『真田丸』第36話、『勝負』

「真田家の物語のハイライトはいつか?」と聞かれれば、多くの歴史ファンは、信長死去後の混乱に伴う第1次上田合戦と、徳川秀忠の3万8千の兵を足止めした第2次上田合戦、そして幸村が天下一の兵になった冬と夏の大坂の陣を思う浮かべることでしょう。
ですから、『真田丸』でもそこはぜひ力を入れて描いて欲しいと思っているひとも多いと思いますし、私ももちろんそのひとりです。
そしてこの第36話『勝負』ではついに第2次上田合戦のときがやってきたのです!
第1次のときは、大がかりな上田城のセットを作って、エキストラの兵も大河ドラマではあまり見ないくらいに大量投入し、合戦の迫力や昌幸の駆け引きを存分に表現していただけに、今回も大いに期待したいですよね。

今回のストーリーの方はといいますと、まずは徳川方を離反した昌幸一行が上田に帰る途中に信之の居城である沼田城に立ち寄ったわけですが、いくら「真田安房守じゃ!」といっても門が開きません。
櫓の上に姿を見せたのは、信之の正妻である稲。鎧を着こみ、手には長刀を持っています。
夫・信之は徳川方に残ったのだから、父とはいえ昌幸を沼田城に「一歩たりともお通しするわけにはまいりませぬ!」ということなのです。
これにはさしもの昌幸も、「さすがは徳川一の名将、本田平八郎の娘じゃ。源三郎はよい嫁をもろうたのう」と寂し気に呟いてその場を立ち退くしかありませんでした。
これは有名なエピソードですけど、稲を演じる吉田羊さんの凛とした芝居がよかったですね。

そうして昌幸たちが上田城に籠ると、上杉討伐から引き返し、中山道から上方へ戻ろうとする3万8千の徳川秀忠軍が姿を現したのでした。
昌幸はまず、秀忠に降伏文書を送るのですが、内容は自分に都合のいいことばかりで、もちろんこれは単なる時間稼ぎと相手への挑発にすぎません。
若い秀忠は激高しますが、老獪な本田佐渡守は前回を教訓に事前の策を次々に講じ、いつでも総攻撃ができるよう準備を怠りません。
また、秀忠軍の軍議では、その総攻撃の前に、前回痛い目にあった原因のひとつである砥石城を先に押さえておく必要があるという話になり、そこで手を上げてのは前回、その砥石城に入っていた真田信之。
「我らに内通する者がおりまする」
父と弟が徳川方から離反したことで、本田佐渡守から本心を疑われている信之はここで信頼を得ねばなりません。

もっとも、実はこの砥石攻め、弟の信繁と密かに図った狂言なのです。
砥石城を守っていた信繁が少し鉄砲を放っただけで、あとは内通者が出た体ですぐさま城を捨て去ったことにより、信之は徳川方での立場を確かなものにし、また信之がそのまま砥石城に留まることで、上田での血で血を洗う正面衝突を避けたわけです。策士一家真田家の面目躍如といったところでしょうね。
ただ、ここでひとりだけ涙を流したのは信繁の幼馴染であり片腕とも頼む矢沢三十郎頼幸。
内通者として、今後は信之のもとに行くことになるのでした。

そうして、真田側が遊撃戦や兵糧の略奪などで時間を潰していると、昌幸の目論見通り、上田地方に雨が降り始めます。
これで神川が増水し、秀忠軍が退路を塞がれたところで、昌幸は信繁に秀忠本陣を強襲するように命令。
本陣の位置は昌幸の想定通り。
これに驚く信繁へ、「戦はな、始める前が肝よ」とニヤリといって聞かせる昌幸。
しかし、信繁が強襲してみると、すでに秀忠は陣を引き払た後。
岐阜で大きな動きがあり、秀忠軍も真田などへは構ってられず、急いで上方へ向かったのでした。

これで2度も徳川軍を追い払うことに成功した上田城では戦勝の酒宴。
みな浮かれ気分で、酒を呑みかわし、「どこで決戦が行われるか」「どれだけ戦が長引くか」など、めいめいで予想し合いながら、誰もが西軍(石田方)の勝利を疑っていません。
すると、そこに到着したのは物見にやっていた忍びの佐助。
強張った表情の彼の口から出てきた報告は、「戦は朝方に始まり、昼過ぎには勝敗が決しました。徳川方の大勝利でございます。大谷刑部さまは討ち死に、石田治部さまは行く方知れず」という信じられないもの。
唖然とする昌幸たちの表情と共に、36話は幕を閉じたのでした。

関ヶ原のあっけなさを表現するために、今回はこういう脚本と演出だったのかもしれませんけど、上田合戦までもがあっさりしていたことに、私は正直いってかなりがっかりしてしまいました。
第2次上田合戦といえば、史実でも昌幸が囮を使って秀忠軍を大いに苦しめたり、信繁の部隊が本陣を奇襲して、秀忠をほうほうの体にさせ、「我が軍大いに敗れ、死傷算なし」などと徳川方の記録に書かれた華々しい舞台です。
しかも、小説なんかだといわゆる真田十勇士もここで大いに活躍するわけですよね。
そういうハイライトを簡単に流してしまったことが理解できませんし、少し怒っているくらいです。

また、このような形にしてしまったことで、信繁の戦の腕前や勘がどれだけ優れていたかを描く機会もなくなってしまったんです。
これから九度山に蟄居する信繁が、十数年後の大坂の陣に”戦上手”として唐突に現れるなど、噴飯ものです。
「戦は始める前が肝」といっても、すべてそれで勝てるわけがありません。
私は命ぎりぎりの戦いをする信繁が見たい。
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