『真田丸』第28話、『受難』

”豊臣秀吉”という人物は『太閤記』の影響のせいか、明るく陽気で精力的でスケベという印象が強く残りますが、そのイメージのなかの唯一といっていい陰の部分が甥である豊臣秀次への粛清です。
その粛清の理由様々な説があって定まったものはないものの、秀次が自害し、その妻子や家臣たちが残虐な有様で処刑されたというのは動かしがたい事実です。
ですから、秀吉を映像や小説で描く際には、この秀次事件をどう扱うかがとても大切になります。
謀反を疑ったからなのか、実の子”拾”の邪魔になると思って排除したのか、淀殿や光成にそそのかされたのか、それとも”殺生関白”などという呼ばれ方があるように秀次自身に何か問題があったのか…。
それによってその作品の”秀吉像”が決まるといっていいでしょう。

この『真田丸』第28話『受難』でも、秀次はついに最期を迎えました。
話はまず、先週の続きで、秀吉からのプレッシャーに耐えられなくなった秀次が、大坂城の”きり”のもとに身を寄せたとことから始まります。
秀吉に拾が生まれて微妙になった自分の立場も、関白という責任のある職も、何もかも投げ出したい気分になっていたわけです。
しかし、失踪したことが秀吉に知られれば処罰されるのは目に見えています。
秀次を捜索にきた真田信繁は、秀吉に直接会って腹を割って話をすればいいと説得しますが、将来に絶望した秀次にはそんな勇気も沸いてきません。
いったんは京の真田屋敷に匿われた秀次ですが、信繁らの勧めが煩わしくなって、逃げるようにして高野山に登り、自ら蟄居を決断。そして、「もう誰かに振り回されるのが嫌になった…」と自分の運命を呪う言葉をつぶやくのでした。

秀次の失踪は信繁らによって必死に隠蔽されてきましたが、いつまでもそうしていられるわけもなく、秀吉の耳にも届いてしまいます。
秀吉は秀次の胆力のなさを嘆きながらも、「関白が失踪したというのは聞こえが悪い。謀反の疑いでわしが蟄居させたことにせい。ひとつきほどしたらその疑いも晴れたということにしよう」と石田三成に命じ、可愛い甥っ子に情けをかけますが、その秀吉からの愛情や期待そのものが秀次にはプレッシャーでした。
高野山の秀次へ、秀吉から「蟄居すれば許す」との使者が到着したそのとき、世をはかなんだ秀次は腹を切って自害。

これに激怒したのは秀吉。
「これまでどれだけわしがどれだけ目をかけてやったと思っているのだ!」と愛情が裏返って憎しみへと変わった秀吉は、秀次の首を三条河原にさらせ、そこで妻子や侍女の皆殺しまで命じます。
加えて、秀次が政務を執っていた聚楽第も、坊主憎けりゃ袈裟まで…といわんばかりに破却を決定するのですから、その怒りはかつてないものでした。
そんな緊迫した状況のなか、聚楽第の隠し礼拝堂で秀次の娘たかを発見した信繁は、秀吉から勧められた大谷吉継の娘との縁談を承知するかわりに、たかを側室に迎えたいと懇願。処刑されるはずのたかの命を、それこそ命がけで救ったのでした。

しかし、信繁はそのたかを側室にするのではなく、今後何が起きるのかわからないといって、堺の豪商ルソン助左衛門に預けてルソンへと逃します。
このたかは信繁の子を産んだという説もあるので、いつかまた物語に戻ってくるかもしれませんね。
そして何といってもこのルソン助左衛門です。
演じていたのは九代目松本幸四郎。
六代目市川染五郎時代に大河ドラマ『黄金の日日』で演じていたルソン助左衛門そのものの、青臭さの残るセリフとともに戻ってきたのです!
大河ドラマファンにとって、これほどのファンサービスはありません。幸四郎のルソン助左衛門が拝めただけで、この第28話『受難』には大きな価値がありました。
ただ同然の糞壺を大枚で秀吉に売ってやり、「ルソンの香りがする」といわせた場面は、まさに『黄金の日日』の世界でしたね。

そんな今回ですが、私がちょっと気にかかったのは、秀次がマリア様の肖像を持っていたり、聚楽第に隠し礼拝堂を作らせていたりと、隠れキリシタンを匂わせていたことです(1587年にバテレン追放令)。
しかし、キリシタンならば自害はご法度ですし、一夫一妻を基本にしているので秀次に側室が多数いるのもおかしいということになります。
また、今回の副題である『受難』も、一般的には無実のイエスがひとびとの罪とともに十字架を背負ったことをいうわけです。
秀次との共通点は”無実”というところしかないので本当に不可解なんです。
脚本家の三谷幸喜さんがどうして秀次とキリスト教をからめたのか、その真意をどこかでうかがいたいものです。
もしかしたら、秀次の生き様も信仰も副題も”中途半端”という意味なのかもしれませんが、それだとちょっと寂しすぎます。

謀反でも殺生関白でもない新しい秀次事件の解釈も、私にはもやもやだけが残りました。
秀次役の新納慎也さんがいい芝居をしていたのだけが救いですかね…。
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