2016GPF、男子FS 波乱の末の偉業

SPが終わり、1位羽生結弦と2位パトリック・チャンが頭ひとつふたつ抜け出すも、3位争いは混沌とする2016GPF男子シングル。
そんななか、SPで大きなジャンプミスをして4位と出遅れた宇野昌磨は、失うものはない、という前のめりの演技を見せてくれました。
時計の針が進むようなカチカチとしたた身ごなしで始まった『ブエノスアイレス午前零時』、まずは代名詞の4Fを上手く降りるも、次の4Tは惜しくもオーバーターン。
その悔しさを3Loにぶつけると、巧みなキャメルスピン、抜群のボディコントロールとエッジワークを見せるステップシークエンスでは音楽の盛り上がりとともに滑りがどんどん加速してゆく高度な演出。
弦をかき鳴らすようなコンビネーションスピンで前半を終わらせてからの後半冒頭のイーグル3Aはやや前傾するも音楽にズガン!と合わせる着氷、踊りでパワーを充填しながら緊張感を高めた4T2もよし!ここが肝だった!
そこからは吸い付くようなスケートからの3Lzを丁寧に降り、イーグルで雰囲気を落ち着けてから加速した3A+1Lo+3Fはばっちり!
3Sもしっかり決めて、得意のクリムキンイーグルでわっと歓声を浴びると、最後は技巧的で情熱的なコンビネーションスピンでフィニッシュ!
宇野くんは何かを睨みつけるようにしばらくフィニッシュポーズのままでしたけど、それだけ演技に気持ちが入っていたということでしょうね。観ているこちらも引き込まれる素晴らしい内容でした。ブラヴォ!
4分30秒の間、全身に音楽が流れ続けていたのも宇野くんらしかったですし、これぞフィギュアスケート!といいたくなりましたね。
FSは195.69(TES104.75・PCS90.94)、合計282.51。
全日本ではSPも揃えて目指せトータル300点!

巧みなマイムですぐに自分の世界を作り出したアダム・リッポン(アメリカ)は、冒頭の4Tでダウングレードで転倒してしまうも3F+3Tと3Sを決めて流れを取り戻すと、どっしりしたキャメル、上手く全身をくねらせながら体のラインを綺麗に見せるステップシークエンス。ピアノの音を丁寧に拾い上げるフットワークも繊細。
そこからは勝負の後半でしたけど、3A+2Tを決めたあとの単独3Aで大きくステップアウトしてお手つき、コンボにしたかった3Lzは転倒、次も2Loになるという大崩れ。
しかし、表現者としての矜持は折れず、スタイルの美しいコンビネーションスピン、『Arrival of the Birds』らしく綺麗に羽を広げながらのリッポン3Lzは両足着氷になるも、コレオでは鳥の動きを模したマイムもお見事、高さのあるバレエジャンプ、最後は劇的なコンビネーションスピンから美しく羽を畳んでいました。
FSは149.17(67.97・83.20・減点2)、合計233.10。
このスコアにはリッポンもやさぐれた表情を浮かべていましたけど、全米では建て直してくることでしょう。不死鳥のような男ですからね。

4種類の4回転を装備するも大きなミスを連発してなかなかスコアに結び付けられないネイサン・チェン(アメリカ)ですが、このFSでは4Lz+3Tをしっかり決めると、4Fも空中で上手くバランスを取っての着氷、そのまま追撃の手を緩めず4T+2T+2Loも成功させ、大いに会場が盛り上がるなか、4Tもややこらえながら決めた!すげえ!
コレオでは膝と足首の柔らかいイーグル、なめらかな身ごなしでジャンプではないところを見せ、後半冒頭の苦手の3Aも慎重に決めた!これは大きい!
ここからは完全にゾーンに入った感じで、3Lo、3F+3T、3Lzを確実に揃えてジャンプはノーミス。
キャメルのあとのステップシークエンスはちょっと足が棒になっていましたけど、それを若さで押し切って、『だったん人の踊り』の盛り上がりに食らいつくと、最後も全ての力を振り絞るようなコンビネーションスピンを2つ重ねて大歓声のフィニッシュ!ブラヴォ!
17歳の若さ溢れる演技に映像で観ていた私もスタンディングオベーション。
4回転ばかりが目立ちますが、他の要素や表現面でも一切手抜きをしない姿勢に惚れ惚れします。
また、滑りと動きに品があるのも好印象。まさに次世代のスター候補です。
FSは197.55(113.13・84.42)、合計282.85。この時点で宇野くんをわずかに上回っての暫定1位!
このFSによってネイサンは”失敗の多い選手”という殻をひとつ破ったと思います。
これを自信にしてさらなる飛躍をして欲しいものです。今後は後半ジャンプの増加と、繋ぎ部分の強化といったところでしょうね。
怪物ネイサンの進化が楽しみです!

優勝候補としてマルセイユに乗り込み、SPでも堂々の首位に立った羽生結弦。
この大会を制すれば前人未踏のGPF4連覇となるわけですが、FSではそんな気負いもまったく感じさせず、優しく風を切るように『Hope & Legacy』をスタートさせると、新たなる武器4Loはやや前のめりながらも着氷、4Sはしっかり決めた!
ビールマンで終わる柔らかいコンビネーションスピンで会場の興奮を冷ましてあげると、ステップシークエンスでも心地いい微風とを穏やかな水の流れを感じさせるような滑り。
足元の繊細さ、指先まで行き届いた演技、表情も柔らかく、透明感に溢れていました。
そのステップの流れで3Fをずばりと降りると、身ごなしも美しく後半へ。
そして勝負の4Sでしたけど、先のNHK杯と同じように転倒してコンボならず(リピート減点)。
イーグルを挟んでの4Tはやや着氷を乱しながらよく降りた、3A+3TでリカバリーしたのもNHK杯と同じ、しかし次の3A+1Lo+2Sは少し力んだのかバランスを崩してしまいました。
終盤のコレオではハイドロとイナバウアーで会場を沸かしたものの、最後のジャンプもまさかの1Lz。タイミングが外れていましたたね。
そうしてコンビネーションスピンで演技を締めくくった羽生結弦は悔しさを通り越してやや呆然とした表情をしていましたけど、こういう日もありますよ。仕方ない。
FSは187.37(96.01・92.36・減点1)、合計293.90。
暫定1位は守ったものの優勝するには微妙なスコア。あとから滑るフェルナンデスとチャンにも十分チャンスが出てきました。

地元欧州で大人気のハビエル・フェルナンデス(スペイン)は、『エルヴィス・プレスリーメドレー』ながらフィルム・ノワールのような雰囲気を漂わせながら女性客をめろめろにするも、冒頭から抜けた3T、こらえながらの4Sに無理やり+2Tという不穏なスタート。成功した3A+2Tもちょっと後傾していて嫌な感じ。
そうしてキャメルスピンと踊りのコレオでペースを取り戻したいフェルナンデスでしたけど、後半冒頭の4Sでステップアウト、3Aは転倒して、どうしてもリズムに乗れません。
ただ、これで勝負が決したことでフェルナンデスはいい意味でも悪い意味でもリラックスした感じになって、膝を屈ませる振り付けからの3Lzはしっかり着氷、指パッチンからの3F+1Lo+3Sは食らいついての成功、緩いコンビネーションスピン、『監獄ロック』が盛り上がっての3Loも勢いよく降りると、ステップシークエンスではちょっとおざなりになりながらも、持ち前の芝居っ気で間を持たせたのもフェルナンデスらしさ。
ただ、最後のスピンを遅れがちに回り終えると、さすがにがっかりした表情。
リンクサイドではポゴリラヤとメドベージェワが黄色い声援を送り(男子の後に表彰式があるため)、弟弟子の羽生結弦も熱心に応援していただけにかなり残念。
FSは177.01(86.17・9184・減点1)、合計268.77。
まあ、欧州選手権や世界選手権では調子を上げてくるでしょうし、心配はいらないと思います。
それがフェルナンデスのシーズンの過ごし方ですよね。

羽生結弦とフェルナンデスが崩れたことで、久々のGPF制覇が見えてきたパトリック・チャン(カナダ)でしたけど、冒頭の4Tで転倒、続く3Aでも転倒してしまって、早くも勝負あった。というか早すぎるでしょ!
しかし、こういうときだからこそ挑戦中の4Sを初成功させるのがチャンの面白いところ。
この成功は本当にびっくりしました。4Sにしては踏み切りも弱く、軌道も低いので決まるとは思いませんでしたしね。
これで気を良くしたのか、重量感のあるキャメルのあとのコレオでは深く美しいスケートと柔らかい動きで音楽を全身で捉え、『A Journey』の雰囲気を盛り上げるパトリック。
そして上手いマイムで繋いだ後半でしたけど、抜けた3Tに続いて、またしても3Aで転倒(リピート減点)。これで何もかも雲散霧消。
それでもパトリックは3Loを丁寧に降り、3Lz+2T+2Loも的確に決め、3Fもよし。
シットスピンも深く、ステップシークエンスでは美しくたゆたう音楽と同化しながらの見事なスケートと身のこなし。
締めのコンビネーションスピンにも妥協は一切見られませんでした。
失敗があっても最後まで気持ちを切らさなかったことには大きな拍手を送りたいと思います。かつての絶対王者として若手たちにいい見本を示してくれました。
FSは166.99(80.21・90.78)、合計266.75。
自己ベストのSPから一転、FSでは酷い大遭難になってしまいましたけど、”4Sの成功”という手土産があるのですから、下を向くことはありません。
パトリック・チャンはまだまだ戦える!

この結果、羽生結弦が逃げ切りでGPF4連覇!またひとつ歴史を作った!おめでとう!
演技はいまひとつでしけど、この方が世界選手権に向けて期待が膨らむってものです。やっぱりピークは3月に持って行きたいですよね。
2位はネイサン・チェン。羽生結弦もソチ五輪の前のシーズンのGPFでは銀メダルだったことを思えば、来季の五輪での羽生結弦の最大の敵はこの選手かもしれません。
宇野昌磨は2年連続の3位。SPでのミスがなければ優勝もありえただけに本当に悔しいことでしょう。しかし、演技を揃えさえすれば上にいる選手を脅かすことできるとわかっただけでも大きな収穫です。

それにしても男子はひとつのミスが勝敗を左右するだけに、観ている側としては本当に楽しい戦いでした。
だからこそ勝ったときの喜びも大きいんです。
おめでとう羽生結弦、ありがとう羽生結弦、君は我々の希望だ!
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