(※4T+3Tはおそらく宇野くんにっとって初めての成功ではないでしょうか。昨季の3Aと4Tの同時習得もそうですけど、この選手は予想を超えた貪欲さがあります。)

翌日のFSでも、冒頭の4FをSPと同じようにぎりぎりで決めると、3Aと3Lzはバランスを崩しながらも根性で降り、後半は3Loと3Sを落ち着いて揃えてからの勝負の4T!
これをぐっとこらえて着氷すると、もう一本の4Tも食らいつくように決めて、ぴょこんと+1Tにして基礎点を守ったのは大きかった。
そして最後のジャンプに3A+1Lo+3Fを決めるという離れ業!
スコアは192.92で自己ベスト更新。
宇野くんは試合後のインタビューで、「攻める演技で清々しくシーズンを締めくくれました。世界選手権のまま終わらず嬉しく思います」と爽やかな表情を浮かべていましたけど、世界選手権はやっぱり本当に悔しかったんでしょうねえ。涙のまま終わらずに本当によかった。

実のところ、”攻める演技”でいうと、私は今季の宇野くんに不満を持っていたんです。
今季の宇野くんはSPの4T導入、FSでの4T2本という挑戦を四苦八苦しながら乗り越えてきました。
攻めのプログラム構成だったと思いますし、全日本や四大陸では抜けた4Tのリカバリーを最後のジャンプに持ってこようとするなどの、貪欲な姿勢を見せていました。
ただ、演技全体でいうと、本当に攻めていたのでしょうか?私はどうもそうは思えませんでした。

今季の宇野くんの演技は、とにかくジャンプを成功させる、という気持ちが大きすぎたように感じていたからです。
宇野くんの持ち味は、技術要素の的確さはいうまでもなく、やはり、音楽を自分のものにしながら、それを大胆に表現できる才能です。スケーティングや身のこなしのセンスも天賦の才ということができるでしょう。
しかし、その表現の部分で、今季の宇野くんに私は満足できませんでした。彼ならもっと出来る、という思いが強かったからです。
伸び悩んでいるとすら思いました。

もちろん、シニアデビューの高校3年生が、難度の高いジャンプ構成にチャレンジして、世界のトップに割って入ろうとすること自体が大きな挑戦であるのはいうまでもありません。
しかし、それだけを目標にしてしまったら宇野くんの良さは伸びなくなりますし、自分自身の持ち味を生かさなければ、世界の頂点には立てないんです。
たとえば、羽生結弦は高難度ジャンプに彩を付けながら美しく決めるという持ち味で、世界の頂点に立ったわけです。

しかし、このチャレンジカップのSPとFSはそんな私の不満を完全に解消してくれました。
氷を強く正確に押すスケーティング、柔軟性と力感のバランスのいい身のこなし、そして体は常にどこかの部分が音を取っている。
演技全体に高い集中力が感じられ、『Legends』は本当にクールで、『トゥーランドット』はようやくその大きな世界観を表現することが出来ていたと思います。
4Fへの挑戦という高いハードル、そして世界選手権での悔しさが、何かを根本的に変えたとしかいいようがありません。
ようするに宇野昌磨という選手は、負荷をかけてやればやるほど伸びるタイプ、難しいことをさせればさせるほど、演技全体が研ぎ澄まされてゆくタイプの選手なのだと思います。

そして、こういう選手が”奇跡”を起こすことを我々は知っています。
ワシントンの観客と他選手が総立ちになっていたように、来季の宇野くんは日本の会場にも熱狂をもたらすことでしょう。
また、それが刺激となり、日本男子全体がレベルアップし、戦いが白熱するに違いありません。
シーズンが終わったばかりだというのに興奮してきました!

やっぱり宇野昌磨は天才だ!
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