憲法記念日にミャンマーから学ぶ

相手方の都合があるので、おそらくは偶然だと思うのですが、5月3日(現地)に岸田文雄外務大臣がミャンマーでアウンサンスーチー国家顧問兼外相と会談したことで、私も憲法について少し考えさせられました。

アウンサンスーチー氏といえば、ビルマ(現ミャンマー)をイギリスから独立させた英雄、アウンサン将軍の娘であり、独立後、いつの間にか軍事独裁政権へと移行してしまった祖国に民主主義をもたらすため、武器を持たずに戦い続けてきた人物としてよく知られています。
スーチー氏の民主化運動は1991年のノーベル賞受賞で世界中からも注目を集めることとなり、それにともなって軍事政権への国際的な非難が強まると、欧米諸国による経済制裁もあってミャンマーは徐々に干上がり、音を上げた軍事政権も民主化へと傾いてゆきました。
そして2008年に新憲法が制定され、それを基に連邦議会総選挙も行われるようになり、ついに去年2015年にはスーチー氏が率いる国民民主連盟 (NLD)が議会で単独過半数を獲得するに至ったのです。

普通、それならばスーチー氏は国家元首である大統領に就任しますよね?
ところが、スーチー氏の肩書は”国家顧問兼外相”にすぎません。
これはミャンマーの憲法に「外国人の配偶者や子供のいる場合は大統領になれない」という規定があるからです。
スーチー氏はイギリス人の夫(故人)との間に2人の息子がいるので、この規定はスーチー氏を狙い撃ちしたものだといわれています。
もちろん、スーチー氏やNLDはこの憲法の規定を変えるために努力をしてきましたが、ミャンマーの憲法改定には「国会議員の4分の3以上の同意が必要」という規定があって、それが彼女たちを苦しめてきました。
実はミャンマーの憲法では、国会議員の定数の4分の1が軍人に割り当てられているんです。
軍系の連邦団結発展党(USDP)はスーチー氏と対立していますから、憲法改定はとてつもない難題ということになります。

そのため、政権を獲得したNLDはスーチー氏のために”国家顧問”という新たな役職を設け、外相という仕事も任せたわけです。大統領は別にいますけど、これは事実上のスーチー政権に他なりません。
スーチー氏も「自分が全てを決定する」と明言していますし、NLDもそれを認め、また世界各国もスーチー氏を事実上の国家元首として扱っています。
ただ、これは厳密にいうと憲法違反、少なくとも憲法無視です。立憲主義の立場からいえば簡単に許容してはならないものです。
それでも欧米や日本などがスーチー氏を立てているのはなぜか。
それは憲法の規定自体がおかしいということと、ミャンマーの国民がスーチー氏を選んだという事実を尊重しているからです。
つまり、憲法よりも民主主義を優先したわけです。

もちろん、スーチー氏はこの状態が正しいとは思っていないのか、軍系の政治家に働きかけることも忘れてはおらず、憲法改正を目指しているのは確かです。
現在のミャンマーの憲法は軍事政権が作ったものですから、民主的な議会が開かれたいま、すべての国民の議論のもとに憲法を新たなものにしたいという思いも強いことでしょう。
そうなって初めて本当の民主主義国家なのです。

このミャンマーの憲法問題は、ひとりの日本人として、大いに考えさせられます。
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