2017四大陸フィギュア男子FS(後) 想像を超える

(続きです。)
SPで生じたネイサンとの6.08差を逆転するためにも、FSではノーミスに近い内容が求められる羽生結弦。
得意のSPでスコアを伸ばし、それをFSで守るのが羽生結弦の必勝パターンですが、彼の負けん気はむしろビハインドの状況でこそ燃え上がることを我々は知っています。
そうして鬼気迫るまでに集中した表情で『Hope & Legacy』に身を任せた羽生結弦、最初の難関4Loを切れ味鋭く成功させると、SPでミスをした4Sもやや軸を斜めにしながらもしっかり着氷。
美しいコンビネーションスピンから、しっとりとしたステップシークエンスに入ると、繊細なタッチでリンクに希望の灯を咲かせると、それが煌めきながら爆発するような3Fへ!ここの流れは本当に素晴らしかった。
静寂の前半から世界をぐっと広げるようにして加速した後半、大事冒頭でしけど、まさかの2S+1Lo(4S+3T予定)はSPと似たようなミス(今季FSでは一度も決まっていません)。
これで普通はがっくり来るところでしょうけど、羽生結弦のメンタルは微塵も揺らがず、イーグルからの4Tをしっかり決めると、豪快な3A+3T!ここは+2予定のところを+3でリカバリーしたのはさすが。
しかも、次は3Aからの3連続のはずなのに助走の軌道が違う、と思われた瞬間、なんと4T+2Tに!これをびしっと決めた!
その後のスピンでも、ハイドロとイナバウアーのコレオでも羽生結弦の心と身体は鋼のようなテンションを維持し、最後のジャンプも3Lzではなく3Aに!燃えるような演技をしているくせにこの頭の良さはどうだ!これぞ蒼い炎の戦士!
会場に熱狂と興奮の渦を作った羽生結弦は、それをさらに加速させるようなコンビネーションスピンで堂々のフィニッシュ。
これが絶対王者を目指す男の滑りだ!
いやあ、震えました。我々の想像を遥かに超えるリカバリーを平然とやってのけた、伝説の演技といっていいでしょう。
演技の集中力がぐんぐん高まっていって、見ているこっちもどんどん引き付けられてゆく、ジャンプミスを取り返そうとする気迫がまた演技をより輝かせてゆきました。
やっぱり羽生結弦は凄い、千両役者だ!
FSは206.67(112.33・94.34)、合計303.71!
PB219.48を持つ選手なだけに、ここまでリカバリーして、これくらいのスコアにしかならないのか、という思いもありますけど、2S+1Loのミスを全て取り返すことはできないんです。たらればでいえば、+1Loになって、コンビネーションをひとつ無駄遣いしたのももったいなかったです。
しかし、まあ、今回はFSでの”4回転4本”を初めて達成しましたし、ミスがあってもここまで盛り返せるとわかっただけでも大きな収穫だと思います。
もちろん、303.71あれば四大陸初優勝も十分射程圏内ですしね!

キスクラの羽生結弦も優勝をほぼ手中に収めたような表情をしていましたけど、私もこれでほぼ決まったと思いました。
なぜなら、ネイサンのFSのPBは今季のGPFで出した197.55なんですけど、そのときは全ての技術要素に加点がつく、パーフェクトに近い内容だったんです。
これと今回のSP103.12を足すと301.67で、羽生結弦の303.71には及びません。
ネイサンは今回のFSで4回転5本の構成に上げてくるとのことでしたけど、それをすればノーミスは難しくなりますし、私は羽生結弦が勝つ可能性が高いと思ったわけです。

そうして始まった全米王者ネイサン・チェンの『ダッタン人の踊り』ですが、4Lz+3Tと4Fを的確に決めて会場をどよめかせるも、4Tでオーバーターン、4T+2Tは食らいつくような着氷。
消耗の激しい序盤戦のせいか、コレオシークエンスは休憩をとるようなあっさり感、スケートが滑らないのも気になります。
後半冒頭は苦手な3Aで着氷を乱すも、無理矢理+2T+2Tを付ける執念を見せ(最後の+2Tは3回目なのでその部分だけキックアウト)、スピードが落ちながらの4Sも気迫の着氷、3Lzは楽々、最後の3Aはタイミングが完全におかしくなっての変な着氷。
ジャンプが高難度すぎるのでヘロヘロでしたね。
それでも、続くキャメルスピンとコンビネーションスピンのメカニックに乱れがなく、棒のような足に鞭打ったステップも要素はしっかりしていましたし、17歳の若者らしい必死さが溢れる演技は本当に眩しかった。
ネイサン・チェンは身体の姿勢のいい選手ですけど、フィギュアに対する真摯な姿勢も本当に素晴らしい選手です。
最後のスピンが終わり、足元がふらふらのネイサン・チェンの顔には「やりきった」という爽やかな笑顔が浮かんでいました。
やはり男子シングルの未来を託す逸材ですね。ボラヴォ!
ただ、演技全体でいうと、大きなミスはなかったものの、ジャンプに細かいミスが多かったこと、強引な着氷で流れが滞っただけではなく、スタミナをロスしたこともあって、GPFのときよりは低調な内容だったと思います。
しかし、基礎点は空前絶後の高さ。
私がざっくり計算したスコアは195~200点。おそらく羽生結弦が僅差で勝つはず…。
そうして出てきたスコアは204.34(115.48・88.86)、合計307.46!ネイサンの逃げ切り優勝!
勝因は基礎点といいたいところですけど、どちらかといえばPCSですね(GOEも甘め)。今回よりまとまっていたGPFが84.42だったので、それ以下が妥当だと思うんですけど、その後”全米王者”になったネイサンにはそれでは”足りない”ということなのでしょう。
”フィギュアスケート”ではよくあることです(我々だってそれでいい思いをしたこともあります)。
ただ、ネイサンはSP・FSで大きなミスがない唯一の選手だったので、大会としてはこの結果の方が綺麗です。
私もあまり難癖をつけたくありません。
今回はネイサン・チェンの若き才能を称えようではありませんか。
おめでとう!FSでの4回転5本は凄かった!
この2017四大陸フィギュア男子シングル全体でいっても、超ハイレベルな戦いでしたし、本当に楽しかったです。
いまの男子シングルはスポーツ的な興奮に溢れていますね。

それにしてもネイサン・チェンは我々にとって恐ろしい存在になってきました。
久々のホープが出てきたことで、米フィギュア界が”金メダル候補”の誕生に色めき立っていますけど、”4種類の4回転”というわかりやすい武器を持っているのもアメリカ人にとっては好ましいのでしょう。
アメリカの猛プッシュで、今後のネイサンのPCSやGOEは思ったより伸びてくるに違いありません。
そこに日本勢はどう対抗してゆくのか。
例えば羽生結弦は、現時点でノーミス対決ならばネイサンには負けません。
しかし、フィギュアにミスはつきものです。
羽生結弦からすれば、”ある程度のミスをしても勝てる”という状況を作りたいことでしょう。
「これからもっと対策を練っていって、自分の実力を上げていかなければならないと痛感させられた」という言葉は本心だと思います。金博洋の4Lzから刺激を受けたように、ネイサン・チェンの存在は羽生結弦のさらなる進化を促すはずです。

そして羽生結弦は、我々の想像を超えてゆく!
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