平成28年5月場所、白鵬の宿命的な優勝

「強いひとは大関になる。宿命のあるひとが横綱になる」。

平成28年5月場所13日目、ここまで全勝の横綱・白鵬は、同じく全勝の大関・稀勢の里を下したあと、この深い言葉を残しました。
相撲の内容はというと、立ち合い右から張った白鵬が選んだのは左差し右上手の”左四つ”。
しかし白鵬の本来の型は”右四つ”であり、左四つは稀勢の里の型。
なので、白鵬は立ち合いから押し込んだものの、稀勢の里が押し返し、優位な体勢に。
しかし、攻めるのは白鵬!
常に下から下から、細かく細かく攻め手を変え、徐々に稀勢の里の腰を浮かせると、最後は豪快な左下手投げ!

取組後、この一番を振り返った白鵬は、「勝つなら勝ってみい、それで横綱になってみい、という感じだった」と、わざと稀勢の里十分の形で勝負をしたというのです。
しかし、稀勢の里はそのプレゼントをまったく生かすことなく、単なる引き立て役になってしまったのですから、この一番からは勝敗を超えた2人の大きな差を感じました。

そして14日目に優勝を決めた白鵬は、今日の千秋楽も勝って見事な全勝優勝。
自身が持つ幕内最高優勝記録を37に伸ばすだけではなく、この5月場所は2日目に魁皇が持つ幕内勝利数879を更新、さらには初顔27連勝、ストレート給金(8日目に勝ち越し)27といった記録も更新したのですから、まさに記録づくめの場所となりました。
私もこれまで何度か書いてきましたけど、白鵬はもはや生ける伝説であり、史上最強横綱であることはいうを待ちません。
この大横綱をリアルタイムで堪能できることは本当に幸運です。

しかし、そんな大横綱に対して、我々日本人は正しく敬意を示しているのでしょうか?
少し荒々しい相撲を取ればやれ乱暴だ、立ち合い少し動けばやれ変化だと、ささいなことで難癖をつけ、この大横綱が真摯に相撲に向き合い、積み上げきたものを見ようとしない、そういう態度を私は本当に残念に思います。
もちろん、私も最近の白鵬の相撲には「余裕がないな」と感じています。
31歳というピークを過ぎた年齢ですから、出来るだけ省エネで勝ちたい、相手を心理的に威圧したい、という意識が働いているのでしょう。それを”みっともない”というひとがいることを私も否定しません。
ただ、私は、そうまでして勝ちたい白鵬に、背負っているものの大きさを見ます。

白鵬は、尊敬する大横綱・大鵬からいわれた「横綱は宿命だ」という言葉を大切にしているそうです。
大鵬は21歳で横綱になったとき、まず「引退のことを考えた」というように、”横綱は負けられない。負け続ければ引退”ということ己に課していたと同時に、「下の者に稽古をつけてやって、三役から大関、そして横綱に引き上げてやるのが横綱の立場、役目」とも語っているのです(月刊『致知』2011年11月号)。
これはなんたる矛盾。下の者が上がってくればそれだけ自らの地位が脅かされるのです。
しかし、その矛盾に立ち向かうことこそが”横綱の宿命”なのでしょう。

白鵬が稀勢の里戦で見せた相撲はまさにこの矛盾でした。
大鵬から受け継いだ志を体現してみせたわけです。
ただ、残念なことに相撲解説者や親方衆、横綱審議委員といったひとたちは、そのことに一言もふれていません。
大鵬が亡くなったいま(2013年1月没)、白鵬は本当に孤独です。
しかし、白鵬は2015年5月放送のテレビ番組で、「(本場所の土俵は)特別な場所なんですねあそこは。人を成長させたり、人を試したり、人を笑わせる、悲しませる、色んなものがあるんだよね。だから自分との戦いでありながら、成長するところなんですね」と語っています。
彼はいま、自分との戦いを楽しんでいるのかもしれません。

私はこれからも、そんな大横綱の孤高の戦いを、手に汗握りながら見守りたいと思います。
この5月場所は本当に凄い場所でした。
37度目の優勝おめでとう!
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