2016GPSフランス大会、男子シングル 4回転の数だけじゃない

2016GPSフランス大会男子シングルは、世界王者ハビエル・フェルナンデスを楽しみにする観客が多く詰めかけていたわけですが、そのファンたちはフェルナンデスの優勝を微塵も疑ってはいないでしょう。
しかし、そんな鉄壁の王者の牙城を誰かが突き崩そうとしなければ、大会は盛り上がりません。
そして、挑む気持ちがなければ、いい演技にも繋がらないのがフィギュアスケートです。
というわけで、フランス大会の男子シングルをざっくばらんに振り返ってみたいと思います。

黒いレザーのタンクトップで『Let Me Think About It』を踊ったSPのアダム・リッポン(アメリカ)は、体を見せつけるような滑りから3F+3T、3Aを降りると、後半のリッポン3Lzも綺麗に着氷、お客さんを煽って入ったステップでもエネルギッシュで、エッジと体の使い方が正確。
独創的なスピンでも会場を沸かせ、ベテランらしい余裕の演技でした。
SPは82.25(TES43.33・PCS41.92)で4位。
いい演技でしたけどやはり4回転が入らないとどうしても点は伸びません。それだといまの男子ではちょっと厳しいです。
リッポンは公式戦で4回転をクリーンに降りたことはありませんしね…。
そんなわけで、FSでもいくらいい演技をしても4回転が入らなければ上位には食い込めないだろうなあ、と思っていたら冒頭の4Tがまさかの成功!失礼ながらびっくりしました!
そこからも3F+3T、3A、後半は3A、3A+2T、3Lz+2T+2Lo、3Lo、そして必殺のリッポン3Lz!
とびしばし決めていったアダム、そうなると演技も冴えてきて、「パーフェクト!」といいたくなる内容でした。もう言葉はいりません。
ファンはこのFSの映像を宝物にしたいですね。
清澄な空気のなか、本当に美しい『Arrival of the Birds』を観させてもらいました。ブラヴォ!
FSは182.28(94.64・87.64)、合計267.53。
今後SPにも4Tが入ってゆけば、アダムは最前線で戦える!

足首の不調が伝えられる無良崇人は、その影響からかSP冒頭の4Tは踏ん張り切れない形の転倒となってしまい、3Aはしっかり決めるも、後半の3Lz+3Tも軽くステップアウト。
しかし、ステップでは前の大会より要素を増やし、床を踏み鳴らすフラメンコの力強さに技巧も加わって、いい感じの『ファルーカ』になってきました。スピンにまとまりがなかったのは少し残念。
SPは78.38(39.92・39.46・減点1)で5位。
そのようにジャンプが苦しそうだったのでFSはかなり心配でしたけど、ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第2番』の重厚な雰囲気のなか、4T+2Tをなんとか着氷すると、4Tは力強く、3Aは無良くんらしい高さ!よし!
ステップでは大きく音を捉えた丁寧にフットワーク、キャメルスピンも集中していて、引き込まれるような前半戦。
後半も3Sをしっかり決めると、見上げるような3A+3T!よっしゃあ!
そこからも3Lo、シットスピン、3F+1Lo+2Sと揃えてノーミスが見えてきましたけど、畳みかけたい3Lzでまさかの転倒…、嘘だといって!
それでも力を振り絞って立ちあがった無良くんは、気持ちを乗せたコレオ、必死のコンビネーションスピンでフィニッシュ。
転倒はもったいなかったですけど、プログラムの特徴もよく捉えていて、いい滑りでした。ラフマニノフと無良くんの相性は良さそうですね。
FSは170.04(89.84・81.20)、合計248.42。
次は全日本になるでしょうけど、怪我が癒えたらまた4Sにトライすると思うので、楽しみに待っています!

現在の”クワドモンスター”といえば4種類を跳ぶ中国の金博洋ですけど、それを脅かすのがアメリカのネイサン・チェン。
17歳(99年5月生まれ)だというのにルッツ、フリップ、サルコウ、トゥループの4種類が跳べるんです!
まだ金博洋ほど安定はしていませんが、この”アメリカンクワドモンスター”は夢が詰まっていますよね。
このSPでも姿勢よく滑り出すと、4Lz+3Tをややバランスに苦しみながら着氷、そして4Fも詰まったようになるもしっかり成功!凄い!
そうして会場の期待も大きく高まりましたけど、後半の3A予定が2Aに…。3Aは苦手…。
それでも安定したスピン、伸びやかなスケートを生かしたステップでは失敗を意に返さぬ前向きさでした。
3Aの課題もそうなんですけど、フットワークや表現面ではまだまだ物足りない部分が多く、音楽もあまり聞いていない感じなのも気になります。SPは『海賊』だったんですけどなんだかよくわかりませんでした。
SPは92.85(51.74・41.11)で2位。アメリカスケ連の期待の大きさが伝わってくる高得点。
FSでも4Lz+3T、4Fと立て続けに超高難度ジャンプを決めて、夢を広げてネイサン・チェンですが、続く4Sと4Tは連続転倒。最初のジャンプで足を使いすぎたかもしれませんね。
遊泳するようなのんびりとしたコレオで前半を終わらせ、大事な後半冒頭でも4Tでお手つきしてしまってコンボにならない手痛いミス(繰り返し減点)、3A予定も2Aになってダメージを深くするも、3F+3T+2Loはおっとっと着氷、3Lzは慎重に降りてなんとか流れを建て直します。
しかし、ステップでは力を振り絞るも、もはや棒になった足はよく動きません。かなり疲労感。
それでも基礎技術の高さとやる気はうかがわせるので、やはりいい選手、煌めくポテンシャル。
会場にもそういう意気込みと才能が伝わったのか、スピンを2つ回って悔しそうに演技を終えたネイサンへ、会場からも「よくやった!」という大歓声。スポーツ的な興奮に溢れた『だったん人の踊』でしたね。
FSは171.95(94.59・79.36・減点2)、合計264.80。
本当に夢の詰まったいい選手なのですが、転び方がえげつないので怪我が心配です。ジュニアの頃も怪我に悩まされていましたしね…。
そして3Aですが、ジュニアの頃からクリーンに着氷したことがほとんどないのも気がかりです。
規定ではSP・FSともにアクセルジャンプを入れなければなりませんから、それが2Aになってしまえば物凄いマイナスです。
世界のトップを獲るには、4回転よりも3Aでしょうね。
3Aを跳ばない風変りなチャンピオンも面白いかもしれませんが!

SPのデニス・テン(カザフスタン)はいつものように品よく滑り出すと、こらえながらの4T、3Lz3Tは綺麗、確かなキャメル、優雅に入った後半の3Aもよし。
ステップでは切れ味鋭いターン、動きもきびきびしていて見栄えがします、かっこいい。
細かく音を取るセンスと、激しく動きながらも品が失われないのはさすがデニス・テン。
最後のコンビネーションスピンはやや緩んじゃいましたけど、ほっとしたようなフィニッシュ。
今季からコーチがニコライ・モロゾフになったようですけど、この幻想序曲『ロメオとジュリエット』はデニス・テンの良さを引き出したプログラムだと思います。
SPは89.21(47.40・41.81)で3位。
デニス・テンといえばGPSを苦手としているので(調整段階)、FSはあまり期待しないように観ていましたけど、冒頭の4Tはやや前傾するもまずまず、3A+2T、妙な緊張感の3Sとまずまずの序盤(4Sを狙っているのでしょうね)。
安定したキャメル、『トスカ』を雄大に演じるコレオでは力強さと内に秘めた情熱が溢れだし、観る者を引き付けます。
後半も勢いのある3F、3Aはまずまず、スピンを挟んで、軽く滑っての3Lz+3T、3F+2T、3Loと連続成功!
激しいターンで入ったステップシークエンスでは体を鋼の鞭のように力強くしなやかに躍らせ、終盤はややバテるも、いい流れのままのフライングシットスピンで興奮を巻き起こしての終幕。
いやあ、良かった。
SPもFSも繋ぎが少なくて薄味なのがちょっと気になりますけど、基本の出汁は上質で、旨味は抜群という演技でした。
FSは180.05(93.39・86.66)、合計269.26。
最近はちょっと存在感が希薄なデニスですけど、まだ23歳と若いのですから、もう一花咲かせて欲しいものです。
4Sも楽しみです!

一週間前のロシア大会から連戦となったハビエル・フェルナンデス(スペイン)ですが、黄色い声で構成された物凄い歓声をイケメンな笑みで受け止める姿に疲れはありません。フランスは準ホームということでファンも多いですねえ。
ただ、フェロモン溢れる振り付けでスタートさせたSP『マラゲーニャ』も、冒頭の4Tで転倒。やはり連戦はきついのか。
こうなるとミスが許されない次のジャンプですが、4S+3Tを気迫の着氷。さすが王者。
得意のアップライトスピン、細かい手の振り付けでギターを奏でながら入った後半の3Aは切れ味鋭く、スピンも安定、姿勢がいいですね。
締めのステップはややあっさりしているものの、的確に振り付けをなぞってまずまずの内容。
SPは96.57(51.68・45.99)で貫録の1位。
このリードで優勝はほぼ手中に収めたといっていいフェルナンデスのFSは観客を挑発するような『エルヴィス・プレスリーメドレー』。60年代70年代がよく似あいます。
冒頭はびっくりするほど鮮やかな4T、次の4Sやや詰まるもしっかり+2Tを付け、ステップからの3A+2Tも成功。
シットスピン、腰くねらせて観客を煽って入ったコレオは悠々自適。音楽の変化も振り付けで上手く表現するのもさすが。
後半の4Sは前傾しながらなんとか降りて、これで態勢は決した、と誰もが思ったことでしょう。首から金メダルが見えるようでした。
しかし、イーグルからの3Aでまさかの転倒。ちょっと足にきているようでした。4Sでこらえたせいかも。
3Lzは決めるも、次が2F+1Lo+3Sになって疲れは明らか。コンビネーションスピンも青色吐息。
それでも音楽の盛り上がりに助けられるようにしてのハイドロからの3Lo、王者の意地と会場の声援で体を躍らせてのステップではかなりヘロヘロでしたけど、振り付けの上手さでなんとかごまかしていました。
最後のスピンを終えると、フィニッシュポーズもままならないほど疲れたフェルナンデスは、膝に手を置いてゼエゼエハアハア。やはり連戦はきつかった。
ただ、押さえるところを押さえたのはさすが。後半冒頭の4Sが全てでしたね。
FSは188.81(97.53・92.28)、合計285.38。

この結果、優勝はフェルナンデス!やはり強い!
しかし、演技で魅せたのは、2位のデニス・テンと3位はのアダム・リッポンだったと思います。
いまの男子は4回転の数が最重要になっていますけど、それだけがフィギュアじゃないと、この2人が教えてくれた大会だったのではないでしょうか。
2人には大きな拍手を送りたいですね!
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